映画館の入場料金は、なぜ1800円なのか?

著者 :
  • ダイヤモンド社
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本棚登録 : 77
レビュー : 19
  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478011348

作品紹介・あらすじ

シネコン飽和状態、邦画バブルの崩壊、3D映画の台頭…行き着く先は値上げか?値下げか?たった10年間で2.86倍にもなった映画料金。世界一高額な"1800円"は、誰が、どのように決めているのか。

感想・レビュー・書評

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  • 映画を観る観賞料金に入場税が150%もかけられていた時代や、それが撤廃されたはずなのに観賞料金がどんどんと値上げされていったことには驚いた。
    観賞料金と映画人口、興業収入の年別比較が見にくかったので、そこだけでも横書きの表にすれば良かったのではと思う。
    著者の主張としては、ダンピング的に割引料金を乱発するのではなく、そもそもの基本料金を下げたり、映画館自体のホスピタリティを高めるほうが大事だといったところ。消費者向けというより映画業界向けの提言のような。

  • 年ごとの比較が数字ではなくグラフなど視覚からとらえやすかったら、もう少し面白く読めたと思う。

  •  タイトル通り、何故映画館の入場料金は1800円なのかを詳しく調べた本。
     私は年に、ほんの数回しか映画館に行かないような人間だが、その理由の一つに「映画一本を観るのに2000近いお金を払いたくない」というものがある。

    一章
     配給と興行が同一資本で経営(例:東宝はTOHOシネマズという興行を所有している)されており、資金を投入するばかりで回収できない制作サイドは不満を持っていることや、映画は通常の物販のやり取りのように卸価格が一定でなく、市場動向によって変動する(そのため入場料を引き下げると配給会社も被害を被る)。そのため収益性の予測を立てにくい。
     にも関わらず、料金を引き下げてまで上映しているのは、シネコン同士の競争もあるが、それ以上に本来サービス業であるにも関わらず、館内のサービス(どの席でもスクリーンが見られるなど)を向上させず、「利益が出ているのは映画の質のみならず、自社の映画館が満足を与えたのだ」という奢りが現状を生み、今更ながら取り返そうとしている、と推測している。

    二章
     映画業界は金が飛び交う綺羅びやかな世界、と思われがちだが、1999年には約8000万円あった1スクリーンあたりの興行収入の平均額は、2008年には6000万円弱にまで落ち込んでいる。映画館を支える収入源にはポップコーンを始めとする飲食物(安い原価で多くの利益を望める)、シネアド(上映前の宣伝)、ショップの売上(パンフレットなど)があるが、肝心の来場者数が伸びないので収入が上がらない。
     ネックになっているものに人件費(安い時給のために人が集まらない、繁忙期と閑散時の差が大きい)、家賃・テナント料(「自分たちが入らないと他者が来る」という危機感から無理な契約をしてしまった)などがある。
     この悲惨な状況に陥ったのも、作品の売上にのみ頼って日々のサービスを徹底せず、外へと情報を発信していかなかった事が原因だという(筆者曰く「最初のお客様は配給会社が連れてくる。二回目からのお客様は映画館が連れてこなければならない」)。

    三章
     筆者は、日本の映画業界はどこか他力本願なところがあり(「美味い話ないか?」と聞いてくるそうだ)、料金を上げる際にも説明が不明瞭だという不満をもっている。が、その背景には、かつて入場税という150%もの課税(参考:1949年時点での割合はアメリカ20%、イギリス40%)がなされていたことで国への不信感が募り、排他的な基質を持つようになったのではと、多少同情しながら綴っている。
     入場税の圧迫から徐々に解放されたり、料金統制の撤廃といういい流れが出来たところに、テレビの登場で大打撃をうける。これを改善しようと、サービスの向上では無く料金の引き上げに走り、ついには6〜70年の10年間で2.86倍にまで入場料金が増えていき、その傾向は続いていった。その事が今の国民からの不信感に繋がっていったのだと述べている。

    四章
     消費税導入に伴い再び料金を上げるという失態(筆者は、この時全館一斉に値上げをしたことに不信感を抱いている)を犯してはいるものの、差別化を図ろうと「立ち見禁止」を導入したりと、策を講じていた。
     そのような、従来の法(90年代だというのに、なんと30年以上前の法が適用されていた)を改正して映画館を作りやすくなったところへ、ワーナー・マイカル・シネマズが日本進出を果たし、ゆったりとした座席や立体音響といった、素晴らしいサービスと幅広い割引料金システムを提供し、多くの支持を得た。その一方で「映画は割引料金で観るもの」というイメージが浸透していった。

    五章
     割引料金の導入により、確かに以前と比べると活気づいていたが、その最中の2003年10月8日に、公正取引委員会がフォックス・ジャパンに対して「興行側に入場料の制限を行っている」という、通称「スターウォーズ事件」が起きており、業界を震撼させた。
     何とか状況を打開しようと、「映画館に行こう!」委員会という組織を立ち上げ、「夫婦50割引」を始めとするキャンペーンを行い、少しでもリピーターを増やそうと努めている。しかし、映画館に来る人の中には、幼い頃に映画に慣れ親しんだ老人の方が多く、来場者の高齢化が進んでおり、業界は若者を獲得できる面白い映画を作れていないのではと、推測している(筆者は松岡功元東宝会長の発言から、業界の無為無策ぶりを指摘している)。

