結果を出すリーダーはみな非情である

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  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478021477

感想・レビュー・書評

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  • 富山先生のご著書を拝見すると、とてもドライな方だという印象を受ける。しかし、富山さんが産業再生機構(政府系の再生ファンドね)のCOOに就任された時、高給を蹴って富山さんの下に馳せ参じた方が少なからず居たという。

    本書も「俺って仕事は余り。。。」って方には、将にハル・ノート的なご著書だと思う。何せタイトル通り「非情にやれ」ということであるからだ。

    富山さんは言う。情緒に流れた選択が日本をダメにしたというのだ。例えば上記のハル・ノート。これは皆さんもご存知の通り、米国から「我が国と和平条約を結びたかったら、中国から完全撤退しろ」というものだった。

    このハル・ノートによるサンクコスト(埋没費用)は英霊20万人。当時の軍部は「英霊20万人を無駄にするのか~?」ということで、日米開戦を行い、結局日本は敗戦の憂き目に遭い、都合300万人の命を落としたということである。

    このように現在某電機業界の数社も本書によると、明らかに致命的な時間的・サンクコスト(ご著書ではサンクタイムと仰っている)をもったいがって現在の悲惨な現状に喘いでいると断ずる。

    このような憂き目に遭ったのは、やはり日本的なエリートが経営幹部を占めることになったからだ、と富山先生は分析する。

    彼らは、いい大学を出て、一流企業に入社し、日本的な情緒的な意思決定を行い、合理的かつ論理的な判断が出来ない輩が多いとまで断ずる。

    因みに富山さんは、東大法学部を出て、司法試験に受かり、当時は珍しかった外資系のコンサルタント会社に就職し、多くの苦労をしつつ、スタンフォードのMBAを30歳で取得し、それからのご活躍はご存知の通り。

    そんなパーフェクトな経歴を持つ富山さんは、日本的な経営手法に疑問を呈する。ミドルクラスの課長連中は本当に会社の事を思って日ごろから仕事をしているのか?富山さんが再生を手掛けた、カネボウ・JAL共に改革を推し進めたのは、危機感を持った優秀な課長クラスのミドル・マネジャーだったという。

    具体的に言うと、論理的な発想で経営の目線を伴って日ごろから、職務を随行しているか?会社が危機の時、部下に「君は要らない人材」だと合理的に説明して、会社の再建の力になれるのか?

    JALの場合、そのような中間管理職達が派遣社員・スチューワデスが年収300万円で働いていることを、JALのOBに説明し、彼らに年金額のカットを求めてJALを再生に導いたことなどである。それはどの会社でも革新的な意識を持つミドル・マネジャーであるという。

    そうなるためには、と書きたいところだが、詳しくは本書を読んでほしい。特に「俺はこんなに頑張ってるのに、会社は全然体質が旧態依然としているんだよな~」とかいう人にはうってつけ。

    私の前職の支店長代理(今は部長職を拝命しているらしい)も城南信用金庫の「懸賞付き定期預金」という金融商品を聞いて「ウチの経営陣もしっかりして欲しいな~俺たちこんなに頑張っているのに~」と零してた。Y部長あなたの事ですよ!

    という訳で、富山さんの凄さを少しも出さない、私のブログ。富山さんの部下だったら、真っ先にFiredである。おしまい。

  • 課長レベルの30代のミドルリーダーが時代を変えるんだと。
    万年野党でなく、主流派の中に位置することとか、論理的思考でサンクコストサンクタイムに囚われないこととか、現場と中央の一次情報がちょうど集まる位置にいるんだってこととか、自分がトップだったらと仮定して考えろとか、本当に大事な頭の使い方と精神力とについて学んだ。

