日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門 もう代案はありません

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  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478017159

作品紹介・あらすじ

ユーロ危機、中国のバブル、アメリカ国債問題、デフレ経済…すべてがつながり、理解できる。そして示される経済学的に正しい日本の政策とは-。

感想・レビュー・書評

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  • 3章までは入門書ですが、後半はむつかしいです。
    以下、著者の提言を紹介します。

    日本の慢性的な経済の停滞を解決したいのなら、デフレ解消よりも潜在成長率をあげることを優先すべきです。(P109)
    そのためには、規制撤廃による自由競争での生産性向上だ。(P110)
    安全保障問題は戦略的に考える必要があるが、輸入規制のほとんどは特定業者を守るための政治活動であり、多くの国民から巧妙に富を盗んでいるだけ。(P127)

    農産物の輸入化は与野党揃って反対の立場ですが、これは食料自給率の問題と農家保護という2面から正当化されていますが、筆者はナンセンスだと一刀両断。そもそも食料が自国の安全保障に密接にかかわるのは当然だが、その前に石油が無ければ化学肥料もつくれないし、食料を都市に運ぶこともできない、さらに農家保護のために高いものを買わされる国民、さらに彼らの補助金の原資も税金ですが、もし食料不足という事態になった場合に農家が都会のサラリーマンに率先して分配してくれるのでしょうか?平時には既得権益で高い農作物を買わされ、有事には買えないという状況は否定できません。それよりも、友好国から安いものを購入できるルートを多く確保しておく方が賢明。(P198)

    規制緩和は学校教育にも及びます。(P204)教員免許も既得権益の1つで、一度先生になったら、どんなに能力が低くても首にならないという競争の無い世界に安住できてしまう点も、不正が起きてもかばいあうという隠ぺい体質の温床になっているのでは?能力と意欲のある人間を外部から積極的に受け入れることで風通しもよくなり、教育の多様性も期待できるはず。

    さらに、規制による不便さ(銀行の窓口は午後3時、裁判所は平日の昼間)は、競争の無い世界だから許される特権に他ならない。(P213)

    最後に、経済の仕組みを解説した本書を読んでも状況がイマイチよくわからないのは・・
    現在の米国と中国の貿易戦争です。米国の強硬姿勢に中国は苦しい対応を迫られているわけですが、中国が米国との貿易黒字で儲けたお金で米国債を大量に購入しているので、なぜ手持ちの国債を「売りに出す」と脅しに使わないのだろう、ここまで踏み込むと世界不況の引き金になるからと中国が大人の対応をしているのか、それとも水面下では落としどころの話し合いが行われているのだろうか?という点でした。

  •  経済学入門として優れていると思う。私は数学がからっきしダメなので、大学での講義などでは全く分からないであろう原理原則がわかりやすく、理解できる本だと思った。
     代案はありません、に関しては、筆者の提案をそのまま今実行することは不可能だろう。考え方のヒントとしてインプットする事に価値があると思う。個人的には「おわりに」の文章に描かれる社会主義への羨望が印象的であった。なぜ資本主義のもとで成功した者が社会主義的な存在になっていくのか。その理由を筆者なりに解釈して述べている。
     この本で一貫して主張されるのは自助努力ではないかと思う。年金にしても何にしても、自らの身は自らで守るという原則が訴えられているように思われ、若い世代には厳しい時代になったな(年寄りみたいだがw)と感じてしまう。強い者だけが弱者を労り救うことができるのではないかと。昔のホリエモンが書いた本に通じるものを感じるが、結局は拒否をし続けた自助努力による自己防衛をしなくてはならない環境に今あるのだろう。ただしこの本では「金で買えないものは無い」とは言わず、むしろ「金には大した力が無い(故に社会主義的権力は羨望の的になる)」と言う。
     世界経済を読み解く経済学の基礎を学ぶと同時に、その世界経済で生きていく自分は何をどうすべきか、考えるきっかけになるだろう。

