- Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
- / ISBN・EAN: 9784478013496
作品紹介・あらすじ
急速に甦ったアメリカ金融業と未来を開く先端IT産業。巨額の経済対策でバブルを起こしつつ急上昇する中国。その一方で、世界の経済回復に完全に乗り遅れた日本。このままでは「失われる15年」を繰り返すことになる!日本経済の課題と今なすべき戦略は何か。
感想・レビュー・書評
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ポイントを幾つかまとめてみると…。
1. 外需依存の日本経済は、新興国よりも米国消費者への依存が高く、回復までには相当の時間がかかる → 住宅ローンを担保にバブルを形成した米国の消費は完全には戻らない。つまり輸出主導の景気回復は実現困難
2. 新興国向けの輸出は、新興国の中間層の平均所得の低さから、廉価品にならざるを得ない。さらに、新興国企業との価格競争が待っているから、収益性が得られない → さらに日本人の賃金が下がることになる
3. 自動車を中心とした産業構造は、日米ともに既に過去のものとなり、米国のIT産業に見るような創造的な商品やサービスが必要、そして内需に頼っていく必要がある → 政治、経団連重視の体制、企業の発想転換が必要
4. 過去の円安誘導と金融緩和は、輸出産業を延命するという政策の域を出ない。結果として、諸外国と比べ収益性が低い、過剰設備を抱えた製造業を産んだ → 過剰設備を減らす補助と財政政策を
5. 内需主導型の経済に移行するためには、産業政策に加え、既に巨額の所得収支を計上している対外資産の運用を効果的にする必要 → 資産の運用力向上が課題
6. バラマキ景気対策は雇用も産業も産み出していないどころか、消費にも回っていない → 介護などの人手が足りない産業への補助など、最終的に雇用に結びつく使い方をすべき
企業が、そして経済が発展するには「イノベーションが必要」という論には反対はないと思いますが、そのイノベーションは日本からは出ていないのではないか?という指摘が根底にはあるようです。勿論、青色LEDなどの良い例はある。けれども、日本のGDP、ピーク時では年率で566兆円(2008年1-3月期)の経済全体で物事を見るならば、今の多くの大企業や政策がそうした結果を出せていない、ことになります。
既に工業化の成長期に入っている中国などを見れば、日本の製造業がどこで付加価値を出さないと勝てないか、が想像されてくる。依然として、米国の平均的な所得水準は、しばらくの間は中国やインドと比べて高いので、日本や欧州を含めた現先進国経済の消費には期待がかかる。しかし、米国の住宅バブルのような景気過熱は起こらないだろうから、今ある過剰設備を償却しながら、新たな成長神話を作っていかないといけないというのが、日本の製造業の置かれた立場なのだろう。
著者は、企業幹部や政府首脳に、従来型の輸出主導の産業構造を続ける虚しさを説いているようである。それは、輸出企業(大企業)を延命して、経済統計をよく見せても、実数ベースのGDPの回復にはほど遠いし、経済政策は一部の産業だけを優遇しても効果が出ないから、雇用を促進できる財政政策に予算を回せと言う。
これまでは「ものづくりは日本のお家芸」「技術力は日本が優れている」という言葉を信じてきたが、それは事実としてそうなのだけれども、果たして戦略的に正しい方向を向いているか、とか、日本全体を見た場合により正しい政策に導かれているか、という点で既に油断のならない状況にあることを痛感した。
また、米英が金融業で収支を組み立てようとした戦略も、金融危機という結果を招いてしまったものの、グローバル化や新興国が台頭する世界の中では理解できる動きである。政策は国レベルになることが多いから、こうした国ごとの政策や戦略の差をおさえておくことは重要である。
ポイントに至るまでの経済データの読み方、筆者の考え方、が丁寧に記されていて良い。また、金融危機後の経済指標を見る上では、率データではなく実数データを見ることが重要であることが、至るところの例で修得できる。
