- 本 ・本 (468ページ)
- / ISBN・EAN: 9784478101872
感想・レビュー・書評
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『還暦からの底力』で著者の出口氏が脳卒中と闘病していた事を知り、執筆はその前の本だが、本書を読んで、その直前までのパワフルさに改めて感銘を受ける。著者は哲学者でも無ければ、その道の研究者ではないので、オムニバスのように哲学者とその中身を紹介していく仕立てで、良い意味で推論や主張が少ない。そして何より、体系だっていて読みやすい、入門編として素晴らしい作りだ。
宇宙を構成する物質は、5%が水素や炭素や酸素といった元素、70%がダークエネルギー、25%がダークマター・・・人にはフォックスP2と言う遺伝子があって、これが言語中枢に関わっている。南アメリカのある猿は、危険信号を発するぎゃーと言う鳴き声を空を見上げるためか、木の下を見るためか、周囲見回すためが使い分けている。この鳴き声は言語に非常に近い・・・と、こんな所から、開始する。出口氏の気合の入りようが分かる。
以下は個人的に記録しておきたいと思った内容。
人類初の世界、宗教はゾロアスター教。宗教家ザラスシュトラの英語読みがゾロアスター。最高神は、アフラマズダー。偶像崇拝はなく、火を信仰した。ゾロアスター教は、セム的一神教に影響与えた。現代社会に影響与えている宗教を3つに対立するなら、このセム的一神教、インドの宗教、東アジアの宗教に分けられる。ニーチェの『ツァラトゥストラかく語りき 』のツァラトゥストラが、ゾロアスターの事だった?とか、自動車メーカーマツダがMAZDAがアフラマズダーから取っていたとか。なるほど、そこかしこに浸透しているな、と。
ソクラテスの弁証法は、当時は産婆術とも呼ばれていた。粘り強く若者たちの過ちを正していき、真理に到達させる話術。
墨子は人は皆、男も、女も、貧者も、弱者も等しく、人間として尊重されなければいけないのだと説いた。身分、社会を前提とした孔子に対して、現在のヒューマニズムに匹敵する新しさがあった。
牛を神に捧げるバラモン教に対し、牛を奪われた人たちが、牛を捧げることを禁止したブッダを歓迎したのは自然なこと。
エピクロスが主張した快楽主義とは、美味美食や恋人に心を奪われ、夢中になるという意味ではなく、身体的に苦痛を感じることなく、精神的に不安がない静かな状態でいること。魂が掻き乱されていない静音な状態をアタラクシアと呼んだ。心の平静のこと。
エドマンド・バークは政治思想家であり、後に保守主義の父と呼ばれたが、フランス革命を激しく非難していた。王侯貴族に絶対的な特権を与える事は正しくないが、彼らが何百年も積み上げてきたことを簡単に壊すのではなく、少しずつ社会を良くするのが最善なのである。これに対して、トマス・ペインは激怒し、反論して、『人間の権利』を執筆した。ここにいたり、保守と革新という二項対立のイデオロギーが立ち上がる。
カントは自然界に自然法則があるように、人間界にも道徳法則があると述べた。「目的の王国」とは、すべての人間が相手の人格を手段ではなく目的として扱うことで互いの人間性を最大限に尊重し合って生きていく関係を基盤にして成り立つ理想の社会のを意味する言葉。カントは、起床時間から散歩の時間、大学への出勤など、規則正しく日々を暮らしていた。独身のまま生涯を終えた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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ProfessorXさん
オーディオブックって使ったコトがなくて、此の本はページ数が結構あるから試してみようかな?ProfessorXさん
オーディオブックって使ったコトがなくて、此の本はページ数が結構あるから試してみようかな?2022/07/16 -
メンション的な通知が来ました。
心配無用でした、失礼いたしました。
興味があるのは勿論本当で、なるほど。
実生活にも活かせそう…?ですねメンション的な通知が来ました。
心配無用でした、失礼いたしました。
興味があるのは勿論本当で、なるほど。
実生活にも活かせそう…?ですね2022/07/16 -
2022/07/17
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図書館で予約していたこの本を受け取ったとき
「げっ。本屋で見つけたら、絶対手にとらないだろうなー」
と思いました。
興味を引かないタイトルに表紙、分厚い本。
でも読んでみると、これがものすごく面白い!
