- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784478027332
感想・レビュー・書評
-
現在は自動車部品関連、以前は石油会社に勤務していたこともあり、将来の自動車やエネルギーについて興味があります。
現在アメリカで進行中の「シェールガス革命」や、日本で実用化にむけた「メタンハイドレード」について、私はこの本の著者である中原氏と長谷川氏から多くの情報を得ています。
今回の本で両氏の完全な差異が見られたのは、メタンハイドレードの将来性に関する見解でした。長谷川氏は2018年より実用化が早まるとする一方で、中原氏は現在の技術では無理だろうとしています。
その根拠は、ハイドレードを採取する際に同時に吸い込んでしまう「砂」を処理できないと、かなり現場の取材をしたからわかるような内容もあったように思います。
勿論共通点もあり、車については、中期的にはハイブリッド車が栄えて、その後を引き継ぐのは、今まで言われていたような電気自動車ではなく、水素燃料自動車のようですね。つい最近までは1台1億円といわれていましたが、来年末(2015.12)にはトヨタから燃料電池車が500万円程度で発売されるようです。
電気自動車と異なり燃料の水素は、既存の石油メーカが供給でき、いまの位置づけを持続できるのも電気自動車と異なった魅力のようです。
この本は、2025年の日本も含めた世界がどのようなっているかを予測したものです。この頃私は60歳を超えていますが、中原氏によれば、定年も年金受給開始も延ばすべきで、私も働き続ける必要がありそうです。
自分の両親とは異なった生き方をする必要のある環境のなかで、自分の将来像をイメージしつつ楽しんで人生を送ることが出来るように、これからも読書を楽しみたいと実感できた本でした。
最も印象的なフレーズがこの本の最後にありました、読書を通じて、いろいろなジャンルの知識を知っておくことが、グローバル社会を勝ち抜くための武器になる(p246)です。読書ってイイですね。
以下は気になったポイントです。
・歴史を振り返ると、デフレになるか、インフレになるかは、エネルギー価格に大きく左右される(まえがきp7)
・上位10%の富裕層が占める国民所得の割合は、日本は40%、イギリス39%、フランス33%、アメリカ48%、1%の場合は、米:19、英:12、日本は9%、仏:8%となる(p3)
・古代ローマ帝国の衰退の一途となった理由として、奴隷の供給が頭打ちになった。現在も安い人件費を提供してくれる人たちが必要(p10)
・これからの世界の潮流、1)先進国で中間層が減少、新興国の富裕層が増加、2)先進国内で格差拡大、新興国でも同様、3)これまでの高成長はない(p15)
・日本ではエネルギー価格の上昇分を製品価格に転嫁せず、従業員の賃金を抑えることで価格をあげずにきた(p19)
・IEAは、2015年までにアメリカは天然ガス・原油の両方で世界一の産出国になると修正した(p21)
・アメリカ国内のシェールオイル埋蔵量は2011年に320億バレルと発表したが、2012年には580億バレルと修正。世界全体では3450億バレル、これからも上方修正されるだろう(p22)
・現代生活に欠かすことの出来ないエチレンは、従来の10分の1程度の価格で、数年後にはアメリカ南部の工場で大量生産される。石油化学工業は、ガス化学工業に変わりつつある(p27)
・カタール産のガスが、アメリカが輸入しなくなったので欧州へ向かった、それまで支配していたロシアは、カタール産にシェアを失ったので、アジアに販路を求めざるを得なくなった(p33)
・アメリカはピーク時には国内消費量の67%を中東からの輸入に頼っていたが、2012年には47%と減った(p34)
・原油価格が下がると、食糧価格もそれに反映して安くなる、大型機械の燃料費が下がるので、するとそれを飼料とする、牛・豚・鶏などの飼育コストもさがり、食肉
・卵も安くなる(p36)
・良いデフレは、物価下落率が所得下落率よりも大きい、悪いインフレは、物価上昇率が所得上昇率よりも大きい(p43)
・過去のイギリスで起きた産業革命と、現在のアメリカのシェール革命は、技術革新で産業構造をかえる・エネルギー革命によりデフレになっていく点でも、同じような経路をたどるだろう(p52)
