走りながら考える

著者 :
  • ダイヤモンド社
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レビュー : 58
  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478022870

感想・レビュー・書評

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  • Twitterで為末選手の発言を何回か拝見する機会があり、興味を持っていました。

    確信をつきながらも、刺激の強い発言は、ともすると話題性だけを狙った空虚なものになりそうですが、本でまとめて読むと、「自分の経験から得た言葉の重み」を強く感じます。

    以前、podcastで、様々な自転車選手のインタビューを聞く機会があり、それぞれの選手の言葉の深みがとても印象的でした。
    本文でも語られているのですが、アスリートは一般人の数倍の速さで人生を生きています。なので、より内省的になるし、タフな決断の連続で、経験値も蓄積されるのでしょう。


    面白いのは、スポーツの種目によって、自分の思いを言葉に変換出来る度合いが違う事です。
    個人的な感想ですが、相撲、野球、サッカーの選手はあまり上手ではない気がします。
    陸上、自転車、テニス、モトGPの選手は、自己表現がとてもすぐれた選手が多い印象です。


    理由をいろいろ考えてみたのですが、競技マーケットが巨大で、組織化されていればいるほど、自己表現の能力は落ちていくのかもしれません。
    大規模で組織化された競技では、分業化が進み、アスリートは競技にだけ集中できるような仕組みが出来上がります。

    人間の思考が飛躍的に拡大するのは、「固定観念(メンタル・モデル)」が崩れた時です。
    メンタル・モデルは日常のルーティンの中では崩す事は難しく、多くは非日常の体験からの気づきによってもたらされます。
    僕は個人での移動が多い、あるいは個人での「雑用」が多いアスリートが、この「気付き」の体験が多いのではないか?と思っています。
    出張でも旅行でも、移動というのは、目標と効率、そしてハプニングと停滞、静と動の連続です。
    移動によって、人は様々に内省して、成長するのかもしれません。


    実体験からの本だけに、とてもコンテキストの豊富な、カラフルな文章ではあるのですが、それゆえに、コーヴィー博士の「The 7 Habits..」のような普遍的な洗練はありません。

    だけど、その洗練の無さがもつ、独特の熱が、読んでいてとても刺激的です。

    コーヴィー博士も、ドラッカーも、為末さんも、突き詰めていくと、言い方は違いますが、同じ結論に達しているのも面白い。

    ・等身大の今の自分を知ること。
    ・目標(北極)ではなく、目的(北極星)を持つ事。
    ・死という時間的制約を意識する事
    ・自分の固定観念(メンタルモデル)は何かを知る事


    本編中、もっとも印象的だった箇所の引用

    <blockquote>「思いは叶う」、そしてそれ以上に「叶わないこと」がある。
    それでもなお、いかに自分の中の気持ちを奮い立たせるのかは、知恵しかない。

    それはどこか、「人間は必ず死ぬのになぜ生きなければいけないのか」という矛盾にも似ている。
    おそらく、そのあたりの苦しさを納得させるために、宗教が様々に解いたのだと思う。
    自分ではどうしようもない現実を見たり、仕方のない事に出会い、人は傷つく。努力は無駄になったと思う。
    でも、振り返ってみて「あれは本当にムダだったのだろうか」と自分に尋ねると、そうとは言い切れない。
    夢を見ているその瞬間、人は確かに輝いているからだ。

    (中略)

    自分は何か意味のあることをやっていて、これをやり続ければ「社会に驚きを与えられる」と信じていられたその毎日こそが、今振り返ると自分への報酬だったのだと思う。
    走っている最中は気が付かなかったけど、夢を叶えるために懸命に努力していた毎日は本当にキラキラと輝いていた。

    結局のところ、幸福は「今」にしかない。
    僕らはつい、未来を見ながら今を置き去りにし、過去に縛られて今を忘れてしまう。
    夢はその「今」を輝かせるためにあると僕は思う。そしてその輝き自体は、夢が叶う、叶わないなんて関係がない。

    夢は持ったほうがいい。
    たぶん叶わないけど。
    </blockquote>

  • 本文より

    ?夢はその今を輝かせっるためにあると思う。
     そしてその輝き自体は、その夢がかなう、かなわないなんて関係ない

    ?批判は攻撃だから反撃しやすいけれど、期待は応援だから無視しにくい

    ?起こった出来事は同じでも、自分がする解釈、自分が付ける意味によって物事の見え方やありさまが
     変わることはとても多い。

  • ・恥ずかしいという気持ちが成長を止める
    ・立ち上がった瞬間が自信になる
    ・自分で選んだものは、失敗は反省も含め濃い
    ・残念ながらほとんどの人生は負けで終わる
    ・勝ちやすい場を探すのも手だ
    ・一番を目指している。そのこと自体が幸せなのだ
    ・自分の限界を感じることは、清々しいことでもある
    ・とにかく物理的に変えてしまおう

