統計学が最強の学問である[ビジネス編]――データを利益に変える知恵とデザイン
- ダイヤモンド社 (2016年9月16日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
- / ISBN・EAN: 9784478100769
感想・レビュー・書評
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本書の結論は、企業の収益性を向上させるためには先人が積み重ねた理論を自社に適用できるようにカスタマイズする必要があり、そのために統計リテラシーを身につけようということである。本書では抜本的な幹となる活動の改善を最終目的とし、経営戦略、人的資源、マーケティング、オペレーションの4つの領域について理論と具体的な分析手順が詳しく解説されている。本感想では、なぜ先人の理論に加えて統計解析が必要となるのか、どのように統計解析をするのかという2点について述べる。
1. なぜ先人の理論に加えて統計解析が必要となるのか
どのような状況にも適用できる万能な理論は発見されていないからである。例えば、経営戦略を考える際に有名なフレームワークとして外部環境に着目するSCP理論、内部環境に着目するRBVがあるが、これらはどちらかが間違っているのではなく、「状況次第」で使い分ける必要がある。そしてそのヒントは企業のデータを用いた統計解析によって得られるのである。
2.どのように統計解析をするのか
統計解析の手順は、分析対象の設定→説明変数とアウトカムの決定→データ収集→データ分析→分析結果の解釈とアクションである。各手順の詳細は本書に任せるが、最も重要なポイントは最終目的に沿ったアクションを起こせるように解析を行うことである。
企業の収益性を高めることはすべてのビジネスマンに求められる課題である。経営学の理論、データ分析の両方に精通することで、ビジネスマンとしての市場価値をより高めることができると感じた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
これはよかった!
「統計学が最強の学問である」のシリーズ第3作目。
1作目は途中から専門的過ぎて基礎知識もなかったこともありついていけなくなってしまいました。
なので、2作目の「実践編」を飛ばして3作目の「ビジネス編」を選んでみましたが、これは正解。
ビジネスでどのようにデータ分析していけばよいかのステップを具体的に解説してくれているので、そこそこついていくことができました。
本書では、4つの分野において、それぞれで分析の仕方を具体的にステップバイステップで解説してくれています。
・経営戦略のための統計学
・人事のための統計学
・マーケティングのための統計学
・オペレーションのための統計学
そして分析手法として出てくるのは主に2つ
アウトカム(最大化または最小化したいもの)が定量的な数字の大小を表す場合には重回帰分析。定性的なものの場合はロジスティック分析。
と分析手法を2つに絞ってくれています。
まず、筆者が一番に上げていることは、リサーチデザインの考え方。どこまでが明らかになっていて、どこが未知なのかを明確にした上で分析すること。そして、枝葉よりも幹となるところの改善を行うことが重要とといています。
そして、4つのテーマについてです。
経営戦略についてですが、リサーチデザインを踏まえて、いままでの経営戦略論についての復習があります。プロダクトポートフォリオ、SWOTや5フォースなどなど。
その上で統計学的な戦略決定の手順を
アウトカムを総資本利益率として以下のステップで分析していきます。
(1)競争する市場の範囲と分析対象企業の設定
(2)分析すべき変数の洗い出し
(3)必要なデータの収集
(4)分析および結果の解釈
アウトカムが総資本利益率なので、重回帰分析で分析を行う事例を紹介しています。
人事については、同様のステップで分析していきますが、アウトカムの設定が難しく、分析手法も定性的になるのでロジスティック回帰分析を用いる例を紹介しています。
マーケティングも、コトラーや4P分析が復習で述べられています。
マーケティングの分析では、先のデータ分析の4ステップを最低3週回す必要があると述べています。
また誰に売るかといったセグメンテーションを分析するにあたり、その分析手法は、重回帰分析でもロジスティック回帰でもなく、決定樹によるクラスター分析がお勧めとのこと。
ポジショニングを分析するには重回帰分析やロジスティック回帰分析を用いるということで、セグメンテーションとポジショニングで分析手法が異なります。
最後、オペレーションの改善に当たっては、バリューチェーンをベースにそれぞれの活動のアウトカムを明確にして、解析単位を決めていくことを述べています。そして業務分析をするにあたっては、まずは今あるデータから分析すること。とにかくできる範囲で分析していき、ある程度作業が見えてきた段階で分析基盤をつくるということ。
ここちょっと耳が痛い..