  • 結果を出すリーダーはみな非情である。
    上手いタイトルを付けますよね。中身が気になってつい手が出てしまいます。

    オビにはこうも書いてあります。
    組織内で楽なのは「あれも、これも」の議論だ。だが、意思決定は「あれか、これか」の引き算でなければならない。

    そう。そうなんだよね〜。で、お買い上げです。ちょろいもんです。

    著者の冨山和彦氏はボスコンなどを経て、2003年に産業再生機構のCOOに就任。その後も、様々な企業の社外取締役や社外監査役、政府関連委員を務めておられる方です。

    ところで、産業再生機構のCOOってどうやったらなれるんですかね。少なくとも、コンビニに売ってる就職情報誌では募集していないようです。

    サブタイトルである「30代から鍛える意思決定力」からも推測できるように、課長クラス(ミドルリーダー)を対象にした内容になっていて、とにかくお尻を叩きまくり、闘争心を掻き立ててくれる言葉にあふれています。

    普段の読書では、どちらかというと結構なスピードで1冊を一気に読み切ってしまう自分ですが、今回だけは何度も咀嚼し、腹に落ちるのを確認しながら読み進めたため、読了するのに2週間くらいかかってしまいました。

    考えさせられる部分を赤ペンでぐりぐりと丸で囲んでいったため、かなり汚くなってしまいましたが、その中から幾つかご紹介しておきたいと思います。


    将来、トップリーダーを目指すミドルリーダーは、「現住所」を現場リーダーに置きつつも、マインドセットの「本籍」はあくまでもトップリーダーに置いて、戦略的な意思決定、現場の中に軋轢を生むような決断からも逃げず、中間「経営職」の職責にあたるべきである。

    ミドルマネジメントになったら社長になったつもりで判断し、行動しておかないと、将来社長になったときに何も決められなくなってしまう。

    今の役職が課長であっても、最高かつ最終責任者として考え、感じ、決断し、失敗も含めて結果責任を負うことのトレーニングなしに、リーダー研修は成り立たない。

    課長の時に責任転嫁ばかりしている人、ストレスから逃げてばかりいる人は、それより上のポジションに上がったとき使いものにならない。意識して自分に負荷をかける、自分をストレスフルな立場に置いてみるくらいのことをやっておいたほうがよい。

    報酬に不満を持つ部下に対し、「これは会社の方針だから」「人事部がこういう制度を入れたので仕方ない」では全く失格だ。「カネと人間」の問題から逃げる人間は、もはや課長レベルでも通用しない時代なのである。

    本来、戦略的意思決定というのは、何を優先させるか、あるいは右か左のどちらに進むかという議論であり、何かを捨てなければならない。常に引き算の議論、「あれかこれか」の判断なのだ。

    現場に近いところにいる課長クラスは、捨てられない戦略的意思決定がもたらす悲劇が一番よく見えるので、情理に流される。鳥瞰的に見ることが必要だ。

    部下の人事評価をする際に重要なのは、「成果」と「能力」の2つの軸で評価することだ。

    日々の仕事にストーリーを持って臨み、キャスティングを考え、舞台を演出する。それを繰り返すことで、リーダーと役者、双方のスキルが磨かれていく。

    人をキャスティングする、仕事を割り振るときに一番やってはいけないのは、ケミストリー(相性)から入ってしまうことだ。

    ケミストリーで目が曇ると、一人ひとりの比較優位を客観的に判断できなくなる。結果的に能力を発揮できないキャスティング、戦えないチーム編成になってしまう。

    自分とは相性が合わないと思っている相手、どんなに嫌なやつであっても、比較優位は必ず持っている。それを冷静な目で見つめて、能力を最大限に引き出すのが、チームリーダーの仕事である。

  • そういう意味での非情ね。なるほど。

  • 必要なのは合理的な思考力と情に訴える伝え方。
    訓練が必要だな。

  • 自分が決してトップマネージメントを担うことにならなくとも、経営者のような視点で判断するつもりで仕事をしたいと思う。
    特に、気に入ったフレーズは、「引き算」の戦略思考。
    「あれもこれも」と何をするでも、付加しがち。これが反対派を納得させるキーワードになっている。「あれかこれか」、「まず、第一に」というのは、わかりやすい。まず、このフレーズから実践してみよう。

  • ・そもそもリーd-あシップは、管理職になった後に鍛えるものではない。若い課長クラスのうちから、自分が社長のつもりで決断し、実行するスキルを磨くべきなのだ。それも、リアルにタフな状況において、若いときほど、失敗のコストは小さく、同時に、失敗からの学習能力は高い。