詳しくは僕のブログへ:http://d.hatena.ne.jp/ninja_hattorikun/20100531詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日本の問題の本質を理解するためにも読んでみてください。すでに知っている内容も多いかもしれませんが、復習として改めて学んで欲しい内容です。
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日本経済は、従来の外需依存の製造業中心の経済構造から脱却し、継続的に賃金上昇が望める新たな産業構造への転換が必要である。という内容でした。
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読んだ価値はあった。もちろん読む価値あります。是非読んでみてください。
数字が多くて、経済通しか読みこなせないという意味で★三つ。
内容については一応抜粋して要点をまとめたのでこちらをご覧ください。
http://d.hatena.ne.jp/keigossa/20111109/1320832109 -
野口氏の提言はどの本を読んでみても「いつまでも日本は製造業でモノつくりをしていてはダメ」という印象を受けていて、製造業に勤めている私には辛いコメントなのですが、努めて彼の主張についても耳を傾けるようにしています。
本当に世界経済は回復しているのか、日本だけ取り残されているのか疑問に残るところもありますが、今の民主党政権がずっと続いてしまうと危なくなるかも知れませんね。
彼の主張を読んでいると、日本は製造業を減らして金融業に特化(アメリカやイギリスのように)しろと聞こえてしまい私としては違和感があります。一度、彼と長谷川慶太郎氏や三橋貴明氏と対談して欲しいものです。
しかし彼の指摘は鋭いところもあり、皆が良いと思っている「エコ減税」や「雇用調整助成金」等、政府が補助することで、将来の製造業が競争力をなくしてしまった日本の農業のようになってしまう(p135)、中国は為替レート維持のために相当規模の元売りドル買い介入→国内の金融緩和をもたらしインフレ圧力を与える(p191)等の点はためになりました。
以下は気になったポイントです。
・アメリカの住宅バブルが再発しない限り(住宅価格に応じてローンが容易に借りられる)、日本の輸出バブルを再現することはできない(p5)
・経済危機によって欧米諸国が金利を下げてしまい、日本との短期金利差がなくなってしまったため、円安になることは考えにくい(p6)
・アメリカの日本からの輸入が落ち込み、中国からのは落ち込みが少ないのは、日本からは自動車という高価格の耐久消費財が中心、中国は非耐久消費財(安価)のため(p13)
・日本と中国の輸出回復度が異なるのは、1)中国輸出が衣料などの低価格製品、2)元レートが2008年以来1ドル=6.8元で固定されていたため価格競争力が維持可能(p18)
・金融業は事業拡張時には投資はあまり必要としないので縮小時には雇用調整のみで可能、製造業は設備投資が必要だが需要急減により過剰設備となる(p55)
・アメリカが回復しているにもかからわず日本が回復できないのは、製造業の比率が日本は高い輸出国だから(p60)
・日本における雇用調整助成金の対象者は事実上「企業内失業者」と見るべき、これを2009年5月に当てはめると、公式発表の5%は9%以上になる(p65)
・派遣の禁止や最低賃金の引き上げは、既存採用者の立場からみたもので、実際に導入されれば企業は雇用を減らすだろう(p73)
・GDPには固定資本減耗が含まれている、自由に処分できる所得はGDPからそれを差し引いたもので、2007年現在で、それはGDPの20%を占める(p79)
・2009年の日本の製造業は全体として赤字となり、ソ連の末期と同様になった(p87)
・JALの企業年金は運用利回りとして年利:4.5%を採用していて問題となったが、国の年金は、4.1%を採用している(p108)
・GMやクライスラーが破綻した理由として、1)企業一家的な雇用形態(日本企業の特徴)、2)技術開発を行った、3)2002年から実質為替レートが著しい円安、である(p113)
・自動車が水平分業できないのは、1)部品の標準化が進んでいない、2)自動車メーカーが古い体質の企業、だから(p125)
・懸念されるのは、製造業が日本の農業のように政府支援に依存する体質になってしまうこと(p135)