    最終章
     ダイヤモンド社のアンケートによると、回答者(297名)のうち9割が1800円という入場料金を「高い」とおもっており、かつ半数が適正料金は「1000〜1300円」、「映画館に期待するものは設備と上映法」だと回答している。この事を踏まえ、再度「映画館が今すべきことは、顧客満足を提供し、その代償として金銭をいただくという姿勢を取り戻さなければならない」と提言している。上映前に放映される「映画泥棒」についても、お金を払っている人を泥棒呼ばわりし業界の主張を一方的に押し付けるようなことはするな、と述べている(個人的にはあの踊りは好きだが)。
     現在業界は卸価格の設定を検討しているようで、今後実施されれば、「配給会社は自分のことしか考えていない」と批判されたり、料金が上がることが懸念されている。配給会社の調査では、1800円のままの料金で入場する人は全体の18%という結果が出ており、果たして効果が期待できるのだろうか。今後の動向が気になる。

     この本について、「筆者の、今の料金価格に対するスタンスがよく分からない」というレビューがあった。正直私もそう思ったが、業界と密接した生活を送っているだけに、アンビバレントな感情を抱いているのではないかと勝手に思うことにした。
     何より最終章の最後の場面での、「来てくれた人への精一杯のサービスを全面に出すスタッフ」への、感謝の気持ちにこそ1800円を支払う価値があるのだ、と考えているのだろうから。


    自分用キーワード
    製作委員会(複数の出資者を募り、一本の映画から発生する諸権利をシェアしている。この中心は幹事会社と呼ばれる) P&A(Print and advertising:上映用プリントの作成料と宣伝費を優先的に徴収すること) 前売り券(発行しているのは配給会社。映画館側にはあまり還元されない) シアターマーケティング みゆき座(知的な映画を上映していた。筆者曰く「高い飲食物や見難いスクリーンなど、充分なサービスという面で明らかに失格」) チェリーピッカー 全国興行生活衛生同業組合連合会(全興連:映画館など興行場を経営する会社が加盟) 映画『君を忘れない』(前売り1000円、当日1200円という当時としては安い値段で放映し、話題になった) 『S.W.A.T.』(「映画の魅力を早くから認識してもらうため」、中学一年生の料金を無料にした) ODS(スクリーンの利用をサッカーの生中継や演劇の上映に利用するイベント上映のこと)  

  • 一言で言い表すならば、学生のレポートのよう。
    データの数字を追っているばかりで、主張や考察がわかりづらい。
    ただ、映画の料金決定の仕組みや収益構造を知ることができた点では収穫だった。
    あと、内輪の論理に流されず、物事を多角的、客観的に考察すべきという教訓も与えてくれたように思う。

  • はい☆わ1つ。
    久々のノンフィクション本。なにを隠そう、読みたいけど今すぐ読める小説本が手元から姿を消してしまったのだ。
    そもそも映画は観ない。映画見る時間が有ったら本読んでる。ではなぜこのような本を読んでしまったかというと、映画は観ないけど料金が1800円だということは知っていて、めちゃくちゃ高いのねわしゃ関係ないけど、とか思っていたからだと思う。
    でどうかというと、まあこういう題名にちょっと惹かれたけど、どこの誰が書いたのかわからない本はやはりダメね。
    「表」にすりゃいいデータの類(入場者数とか料金とか収益の年ごとの推移)をだらだらと縦書きのまま連ねて、挙句の果てにそれを読み上げるがごときの解説を加えている。わかりますこの意味。まあ万一読めばわかるのだけど、まあ、読まん方がいいか。
    ますます映画館へ映画を観には行かなくなる結果を招く哀しい本でした。おしまい。

  • 筆者が言う様に、大半の読者は普通の映画料金が1800円というのは高いと感じるはず。皆が高いと思う料金が何故定着してしまったのか。日本の映画の流通の仕組み(製作、配給、興行に分かれる)から、映画館の歴史、関連する法律・税金、映画人口や興行収入のデータなど、様々な視点から映画の価格が1800円となった経緯を追った本。

    外資系シネコンをきっかけとしたサービス品質の見直しなどは、映画館に一昔前から通っていた人なら納得すると思う。昔の映画館は本当に「見せてやる」といった姿勢の所が多かった。

    複雑な事情や営業戦略の失敗など絡み合って今の定価1800円(実際は割引価格で見る人がほとんど)に至る経緯は興味深く読み進むことができた。色々な裏話があるなかでも、過去、映画の興行に100%以上の税金が掛かっていたという事実には驚いた。

  • 映画業界の問題点が明らかにされていて、あまり詳しい知識を持っていない私にとってはとても勉強になった。ただ、映画業界の歴史を追いながら、ただ批判的な意見を述べている印象がある。著者自身の独自の考えをもっと盛り込んでも良かったのではないかと思う。

  • 映画には詳しくないのですが、タイトルにひかれて読んでみました。
    タイトルどおり、現在の映画館の入場料金が1800円である理由とか、今までの経緯とかが、わかりやすく書かれていて、面白かったです。

  • 閉鎖的な業界ではあるんだよな~。邦画メーカーは特に。

  • 歴史としての映画館と入場料金の戦略をよく描けている。
    作者がスタンスをとれてないという悪評もあるなか、そのおかげで全体のいろんな論拠が知れてよかったと私は思う。

    製作・配給・興行のパワーバランスも概観できてためになった、あえて言うならば、時代によって配給の料金への権限が弱まっているのであれば、新たなバリューチェーインの概観も提示していただきたかった。
    複数の映画協会が作った「映画に行こう」協会のなかで、どの協会がどんな立場を代表し、それぞれの会員の数/実際の力はどうなのかも知りたい。

    国家と映画の関係に、思わず涙ぐんでしまったのは、多分偏った視点で映画を擁護しすぎている関係であるが、それでも今後は映画の発展を祈るだけである。現在の行政と映画というメディアは、いかに絡み合っていくのか。

    メディアとしての映画、出版、雑誌、なんでもからんでいけたら素敵なのに。アップリンクみたいに。

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