石油の帝国―――エクソンモービルとアメリカのスーパーパワー

  • ダイヤモンド社 (2014年12月19日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (656ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478029107

作品紹介

アメリカ最大最強の企業が世界で繰り広げた資源獲得競争の知られざる裏側を余すところなく描き出す迫真の国際ドキュメンタリー。

石油の帝国―――エクソンモービルとアメリカのスーパーパワーの感想・レビュー・書評

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  • 例えば、テレビ局がこの本のどれか一つの章を取り上げたとしたら、それだけで少なくとも一時間の特別番組を制作できる筈だと思う。もしそんな番組が制作されるのなら、出来ればそれを会計帳簿上の数字や組織の上に立つ人々の視点からではなく、現場で働く者たちの視点から描いて欲しい。この本に描かれている世界の一部に身を置いて来た者としては切にそう願う。この業界が米国のみならず日本でも人々から好意を持って受け止められていないと認識しつつ、それでも国内のエネルギー供給の一助になればと思いながら、文字通り汗と泥にまみれて働いているもののことを身近に知るものとしては。オイルショックの記憶のない世代、それは居間の照明が裸電球であったことも、集合住宅の最上階に住む友達をコンクリートむき出しの階段を登って訪ねたこともない世代、更に言えばテレビに色が着いたときの感動を知らぬ世代だとも言える世代が、居心地の良い部屋のソファーでぬくぬくとテレビを観ながら好き勝手言えるのも日本にエネルギーを届けたいという気持ちがある人々がいるからなのだということを、ほんの少しでも解ってもらいたい。

    もちろんジャーナリストとして対象を批判的な立場で眺め取り組むことは重要であると思う。けれど、エクソンモービルの本当の凄さは、この本の中心で描かれているテキサスやワシントンの大物たちの中だけにあるのではなく、過酷な現場で働く人々の中にこそあるのだということが、石油のことを余り知らない人々にも伝わるようにも描かれていたなら、と少し残念に思う。例えば、ダニエル・ヤーギンの「石油の世紀」は、本書以上の大分な上に取り扱っていた時代も広範囲だったけれど、視野が多角的で躍動感があり、初めての海外赴任で石油開発の前線に携わり始めた頃に読んだせいもあるが、身に沁み始めたこの業界の巨大さを噛み締めつつ、わくわくしながら読んだ記憶がある。けれど、残念ながら、本書は、これを読んでこの業界で働いてやろうと思う人々を沢山生み出すとは思えない。山崎豊子の「不毛地帯」を読んでやりがいを感じた記憶が、執拗に本書に対して批判的な感情を喚起する。

    とは言え、本書のような大分の石油業界にまつわる本が出版されるということは良いことだと素直に思うし、次々とこのような本が世に出てくるアメリカという国は、やはり石油に対する一般市民の関心が高い国なのだなとも思う。日本における石油会社のイメージは実に偏っていて、今は横文字の名前の会社ばかりになった日本の石油会社だって、利益の大半はガソリンを売ることではなく、掘って探し当てた石油を生産して販売する部門が支えていることを知っている人の数は少ないだろう。例えばエクソンという会社がガソリンを売る以外に何をしている会社であるかを知る人の割合は、日本では極端に小さいだろうけれど、アメリカでは石油を生産して儲けていることはもう少し知られているからこそ、原油高の恩恵を受けている石油会社からもっと税金を取れという議論にもなるのだろう。それでもこのような啓蒙書のようなものが出版されるということは、やはり石油会社の実態というのは謎めいているものだなと改めて認識する。あからさまに言及されてはいないが、ロックフェラーという名前が喚起する陰謀めいたイメージが、拭い去り難く存在するのだろう。

    確かに、エクソンという会社は昔から何か得体の知れない会社であるというのが業界での一般的な印象で、そこに働く従業員たちも決して楽しげな人々ばかりではないことも事実だと思うけれど、このスケールでプロフェショナリズムを徹底している組織が稀有であることもまた事実だと思うし、そこのところは素直に称賛されて然るべきだと思う。本書でも、ある一面での彼らの徹底ぶりは描かれているとは思うけれど、もう少し負の印象に結びつかない部分の彼らの凄さが描かれても良かったのにとも思う。もっとも、本書に描かれているエクソンモービルという恐るべき規模の会社の徹底ぶりは、想像していた以上のものであったこともまた事実だけれども。