・アメリカはある側面では厳しい階級社会であり、工場内で工員が幹部をファーストネームで呼ぶことはあり得ない(p145)
・中国やインドの成長率が高いのは、1)農業国から工業国への過程であり当然、2)中国においては政府の需要拡大策のため、3)中国の輸出品は日用品が主である(p152)
・2009年12月にシティとウェルズ・ファーゴが公的資金を返済したことで、アメリカ金融大手6社が政府支援をほぼ離脱した(p157)
・中国のGDPのうち消費は30%に過ぎず、先進国経済とは著しく異なる姿、従って、中国の長期的な成長可能性は依然として欧米経済の動向によって決まる、インドも同様(p179)
・中国は為替レート維持のために相当規模の元売りドル買い介入を行っている、これは国内の金融緩和をもたらしインフレ圧力を与える(p191)
・国際エネルギー機関は、中国政府が発表した2009年1QのGDP成長率:6.1%に対して、石油需要や電力使用量の低下と矛盾すると疑問を表明した、エネルギー消費から考えたGDP成長率は4.4%程度(p201)
・中国の成長率が9%になってもGDPはアメリカの3分の1なので、それによる需要増はアメリカの成長率が3%なのと同じ(p238)
2010/11/14作成 -
タイトルの問いの答え。製造業の比率が高いから。
アメリカは製造業の比率が低い。
日本は製造業の比率が高い。
たしかに今回の危機はアメリカの金融が発端。でも金融危機→不況→需要減で被害を受けるのは製造業。
ゼロサム的な世界の金融では、誰かが損をすれば誰かが得をしている。
製造業では売れなければみんな沈む。
と、統計データも交えながら単純明快に日本の停滞の原因と今後も停滞するであろうという展望が描かれる。
分析としては一級品。読みやすさも抜群。
ただ、対処策はいまひとつ。
もっとも、この閉塞状況を打ち破る方法がそう簡単に見つかるはずもないのだろうが。 -
製造業の過剰設備、外需依存のビジネスモデル、政策形成能力の低下、など従来から指摘されている日本経済の問題を列挙。同じような現状分析が10年以上なされている。いつになったら有効な解決策を見つけ、実行できるのだろうか?
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ちょっと「くどい」ところも。野口さんにしては珍しい!?全般的にはわかりやすくまとめてある。野口さんの提案。果たして民主党ができるだろうか?無理だろうな・・・
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著者の主張をまとめてみると
・リーマンショックから急速に蘇るアメリカとバブルで急上昇中の中国に対し、経済回復の遅れる日本。このままでは失われた15年から脱して間もないのに、「失われる15年」に突入してしまう。
・新興国へシフトと言っても、新興国の需要は低価格商品で製造輸出では価格競争で疲弊(デフレ)。
・内需主導=都市基盤整備と介護と新しい産業(新農業など?)への転換
・政治が貧困で、既存構造を擁護しているようではダメ。生産能力過剰は政策で支え切れるわけがない)
・対中国輸出は回復したが、以前より中国の日本依存度は相対的に後退
・対米輸出は落ち込んだまま
・前の15年からの脱却は、円安による対米輸出で抜け出せた(今回はそうは行かない)
・日本は製造業比率が高く設備投資=過剰投資のため後始末が出来ない(ITや金融は雇用調整だけで回復できる)
・過剰雇用も労働流動性の低さがネック
・エコカー減税などで車会社支えているが、生産設備廃棄に補助すべき
・政府補助でなかなか破綻出来なかったGMの二の舞になる
・自動車国内需要の減少→輸出台数蔵で2003から増加
・電気自動車は水平分業が進む
・中国へ依存するとしてもマーケットが違い利益が下がる。
・トヨタのリコール問題は、海外展開が急でコミュニケーションやマネジメントに問題があったから
(この辺りの自動車に対する見解は、他書にも見られる内容ではあるが、自動車業界のヒトにはそれなりに反論があるとも思う)
その他の項目は目次で。。
第1章 奈落のあとは停滞
(1)半年で一変した日本経済は元に戻らない
二〇〇八年秋からの未曾有の激変
バブルは再現できないので、元に戻らない
かつての円安は再現できない
回復が見込めないため、設備投資が落ち込んだまま
(2)輸出は回復するが元に戻らない
輸出急減による生産の急収縮
