失敗の本質 戦場のリーダーシップ篇

著者 :
  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478021552

作品紹介・あらすじ

旧日本軍の失敗の原因を追究した不朽の名著「失敗の本質」の続編が刊行!
今回のテーマは「戦場のリーダーシップ」です。

感想・レビュー・書評

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  • 現代のビジネスで参考になりそうだったのは、現場を知った上で戦略を立て、それを実践し、そして結果をフィードバックして改善していくこと。
    上記は当たり前のことだが、役職が上になる程、現場目線から離れる事が多々あるので肝に銘じないといけないですね。
    こちらの本で参考になった要点を5つ、下記にまとめました。

    1.リーダーの判断軸と要件
    情報を基に適応できても創造は難しい。自分たちの思い(暗黙知)を言葉(形式知)にし、言葉を形に(実践)していくダイナミックなプロセスが大切。
    優れたリーダーの意思決定は、Alでも判断できるような定型のプロセスではなく、文脈に即した総合的な判断(contextual judgement)。

    【リーダーの要件】
    ①「善い」目的をつくる能力
    ②場をタイムリーにつくる能力
    ③ありのままの現実を直観する能力
    ④直観の本質を概念化する能力
    ⑤概念を実現する政治力
    ⑥実践知を組織化する能力

    ②と③→現場感覚
    ①と⑤→大局観
    ④と⑥→判断力

    2.現場を観察、分析
    ・アメリカは戦時情報局や軍の諜報部門を中心に、軍事作戦や戦後の占領政策立案のため、アカデミズムの俊英を動員。その1人が「菊と刀」のルース・ベネディクト。
    ・山本五十六は真珠湾攻撃の際、地形を観察。乾坤一擲の大勝負。机上の議論だけでは構想と企画は至難の業。

    3.考える訓練
    リベラル・アーツ教育の拡充。アメリカでは課題図書について討議し、歴史・哲学・宗教・人間論を自分の頭で考える訓練をする。

    4.組織構成
    日本国憲法は総理大臣に大きな権限、大日本帝国憲法では総理大臣は国務大臣の一つに過ぎない。
    大日本帝国憲法は、地方行政、治安、外交は各国務大臣の天皇に対する輔弼によって行い、政治権力は分断していた。それでも日清・日露戦争を乗り切れたのは、要所に配された人物の力量があったから。
    組織は一般的・抽象的な見えない構造で実体ない。構成する実在の人間がリーダーシップが優れていれば、組織の壁を超えて横につながることもできる。

    5.状況に応じてブラッシュアップ
    ・帰納的思考がイノベーションに不可欠。見たり、聞いたり、試すこと。試すことが大切。
    ・アメリカ軍はフィードバック・ループが上手かった。日本軍も日露戦争の成功から帰納的かつ実践を通じて作戦を練った。しかし、変化する環境に修正を怠った。日本軍は硬直的で、アメリカ軍はダイナミックだった。

    ◆紹介されていた文献
    村上陽一郎 「あらためて教養とは」
    四書五経
    石原莞爾 「最終戦争論」
    石原莞爾 「戦争史大観」
    カント倫理学(人間の道徳的意識と責任)
    山本七平 「派閥の研究」
    オリバー・E・ウィリアムソン 取引コスト理論(2009年ノーベル経済学賞)

  • 現代にも通ずるリーダーシップのあり方だろうと思う。

  • 全社会議で野中先生の記事が話題となったのをきっかけに読了。時代が移れど色褪せることのないリーダシップの在り方のエッセンスを、ここまで痛快に凝縮言語化していられる方は稀有。

  • 日本史勉強しなおしたいなと思わされた一冊。あんまり失敗の本質とは関係ないが。

  • 情報が正確に出てくるうちにこう言った振り返りはするべき。
    それを怠ってきたのは国家としての怠慢。

  •  時代の流れのなかにいるときは見えてこないことがある。
     見えていても、カタチを伴ったものとして全体を捉えることができないので、時代の片隅にいた自分が見ていたものだけで、無意識にその時代を記憶に留めている。
     自己の記憶はそういったもので、その記憶が己が生きる世のなかを造っていく。だから、人それぞれに見えている世のなかは違う。
     でも、時代というのは、今を通り越すことによってその時間経過とともにカタチを現してくる。そしてそのなかで時を過ごした自分の記憶が、そのカタチのなかに位置付けられると、自分の記憶もまた朧気にカタチを伴ってくるし、違った存在になる。
     
     もうすぐ8月が来る。また今年も日本の大きく道を誤った原点を見つめてみよう。

  • 戦場という生死がかかる究極の状況の中でのリーダーシップ。日本を覆う「空気」というものに支配されないこと、それがリーダーとして必要なことなのだろう。

  • 名作『失敗の本質』スピンオフ。
    他のレビューにもある通りリーダーシップという共通テーマのもとに各人の論稿をまとめたもので、学際的共同作業が行われた『失敗の本質』には深み、厚みとも及ばないのが正直なところ。

    個別具体的な事象から普遍化一般化を導き現代の組織にフィードバックする意図ならば、いきなりリーダーシップ不在を嘆くのではなく、「なぜ不合理な失敗を繰り返したのか」をまず組織自身の中に求めるべきでしょう。

    実は第11章「戦艦大和特攻作戦で再現する合理的に失敗する組織」にその視点が見られますが、上述の通り論稿集であるため他の章に同じ視座が共有されていないのが残念。
    同章の取引コストを使っての分析は有用なアプローチと思いつつ個人的には同意できませんが、山本七平「空気」悪者論への反論については同意なのであります。

  • 「失敗の本質」の本を読んだことがあり、その後に久しぶりに野中先生の本が読みたいと思い読んでみた。非常に興味深い内容で、今まで通り日本軍の戦争を研究材料としつつ、戦場でのリーダーシップについて大量の論文とデータを元に分析されて納得感のある内容であった。

    個人的には第8章の辻政信の内容に思うところがあった。幼い頃から文武両道で部下の信頼も厚く飲み会や風俗などが大嫌いで教科書に載るお手本のような軍人であるのにも関わらず、組織として何故上手く立ち回ることができなかったのか?日本人が目指すべき人物に限りなく近いはずなのに何故同世代のエリートには嫌われていたのか?そもそも日本の学問における優秀な人材は何なのかを考えさせられる内容であった。

    最後の菊澤先生の章もおすすめ。非合理的な意思決定プロセスに使われる【空気】という目に見えないものについて、取引コスト理論を用いて説明しているので、現代のビジネスでも応用できる内容であると思う。総じて自身の知的好奇心が満たされる素晴らしい本であった。

  • リーダーは実践し、賢慮し、垂範せよ
    理想のリーダ像はかくあり、その実現するが難なることを痛感する日々です。

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著者プロフィール

野中郁次郎
一九三五(昭和一〇)年、東京に生まれる。早稲田大学政治経済学部卒業。富士電機製造株式会社勤務ののち、カリフォルニア大学経営大学院(バークレー校)にてPh.D.取得。南山大学経営学部教授、防衛大学校社会科学教室教授、北陸先端科学技術大学院大学教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授などを歴任。一橋大学名誉教授。著書に『組織と市場』、『失敗の本質』(共著)『知識創造の経営』『アメリカ海兵隊』『戦略論の名著』(編著)などがある。

「2023年 『知的機動力の本質』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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