金利と経済―――高まるリスクと残された処方箋

著者 :
  • ダイヤモンド社
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レビュー : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478101681

作品紹介・あらすじ

「金利操作と成長」の処方箋黒田日銀政策をあらためて検証する≪日銀金融研究所長などを歴任した金融論の第一人者が語り尽くす≫

感想・レビュー・書評

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  • すごく勉強になりました

  • 元日本銀行金融研究所所長にして、前副総裁が噛みついていた人。翁・岩田論争について、20年かかって、しかも社会実験により正否が判明したことは不幸だった。岩田副総裁を選んだ安倍総理の責任は重たい。

  • 金融政策、財政政策の限界。自然利子率をいかに上げるかという議論が重要。

  • いつまでたっても物価上昇率は2%に到達する気配を見せず、安倍首相と黒田総裁の異次元金融緩和の行き詰まりが見え始めた2017年始め。リフレ派以外の経済学関係者からすると、だから言ったじゃん、って感じなわけだけれども、これまでの異次元金融緩和の何が問題なのか、非常に丁寧に解説されています。

    2013年4月4日、日銀は「量的・質的金融緩和」の導入にふみきります。2%の物価上昇を達成するために、2年間でマネタリーベースを2倍にするというもの。これで、「期待に働きかける」わけですが、「注意する必要があるのは、黒田総裁の説明で明らかなように、マネタリーベースそれ自体には明確な金融緩和効果がない」(p83)。実際、「見せ金」が積まれていくだけで、それが市中には溢れ出していきませんでした。

    2016年1月29日、日銀は次なる手として、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入を決めます。当時、世間では「お金を預けたのにお金取られちゃうの!?」といったかなりのインパクトを持って受け取られていたように記憶しています。個人的には量的緩和よりもマイナス金利のほうが理屈も分かりやすいし、自然な政策だと思うのですが。ま、それはいいとして、日本のマイナス金利政策は、量的・質的緩和政策に付け加えたものであったために、日本特有の矛盾と問題をもたらしたと著者は指摘します。

    これまでの量的・質的緩和により、日銀当座はかなり膨れ上がっていましたが、金融機関への影響を考慮し、この部分にはこれまで同様0.1%の金利を付け、マイナス金利は追加的な日銀当座に対して行われることとなった。一見、妥当な対応だと思われますが(じっさい、日銀当座の全部にマイナス金利が適用されたら金融機関は死んじゃいます!)、この措置によって、0.1%の部分については、「高い金利を日銀が払う代わりに、銀行がこの階層に新たに預け入れることはできない、という形で短期金融市場とは切り離された。これにより基礎残高210兆円がまったく緩和効果をもたないことがより鮮明になった。」(p138)したがって、金融機関にとってみれば「日銀当座預金への付利の性格も一変し、中央銀行の政策に協力して得た正当な運用利益だったものが、突然補助金による不労所得と位置づけられる、という構図で突然、梯子を外された形になった。」(p139)

    「自然利子率が趨勢的に低下している日本の現状に照らすと、金融政策は適切な処方箋ではない。」(p234)金融政策は、トレンドからの乖離をもとに押し上げる力は持っているけれども、トレンドそのものを押し上げる力はないからだ。自然利子率を上げるための(金融政策ではない)取り組みが必要であり、自然利子率の主な要因である「人口問題と正面から向き合うことで高齢化をイノベーションと需要増につなげ、成長の源泉に展開していく必要がある」(p236)

    金融政策は一般市民にとっては分かりにくいし、一見財政とは離れているので、財政政策と違ってコストゼロでできるように見える。金融政策にできることは限られているのだが、上記のような理由で過剰な期待が寄せられ、政治に利用されることがある。そのうえ、失敗した結果は、異次元緩和それ自体ではなく、その手法に求められるかもしれない。金融政策に対する「まっとうな」理解が進むことを願います。

  • 昨今、金融政策、財政政策には、ヘリマネ論など、一見分かり易く正しそうだが、実は粗雑で持続可能でない論が散見される。
    そんな中、本書は金融政策、ゼロ金利政策、量的緩和政策の意義を素人目にも分かり易く、人口に膾炙する誤解を説くように丁寧に論じている。
    今の日本経済の苦境を救う、安易な手段などないのだ。金融政策は時間稼ぎにしか過ぎず(それでもどれだけ時間を稼いでいるのか、という気もするが)、本来の成長力、潜在成長、本書では自然利子率を高めることしかないのだ。

  • 日銀のマイナス金利政策を、わかりやすく整理している本。最初は素人向けの内容だが、最後はそれなりに読みごたえがあった。
    アベノミクスの精神的支柱の浜田先生が緩和でインフレは起こせないと認めた今、いつやめるのか、株安金利高で銀行が潰れるから出来ない?いや、そんな甘いことは言ってられない、壮大な実験のツケは、必ず来る!

  • 東2法経図・開架 338.12A/O52k//K

  • 現代金融政策、特に金利が上昇しない部分にフォーカスしながら過去と現在のアプローチを丁寧に説明している。 ここ数年の論文を交えた長期停滞説の台頭に関する纏めは理解を促した。

  • そういえばこれも読んでいた。やはり納得感高いが、日銀が手を抜いてる感じにも見られそうだし政治的には難しそう。

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著者プロフィール

1951年生まれ。74年、東京大学経済学部卒業、日本銀行入行。83年、シカゴ大学でPh.D.取得。以後、筑波大学社会工学系助教授、日本銀行調査統計局企画調査課長、企画局参事、金融研究所長等を経て2006年、中央大学研究開発機構教授に就任。
09年、京都大学公共政策大学院教授。17年より法政大学大学院政策創造研究科客員教授、京都大学公共政策大学院名誉フェロー。
主著
『期待と投機の経済分析』東洋経済新報社、1985年、日経・経済図書文化賞受賞
『金融政策』東洋経済新報社、1993年
『ポスト・マネタリズムの金融政策』日本経済新聞出版社、2011年
『経済の大転換と日本銀行』岩波書店、2015年、石橋湛山賞受賞
『金利と経済』ダイヤモンド社、2017年など

「2019年 『移民とAIは日本を変えるか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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