科学で未来を創造する大学へ Team東工大、2,374日の挑戦
- ダイヤモンド・ビジネス企画 (2024年9月26日発売)


本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
本 ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784478085103
作品紹介・あらすじ
本書は、東京工業大学の140年に及ぶ歴史と未来への挑戦を包括的に紹介する。1881年の東京職工学校としての誕生から現在まで、本学は自己革新を続け、日本の科学技術発展に貢献してきた。
「人をつくり、工業を興す」という建学の精神は今も本学の根幹をなす。この理念のもと、本学は時代の要請に応じて変革を重ね、単科大学から理工系総合大学へと進化を遂げてきた。
特筆すべきは近年の大学改革である。三島前学長主導の「平成の改革」は、日本の産業衰退への危機感から生まれた。本学は大学が日本の経済・産業発展の鍵であるとの認識のもと、教育・研究・社会貢献の各分野で革新的な取り組みを行っている。
教育面では、学士課程から博士課程までの一貫教育や大学院での英語による教育の導入など、グローバル化に対応した新システムを構築。研究面では、基礎研究機構設立や東京医科歯科大学との融合研究推進など、新たな知の創造に挑戦している。
さらに、産学連携強化も重要な取り組みだ。オープンイノベーション機構設立や大学側のコンシェルジュ機能強化など、企業との連携深化により強力な社会貢献を目指す。
本書はこれらの取り組みを詳述し、大学経営改革や多様性推進、国際化戦略など多岐にわたる側面に光を当てる。また、次の100年を見据えたキャンパス・イノベーションエコシステム構想など将来ビジョンも紹介する。
本書を通じ、読者は東京工業大学の過去・現在・未来への壮大な挑戦を知ることができるだろう。
感想・レビュー・書評
-
コメント0件をすべて表示
-
1. 研究体制の再編
- 研究所には優れた研究者が存在し、成果を上げているが、世界に誇れる体制を常に考慮する必要がある。
- 研究分野の再編が必要で、具体的には精密工学研究所と応用セラミックス研究所の講座を交換する検討が行われたが、完全な再編には至らなかった。
- 研究院設立から8年が経過し、フレキシビリティにおいて改善の余地がある。
2. 新たな研究分野の創出
- 「研究ユニット」という制度を設け、新分野開拓を目指すP-(Principal Investigator)を任命し、大学が研究資源を投入する。
- 2005年から始まり、2016年から全学的視点で考えられるようになった。
- 2020年には「細胞制御工学研究センター」が設立され、准教授や助教もユニットを主催する機会が与えられた。
3. 組織の統合と研究力強化
- 旧・附置研は教授が20名以下の中規模研究所だったが、統合後は59名の教授、177名の常勤教員が在籍する大規模組織となった。
- 組織の統合により、各研究所の強みを活かした全体的な将来構想を議論できるようになり、研究のフレキシビリティとダイナミズムが向上した。
4. 研究力強化のための改革
- 学長就任以降、産学連携の強化が重要な課題として掲げられ、2018年にはオープンイノベーション機構の設立を目指した。
- 知財の専門家を招き、産学連携の強化に繋がる特許情報戦略が導入された。
- 2017年にはリサーチマップを作成し、教員の研究分野と実績を評価することで全体の研究力分析を行った。
5. ジェンダーバランスの改善
- 理工系における女子学生の少なさが問題視され、アファーマティブアクションを通じた女子学生の増加を目指す取り組みが始まった。
- 2022年には入学者選抜における女子枠の導入が発表され、女性教員の公募も行われた。
6. 大学経営の改善
- 大学経営において、企業経営の知見を取り入れることが重要であるが、大学と企業の本質的な違いを理解する必要がある。
- 大学のガバナンスと内部統制の確認は監事の重要な役割であり、良好な人間関係を築くことが求められる。
7. 教育改革と人材育成
- 2016年からの教育改革により、学部と大学院を統一した「学院制度」が導入され、学生が主体的に学ぶための環境が整備された。
- 専門性とリーダーシップを兼ね備えた人材育成を目指し、全課程において幅広い視野やコミュニケーション能力を重視している。
8. 産学連携の新たな姿
- 大学発のイノベーション・エコシステムの構築が進められ、技術移転や共同研究を超えた新たな価値創造の取り組みが強化されている。
- 大学発のスタートアップ支援が重要視され、資金確保やコンサルティングなど多角的な支援体制が整えられた。
9. 未来社会への貢献
- 東京工業大学は、科学技術の進歩が社会に与える影響を考慮し、研究と教育を進め、より良い未来社会の実現に貢献することを目指している。
- 社会との対話を重視し、研究成果を社会のニーズに応じて進めることが重要である。 -
【本学OPACへのリンク☟】
https://opac123.tsuda.ac.jp/opac/volume/725260 -
東工大のこれまでとこれからの取り組みについて狙いや意図、想いが説明されていた。
在学生ももちろんだが、これから入学する人、目指している人も読んでみるとモチベーションが上がる気がする。
大学としての在り方を考えさせられる本であり東工大問わず大学関係者にもおすすめだと感じた。
社会人という目線でも科学は文化であるという考え(大隈良典先生より引用)や産学連携のありたい姿も勉強になると思う。
益一哉の作品