  • 一番心に残ったのは、「日本は年間3万人以上自殺する立派な自殺大国ですが、会社が社員をクビにできない日本にこんなに自殺者が多いのに、簡単にクビにできるアメリカで自殺者が少ないことをよく考えてみるべきでしょう。」
    という箇所。パワハラ、モラハラなんかも、アメリカでも十分多そうなのに、日本ほど社会現象のように聞かないのは同じ要因のように思う。

  • 金融工学が専門らしいブロガーが一般向けに書いた、経済学初歩解説+政策提言の(よくあるタイプの)本。
     市場原理をなるべく優先するサイド立場からの視点で、面白いところもある。が、経済学素人向けなら自説の主張が強引でも構わないと著者は思ってるのかもしれない。

    (感想)
    ・既存の大学教科書にある内容を、読者に分かりやすく噛み砕いているので、その部分は多くの人にとって有用のはず。
    ・反教科書と言いつつ教科書によっている部分も多いのは、ごく普通のことなので問題ないと思います。「反社会学」だってそうだし。
    ・プロフに外資系企業勤務ってあるけど、「外国の会社の日本支社に勤務してる」ってことですよね? 投資銀行勤務じゃだめなのかな。これはすごい脱線だけど。

    ・本書90頁の文章。
    《何といっても無限等比級数が出てくるあたりが何となく高級そうな理論に見えて、そのあたりが彼ら法学部卒業生を駆り立てるのでしょう。そんな東大法学部出身の彼らは、不景気になると得意げな顔をしてケインズの乗数理論を使って、瀬戸内海に何本も橋をかけたりしました。》
     こう言って(駆り立てたものが何かわからんのは置いといて)官僚を小ばかにしたつもりなんだろうけど、よりによって級数って。揶揄ならひねってくれないとつまらない。

    ・そういえば、ある学者の対談本によれば、1990年代の消費税引き上げ時に、ケインズ理論は死んだといって某有名経済学者に説法した大蔵官僚もいたらしいとか(うろ覚え)。

  • 外資系金融機関に勤めて、傍らで金融日記というブログを運営する筆者による経済学の本

    現代の諸問題について述べるイントロから始まり、マクロ経済の理論、そして現代経済へのその応用、そして停滞する日本への処方箋まで、一気に述べている。

    特にマクロ経済理論の現代経済への応用について、異分野の著者が書くと漫画チックになりがちだ。しかし理論物理・計算科学に素養のある筆者により数式を用いた普遍的な理論構成となっており、その点が他のビジネス書と大きく違う点だ。

  • 経済学部で経済を学んでも閉鎖系の理論が多すぎて実体経済を解明するのには不十分過ぎます。
    この著書を読めば、その目の前にかかった実体経済への靄を取り払ってくれるでしょう。

    一物一価の法則、金利平価説、貨幣数量理論、比較優位、マンデル・フレミング・モデル、モラル・ハザードなどの理論に基づき、時代の潮流に沿った経済へアプローチしていく内容です。
    平易な文章で書かれていると同時に、著者ならではのユーモアの効いた言い回しや軽妙な語り口は学術的な内容を感じさせない程面白く、とても読み易いものになっています。

    非正規労働者に象徴される現代の格差社会や過剰な農業保護、ライブドアの堀江貴文氏や村上ファンドの村上世彰氏の異様な逮捕劇の背景などから日本の既得権益層の実態を暴いていき、著者の新たな提案は一読に値します。

  • 読了。大学時代にはむずかしく思えた経済学の諸問題をきわめて平易に説明している本だと思う。最近の世界で起きていた事象をきちんと経済学で説明している。それ以上に巷で出回っている言論が経済学を無視して都合よく解釈されて話されていることにも愕然とする。
    大学、もしくは高校くらいで教科書にしてもよいかも。何にせよオススメの一冊。
    最終章が秀逸。そしてその中でも印象に残ったのは『経済が発展して、たくさんお金持ちがいる国の方が、弱者を守る社会福祉が充実することはいうまでもないでしょう。(180ページ)』という箇所。政治家、官僚はこれを肝に命じてほしい。

  • 必読。以上!!

