1坪の奇跡―40年以上行列がとぎれない 吉祥寺「小ざさ」味と仕事

著者 :
  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478013632

感想・レビュー・書評

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  • とてもおもしろかったです。
    信念をもって働くことの大事さを教えていただきました。

  • 老舗経営者の処女作を読む時は、いつも心の中に葛藤が生じます。

    ひとつは、経営者に対する「書いて欲しくなかった」という感情、
    そしてもうひとつは、編集者に対する「よくぞ書かせた」という感情。

    それが、思い入れのある老舗であれば、なおさらこの葛藤は強くな
    ってしまうのです。

    土井が「小ざさ」を知ったのは、阿佐ヶ谷に住み、吉祥寺の事務所
    に通っていた貧乏ライター時代でした。

    師匠が、「飲んだついでに」といって朝方4時から並び、「小ざさ」
    の羊羹を買ってきたのです。

    その上品な甘さは、今でも覚えていますが、味以上に驚いたのは、
    朝4時から並んで手に入れたい人が大勢いる、という事実でした。

    それ以来、「小ざさ」は土井にとって「伝説の店」なわけで、その
    「小ざさ」の社長が本を書いたというのは、本当に驚きでした。

    たった1坪で年商3億、商品は羊羹ともなかの2品だけ。

    40年以上行列がとぎれない秘密はどこにあるのか、もちろん読まず
    にはいられない内容です。

    美味しい羊羹を作るための「四つの交点」の話、父から娘へ引き継
    がれたビジネスの教訓、そして仕事人としての心構え…。

    やや話が「小ざさ」に寄ってしまっているのが玉に瑕ですが、商売
    人の魂を感じる、心のこもった文章だと思います。

    個人的に印象に残ったのは、「温度や湿度による微妙な変化を感じ
    取」るという、写真と羊羹作りの共通点。

    「美しい紫の一瞬の輝きが見たい」がために羊羹作りに励む著者の、
    魂の原点を見た気がしました。

    まさに一流の仕事には「偶然による奇跡」が宿っている。そんなこ
    とを感じた一冊でした。


    羊羹をつくり続けていると、感動的な喜びを味わえる瞬間がありま
    す。炭火にかけた銅鍋で羊羹を練っているときに、ほんの一瞬、餡
    が紫色に輝くのです。透明感のある、それはそれは美しい輝きで、
    小豆の“声”のようにも感じられます

    いざ羊羹を練るときは、私ひとりきりの世界。誰にも邪魔されずに、
    羊羹と向き合う瞬間です。唯一、無心になれる時間。いろいろな思
    いを引きずっていては、絶対にうまくはいきません

    結局、私は羊羹をつくるのが心底好きなのです

    「問屋は育てるもの」が父の口癖でした

    父は「もなかの栞」にこう書いています。《原料本来の特色を生か
    し、砂糖の甘味をならす、言い方をかえますと、丸い味とすること
    が、和生菓子を創る上の、究極の奥義かと信じます》

    並んでいるお客様が自然に仲良くなり、いつの間にか「小ざさ会」
    というグループができました。お客様同士で一緒に温泉や旅行に行
    かれるなど、楽しく活動されていて、ときどき「この間、どこそこ
    に行ってきたのよ」というお話を聞かせていただきました

    お客様とは節度をもって接しなければいけない。馴れ馴れしくして
    はいけない。だから、あまりお客様に近づきすぎてはいけない、と
    いうのが父の教えでした

    小ざさの羊羹がほしいときは、家族でも従業員でも、ほかのお客様
    と一緒に行列に並ぶのがルールです

    「バケツは、水を汲んで運ぶだけだと思ってはいけない。洗い桶に
    もなれば、土を入れると植木鉢にもなる。バケツの底に小さな穴を
    いっぱい開けて、高いところに吊るせばシャワーにもなる」(中略)
    その後も父はことあるごとに、「そのものを、そのものと見るな」
    と教えてくれました

    貧乏しているときにこそ、人の気持ちがわかる

    まだ子どもだったナルミ屋時代、父から声をかけるタイミングを教
    わりました。店に入ろうかどうしようかと迷っているお客様に、や
    たらと声をかけてはいけない。「爪先がちょっと店のほうに向いた
    瞬間に声をかけろ」

    「一家を背負え」「背負えば背負うだけ力が出てくるんだから、背
    負え」小ざさ創業の頃から、父は私にだけこう何度も言っていました

    出来があまりよくないときには、「全部捨ててしまいなさい」と言
    って、捨てたこともありました。「それがお客様の信頼を勝ち取り、
    小ざさの伝統をつくっていくために最も大切なんだ」というのが父
    の信念でした

    「家の者は誰よりも働くように」


    ◆目次◆

    プロローグ 40年以上、早朝からできる行列の裏側で
    第一章 2品だけの究極の味を求めて
    第二章 たった1坪の店で
    第三章 私の仕事観を形づくった出来事
    第四章 屋台からの「小ざさ」創業
    第五章 父から娘へ
    第六章 障がいのある子どもたちと共に
    第七章 次代に伝える
    エピローグ 125歳まで現役で──

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