いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ―有効需要とイノベーションの経済学

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  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478008263

作品紹介・あらすじ

20世紀を代表する経済学の巨人2人。彼らが歩んだ足跡をたどりつつ、その理論に秘められたビジョンを解き明かす。両者を融合した新たな経済理論の可能性とは?そして、「100年に一度の世界経済危機」が深刻化する今、大恐慌の時代を生きた2人が我々に示す指針とは。

感想・レビュー・書評

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  • ・ケインズもシュンペーターも障害に超一流の仕事をたくさん残した。しかしケインズのビジョンは、主著である『雇用・利子・貨幣の一般理論』で提示された「有効需要の理論」である。『一般理論』なくしてケインズは無い。
    一国経済全体の活動水準は、生産要素がどれだけあるとか、技術水準がどれくらいであるかといった供給側(サプライ・サイド)ではなく、需要の大きさで決まる。需要が少なければ生産水準は低くなる。言い換えれば不況は需要不足によって起きる。これが「有効需要の理論」のエッセンスである。

    ・イノベーションは、たしかに「非連続的な変化」だ。シュンペーターは、このことを「馬車をいくら繋いでも鉄道にはならない」という巧みな表現で説明した。

    ・「購買力平価」という言葉は今日二重の意味で用いられる。一つは貿易財の価格について国際的な一物一価を成り立たせる「均衡レート」。これは現実の為替レートの長期的アンカーと言ってもよい。もう一つは一般物価水準をつりあわせるような為替レート。
    …後者の意味での(東京とニューヨークの人々の暮らしを比較するような)「購買力平価」が1ドル=166円なのに、現実の為替レートは1ドル=100円なのは円が大幅に過大に評価されている、といった主張が誤りであることは理解していただけたと思う。

    →為替と比較して考える時は貿易財の価格でのみ考えるべきで、非貿易財は別に考える必要があるとの事。
    ネットで少し調べてみると、例えば有名なビックマック指数は牛肉などの輸入関税や、提供する際の人件費や競合圧力などで国により偏りが考えられる指標との事。一応、2007年のビックマック平価は1ドル121円となる。OECDが2005年のデータで算出した貿易財を基本にした価格だと1ドル150円だそうなので、いずれにしても、80円代などは安すぎたのかな。

    ・インフレは悪いが、デフレは悪くないのではないか。こう考える人、エコノミストは当時もたくさんいたようだ。今でも「よいデフレ」論を唱える人がいるが、ケインズは「デフレは悪い」と断言する。
    そもそも景気循環が問題となるのもインフレ局面ではなく、デフレ局面がもたらす弊害によるのである。たしかにインフレの局面では、労働者から企業へ所得が移転される。しかしその間に行われる資本蓄積が経済全体にもたらす利益は、所得分配上の悪影響をはるかに上回る。資本蓄積がもたらす利益は労働者にも及ぶし、分配上の歪みは税制を通して是正すればよい。これとは逆にデフレは社会全体にマイナスの影響を与える。

  • 昨年の日経による、「経済学者に聞いた今年のベストセラー」みたいな企画で上位だったため、読んでみた。

    タイトルは「いまこそ、~~学べ」となっているが、
    金融危機後の世界経済に対して、二人の思想を用いると、
    どういったアイディアが出てくるかという点の議論は意外と少なかった。

    ただ、それを補って余りある、同い年生まれの
    ケインズとシュンペーター両名の人生をたどりながら、
    それぞれの思想を解説していく手法は読んでいて素直に面白かった。
    経済の知識が多少いるかもしれないが、
    (自分はそこまであるとは思わないけど)なんとかなるレベル。

    最終章 二人の遺したもの (タイトルからすると、ここがもっと分厚い内容かとおもってた・・・)より、
    「昔からあるモノやサービスに対する需要は必ず飽和する。」この点は両者とも一致している。
    ここからが違う。
    「ケインズは需要不足は与えられた条件だとして、政府による政策を考えた。」
    「シュンペーターは、需要が飽和したモノやサービスに代わって新しいモノを作り出すことーすなわちイノベーションこそが資本主義経済における企業あるいは企業家の役割なのだと説いた。」
    これは接点がないということではない。
    二人の思想をつないでみると、
    「有効需要の不足こそがマクロ経済の成長を阻害する。そういった不足を解消するイノベーション(需要創出型、Demand-Creating Innovation)こそがまさに、資本主義経済の根底を支えるものではないか。」
    という主張が出来るという論調。詳細は載っていないww

    この話をもっとほれればいいのに。でも、単純に読み物として面白かった。

    以下、シュンペーターの考えの中での、「銀行家の重要性」についてのメモ。
    新結合(イノベーションのこと)は、言ってしまえば「ベンチャー」
    だからこそ、資金の出し手が必要。それが銀行家。
    「銀行家は『新結合の遂行を可能にし、いわば国民経済の名において新結合を遂行する全権能を与えるのである。彼は交換経済の監督者である』」

