マイ・ドリーム―バラク・オバマ自伝

  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (543ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478003626

作品紹介・あらすじ

アフリカからの一本の電話で、すべては始まった。黒人初のアメリカ大統領を目指す男、バラク・オバマ回想録。人生の目的を探してたどりついた家族と人種をめぐる感動の物語。

感想・レビュー・書評

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  • ミシェル夫人の伝記を読んでオバマ氏にも興味がわき読んでみた。もちろん大統領就任時はとてもインパクトがあったが、ミシェル夫人の側から見たオバマ氏というのがなんだかとてもかわいらしく見えたのだった。

    本を出すきっかけは、ハーバードロースクールで「ハーバードローレビュー」誌の黒人初の編集長になると、出版社から本を出す依頼が来て、出版社から前渡金を受けて執筆にとりかかった。卒業後1年で書き上げるつもりが、なかなか書けず結婚後数年経ち、結局母親がバリ島に部屋を借り、そこで書き上げた。ミシェル氏の伝記だと、「え~っ、そんな契約してたのあなた」という感じである。

    最初は、人種問題について独自の視点を述べよう、そこに自身の個人的な逸話も入れて、としているうちに時間が経った。そうして出来上がったものは、私の内なる旅の記録、父を追い求め、アフリカ系アメリカ人としての人生に現実的な意味を求めた青年の心の旅である、とまえがきにある。

    ロースクールのインターンとしてミシェル氏の勤める法律事務所に現れたオバマ氏は、もう出来上がっていて完璧な人間だった、と記している。そして頭の中の許容力がとてつもなくて何でも覚えてしまうらしいのだ、と優秀なミシェル夫人をして驚きの言葉が記されている。そして人種の壁をも超越しているように映った。ミシェル夫人の本では、ハワイで育ったりしたせいでミシェル夫人のような貧しい黒人コミュニティ育ちではないからそれほどの軋轢はなかったのかな、という印象も受けた。

    だが、幼少時から、まさにミシェル夫人と出会う直前までが記されたこの本では、「真っ黒な父と、真っ白な母」、不在の父、母や母の祖父母が語る父の思い出話との間で、一体自分は誰なのか? と自問し苦悩する姿が描かれていた。

    そして大学を卒業し、シカゴでのコミュニティーワーカーを経て、父の地ケニアに行き大勢の親族と出会い、自己の足場ができたように見える。

    ハワイでの幼少時、母の再婚に伴い6歳でインドネシアに渡っての生活、5年生でハワイに戻り今度は祖父母との生活、カリフォルニアとニューヨークでの大学時代、卒業後シカゴでのコミュニティ・ワーカー時代、そしてハーバード・ロースクールに行く決意と、ケニアへの旅が記される。

    高校生の頃、銀行に勤める祖母が普段はバスで行くのに祖父に車で送って行ってと祖父と口論している。ならボクが送るよ、というと祖父はそういう事ではないんだ、という。祖母はバス停で目の前に立った黒人男性が怖かった、というのだ。祖父はそれに怒っていた。

    これはミシェル氏が大学の寮で同室の白人女性の母親が大学に言って娘を別室に移動させた、という事とは異なる。ミシェル氏は確固たる黒人だけの家族とコミュニティがバックにある。が、オバマ氏は、黒と白とで自身の中で分断されているのだ。ニューヨークへのコロンビア大学への編入もすぐ近くに黒人街のある所に住める、という理由があったとある。

    しかしオバマ氏はやっぱり親族の愛を目いっぱい受けていたと感じる。バス停口論での祖父の愛。そしてケニアでも異母兄弟たちも叔母たちも、とても会いたかった、と受け入れてくれる。

    オバマ氏が父と接したのは、10歳の時に1か月だけハワイに滞在した期間。でもその時小学校の先生がケニアに行った事もある人で、父を教室に呼んで皆の前で話をするようにした、というのだ。それを聞いて目の前が真っ暗になったオバマ少年だが、話が終わるとクラスメイトからは、「きみのお父さんてすごいんだね」と言われる。

    オバマ氏の父は優秀だったが、ケニアに帰国後は政府の仕事をしていたが歯に衣着せぬ物言いで、仕事を干され経済的にも困った時期があったようだ。親族の希望の星だったようだ。が、強引でもあり、最後のケニア行きの場面では、姉は父のことを「あのオヤジ」と呼び、「超えるべき存在」だったのかな、強烈な存在感があった人なのかな、と感じた。