・OPECは2035年の原油価格が1バレル160ドルになると予測しているが、OPECの国内事情を反映した願望にすぎない。サウジアラビアでさえ、財政上の損益分岐点となる原油価格は、アラブの春以降は、1バレル=90-100ドル(p61)
・カナダのブリティッシュコロンビア州にて、複数の日本企業がLNGの輸出計画を進めている、年間800万トン(一般家庭2560万世帯の年間消費量)、出光がアルカダスと進めているのが輸出第一号(p64)
・2017年からのアメリカシェールガス輸出は、大阪ガス・中部電力が440万トン、東芝は220万トン(テキサス)、住友商事と東京ガスはシェールガス液化・販売する出資会社設立、住友商事は80万トン(デラウェア州)、三菱商事と三井物産はルイジアナ州で液化事業を承認(p65)
・燃料電池車は、発電効率がよく騒音、振動がない。水素充填はガソリン給油と同じく数分、航続距離もガソリン車なみ(p81)
・日本政府は水素スタンド建設に補助金を出すことを決定、2015年度の100箇所を皮切りに、2025年には1000箇所、現在のガソリンスタンドは3.77万箇所、電気充填スタンドは7400箇所(急速充電:1300)(p82)
・千代田化工は、ガスに含まれる水素をトルエンに溶かし、それを輸送し専用設備で水素だけを取り出す、類の無い技術を持っている(p85)
・日本と欧州は水素の普及に舵を切る、アメリカは安い天然ガスがあるので、水素よりもガスが圧倒的に普及するだろう(p94)
・メタンハイドレートを吸い上げるときに周りの砂も一緒に吸い込んでしまい、その砂がパイプに詰まって吸引力が低下したので生産を中断せざるを得なかった(p97)
・南鳥島での高濃度レアアースは中国の鉱山の30倍であり、30倍のコストがかかっても採算とれる(p98)
・スマートフォンは、パソコン・デジカメ・音楽プレーヤの役割を備えているので、各々の市場がスマートフォンに食われてしまった(p114)
・ソフトバンクが電力小売で有利なのは、料金請求システムのインフレがあること(p120)
・中国の2001年の平均年収は1.08万元だったが、2013年には5.1万元(上海では7.2万元:120万円程度)、12年で4.8倍、年率換算14%(p130)
・海外移転する時代は終わりを迎えつつある、1)中国都市部の人件費上昇し、2025年の北海道・東北・九州などの人件費はあまりかわらない、2)シェールガスなどのエネルギー革命、発送電分離により電気料金安くなる、3)法人税引き下げ余地ある(p148)
・JXは、自社生産している水素をトルエンに溶かして、常温常圧のままトレーラーで運ぶ技術を開発している。これだと高圧の圧縮水素を運ぶ専用トレーラ不要、ガソリン用トレーラがそのまま使用可能、液体のまま貯蔵するので爆発しない(p155)
・燃料電池車の国際的な安全基準は、日本案が採用されることになっているので、日本メーカは国内仕様のままで海外販売可能(p170)
・2025年の自動車は、日本と欧州ではハイブリッド、燃料電池車が売れ始める、アメリカでは天然ガス車、新興国では燃費のよいガソリン車が中心で、富裕層ではハイブリット車も売れていく(p173)
・日本国内にとどまって勝ち組になれるのは、自動車およびその関連、環境技術、ロボット、負け組になるのは、家電と化学(p182)
・国民年金、厚生年金の利回りの設定が「4.1%」としている、直近7年間は1.44%である。また、物価上昇率:1.0%、賃金上昇率:2.5%という前提も現実的ではない(p208)
・日本に残された現実的な選択肢は、1)社会保障現状維持で、消費税40%、2)社会保障3割削減、消費税30%、3)退職年齢を75歳、消費税20%(p213)
・国民皆年金ができたのは1961年、当時の平均寿命は68歳、支給開始年齢が60歳、8年間の年金がもらえる計算、現在もそのようにすると、支給開始年齢は76歳となる(p214)
・欧州年金制度は、持続性では日本よりまともだったが、欧州危機をきかっけに支給開始年齢が引き上げられた(p216)
・ビジネスの基本は、そこで商売する国の言語を使うこと。中途半端な英語の勉強よりは、その時間を、様々な国の文化や価値観、とくに歴史と宗教の勉強にあてるべき(p235,238)
