資本主義に希望はある―――私たちが直視すべき14の課題

  • ダイヤモンド社
3.71
  • (6)
  • (21)
  • (11)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 231
感想 : 17
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478064887

作品紹介・あらすじ

貧困、格差、搾取、環境問題、機械化と雇用…"近代マーケティングの父"が自身の原点に立ち戻り、資本主義の未来図を描く。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 所得格差、貧困、機械化と雇用、環境問題、幸福度など14の課題を挙げて順次解説していくので、現在の経済状況と問題がが俯瞰できます。諸問題の矛先が政治とロビー活動、金融業界に向かうことろも、とても分かり易く説明されていて納得です。終章の「モノだけではなく幸福を生み出そう」はブータン国王が言うところの幸せは物質と精神の両立といったところが主軸ですが、マーケティングの大御所の言葉なのでとても深く感じ入り、考えさせられました。

  • 第二次世界大戦後の冷戦と、ソ連の崩壊は結局のところ社会主義の敗北、資本主義の勝利という結果に終わった。

    しかし、確かにその当時、資本主義は社会主義よりも優れていたのかもしれない。が、それは恒久的に社会主義が資本主義よりも劣っているということを必ずしも意味しない。

    今の世界経済を見てみよう。
    最近話題となったT. Pikettyの「21世紀の資本論」でも論じている通り世界の不平等が拡大している。
    上位10%の人が世界の富の半分を所有し、それを投資に回して不労所得を得ているためである。

    ある有名企業のCEOが年間10億円もらって、かたや世界の大半は毎年100万円以下の貧困層である。
    これははたして健全な社会であるのだろうか?
    そのCEOは、たまたま白人でたまたまアメリカの比較的裕福な家に生まれて、親のお金を使い勉強道具を購入し、良い大学に親の金で行って、良い企業に(たまたま)就職できただけではないのか?

    本書は何も社会主義に移行しようという主張をしているわけではない。
    現在の資本主義のあり方に対して論点を14個示し、それに対して現状を述べ、その解決策を述べている。
    どの論点も、それほど目新しいものはないが、論点を明確に整理した本書籍は貴重だと思われる。

    どれも、一筋縄ではいかない論点ばかりで、しかも互いが関連しあっており解決するには時間と努力と犠牲が必要だろう。

    しかし、これらのテーマを本気で国民皆が論じる時期に来ているのではないだろうか。

  • 名著『マーケティング・マネジメント』を書き、4PやSTPなどの概念を世に広めたマーケティングの神様フィリップ・コトラーが資本主義の課題について語る本。

    コトラーがこの本で指摘する資本主義の14の課題とは、次の通り。
    1. 根強く残る貧困の解決策をまったく、またはほとんど示せない (貧困問題)
    2. 所得と資産の不平等を拡大させる (格差問題)
    3. 何十億人もの労働者に生活賃金を支払うことができない (労働搾取問題)
    4. 自動化の進展に直面し、人間の仕事を十分に確保できなそうである (雇用問題)
    5. 企業活動による社会的費用の一部しか彼らに負担させない (負の外部性問題)
    6. 規制がなければ環境および天然資源を搾取する (フリーライド問題)
    7. 景気循環を生み出し、経済を不安定にする (バブル問題)
    8. 個人主義と利己心を重視するため、共同体と共有資源を犠牲にする
    9. 消費者に多額の借金を促し、結果的に製造業主導経済から金融主導型経済へとシフトさせる
    10. 政治家と企業を一致団結させ、彼らの利益のために大多数の市民の経済的利益を犠牲にする
    11. 長期的な投資計画よりも短期敵な利益計画に与する
    12. 製品の品質や安全性、広告の真実性、反競争的な行為に対する規制を必要とする
    13. GDP成長だけを重視しがちになる
    14. 市場の方程式に社会的価値と幸福を持ち込む必要性がある

    コトラーの目標は、これらの欠点に対して必要な解決策を提案することだという。

    14の欠点のリストを眺めるとわかるように、多くの問題は互いに絡まりあっていて、独立した個別の問題ではない。そのことは著者としても指摘しているところである。また、いくつかの問題はすでに多くの論者から指摘もされていることでもある。格差問題はトマ・ピケティによって詳しく論じられたばかりだし、貧困問題は、J.K.プラハラード『ネクスト・マーケット』やジェフリー・サックス『貧困の終焉』などのベストセラーでも少し前に大々的に取り上げられたし、そもそも社会学者にはお気に入りの話題だ。負の外部性、フリーライド、景気循環は経済学者の長年のお馴染みテーマだし、常に具体的な社会問題になっていると言っていい。