    6歳でハワイからインドネシアに行く時、羽田経由で日本に3日滞在し、鎌倉の大仏を見て、山の中の湖を走るフェリーで抹茶アイスを食べた、とある。


    1995年に発表され、2004年に再版。読んだのは2004年版。2つの前書きがある。

    1995発表
    2007.12.13第1刷 2008.12.12第6刷 図書館

    「アメリカン・ビュー」(アメリカ大使館公式マガジン)にバラク・オバマの半生の記事 父との写真あり。10才の時にハワイに来て1か月過ごした時の写真だと思われる。
    https://amview.japan.usembassy.gov/barack-obama/

  • この分厚い本、読み終えました。いやぁ、思っていた以上にオバマさんは素晴らしい方でした。

    適当にテレビを見ている程度の知識では、黒人と白人のハーフで、いい暮らしをして、ハーバードとか出ているので、本当の黒人の低所得層を代表しているわけではない、とかいうイメージでしたが、なんのなんの、そんなイメージ大ウソです。

    お父さんがケニア人、お母さんがアメリカ人。二人は早々に離婚し、お母さんとお母さんの両親にハワイで育てられます。その後、お母さんがインドネシア人と再婚し、ジャカルタで少年時代を過ごしたりします。

    一度だけお父さんがハワイにやってきたときにお父さんに会います。ケニアで成功した立派なお父さん、というイメージ。でも、お父さんはその後交通事故で亡くなってしまいます。

    大人になってアメリカ本土に行き、大学卒業後はいったん有名な情報ベンダーかなんかに就職して経済ニュースを書いたりするのですが、こんなことじゃいかん、と一念発起し、シカゴの黒人低所得者が住むスラムでオーガナイザーという仕事をし始めます。住民の意見をまとめて政治や権力と闘う仕事です。

    自分のルーツについてはずっと悩みを抱えていて、その頃、ケニアに行き、親族たちと過ごし、いろんなことを思います。お父さんは実は成功を収めた後、権力に逆らい、干され、悲惨な目にあっていたことを知ります。

    そしてシカゴに戻り、またオーガナイザーの仕事を続け、ハーバードのロースクールに入ることを決意します。

    そしてハーバードロースクールの雑誌で初の黒人編集長になった頃にこの本を出したのです。

    なんというか、今どき珍しい理想主義者というか、私利私欲を捨てて人のために働ける人なんですよね。そういう人が大統領にまでなったという事実はすごいなぁ・・・。

    今は彼の「合衆国再生」を読んでいます。理想主義者だから一方に偏っているのかと思いきや、左右に偏りすぎて、まるでスポーツのゲームをやっているような今の二大政党政治はよくなくて、両方のいいところを取りながら現実的に国のために役に立つ政策を実現していかなきゃ・・・という考え方のようです。

    なんか、理想的なリーダーのような気がするんだけれど、でも、そういう人って、悪意のある人に足を引っ張られたりするから、そんなもん払いのけて、成功してほしいな・・・と思います。

    久々に興味深い人物です。日本にもこんな人が出てくればいいのですが・・・。

  • 複雑なバックグラウンドに向き合いながら、成長を続ける姿に心を打たれる。後に大統領にまでなるのが信じられないくらい、地道な活動が印象的。

  • オバマさんが上院議員になるまでの自伝

    面白かった。
    正直、オバマさんがどんな人なのか、なーにも知らんかったけど一気に知ってる人感出て勝手に親近感。

    複雑な人種、家庭環境でアイデンティティ追求が困難に満ちてる。
    それでもエネルギーに変えて進んだら今や大統領になったって自伝のその後を思って凄いなあと。
    物事の真髄を見極めようといつも真剣にことに当たり、追求を諦めない人という感じかな?
    We can change がノッチのネタではなくやっと響く言葉に。

    よっぽどの人だと思うけど、それでも一筋縄ではいかない政治の世界は恐ろしいところだ。
    自伝って面白いジャンルなのでは?と思った次第。
    先住民と西洋の軋轢がどの大陸でも私の気になるポイントだったけど、今の世界により大きいインパクトを与えてるっていう観点ではアフリカと西洋なんだなあと。

    あと飛んだ感想だけどハワイ、いいところだなあと。
    オバマさんが何というか世を拗ねた人にならずにすんだのは学生時代を過ごしたハワイの環境が大きそうだと理解した。

    父方の故郷ケニアでの親戚巡りの時の話も興味深かった。
    半分登った黄色い太陽だっけ?ナイジェリアの事を書いた本とまるでおんなじ世界。
    オバマさんのは完全にノンフィクションだからよりリアルにアフリカの空気感感じた。