    ・リーダーに不可欠の条件はそんなに多くないが、外せないのは「合理的思考」力である。これは、いかなる場面でも必要になる。逆に社長になってから鍛えようと思っても、一朝一夕に思考のクセは直らない。

    ・大きな変化が起こるときは、上層部でそういう志をもっている動いているリーダーがもちろんいるわけだが、上と下の力がうまく共鳴しないと社会を動かす歯車は大きく転回しない。特に日本の場合は、共生型、共同体型の村組織社会のため、トップダウンで上からの改革を進めようと思っても、なかなか変わらない。ミドル層にいるリーダー型人材、つまりミドルリーダーこそが日本型改革のエンジンなのだ。

    ・上部構造では決められない難しい問題ほど、現場レベルで決められる場合が多い。幕末の維新の雄藩でも、島津候も毛利候も決められない問題については、西郷や大久保、桂に「よきに計らえ」となったわけだ。

    ・日本は現場力が優れているがゆえに、トップの意思決定力がなくてもこれまでなんとかなってきた。だがそれは、みんながゴールを共有できた右肩上がりの時代の話。現場力への過剰な依存が、今の停滞を招いているとも言える。

    ・将来、トップリーダーを目指すミドルリーダーは、現住所、を現場リーダーに置きつつも、マインドセットの本籍はあくまでもトップリーダーに置いて、戦略的な意思決定、現場の中に軋轢を生むような決断からも逃げず、「中間経営職」の職責にあたるべきだろう。

    ・今の日本で、失敗に不寛容な企業、失敗した経験がないリーダーは、極めて競争力が低い。

    ・日本は今有事なのだ。有事に戦闘経験がない、失敗の経験がない者がリーダーとして活躍できるはずがない。

    ・私がみてきたダメな経営者というのは、圧倒的に上に流される人が多い。一方で、情に背を向けて合理にひたすら突っ走る人もうまくいかない。だから誰よりも真剣にその問題を考え尽くし、悩み尽くしたうえで、最後にはなんとか折り合いをつけていくしかないのだ。

    ・社長は鳥の目で会社をみており、現場は虫の目で仕事に取り組んでいる。その両方の視点を持つには課長クラスが一番よいポジションだ。

    ・ミドルリーダーを志向する課長より、社長(トップリーダー)のような課長を目指すべしだ。逆に、決して「課長らしい課長」、「部長らしい部長」を目指してはならない。

  • かつてはあまりに当たり前だったのだけれども、悪貨は良貨を駆逐する、水は高いところから低いところへ流れるの如く現職ではなかなか通じない世界でもがく日々でした。自分の胸のうちにある思いを言葉にしてもらった思いです。それほどまでに勉強不足、努力不足を痛感した一冊。

  • 著者の主張はタイトルに書いてある。
    中身を読まなくても大丈夫。

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著者プロフィール

冨山 和彦(トヤマ カズヒコ)
株式会社経営共創基盤(IGPI)グループ会長
1960年東京都生まれ。東京大学法学部卒業、スタンフォード大学経営学修士(MBA)、司法試験合格。ボストン コンサルティング グループ、コーポレイト ディレクション代表取締役を経て、2003年に産業再生機構設立時に参画し、COOに就任。2007 年の解散後、IGPIを設立。2020年10月より現職。日本共創プラットフォーム(JPiX)代表取締役社長、パナソニック社外取締役、経済同友会政策審議委員会委員長。財務省財政制度等審議会委員、内閣府税制調査会特別委員、内閣官房まち・ひと・しごと創生会議有識者、国土交通省インフラメンテナンス国民会議議長、金融庁スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議委員、経済産業省産業構造審議会新産業構造部会委員などを務める。主な著書に『なぜローカル経済から日本は甦るのか』(PHP新書)、『コロナショック・サバイバル』『コーポレート・トランスフォーメーション』(いずれも文藝春秋)などがある。

「2022年 『両利きの経営(増補改訂版)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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