免疫の反逆

  • ダイヤモンド社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478013380

作品紹介・あらすじ

化学物質が免疫細胞を狂わせた?いまや先進国で12人に1人が発病する現代病。本来、人の体を守る細胞がなぜ人を傷つけるのか。その発症の要因を探求する迫真の科学ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 著者は自己免疫疾患のひとつであるギランバレー症候群にかかり全身の筋肉が麻痺するという症状に襲われた経験をきっかけに、自己免疫疾患について調べるようになったのが本書を書いた動機だと語る。

    米国では自己免疫疾患の罹患者が増加しているという。米国がん研究所は1900年代から癌の統計を調べだしたが、自己免疫疾患については病気としての認識の遅れもありそうした調査は殆ど手付かず90年台に入りようやく調査が開始されたばかりだという。とは云うものの、国立衛生研究所の調査によれば自己疾患と言われるものの患者数を集計するとなんと2350万人で、米国の12人に一人が該当するという。患者数の増加は米国だけではなく欧州でも日本などの先進国でも共通しており、発生地域からして別名「西洋病」とも言われているという。

    その急増の原因は先天的なものというよりは後天的な環境誘因があることは多くの研究であきらかになっており、取分け我々の日常生活に欠かすことの出来ない化学物質・重金属・薬品などの産業副産物が免疫細胞との相互作用により免疫機能を狂わせていると思われる間接証拠も数多い。つまり原因となるべき化学物質は無数にあり特定するのは不可能であるし、ラットの免疫反応試験がそのまま人間に当てはまる訳ではないので決定的な証拠は無いと云う意味だ。

    更に問題はこうした自己免疫疾患の患者数が癌に匹敵するほど増えているのにも関わらず、自己免疫疾患の病名を知っている人は少なく、研究費は癌に比べると余りにも小さいことだという。

    なんとも暗澹たる現代病とも言うべき自己免疫疾患の増加問題であると共に、その原因を取り除こうとしても殆ど不可能と思われるほどの多種多様の化学物質のい恩恵を受ける事なしでは維持できない我々の社会だ。ある意味では原発よりも性質が悪い話かもしれない。

    が、しかしである。化学物質の影響自体を否定するつもりは無いものの、自己免疫疾患と言われる患者数が異常に多いような気がする。米国人の12人に1人の割合は余りにも多すぎないだろうか?つまり患者数が極めて多いというのは、「疾患」の基準がおかしいのかもしれないとも疑いたくなる。例えば肥満(メタボ)、高血圧そしてうつ病の患者数が急増しているのも薬を売ろうとしている製薬業界の意を受けている医療業界の基準見直しがきっかけと云う説も根強いようだし、少しばかり割り引いて読む必要があるかも知れない。

    要するに自己免疫疾患を鍵にした「沈黙の春」(レイチェル・カーソン)、「奪われし未来」(シーア・ コルボーンら)の焼き直しという感じだ。

    参考までに自己免疫疾患の主たる病名を挙げておくと:ギランバレー症候群、APS(ねばねば血液症候群)、多発性硬化症、メニエール病、ループス、炎症性大腸疾患、クローン病、シェーグレン症候群、1型糖尿病、血管炎、関節リウマチ、尋常性白斑、溶血性貧血などなど100以上にも上る。

  • 図書館の返却棚で見つけて読んでみた。
    自己免疫疾患が急増しているという現実がわかった。

  • 医学

  • ページ数はあるが、軽い読み物を読むようにあっさり読み終えることができる。
    たとえ医療従事者が書くものであっても、どうしても一視点に過ぎず何らかの偏りや無意識的な脚色等が混ざるので鵜呑みはよくない。
    この本も、意図はわかるが首をかしげたくなる用語の使い方や内容が書かれていたので、鵜呑みはよくない。この本で知ったことを人に話す前に、きちんと専門書等を複数確認して補強しないと、不安を煽るだけのデマになりかねないと思った。