  • 石油産業は国家を体現するかと言わんばかりの濃密なドラマ。

  • エクソンモービルという世界最大の民間企業であり、一つの帝国と言える規模を持った、石油会社の話。
    その影響は単に石油価格と、そこに紐づく産業にとどまらず、政治、戦争、貧困、そして環境問題などに関わり、世界のありとあらゆる”石油の出る場所”で、利権と結びつく。
    それゆえに同社の姿勢はある意味で一貫していて、「資源から生まれる利益を追うだけの存在」として内外両面に、例外を認めずに厳しく対処する。特に本書の前半、リー・レイモンド時代はそれが顕著。時にアメリカと同一視されがちですが、実態はアメリカからおいしいとこだけいただいてる印象。すごい企業だなと思います。もはや世界の公務員みたいな感じ。
    読み物としては、石油流出事件から、海賊の問題、インドネシアやチャドの独裁政権とのつながり、地球温暖化問題への対応など、話題に富んでおり面白い。紙の書籍は分厚すぎるのが難点ですが、その分厚さに見合う内容ではあります。

  • ここ20年くらいのエクソンを追ったノンフィクションで、上下2段組み600ページを超す大著。
    国家を超える力を持とうとしている多国籍企業、地球温暖化、地政学とエネルギーなど様々なテーマで読み解くことができ、読み終わると数段賢くなった気がした。

  • エクソンの30年前のアラスカでの原油流出事件からスタートし、モービルとの合併、Bpのメキシコ湾の事故までの道のりを淡々と俯瞰する。
    経営的には、利益率の向上と埋蔵量の増大が中心に据えられてきた。そのせいで流出事件はおこったが、そこで学んだことにより、BPとは違う緻密な企業文化が確立した。一方その文化は閉鎖的なもので、地球温暖化に対する否定的な態度(一方BPはBeyondPetroleumとまでコピーを作った)、フロンティア諸国での政治や軍との癒着や非合法的な活動の疑いが分かる範囲で記載される。一方政治との結びつきはアメリカでは限定的なようでズブズブという印象は持たないが要所要所でロビー活動やチェイニーとの関係を使ってようではある。

  • [純私的巨像]民間石油会社として世界最強とも言える規模と能力を誇るエクソンモービル。とてつもなく巨大なこの「帝国」が20世紀末から21世紀初頭にかけて、世界中でどのような活動を行ってきたかを、徹底的な調査に基づいてまとめた作品です。著者は、ピューリッツァー賞を複数回受賞しているスティーブ・コール。訳者は、帝石で自らも石油事業に関わった経験を有する森義雅。原題は、『Private Empire -Exxonmobil and American Power-』。


    とにかくスケールがデカく、あらゆる照射角からの精読に耐える一冊。比類なき国際資本が世界情勢にどのように影響を及ぼすかの一端が垣間見えるとともに、石油をはじめとする天然資源をめぐる人間ドラマの数々にしばし呆然とさせられました。エクソンモービルが何故にトップランナーでいられるのかについても言及がなされており、その分厚さにたじろいでしまいそうになりますが、ぜひエネルギーに興味のある方にはオススメしたい良書です。


    エクソンモービルとアメリカ政府の距離感に関する指摘も非常に興味をそそられる点でした。最低でも数十年単位で経営を考えている同社にとって、選挙の影響等から数年単位で政策が変わりうるアメリカ政府は、大筋において信頼足りうるパートナーであり、ときに「救世主」であるものの、決定的に同社の根幹に関わる件では違う道を歩むことができるという点が強く印象に残りました。そしてその「違う道を歩むことができる」というところに帝国と称しても遜色ない力が表れているように思います。

    〜エクソンモービルは、世界のどこにおいても自分たちのルールは自分たちで書くのである。〜

    大著の翻訳、本当にお疲れさまでした☆5つ

  • 国際NEWSで目にした出来事の背景はこうだったのか。国家よりも大きな企業が国家を相手に交渉して工作して仕事を進めていく。スケールが違う。

    国際線の機内で読むと、より気持ちが入り込みます。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。通常の配架場所は、3階開架 請求記号:568.067//C84

  • 世界最大の石油会社エクソンモービルのここ20年間くらいを追ったノンフィクション。原題は"Private Empire"で、まさに私企業ながら「帝国」と呼ぶにふさわしく、現代の国際的紛争には悉く絡んでいるのが分かる。いわゆる「資源の呪い」によって不安定になっている国々の話を見たりしていると、資源に恵まれていることが果たして良いことなのだろうかなどと色々と考えてしまう。
    いずれにしても非常に読み応えもありつつ、単純に物語としても面白く、大部の本ではあるがどんどん読みたくなる本だった。ついでに、装丁も黒基調のなかなか硬派なもので格好良いかと。

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