輸出急減は二〇〇九年一月で終了
二〇〇九年四月以降の緩やかな回復
対中国輸出が回復し、対米輸出が落ち込んだまま
輸出はどこまで回復するか
外需主導だが、前回とは違う
(3)過去のGDPレベルを回復できない
未曾有のGDP落ち込み(二〇〇九年一~三月期)
外需によってプラス成長に転じはしたが……(二〇〇九年四~六月期)
It’s levels, stupid.(二〇〇九年七~九月期)
大幅に下方修正された速報値
年率換算で三・八%の成長は購入支援策の影響(二〇〇九年一〇~一二月期)
(4)「さらに失われる一五年」の入り口に立つ日本
すでに失われた一五年
減少する国内需要を輸出で補ってきた
外需依存の景気回復で古い産業構造を温存
いままた同じ過ちを繰り返そうとしている
一九八〇年代への逆行という悪夢
◎第1章のまとめ
第2章 日本が回復できない理由
(1)世界は回復するが日本は回復しない
GDPや株価の回復で遅れる日本
日本企業の利益は大きく落ち込み、危機前の水準に回復しない
(2)回復が遅い理由は製造業比率が高いから
製造業には生産拡張の後遺症が残る
金融と情報関連が伸び、製造業が落ち込む
製造業中心国の落ち込みが激しい
後遺症を負ったのはアメリカでなく日本
(3)じつは膨大な企業内失業
構造的な過剰雇用
雇用調整助成金が失業顕在化を抑えている
潜在的失業率は一四%にもなる
雇用保蔵は潜在的な失業
本来必要なのは流動化政策
各党マニフェストは雇用の経済メカニズムを理解していない
雇用構造を大変革しないと雇用が生まれない
(4)過剰設備をどうするか
政府支援するなら設備廃棄に対して
所得はGDPより大きく落ち込んでいる
固定資本の老朽化が急速に進む
◎第2章のまとめ
第3章 激減した企業利益
(1)赤字に転落した製造業
製造業が史上空前の赤字を記録
赤字であるのに、株価は上昇した
(2)なぜ製造業の利益が激しく落ち込むのか?
売上減は非製造業も同じだが、利益の落ち込みでは大きな差
製造業の総資本営業利益率は回復したが三%台
(3)政府支援に依存してソ連化する製造業
輸出増が隠した製造業の過剰設備
製造業の回復は政府の支援策による
依然として低迷する企業利益
責任転嫁と偽りの対処
ソ連国営企業と同じになった日本の製造業
(4)JALと二重写しに見える日本
JALの思い出──一九六〇年代と九〇年代の違い
日本の高度成長に合わせて成長した
日本はJALと同じ問題を抱えている
◎第3章のまとめ
第4章 問題山積の自動車産業
(1)二〇年遅れのGM破綻──日本にも教訓
やっと破綻したGMとクライスラー
政治に頼れば問題が隠蔽されるだけ
いま政治依存に踏み込む日本の自動車メーカー
(2)自動車産業が抱える構造的問題
長期的な減少傾向にあった自動車需要
国内需要の落ち込みを輸出でカバーしたが、金融危機で急減
これから問題になる過剰生産能力
電気自動車時代に日本の自動車メーカーは生き延びられるか?
(3)問題だらけの購入支援策
ドイツ、アメリカでは自動車購入支援策終了後に販売が急減
購入支援策が鉱工業生産指数を約六%かさ上げ
時限爆弾を抱える日本経済
購入支援策は政府依存体質を強める
自動車メーカーの利益増は支援策のコストと同規模
(4)新興国市場は自動車産業の救世主にはならない
新興国での需要が増えているのは事実
一台当たりの利益が半分以下になる
(5)トヨタの大規模リコールが投げかける問題
急速過ぎた海外生産拡大
技術に偏っていたグローバリゼーション
◎第4章のまとめ
第5章 回復するアメリカ経済
(1)先端IT企業の目覚ましい利益増
グーグルは五五%増、アマゾンは八九%増
デカップリングしたIT関連企業
不況期にはオンラインショッピングや検索連動広告が伸びる
クラウドは新しい知的革命
新しいものをつくり出すから高収益になる
(2)金融危機を克服したアメリカ
公的資金の返済がほぼ完了した
驚異的な復活を果たしたアメリカの銀行
銀行の損失は全世界で二・三兆ドル
金融危機への対処は半分程度進んだ
(3)アメリカの対外取引と日本
アメリカの赤字縮小は二〇〇九年初めに終了
中国に比べて日本はずっと大きな打撃を受けた
アメリカから資金が引き揚げられた
ドルの価値は金融危機前後で不変
ドル離れは起きていない
◎第5章のまとめ
第6章 中国とどうつきあうか
(1)中国の成長メカニズムは持続可能か?
