オープン・イノベーションの教科書――社外の技術でビジネスをつくる実践ステップ

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  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478039229

作品紹介・あらすじ

自前主義を貫くのか、外部の叡智を活かすのか、日本企業の生き残りを賭けた選択のとき。東レ、デンソー、帝人、味の素、大阪ガスからフィリップス、P&G、GEまで、国内外の成長企業が実行する新戦略のすべて。

感想・レビュー・書評

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  • 急遽「オープンイノベーション」について知る必要が出たので、
    急いで読んでみましたが、期待を上回る良い本でした。

    とにかく、素人にも分かりやすく書かれており、
    全体像が理解できます。
    また、理論(全体像)と具体例のバランスも絶妙で、
    理論(抽象)と具体の両面から理解が進みます。

    これ読んだからと言って、企業でのオープンイノベーションがいきなりうまくいくということは当然ないのですが、
    書籍に載っているフレームワークを元に、
    自社の出来ているところ・出来ていないところの議論ができるとよいかと思います。

    「オープンイノベーション」について学びたいとき、
    最初の一冊として手に取っても良い本だと思いました。

  • 著者:ナインシグマジャパン顧問星野達也氏の思いとして「日本のモノづくりの復活に賭ける!」というタイトルがあった。「自分の頭脳を駆使して、価値を創造し、それを社会に提供する事で、人々を幸せにするのが製造業だ」。欧米において急激にモノづくりのあり方が変化しつつあるなかで、日本だけ取り残されるという事は絶対に避けたい。むしろこの流れに上手く乗って、日本がモノづくりで復活するチャンスに変えて生きたい。本書はモノづくりにかかわる全ての肩に対するメッセージである。というところに、モノづくりをしている一人として感動を覚えました。以下備忘録です。
    ---------------------------------------
    大企業と中小企業、両者の強みを開発に生かす
    フィリップスのオープンイノベーションがうまくいく背景は、組織的に活動する点と、協業相手に最大限の敬意を払い、対等な関係を構築して、信頼のもとに協業を進める姿勢にある。オープンイノベーションは、技術を導入する企業と技術を提供する企業があってはじめて成り立つ。かつ、両者がWin-うぃnとならない限り継続性がない。大企業が中小・ベンチャー企業から技術を導入する事は、大企業の豊富な資金力の恩恵を受けつつ自分達の技術が世に出るため、中小ベンチャー企業にとって大きなチャンスである事は間違いない。一方、大企業に有利な条件で交渉を進められたり、技術を掠め取られたりするのではという懸念も、中小ベンチャー企業側には常に付きまとう。フィリップスは自ら「外から選ばれる企業になる」というメッセージを発信していることもあり安心してコンタクトできる組織なのである。
    自前主義に訪れた限界
    研究開発において、常に「競争に勝つために達成すべきレベル(MustDo)」と「自社で達成できるレベル(CanDo)」の間に乗り越えなければならないギャップが生じる。以前はそのギャップを埋めるためには「自分達で頑張る」が一般的な姿であったが、昨今求められるレベルが高まる一方で、達成するまでに許される時間はどんどん短縮している。その結果、ギャップを埋めるためには「既存のネットワークの外の技術を活用する」という発送に変わってきているのである。
    オープンイノベーションは武器になる
    日本の製造業は優れた組織力をもとに1970年代から80年代まで急成長を遂げたが、90年代以降は苦戦を強いられている。韓国、中国、台湾といったライバル国の台頭、IT化やグローバル化の並への乗り遅れ、進まない水平分業、国内メーカ同士の消耗戦・・・苦戦の理由は一つではなくさまざまな要因がじわじわと効いてきている。
    とくに90年代になると、技術の多様化が急激に進み、研究開発の全てを自分達だけで行っても市場のスピードについていけなくなった。そうしたなか、必要に応じて外部の技術を利用することで研究開発をスピードアップさせる、いわゆる「オーぷにのベーション」の発送が芽生えてきた。
    オープンイノベーションとは、モノづくり企業(いわゆるメーカ)が、モノづくりの過程で見えてきた課題に対して、自分達だけで解決することにこだわらず、必要に応じて社外から最適な策を探し出す事で、より迅速に課題を解決するための手段である。全てを自社開発する「自前主義」(クローズドイノベーション)とは大きく異なる考え方であり、「スピードを優先し。自分達でできなければ、外部の知見を活用してでも何とかする」という狙いがそこにはある。
    なぜオープンイノベーションは広がっているのか
    1.知識労働者の増加と分散
    研究開発に携わる人材は世界に800万人。研究者の数が増加するとともに世界中に分散する傾向にあるので、最適な技術を探すには世界中を広くカバーしなければいけないことになった。これまでのような、近所の大学やサプライヤーとのお付き合いなど限られた範囲だけで、全てを解決する時代ではなくなってきている。
    2.社外組織の技術力向上