  • オーディオブックで聴取。

  • 第一次世界大戦に翻弄された二人の経済学者の話。わかりやすく解説。戦争で覇権を奪われた英国、戦争で帝国が崩壊したオーストラリア。
    企業家のイノベーションの動機とは、「自己の帝国建設の夢想と意志」、「勝利への意志、成功への意欲」、「創造の喜び」である。

  • リーマンショック以降、再評価が進んだケインズ経済学と、ケインズを強烈に批判し、イノベーションの概念を中心に据えたシュンペーター。二人の奇跡を辿り、統合の道を探る。結論のオリジナリティはいかに?

  • ケインズとシュンペーターについてそれぞれ時代背景も含めた思想を辿ったほぼエッセイ集。ケインズのイギリス(=低成長の日本)、シュンペーターのドイツ・オーストリア(=高成長の日本)をそれぞれの研究の前提として認識している視点になるほど、と思わされた。

  • 吉川洋 「いまこそ ケインズ と シュンペーター に学べ 」著者の結論は 資本主義経済の重要な核は ケインズの有効需要、シュンペーターのイノベーションの統合概念(需要創出型のイノベーション)

    ケインズ=有効需要の理論
    *経済の活動水準は需要により決まる=不況は需要不足により起こる
    *投資の不安定性が資本主義経済の変動要因
    *金融投資は 美人投票と同じ(自分が美人と感じる人に投票するのでなく、みんなが美人と感じる人に投票する)

    シュンペーター=イノベーション、創造的破壊
    *資本主義の本質=企業家によるイノベーションに基づくダイナミズム→不況はイノベーションがもたらす必然

    「不況なくして 経済発展なし」

  • シュンペーターとケインズの考えがわかる。
    シュンペーターが経済の発展はイノベーションにあるとしたのに対して、ケインズは一貫して完全雇用を生み出すために、有効需要は政府が作り出さなければいけのいとする。
    現代の企業活動を考える上で、また投資を考える上で参考になる。

  • 【要約】


    【ノート】

  • 「いまこそ、○○○に学べ」というとき、
    ○○○に入る人物は、ごまんといるのだろう。
    学者や思想家、政治家から、芸術家、スポーツ選手に至るまで、
    多くの偉人たちの膨大な知識の蓄積の上に僕たちは生きていて、
    こうしている間にも、新たな知が生み出されている。

    それらの知識を、たとえGoogleがすべて電子化したとしても、
    一人の人間がそれらすべてを把握することは不可能だろう。

    そのような中では、
    純粋にまったく新たなアイディアや知識というものはあり得ず、
    どんなに画期的な考えであっても、すでに誰かがどこかで
    言ったり書いたりしたものの焼き直しに過ぎないという人もいる。

    僕にはそのあたりの話はよくわからないけれど、
    少なくとも昨今の金融危機〜世界同時不況という時代にあって、
    「マクロ経済」なるものから目をそらすことはできない
    という気はしていた。

    古典と呼ばれる知識を現在の環境に当てはめて考えることは
    単なる懐古主義とは違った意義があるはずだ。
    とはいえ、すべての古典に目を通すのも、正直しんどい。
    そんなわけで、本書のような内容は非常にありがたい。
    「いまこそ学べシリーズ」として
    続編を出してもいいのではないかと思ったりする。

    しかも本書が優れているのは、
    単に読みにくい古典をわかりやすく解説するだけでなく、
    当時の時代背景も含めた生々しい「人としての営み」が
    垣間見える点と、タイトルのとおり、昨今の金融危機や、
    日本の80年代のバブル崩壊など、
    近年の経済環境を俯瞰した上で、
    これまで対立概念として捉えられてきた(らしい)
    ケインズとシュンペーターの理論を統合化し、
    今、そしてこれからの経済を考えるための示唆として
    再構築している点にある。

    「有効需要の不足」が不況の原因であり、
    積極的な財政出動がその解決策であると説くケインズと、
    企業家精神によるイノベーション(新結合)こそが、
    不況脱出の鍵であると主張するシュンペーター。

    著者は両者の主張を統合することこそが、
    現状の世界的不況に対する処方箋になると述べ、
    「需要創出型イノベーション」を提唱する。

    これはまさに「いまこそ」考えなければならない命題であり、
    (ケインジアンとして有名な)著者とは異なる選択肢を
    自分自身で考えてみてもおもしろいかもしれない。

    写真も随所に入っていて、文章として読みやすいことも
    本書の魅力の一つである。学生時代にこんな本があったら・・・
    と思う人も多いかもしれない。

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