    …で終わらせたら、誰も読まないか…。 (^^;

    "経済学入門" とあると、もしかしたらアカデミックなイメージ (前提となる高度な経済知識を要求するなど) を持ってしまうかもしれないが、そうではなく、経済学を学んだことがない人のために、世の中で起こっているできごとから経済学的に分かってしまうことを丁寧に解説してくれているのが本書だ。この本に書かれていることは、常識として多くの人に知っておいて欲しいと思うのだ。なぜならば…。

    今のままだと、人口は減り、経済は衰退し、年金は破綻する。グローバリゼーションに飲み込まれるのは、もう "確定した未来" なのだ。黒船 Amazon が日本の出版業界に激震を走らせ、一方で TPP で大騒ぎしているが、どちらも延命治療にしかならない。その未来は確実にやってくる。問題は "いつ?" だけなのだ。訪れる未来に向けて、今、どうするのか? できれば先んじて有利に展開する手段はないものか? そういう前向きな検討 & 議論 & トライアルをやっていかなきゃならないのに、既得権益を守ろうとする一部の "遅い人たち" つき合っている余裕はない。そのスピードでは、"もっと酷い未来が突然訪れてしまう" からだ。 「電子出版の時代になりました。でも、日本ではその事業に従事する人は誰もいませ〜ん。」「農業では国際競争に全敗しました。失業率が過去最大に…」では、国内の購買力は落ちてゆく一方で、不幸な未来に一目散に向かっているように見えてならない。未来の産業構造の中で、我々が購買力を発揮する (もっと言えば、食い扶持を確保する…だ) ためには、その未来を作る一員でなきゃならない。既得権益を守る保守的な方向が続くなら、「ギリシャの次は日本か?」みたいな話題が勃発しつつあるが、それが現実味を帯びて来ることになってしまう。

    かつて盛んだった紡績業がなくなり、そして高度経済成長を支えた製造業の国外移転が進むのが現代 (工場跡地の利用方法とかを会議してるのだ。製造業界は)。出版周辺業界や農業関連を筆頭に、これからもグローバリゼーションの波はやってくる。その中で、失業者が増加してゆき、泣いている人たちが多くなる社会は見たくない。消えてゆく産業があれば、生まれてくる産業もある。そーゆー新陳代謝が活発で、それに適応できる社会を作っていかなきゃならないと思うのだ。

    「荒波が来た〜! 助けて〜! 守って〜!」ってゆー人が少ないうちはいいけれど、多くなると、現実問題として守れなくなる。だから、「この波を乗りこなしてやるぜ〜!」ってゆー人が増えた方がいい。そのためには、チャレンジする人を増やしていかなきゃならない。"自分が今より 10% 幸せになれるとしても、他の人が 50% 幸せになる不平等を許せず、みんなで 20% 不幸になる道を選ぶ国民性" を感じるこの国だけど、そこんとこを変えていくために、本書に書かれていることが、一般常識となりますように…。

  • ミクロマクロ経済学、国際金融の導入部分を分かりやすく解説してくれている本書。本書をきっかけにさらなる深掘りをしていくと経済学の知識が身につきそうな印象を覚えた。

    経済学は日本では軽んじられている印象があるが、それゆえに為替変動など、真因がよくわかっていない人が多い気もする。

    本書を皮切りに経済学の知見を深め、世の中の動きを経済学の視点からも理解していきたい。

  • わかりやすい!
    10年以上前の本

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著者プロフィール

金融日記管理人。恋愛工学メルマガ発行。

「2017年 『ぼくは愛を証明しようと思う。(2)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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