    90年代からシリコンバレーを中心として起業ブームが起こり、西海岸を中心に有望なベンチャー企業が次々と設立された。大学や大手メーカから優れた技術を持ってスピンアウトするようなケースが良い例であるが、それらはここでいう中小企業に含まれる。ベンチャーキャピタルなどの登場と共に、優れた技術を持つ企業に投資マネーが回るようになり、さらなる技術の磨き込みが行われ、まずますお金が回るようになるという循環が生まれている。彼らは大手メーカに対する技術提供に前向きである事が多く(むしろそれを目標とする企業も多い)、大手メーカとしては組みやすい相手となる。つまり、高い技術を保有し大手企業との連携を希望する中小企業fが急増しており、それがオープンイノベーションの広がりを後押しする一つの動きとなっているのである。
    3.仲介業の設立
    800万人いると言われる研究開発人材のなかで、日本におけるその数は86万人。たかだか11%にすぎない。グローバルなものづくりの世界において、日本の存在はごく一部であり、優れた技術が日本以外にあるという可能性はけして否定できない。
    オープンイノベーションの誤解
    「近くの大学とのお付き合い」「グループ内連携」とオープンイノベーションの違いは、想定内の範囲でよしとするか、可能な限り最高の技術を求めるかの違いにある。フィリップスは、自社のオープンイノベーションを定義する際に、あえて「これまで付き合った事のない組織の技術を取り込む」としている。「2番目の技術をつかむことはリスク」という言葉もあるが、モノづくりの世界においては、いつでも逆転される可能性があるため、できる限り高みを目指す意識は重要である。
    アウトソーシングではなくインソーシング
    アウトソーシングは、空洞化や技術情報の流出などを想像しアレルギー反応を起こす。オープンイノベーションは「インソーシング」であり技術の強化なのである。アウトソーシングとはコスト削減などを目的として、本来社内に保有していた機能、たとえば生産設備などを、社会組織や第三国に委託することである。その際には、委託先に十分な技術力がないので、技術指導を伴う事とし、社内から社外へ移した機能・設備の分だけ空洞化が進むのだ。一方で、社外技術の探索は、社外の優れた技術を自社内に取り込む事であり、アウトソーシングとは真逆にある。技術やノウハウの流れは「外から中」であり、技術の流出を気にするのはむしろ技術を提供する側である。さらには、単に技術を買うだけでは使えないので、必ず何らかの追加開発が必要となる。そのため、最終的には自社に特化したオンリーワンの技術が確立される事となるのである。それゆえ、技術探索型のオープンイノベーションをインソーシングと呼ぶ事も多い。
    コストは増えるが投資効率は高まる
    売り上げ高8兆円のP&Gは、年間20億ドル(約2000億円)という巨額の研究開発費を使い、研究開発部門には9000人規模の研究者を擁し、世界トップレベルの研究開発を行っている。それでもオープンイノベーションによって社外技術を世界中から集めるのは、研究開発において「スピード」を最重要視しているためである。「外部技術を使ってでもいち早く商品を送り出すことが重要である。コネクト・アンド・ディベロップ戦略によって、これまで3,4年かかっていた商品化が2年でできるようになった」と発表している。商品化が早まる事で、当初予定していた売上げ計上のタイミングも早まる事となり、競合との差別化やキャッシュフローの点で有利になるだけでなく、リソースを次の開発に向ける事ができるため、そのインパクトは絶大である。
    技術探索型オープンイノベーションの4つのステップ
    オープンイノベーションには2つの形がある。1つが自社にない技術を探し出して導入する技術探索型(インバウンド型)オープンイノベーション、もう一つが自社の保有する技術を価値に変える技術提供型(アウトバウンド型)オープンイノベーションである。技術探索型オープンイノベーションのプロセスは1~4の4つのステップに分ける事ができる。なおこのフレームワークはグローバルに認識されたステップであり、1.What社外に求める技術の選定、2.Find技術の探索、3.Get技術の評価、4.Manage技術の取り込み、と表現される。なおその前のステップ0として、社内の啓蒙活動が必要。
    啓蒙活動の中心は、理想的には社長、少なくとも研究開発のトップがなるべきだ。フェイリップスやP&Gのような先行企業ではCEOやCTOが社内に対してメッセージを送り活動を鼓舞している。
    技術探索の3つのフェーズ
    研究、開発、量産、いずれのステージでもオープンイノベーションは威力を発揮する。
    ①研究フェーズの技術探索:例1)新規ビジネスの加速(共同研究パートナー探索)、例2)将来技術の早期取り込み(材料の開発パートナー探索)、3)他のアプローチで保険をかける
    ②開発フェーズの技術探索:例1)製品化直前のトラブルシューティング、例2)長寿命化(封止剤募集、例3)既存品の改良(表面に汚れを付きにくくする技術)
    ③量産化フェーズの技術探索:例1)検査技術(不良品検査技術募集)、例2)省人化(組立工程のロボット化)、例3)不具合の解決(鉄板の二枚取り帽子技術)、例4)低コスト化(有機化合物の反応経路を最適化するアイデア)
    大阪ガスの例
    2009-2012、ニーズ205、集めた提案2500(ニーズあたりの提案数12.2)、社内へ展開した提案数900、協業開始126(5.0%)
    2013上半期、ニーズ78、集めた提案283(ニーズあたりの提案数3.6)、社内へ展開した提案数118、協業開始22(7.8%)