    マグレブ以南、全く未踏の地のまま旅はしなくなって落ち着いちゃったけど、行ってみたいなあー、、、

  • オバマさんがまだ上院議員になる前の自伝。ハーバード・ロー・レビュー誌で黒人初の編集長の職についた際に書かれたもの。知性の深さの根っこに触れた気がした。彼が何故、政治家を志望したのか、そして何がしたかったのか。今の状況では、彼が本当にやりたかった事ができるなかなか状況ではないのかもしれないが、この本からそのエッセンスを読み取れるだけに、それがとても惜しい。差別を受ける側と、偏見を持つ側の狭間に立ってきた彼の心情は単純ではない。おそらくシンプルに差別を受ける立場であったなら、彼は大統領の地位までは登り詰めていなかったのではないか。自分は何者なのか、どうありたいのかを問い続けた、彼の青年時代の赤裸々な思考と失敗の旅。

  • 第44代アメリカ合衆国大統領の自伝としてよりも、ケニア黒人の父とアメリカ白人の母の間に生まれた33歳の青年の物語として読むべきお話。
    著者が現代の有名政治家であると言うことは、確かに本書に付加価値をもたらしますが、同時に変な色眼鏡もかけさせると言う点で諸刃の剣かも。
    この物語、意外なことに結構面白かったのです。

    第1部「起源」
    バラク少年の母方の祖父母と、彼自身の生い立ちについて。
    いささかやんちゃなところのある青年だった祖父が(チュロキーの血を引く)祖母と出会って結婚し、その奔放さゆえにハワイへ移住。
    二人の間に生まれた娘は、アフリカからの留学生と恋に落ちバラク少年を儲けたが、二年後留学生は故国に帰ってしまう。
    その後、バラク少年の母がインドネシアからの留学生と結婚した事で、彼は実の父親についてほとんど記憶のないまま、幼少時代をインドネシアで暮らすことになる。
    数年後再びハワイに戻り教育を受け始めたバラク少年は、この頃からおのれが黒人であることについて思い悩み始める。

    第2部「シカゴ」
    アメリカ本土のコロンビア大学を卒業したバラク青年は、ふとしたことがきっかけで、貧困の中で生活する黒人たちの為シカゴでオーガナイザー(市民活動家?)として働き始める。
    最初はやる事為す事うまく運ばず失望ばかりだったが、経験を積む内に徐々に成果を得る事ができるようになった彼は、次のステップを目指してハーバード大学へ進む事にする。(※ここではハーバード時代は語られません。)

    第3部「ケニア」
    腹違いの姉オウマよりの連絡から、バラクは自分のルーツである父親の故国ケニアを訪れる。
    そこで彼は、ケニアの現実、そして自分が抱いていた父親へのイメージが、幻想であったことを知る。
    それはある面では失望であったが、彼に新たな強い思いをもたらすものだった。・・・・

    ・・・・と言うわけで。
    バラク青年は、かなり寛大かつさまざまな価値観を持った(持たざるを得なかった)人なんじゃないかと思いましたとさ。
    こんなのを読むと、彼に期待してしまうアメリカ人の気持ちがわかるような気がします。
    しかし、それゆえに彼らからの期待が重すぎて潰れそうな気も。
    彼は魔法使いではないので、どうしたって即効性のある政策は打ち出せないし、貧困階級の環境が劇的に改善される可能性も極めて低いと思うのですが、そうなると期待が大きかった分叩き落しそうなんだよなー。大衆とはそうしたものだ。
    まあ、本書を読む限りでは、オバマさんはかなりいい人だと思うので、願わくばアメリカ合衆国及び世界がよき4年間を送れますことを。
    他人の価値観を理解できる人、そうでなくても理解しようとする人は、日常生活において(残念ながら)あんまり多くはありませんよ・・・・・。

  • オバマ氏の生い立ちからシカゴでコミュニティ・オーガナイザーになるまでの青春時代の本。
    ケニアに父親の親族を訪ねていき、アイデンティティを探る旅でもある。
    極めて現代的なアメリカ人であるオバマ氏のルーツが、どこか複雑でありながらリラックスしたものであることが理解できる。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/5341

  • オバマがどんな政治家なのかを知ろうと思ったけど内容は大統領に当選するまでよりも前の話だった。彼の人間性やバックボーン、黒人ではあるけれどもアフリカでは育ってないことへのアイデンティティの悩みなど。ちょっと長ったらしく感じるところもあるけどまま良い。

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著者プロフィール

アメリカ合州国の第44代大統領。カンザス州生まれの母とケニア生まれの父の間に、ハワイで生まれる。本書のアイデアは、2人のむすめマリアとサーシャと過ごしているときに思いついた。その後大統領に選ばれ、現在は妻のミシェル、むすめたち、愛犬ボーといっしょに首都ワシントンにあるホワイトハウスで暮らしている。

「2011年 『きみたちにおくるうた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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