技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか―画期的な新製品が惨敗する理由

著者 :
  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478009260

作品紹介・あらすじ

技術だけで勝つ時代ではない。計画的に創られるイノベーションの競争モデル、インテル・インサイド型、アップル・アウトサイド型、勝利の方程式を解き明かす。

感想・レビュー・書評

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  • 日本が技術力で勝っているのになぜ負けるのか? ずっと疑問であった。 太平洋戦争中と同じ事が起こっている。 真珠湾攻撃という海から空への転換期を日本がイノベーションしたにも係わらず、その成功と失敗を見過ごしてしまった。 究極は戦略性の無さ、先見性の無さに尽きるが、今後の日本には、知財に対するマネージメントが必要である。

  • 会社のある部長さんが推薦していたので、読んでみました。とっても参考になりました。

    要は日本が90年代破竹の勢いで世界市場を席捲していた時に、欧米諸国はただ辛酸を嘗めていた訳ではなく、その次のビジネスの仕組みを着実に整えていた。日本はそこに胡坐をかいて座っていたことで、すっかり儲ける仕組みが変わってしまった現在でも、過去の成功体験にすがりついて、「今が踏ん張り時」と消耗戦を演じている・・・。
    確かに、データを見ても身の回りを見ても明らか。過去電子機器は日本のシェア8割以上あったはずなのに、今は10%前後をうろうろ。自分の周りを見回しても、日本製品の割合が明らかに減っている。
    iPhoneにACERのモバイルPC、特に感じるのがそれらの性能が格段に高まっていること。iPhoneは言うまでも無く、ACERのPCも日本製品以上に軽くて電池の持ちも良いし・・・。

    じゃあ何故欧米企業が躍進したのか?どんな仕組みを作ったのか?

    その答えは「急所技術を抑え」て作った「インテル・インサイド」と「アップル・アウトサイド」型ビジネスの構築。

    ご存知インテルは、パソコンの頭脳とも言うべきCPUを作っている会社で、今やほとんどのPCがIntelのチップを使ってます。CMでおなじみですね。
    インテルが行ったのが、”急所技術”として中心となる演算装置と、その外部とをつなぐ通信装置(PCIバス)を徹底的に開発した。そしてPCIバスの内部の演算装置はブラックボックスとして内側に抱え込み、その外側は国際標準で規格化して完全に公開した。
    公開された技術は台湾のメーカーによって安価で大量に生産され、世の中のパソコンはその規格と、安い台湾製品を使わざるを得なくなり、その規格に合ったCPUはインテルしか作れないのでIntelが市場を独占できる、という構図。

    ここで重要なのが、急所技術以外は標準化、オープン化して他社の参入を促し、投資リスクを抑えつつ市場の拡大を狙えること。新規技術は「死の谷」といって、普及して市場が確立するまで時間もお金もかかる=ディフュージョンの過程。ここを他社と分業しているのだ。

    アップルもしかり。MACにしてもiPhoneやiPodにしても、iOSというOSを公開することで、アップルはiTunesからの莫大なソフト収益を得ることができている。

    大体こんなとこで、後は後は知財の仕組みが結構なボリュームがありましたが、難しめなので軽く読み進めました。

    今後日本の技術を語っていく上での参考書にしたいと思います~

  • 返却期限が来たので全般流し読み。

    かなり端折ると...どこで主導権を握り儲けるか、儲けのしくみをいかに維持するのかという点の構想力が日本企業の弱さであり、オープンイノベーション【分業・協業の推進】と知財戦略【どこまで何を公開し、秘匿するか】とビジネスモデル【儲ける箇所・主導権を握れる箇所の維持】で実現しましょう、という話か。

    Q: 技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか
    A:
    ・既存モデルのインプルーブメント(改善)を得意としてきたため、競争モデルを変えるイノベーション(発展)が起こり辛い
    ・【事業のための技術<技術起点の事業開発】の発想であり、独自技術開発の内製化のこだわり、イノベーションが起こせない
    ・開発した技術の市場導入により初期は大きなシェアを得、標準となるが、普及段階以降のイニシアティブを取る施策の不備により、主に新興国企業の低価格品に競合できていない