  • 題名のとおり、まさに「教科書」
    日本のオープンイノベーションの事例を細かに紹介するとともに、そのHowToをまとめている本。

    まず、オープンイノベーションとして、埋もれている技術を探し出す方法を4つのステップとして紹介しています。
    (0)啓蒙活動実施
    (1)社外に求める技術の確定
    (2)技術の探索
    (3)技術の評価
    (4)技術の取り組み
    当たり前のステップですが、それぞれのステップで何をやらなければいけないか、何を気をつけるべきか、どのようにそれをするのかを具体的に記述しています。
    そして、それを大手企業5つの事例として紹介しています。
    東レ、味の素、大阪ガス、デンソー、医薬品業界
    企業のトップが自ら情報発信したり、組織を直轄にしたり、推進チームがいたり、現場からボトムアップの活動だったりとさまざまです。

    さらに、技術提供側にもフォーカスをあてており、どうやって優れた技術を提供するかについても記載されています。
    提供のアプローチの仕方としては
    売り込み型アプローチ
    提案型アプローチ
    どちらの方法にしろ、具体的にそのやり方を伝授してくれています。
    そして、やはり、その実例として大企業からベンチャー、大学まで4つの事例として紹介しています。
    大企業(帝人)、中小企業(ハタ研削)、ベンチャー企業(JAC)、大学(香川大学)
    それぞれがどのようにして技術を売り出したのかこれまた具体的に書かれています。

    オープンイノベーションといえば海外とばかり思っていましたが、日本国内にもこのような事例があるのが驚きでした。
    筆者は日本の技術力は間違いなく世界一と言い切っており、オープンイノベーションを通して、日本のものづくりを強くしようとしています。
    大企業だけでなく、中小企業、ベンチャー企業にもすごい技術があり、本書をよむとオープンイノベーションが日本のものづくり復活のポイントになるということが理解できます。

    筆者の会社のホームページに行くと、まさに技術の出会い系サイトとなっていました。

    http://www.ninesigma.co.jp/

    ここで見てしまったものは、弊社のコンペチターがすでにオープンイノベーションを取り組んでいるということ。弊社は遅れているなぁ...って感じてしまうHPでした(苦笑)

  • オープンイノベーションの教科書

    ■外部の知恵を活かす新戦略
    ■自前主義では生き残れず、変化の速い現代、必要に応じて社外から最適な策を探し出すことで迅速に課題を解決する。

    ■自前主義の限界
    ・競争激化に伴い、研究開発にスピードが求められる。
    ・モノづくりに対する要求レベルは高まる
    ・競争に勝つために必要なスピードで開発するには自分たちだけでは対応しきれない

    ■オープンイノベーション
    ・研究開発に必要とする技術を広く探索する「技術探索型」
    ・これまで築き上げてきた技術を有効利用する「技術提供型」

    ■技術探索型
    ・誰か技術を持っていませんか?と世界に向けて問いかける
    ・P&G ポテトに可食性インクで文字を印刷
    ①自社が求める技術を見極める
    ②技術的な表現で分かりやすいコミュニケーションを作成し
    ③世界中から技術を求め
    ④素早く導入することで、製品化のスピードアップを実現し
    ⑤大きなインパクト・売上につなげた

    ■技術提供型
    ・保有する技術を価値につなげる
    ・フランスの化粧品メーカーが新しい色の口紅の開発、
     広島の戸田工業がプリンター用に開発したハイブリット色素を提案し、新しい口紅が誕生
    ・世界最大の化粧品メーカーの製品に日本の中堅企業の技術が使われている。

  • 教科書的な内容。もう少し深い議論が欲しかった。

  • オープンイノベーションの重要性についてか書かれている。
    オープンイノベーションの際は、自分の求めている技術を把握することも大事。または、新しい技術などはお試しで少しずつやってみるなども良い。

  • 開発目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99754582

  • 技術探索、技術提供の2面から、オープンイノベーションの進め方を体系的に説明している。IT企業にてオープンイノベーション担当にアサインされたが、セオリーを活用させてもらっている。

  • 若い人たちが夢中になっている、オープン・イノベーションという概念を知りたくて、おじさんは図書館で借りて勉強する。
    大体の概念は理解したものの、日本の製造業復活という著者の気持ちが熱すぎて、少々閉口してしまう。あんこの部分の事例は読まずに、とりあえず返却。

  • 日本におけるオープン・イノベーション仲介業の先駆けである、ナインシグマ社設立メンバーの一人である星野達也氏による一冊。
    日本におけるオープン・イノベーションの事例が非常に充実しており、成功した場合のメリットはもちろん、よくある苦労も含めて非常にリアルな形で理解することができる。タイトルの通り、オープン・イノベーションに関わる人、関わりたいと思っている人のまさに「教科書」となる本。

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