さらに一番大変な作業はETLということで、これについては腹落ちします。
ということで、4つのテーマについて、何をアウトカムにして、何を説明変数として捕らえ、どのようにデータを集めて、どの分析手法で分析するかを具体的に説明してくれるので、理解が進みます。
今まで読んできた本は、あくまで統計学の説明や基礎でしかありませんでしたが、本書ではビジネスの現場でどのように統計学が利用されるかがイメージできるのがよいです。 -
ビッグデータが網羅的手段であるなら、統計学は、簡易的手段になります。一読をお勧めします。
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統計学を履修していたのと、前著を読んだことあったため、これらの知識を実践的にビジネスの場で活かすことができないかと思い読んでみた。
本書は統計学をビジネスに活かすというよりかは、統計学の視点を取り入れて経営・マネジメントを行うという印象だった。したがってマーケ、人事採用、経営戦略など経営学を勉強する分には役に立ちそう。
自分はそのような立場にないので、実践活用のイメージは湧きづらかったが、理論的な意思決定や経営戦略を推進していく上では求められるスキルになりそう。 -
経営戦略、人的資本管理、マーケティング、オペレーションの順にデータ分析と活用の手法を具体的に解説した良書。
共通するのは、適切なデータ分析対象範囲を決め、適切なアウトカム(=目的変数)を設定し、これに関係しそうな説明変数候補を決め(この時、先行研究で使えるものがあれば大いに参考にする)、ステップワイズ法などで説明変数を適度な数に縮約し、重回帰分析やロジスティクス分析により有意な説明変数を特定し、これを変えることでアウトカムに良い効果が出るかをランダム化テストで検証して改善に繋げる、という流れ。
そのうえで、それぞれのデータ活用におけるポイントもしっかり解説されていた。
経営戦略に関するデータ活用では、アウトカムは総資本利益率が望ましい。必要な説明変数データを収集するのに、帝国データバンクのようなデータ会社のデータのほか、業界団体や、顧客からの評価が知りたければマクロミルなどの調査会社の活用や、営業マンの資質などであれば業界記者や取引先などが使えるとのこと。
人的資本管理については、パフォーマンスの3割程度はIQやSPIで明らかになる汎用的な知能で説明できるが、残りの7割は個別の特性が効いてくるということ。人事情報はアウトカムについても、適宜補正可能な指標を選んでおくことが大事。
マーケティングでは、ターゲットセグメントを決める段階では、重回帰分析やロジスティクス分析ではなく、クラスタリングを用いて有意なグループを見出だして選ぶべき。これは、マーケティングのターゲットセグメント選択は、すなわち他のセグメントを捨てるということであるため、少なくともその変数を満たせば良いという経営戦略や人的資本管理における重視すべき変数の特定とは異なるアプローチが必要であるということである。セグメントが決まれば、当該セグメントの顧客のデータを集め、何がアウトカムである購買行動に繋がっているのか、繋がっていないのかを特定し、どこを強化すべきかを見抜く。
オペレーションでは、どの工程がボトルネックであるかを見抜いたうえで、そこを重点的に強化するべきである。そして、当該ボトルネックのアウトカムと説明変数を明らかにして何を強化すればアウトカムが向上するのかを明らかにする分析とともに、適正な在庫や仕入れやリソース投下を行うための「予測」も必要になる。予測では、他の説明変数だけでなく、過去の目的変数の実績値(例えば過去の売上)を自己回帰的に説明変数として予測する手法も有効である。
経営の戦略や戦術への深い理解と洞察力を併せ持った統計学の専門家の著書として、非常に読みごたえがあった。 -
難しくて、具体的な説明になると、
ついていけなくなるんだけど。
それでも納得できる。
これはそうなんだ、やっぱり、そうなんだ、と。
だから、少しでも理解できるように頑張りたい。
そんなことを思ってしまった。 -
勝てる理由を探るために集めるデータのデザインと解析について、原点に立ち返る
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このシリーズは全て読み切ろうと思って一括購入したのだが、この本だけは星を一つ減らした…。
統計学をビジネスの現場でどう活かすのか?という内容は最後の章に少し書かれている程度で、3/4くらいは先行研究の紹介にとどまる。
それでもなお、先行研究をビジネスマンが調べて、自分の仕事に活用することすらしていない人が多いのでそれをやりましょうというメッセージは分かるのだが、統計学を使って云々…というところは今ひとつかなと思う。 -
統計学じゃなくてMBAで学ぶようなフレームワークの説明ばかり。