目覚ましい中国の成長
内需依存の自律的成長に移行したわけではない
「北京コンセンサス」は矛盾を含む
(2)日本の対中国輸出は構造変化したか?
対中国輸出は回復。ただし、ピーク時の九割
中国の輸入における日本の比重は低下している
対中国輸出の品目に変化は見られない
対中国輸出回復の原因は、先進国の消費財輸入増
(3)中国の不動産バブルは対岸の火事ではない
不動産価格のバブルが生じている
不動産バブルの原因は景気拡大策と為替介入
日本の一九八〇年代後半と酷似
元を増価させずに不動産バブルを沈静化できるか
崩壊すれば日本にも大きな影響
(4)疑問が多い中国の経済データ
最も重要視されるGDPデータ
エネルギー使用が減るのにGDPは伸びる?──IEAと中国政府の論争
「エネルギー効率が上昇した」との苦しい説明
「中国の産業構造が大転換した」との説明も
(5)中国の経済データはソーセージのようなもの?
GDPの成長と貿易の二〇%減との関連
中国の実情にはよくわからない面が多い
推計の技術的・政治的側面
中国の経済データがどうつくられているかは詮索しないほうがよい
小売データは家計消費そのものではない
政治的な問題もなくなったわけではない
(6)中国政府と対決したグーグルに拍手
グーグルと中国の「戦争」
ITも市場経済も民主主義も、基盤はすべて同じ
日本企業は中国政府と対決できるか
◎第6章のまとめ
第7章 経済対策を検証・評価する
(1)一時しのぎの緊急避難しか行なわれていない
金融緩和策では経済は活性化しない
二〇〇八年度補正予算と〇九年度予算:定額給付金
二〇〇九年度補正予算での追加経済対策:雇用調整助成金と買い替え支援策
必要なのは財政支出の増加
IMFの評価では、日本の裁量的財政政策規模は大きくない
(2)民主党に求められる整合的政策
一時しのぎ緊急避難策を継続した民主党政権
マニフェストの羅列から脱却する必要
(3)際限なく悪化する財政
経済危機による税収の激減
信じられないような二〇一〇年度予算の姿
◎第7章のまとめ
第8章 日本が進むべき道は何か
(1)新興国シフトは日本の自殺行為
新興国最終需要の大部分は低価格製品
コモディティ生産では、価格競争によって利益と賃金が低下する
海外立地による国内空洞化は不可避
中国メーカーが成長すれば、日本は押し潰される
新興国の低賃金を利用できる製造業に転換すべき
(2)内需主導型の経済へ
「潜在成長力」概念の問題点
金融緩和・円安政策で古い構造を維持してきた
外需依存のビジネスモデルはもう機能しない
新しい需要を国内に見出す
必要なのは都市基盤整備と介護、そして新しい産業
(3)介護における雇用創出プログラム
介護を中心とした新しい雇用創出プログラムが必要
なぜ需給のミスマッチを調整できないのか
介護サービスの需要と供給
マンパワーが確保できないのは待遇が悪いから
公的主体の関与が必要になる理由
サービスの多様化を進め、製造業の転業を促進させる
財政面で抜本的な措置を講じる必要
(4)日本の最大の悲劇は政治の貧困
花見酒経済でもかまわない
政治の貧困と政策能力の低下
◎第8章のまとめ
おわりに
図表目次
索引
野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
"1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。