  • 2023/1/12

  • これからの日本で知財戦略をどう事業戦略に結び付けるのかよく分かる本であった。研究開発戦略と知財戦略と事業戦略の一体化、リスクミニマムとチャンスマキシマム、オープン(権利化)クロース(秘匿化)戦略、インターフェースのプロトコル、インベンションをイノベーションに繋げるためにはディフュージョンが必要、事業の軍師が必要とのことで特許が何のためにどういう使われ方がよく分かった良書であった。今後より活かしていきたい。

  • イノベーション論。技術力だけではなく、ビジネスモデルと知財マネジメントの重要性を説く。
    とくに知財戦略を詳しく説明している。

    量的成長と発展の違いを区別すること。
    発展とは既存モデルとは全く異なる新規モデルへの不連続的移行。(オタマジャクシがカエルに移行)
    発展はすなわちイノベーション。「新規性」「進歩性」を備えたもの。

    同種モデル間競争において競争優位な者は、常に他に先駆けて異種モデルへの移行を成功させれば、その優位性を保持し続けることができるかもしれないこと。
    →「パルミサーノ・レポート」で謳われた根底に潜む考え。常にモデルを創新し続けるものが生き残る。
    (イノベーションのジレンマを超える方法。最近のアップルの戦略。一昔前富士フイルムも同様の戦略で生き残ってきた。)

    内部は独自技術・摺り合わせよってブラックボックス化、外部はオープンに組み合わせで構成するように仕掛けて、インターフェースのプロトコルは標準化。このモデルが成功例多い。インテル、シマノ。

    NIEs/BRICsの市場をどう取り込むか。彼らとの国際分業の戦略や市場として見たときの戦略。
    欧米諸国の企業はすでに分業し、市場としても取り込んでいる。

    三位一体経営。事業戦略、研究開発戦略、知財戦略の要諦を押さえる

    三位一体モデル
    1.製品特性(アーキテクチャー)に沿った急所技術の開発
    2.「市場の拡大」と「収益確保」を同時達成するビジネスモデルの構築
    3.独自技術の権利かと秘匿か、公開と条件付きライセンス、標準化オープンなどを使い分ける知財マネジメントの展開

    インテルも、IBMも、アップルも、どれも徹底的に負けた経験を持っている。負けた悔しさの中で徹底的に議論し、考え、そして「プロイノベーション」を主導するに至ったように見える。つまり、試行錯誤と学習の歴史を持っている。
    日本人は負けたとき、徹底的に解明することをいやがるが、ちゃんと振り返り、気づき、学び、考えることが重要。(水に流す前に、真摯に振り返る)
    プロフェッショナルに求められるのは、あの手、この手の戦略的選択肢を豊富に持つこと。

  • 10年も前の本であり、事例に古めのものがあるものの、内容は今でも納得して読め、とすると10年前に著者が懸念していたことが全く変わっていない、ということになる。事業をどう組み立てるのか、どう周り(他の会社)を巻き込んで、イニシアチブを取るのか、もっと前に読めば良かった、が、今からでも遅くはない、よく考えてみよう、と思えた。

  • vol.94
    画期的な新製品が惨敗する本当の理由とは?
    http://www.shirayu.com/letter/2010/000185.html

  • -

  • 戦術では強いが、戦略では弱い日本企業の問題を見事に説明する。経営と正面から向き合うことを怠った日本企業の問題がここに来ての一気噴出、第2の敗戦と呼ばれるこの状況は、思考的構造不況なのだ。この構造は、「すり合わせ指向」vs「モジュール指向」と言い換えても良い。 技術の世界がすり合わせから、モジュールの組み合わせに変わっているにもかかわらず、相も変わらずすり合わせでもの作りにいそしむ日本企業の姿は、第二次世界大戦の日本陸軍とよく似ていると思うのは、この著者だけではあるまい。

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