  • 競技生活は人生の一つを生きているようなもの。そこを濃くもがきながら生きた為末氏の言葉は老成していて重い。

    ※失敗を「一部」として捉えられるか
    ※自分で選ぶ事は人生を濃くする
    ※悪い拘りは人生において学ぶ機会を減らす。
    ※他軸から自軸にシフトするのは難しい。何故なら時として「気にする事」を気にしない事も他軸で生きているという事だから。固定せずにいつでもフィードバック調整できる「柔らかさ」が必要。
    →個人的に自分を客観視するのは勇気がいるし、為末氏の「柔らかさ」というのもピッタリくる。昔スポーツの自分の動画を見るのは生々しくて嫌いだったが「硬かった」なと思う。他人にも強制しない「柔らかさ」を持っていたい。
    ※結果に依存すると人生は意味がない。
    ※鬱になる人は「体感」が欠如している。根拠のない自信つまり何が自分に出来て出来ないのかをイメージ出来ない。
    →昔自分は出来ない物については1発逆転を夢見る傾向があったが、ある時期からそれは危険な考えと悟った。あの時の自分はきっと「体感」が欠如していたのだろうと思う。
    ※終了ではなく完了。フィニッシュでなくコンプリート
    ※視野を広げるとは自分の動く範囲を広げる、もちろんそれも大事だが自分や自分の観点が小さく思えるような体験をする事。それにより一種の達観や良い意味での開き直りも出てくる

  • 長い人生において、幾多のハードルを乗り越えなければならない場面があるはずです。勝敗にこだわることも大切ですが、限界に挑戦する姿勢はもっと大切です。
    あなたをきっと、前向きにしてくれることでしょう。

  • 陸上という個人競技で、現役生活をタイトル通り「走りながら考え抜いた」からこそ編まれる言葉と思考は至極深遠。ご自分の言葉で綴られているからこそ飾り気がなく、端々に思考の跡が滲む。彼の思考を読んでいるだけで、質の高い内省に触れることが出来、そこのみにおいても有益だと思う。

    また、世界の一流選手と比較すると決して身体的な才能に恵まれているわけではなかったからこそ、「努力と限界」との関係性の論にも重みがあるし、その限界を知った上でも尚思考し、努力し、戦い続けるそのプロセスは、ビジネスとフィールドは違えど学びが多い。

    以下、特に印象に残った記述を。先日読んだ「エッセンシャル思考」とも相まって、刺さりました。


    「あきらめたものが多いほうが、ひとつのことに集中投下できる。それゆえ成功しやすい。」

    「有限の中で何に努力と時間を割り振るのか。有限の概念がないところに選択はなく、選択がないところに集中もない。」

    「レベルが上がれば上がるほど、目標が高ければ高いほど、人は一人になっていく。どんどん孤独になっていく。そして、たくさんのものを、ひとつずつそいでいくと、目指すものがより明確に見えてくる。」

  • アスリートでありながら、自らの内省で紡ぎだした言葉の数々は、哲学者の雰囲気すら漂う。借りてきた言葉ではなく、自らの自信、挫折、挑戦、限界、そして受容という数々の経験をもとにした言葉だから、とても響く。
    全ての人が一生涯一番でいられることはない。どこかで理想と現実との残酷なギャップを受け入れざるをえない。それであっても、いや、それであるからこそ、理想を掲げ、挑戦するプロセスにこそ生きがいがあり、充実感がある。アスリートだけでなく、普通の人にも参考になる言葉が溢れている。

  • 同じ日常を過ごすということは、違う日常を諦める選択をしているということ

  • 頭の中で凄く色々考え、自分と向き合ってきながら走ってきた人なんだなぁと思った。

    しかしこの淡々とした語り口はズッシリとした想いというものがあまり伝わってこなかった。
    それは為末さんが読者に伝えると言う意識がそこまで強くなかったからなのか。

    常に考え続けてきたトップアスリートだからこそ納得する部分はあったけど、全体的に見たら5割くらいの満足だった。

  • 目標がはっきりしてるから、考える。

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著者プロフィール

『侍ハードラー』の異名をもつ元プロ陸上選手。そして、日本では未だに破られていない男子400mハードルの記録保持者(2001年エドモントン世界選手権 47秒89)。2010年、アスリートの社会的自立を支援する「一般社団法人アスリート・ソサエティ」を設立。現在、代表理事を務める。現役中は、2007年に東京の丸の内で「東京ストリート陸上」を自らプロデュース。2011年、2012年は地元広島で「ひろしまストリート陸上」も開催するなど、陸上競技の普及活動に積極的に取り組む。2012年6月、日本陸上競技選手権大会兼ロンドン五輪代表選手選考競技会にて現役活動に終止符。この後の展開が大いに期待されている。1978年広島県生まれ。著書:『日本人の足を速くする』新潮社 『走りながら考える』ダイヤモンド社『諦める力』プレジデント社 『負けを生かす技術』朝日新聞出版

「2016年 『限界の正体』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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