・海外留学をするにしても、その国の歴史、宗教、文化、価値観、ライフスタイルを学ばなければ意味が無い(p243)
・読書を通じて、いろいろなジャンルの知識を知っておくことが、グローバル社会を勝ち抜くための武器になる(p246)
2014年8月3日作成詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
現在、ツイッターでは自動投稿が禁止されたため手動で行っているのだが、中原圭介の指摘は極左暴力集団と化したブラック・ライヴズ・マターが台頭する昨今であればこそ、来るアメリカ大統領選挙の意義がありありと見えてくる。
https://sessendo.blogspot.com/2020/10/2025.html -
かなり楽観的な予測の話。エネルギー問題は原発がなくてもシェールガス、天然ガス、水素エネルギーで解決されるらしい。エネルギーの観点からみるとそうかもしれないが、他に見逃している問題が多い気がする。世界の国々が現状のままでいけばの話なので、今後、戦争はないにしても、独立運動やら内戦やらで大きく変わるところもあるだろう。
-
経済合理性に基づいて、俯瞰的に見た世界予想。日本の良い部分を伸ばせば著者の言うハッピープランになる可能性はある。が、ここまでのことを決められる事が出来るかという点の予想が一番難しい。
とは言え、最後に述べてる、インプットを増やさないと何も始まらない。 -
期待していたよりも、非常に楽観的な将来予想が展開されていた。
本書では、エネルギー価格が下がることを前提にされているが、
目の前で起きているニュースを見る限りでは、あまり信用できないように感じたが、、、
実際に10年後、この予測がどのくらい当たっているか?も楽しみ。
以下は、たいへん参考になった。
「よいデフレ」 :「所得の下落」よりも「物価の下落」がはやい=生活が豊かになる
「わるいデフレ」 :「所得の下落」よりも「物価の下落」がおそい=生活が苦しくなる
「よいインフレ」 :「所得の上昇率」よりも「物価の上昇率」がひくい=生活が豊かになる
「わるいインフレ」:「所得の上昇率」よりも「物価の上昇率」がたかい=生活が苦しくなる
これは、
「よいデフレ」→「よいインフレ」→「よいデフレ」
が
スパイラルで移行できると良いとのことであると判った。
・アメリカの『シェールガス革命』
これで物価や、その他のエネルギー価格が下落する
というのが著者の理論
→『シェールガス革命』を知らないとダメだな。
・日本はデフレの影響で、
生活保護受給者は、およそ人口の58人に1人
悪いインフレのアメリカは、
6人に1人が食料購入補助制度の世話に。
→本当かな?日本の58人に1人は、すごい数字だな。。
1.2億人として、58で割ると、206万人だけど。
・『日本期待の「メタンハイドレート」は失敗する』
水深1000メートル下のシャーベット状で存在する
ためストローによるくみ上げ時に、一緒に吸った回りの
砂のため、パイプがつまって作業できなくなったが、
このことは、TVメディアでは、あまり放送されていない。
→これは、そうなのか。。
でも、もともと「メタンハイドレート」は採掘できても
たいした量じゃなかったよな。
・『日本は、原子力発電から完全に撤退するわけにいかない』
日本はアメリカと締結した、原子力協定に基づき、原子力技術を
研究しているが、アメリカは、原発から出る「核燃料の再処理」
を原則として止めている。
再処理は同盟国の日本が肩代わりし、そこで磨いた技術を
アメリカと共有しているのが実情
日本は、プルトニウムをアメリカに返還することで合意したが
もし、ここで日本が原発ゼロを選択してしまうと、原子力
関連作業と技術が衰退し、日米両国で核に関する技術が失われる
核不拡散を目指すバランスが崩れてしまう。
→「えっ?!」そうなの?
この記述は、結構驚き!
そうだとすると、日本は、原発完全停止できないジャン!!
-
シェール革命で良いデフレになって日本復活、みたいな話。電気代下がって、賃金相対的に下がって、法人税も下がって、というトリプルダウンは賃金以外実現してませんねぇ。
-
買いたい
-
2016/05/03
メモ
・エネルギー価格の下落
・経済成長の停滞
・次世代エネルギーとしての水素
・少子高齢化社会
など