    「資本主義」は、チャーチルが民主主義について語ったのと同じように、「これまでの最悪の経済形態である。ただし、これまで試みられてきた他のすべての形態を除けば」と言えるだろう。チャーチルは資本主義そのものについても「資本主義が持つ欠点は、幸福を不平等に割り当てることだ。社会主義が持つ長所は、不幸を平等に割り当てることだ」と言ったが、うまいこと言う人だ。いずれにせよ、資本主義は世界に広がり、国や市場により、その程度とバリエーションがあるだけだと。確か柄谷行人も、それをシステムとして選択できるのかという意味おいて資本主義はもはや「主義」ではない、と言った(と思う)。この世界においては、資本主義の本質的にもつ課題を認識して、すでにやられているように適切なレベルの修正(規制)を加えていくことになるのだろう。もちろん、リフキンのように技術の進化により資本主義は限界費用ゼロの持つ力によって社会の片隅に押しやられるという大胆な予測をする向きもあるのだが。

    ところで、コトラーさん、もう齢八十歳を超えているらしい。
    コトラーさんがこの本を書いた理由として、1)資本主義を理解したいから、2)資本主義の欠点とその影響を詳細に分析したいから、3)欠点に対する解決策を提案したいから、4)なるべく簡潔な解説書を提供したいから、5)自分には特別な洞察を提供できる資質があると信じるから、だそうだ。八十にしてこのように考えることができるのは全く驚嘆に値する。また、4Pなどのマーケティング理論から始めて、最後はホリスティック・マーケティングといったマーケティングを包括的にとらえる方向に行ったように、資本主義自体を包括的にとらえるという視点に立つというのがコトラーさんの問題設定になってるのだろう。2015年にベストセラーとなったトマ・ピケティの『21世紀の資本』については、この中の格差問題にしか焦点を当てられていないと指摘する (逆に資本主義の課題としてそこに焦点を当てたことが評価されるべきだと思うのだが)。また、あの本は長すぎるという。この歳にして新しく出てきたスター経済学者に対して対抗心を燃やしているようなところはさすが大御所。

    それぞれの主張が独創的であったり現実的であったりするわけではない。それぞれの欠点について処方箋を示すと言っておきながら、よく読むと必ずしもそうではない。巷間よく言われていることも多い。米国の状況に偏っていることも多い (米国に住んでいるのだから当然だし、米国の状況がよくわかることが長所でもあるが)。さらに言うと、格差や貧困などというけれど、そういう著者はおそらくは上位高額所得者・資産保有者なんだろうなとも思う。必読書とは言わないが、それほど長くないので、読んでもいいのでは、という感想。

    ただこういうことを包括的に考える必要はあるのだと思う。AIが単純労働の職場を奪っていくかもしれないということもあり、もしかしたら、ベーシック・インカムというのは世界的にも将来ありなのかもしれないなとは思った。



    『21世紀の資本 』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4622078767

    『ネクスト・マーケット』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4901234714

    『貧困の終焉』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4152087234

    『限界費用ゼロ社会―<モノのインターネット>と共有型経済の台頭』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4140816872

  • コトラー氏の資本主義についての本。、
    資本主義について考察が行われており、思考を整理、、深掘りするのに役立ちそうな一冊。
    余裕がなかったため、今回はさらっと一読まで。


    メモ
    ・資本主義の14の欠点。一部のみ記載
    貧困の解決策を示せない。
    所得の偏在を拡大させる
    規制がなければ環境及び天然資源を搾取する
    経済を不安定にする
    市場の方程式に社会的価値と幸福を持ち込む必要性がある

  • 資本主義には欠陥がある。コトラー的には14こ。ピケティの21世紀の資本の所得格差も、その1つにすぎない。そうな。

  • 【由来】
    ・ピンクの「FA社会の到来」の中古価格を調べる時に関連本で。

    【期待したもの】


    【要約】


    【ノート】
    ・303ページにメドウズのワールドモデルへの言及があった。

    【目次】

  • 26 資本主義の14の欠点

  • 本日発注❣️本日到着‼️

  • 資本主義が持続するために14の課題を挙げ、1つ1つ丁寧に論じている本。
    きっと、資本主義は少しだけ形を変えて存在し続けるのだと感じた。
    脱成長と人々の幸福を測る世界に。
    マーケティングで有名な著者のこれから先の未来を案じた本。

  • レビュー省略

全17件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

2022年11月現在
米国・ノースウェスタン大学経営大学院(ケロッグスク-ル)S.C. Johnson & Sons 特別栄誉教授

「2022年 『「公共の利益」のための思想と実践』 で使われていた紹介文から引用しています。」

フィリップ・コトラーの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×