  • 自己免疫疾患と言うのはあまり知らなかったがアメリカでは患者数2350万人だそうで作者もその一人である。ちなみに日本では最も多い関節リウマチの患者数が人口の1%程度。
    本人が罹患していることも有り語り口はかなり熱く、時々やや暴走気味にも見える。また、化学的な常識からするとっやや疑問符がつくところもあったのがノンフィクションとしては少し残念。
    疾患の原因は遺伝が30%、環境因が70%と言うのが研究者の推定だそうで本書では化学物質の増加が原因であるといろいろな事例を紹介している。現時点では有力な仮説と言うところで確たる証拠はなさそうなのだが。

    あらゆる化学物質が自己免疫疾患の原因の様な書き方なのだが紹介されている中にも元々自然界に存在するものが多い。例えば一時期話題になったダイオキシンも本書にも触れられているが山火事や野焼きなどで増加する。ダイオキシン自体は昔からそこらへんにも有るので、中でも特定のものは毒性が強く、後は摂取する量の問題になる。

    天然物がよく、いわゆる化学物質が悪いと言う対立で書かれてるあたり化学屋としては賛成できないところ。天然物も化学物質であることに変わりはなく、あらゆる化学物質、例えば水、酸素なども過剰摂取すると害になる。また物によっては摂取量が少なすぎるのも害になるというのが基本だと思う。しかし、特定の物質が免疫系に対して過剰反応を起こさせやすいと言うのは説得力の高いアイデアなのでもっと研究が進むのを待ちたい。例えば花粉症のかかりやすさがどういう遺伝子やストレスや花粉以外の化学物質と関係するかであれば多くの人が興味を持つだろうし自己免疫疾患もアレルギーも免疫の過剰反応と言うところでは似た様な機構で起こっているはずだから。

    医者もなかなか診断が難しいらしいのでこういう疾患が有ると知っておくのは意味が有りそうだ。
    ついでに日本での自己免疫疾患の調査は難病情報センターと言うところでやっていた。
    http://www.nanbyou.or.jp/

  • ひと昔前、環境ホルモンが騒がれていたのを思い出した。PCB、農薬などの化学物質が血液中に蓄積し、自己免疫疾患の原因となっていることは知らなかった。米国では12人に1人が発病しているという。現代人(特にお母さんがた) 必読と思います。読み物としても迫力がありました。
     そういえば、最近はジクロロプロパンと胆管癌の関連も報道されてるし、もっと身の回りの化学物質に注意を払う必要があるかもしれない。

  • 自己免疫疾患が増えている。その原因を環境中にあふれる化学物質と重金属ではないかとする。今や癌患者と同じくらいに患者は増えているのに研究に充てられる予算が少なく、治療や医学教育が遅れている。患者は病気に詳しい医師を捜し、有機栽培の野菜を中心にした食生活と質の高いサプリメント、ストレス少ない生活を送ることが望ましいのだが…

    女性ホルモンの影響が大きいので患者は女性が多い。

    人体の免疫システムは進化の長い時間をかけて実に精妙に出来ている。薬で暴走を止めようとすると思わぬところに副反応が出る。


    軍事基地では重金属・有機溶剤をたくさん使う。本国で垂れ流しているなら属国扱いのわが国ではどうなんだろうかかなり気になった。

    シリアル類にはちょっとしたチョコレートバーと同じくらいに砂糖が使われているそうだ。

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著者プロフィール

サイエンジャーナリスト。著書に2016年Books for a Better Life賞の最終選考に残った『小児期トラウマがもたらす病』(パンローリング)と、『The Last Best Cure』(未邦訳)、『免疫の反逆』(ダイヤモンド社)などがある。免疫学分野における執筆活動の功績に対し2012年AESKU賞、2010年National Health Information賞(保健分野における優秀な雑誌記事に贈られる)を受賞。タイム誌やワシントンポスト紙をはじめとする多数の新聞・雑誌に寄稿している。

「2022年 『脳のなかの天使と刺客』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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