台風のせいでどこにも出かけられなかったから、
意外に早く読み終えました。
出口さんは学長しながら、よくこんな本を書き上げたなあと。
また、本当にいろいろなことをご存知だなあと。
そしてこういう内容を、私たちのような頭の良くない人たちに、図表を用いてとてもわかりやすく説明することに感心。
それからいつものことだけど、歴史の内容って固有名詞とか解釈とか新しくなっていることが多々あって、そういうことを必ず入れているのもスゴイです。
個人的には近現代の哲学者について、今までより少しだけ理解できたのが嬉しかったです。
他にも読んでみたいな。
「連合王国はいずれEUに復帰するのではないか」と出口さんは思っているそうです。
その過程が目撃出来たらいいのですが。 -
哲学を元に人は認識を深めてきたのだろうし、宗教はそんな認識を一つの世界観として固め、多くの人々を動かしてしまうほどの力を有する。
ヒトが考えてきたことって、どう繋がって、今に至るんだろう、ってずっと見えずにいた。
この本では宗教としてはゾロアスター教から、哲学としてはタレスから始まり、ソシュール、フッサール、ヴィトゲンシュタイン、サルトル、レヴィ=ストロースで幕を下ろす。
とても分厚い本だけれど、それでも語り尽くせないんだな、というのが第一の感想だった。
そんな中で、哲学から宗教へ、宗教から哲学へ、どの時期にどんな思想が生まれ、またその思想はどこへ継がれていったのか、というマップがすごく上手く配置されていると思う。
随分、点から線にする手伝いをしてもらった。
また、この本を起点に何を読めばいいかということも、すごく丁寧に書かれている。
序盤に、「人間が定住生活をし始めたドメスティケーションのときに、人間の脳みそは最後の進化が終わり、それから今日まで進化していないといわれています」とあり。
その言葉が、終盤にも現れる。
人がよく学び、よく働き、良い社会を築いてゆくことが可能になるとか、時間軸と共に進歩していると思い(たい)といった道中で、でも、この言葉に戻ってくる。
生きている限り、苦しみがあるのだとすれば、生きることを捨てる以外に、何らかの救いの道を必要とする人はきっと多い。
昨今、苦しみから自死という形で命が奪われていくことがクローズアップされる中で、社会は道徳的な束縛を強めて、善い社会で在ろうとしているように思う。
けれど、この本を読んで、もっと根本的な、考えるということや、想像すること、いわゆる宗教的なものを知ること、学ぶことにも意味があるのではと、ふと思った。 -
本書を読むまでは、現代を生きる私の価値観のまま、過去に起こった出来事だけをただ追っていた。だが出口氏の言葉に開眼させられた。本書は出口氏に手を引かれて哲学と宗教を学びながら、彼の見解まで楽しめる至極の一冊である。内容はもちろんのこと、本のカバーを外した表紙まで渋い。よくある一冊ではなく、我は「全史」なのだという重みを感じる。
以下、本書より抜粋。
「モーゼの教えもイエスの教えもブッダの教えも、彼らが生きた時代背景の中で、人々によかれと思って説かれました。その教えを現代のモラルを尺度として、批判するだけでは無責任だと思います。彼らが考えた真意に、恒久的な人類愛につながるものがあったがゆえに世界宗教になったと認識すべきでしょう。」 -
友人のオススメにて読み始めたのですが、実は正直、心の中で「え、コレをオススメ!?」と思ってました(笑
本著の威圧的な見た目wと、著者の過去の著作を読んだ際には特別面白かったという印象は無かったので。。
『グローバル時代の必須教養 「都市」の世界史』
https://booklog.jp/users/skylark0311/archives/1/4569835627#comment
読んでみて、良い意味で裏切られました。
本著のテーマ自体は手垢がつきまくったモノで、単に事実を羅列した要約だったりすると途中で寝ちゃう訳ですが、そうならなかったということ。元々1万冊超を読んで来られた著者が、大学の学長や講義でのアウトプットを経て、伝える力を更に磨きあげられたのか。(・・・なんて上から目線っぽく言えた立場では私は全くないのですが)
特に感じたのは、①パッケージングの工夫、②著者ならではの目線 の2点です。
まず①、本著は分厚い割に意外とスイスイ読め、文章の読みやすさもあるんですが、1項目が非常に短く切られていて、章立ても12章+子章的に分かれてるトコがあるので実質18章。読んでて達成感があるのは上手い作りだなと感じました。
それぞれの哲学者の主張の骨子を、その時代背景を踏まえて説明し、同時代の学者たちを横並びに比較し、というのは親切かつグローバル・ヒストリー的な工夫です。今のインドで牛が聖獣となった所以なんかも纏まっているのは非常にキャッチーでした。
続いて②、本著は各哲学や宗教の紹介でありつつ、著者の考察…と言うか、「コイツら(宗教家や哲学者たち)は、当時の時代背景(気候なり、国際関係なり、好み(?)なり)の影響を多大に受けていたはずで、それはこうだ」というのを大胆に打ち出している、というのが凄い。
これはつまり、宗教家や哲学者は普遍的に無謬な存在ではなく、その時代のその環境を必死に生きてきた一人の人間だと相対化する試みのようにも思え、これは本著の最後に取り上げられたレヴィ=ストロースの思想そのものなのでは?とも。
ちなみに、本著を読んで脇道で感じたコトは下記2点。
アリストテレスの言う「中庸」って、鬼が家に侵入してきた時、素手で殴りかかるのは蛮勇、怖がって隠れるのは臆病、んで中庸は「武器を持って知恵を絞って戦う」ということで・・・なんか思ってた中庸と違うと言うか、話し合って解決くらいのヤツが来ると思ってたんですが、元祖がこう仰るのであれば、中庸の捉え方をあらためるべきなのかもしれません。
あと、人間の幸福を求めたはずの哲学者たちが、あんまり幸せそうな生涯を送ってないコトも、ちょっと気になりました。不遇のまま独身で過ごしたショーペンハウアー、発狂したニーチェ、婚約破棄して42歳で亡くなったキルケゴール…。
一連の450ページ余りを読み進めながら、著者が文中にサラッと「驚くほど優れた思想はなかなか登場してこない。人間はさほど賢くはないのです。」と述べたのは、なかなか沁みる言葉です。
薦めてくれた友人にも感謝!良著でした。 -
古代から20世紀までの哲学と宗教について網羅されている。
もちろん、限られた紙幅の中で書かれているため、広く浅くという印象は拭えない。
しかし、押さえるべきところは押さえられており、何より文章が平易で読みやすい。厚い本ではあるが、一気に読み進めることができるだろう。
自分が学部学生時代に受講した哲学の授業では主にカントを取り上げていたが、とにかく難しくてイマイチピンと来ないことも少なくなかった。しかし本書を読んで、当時ピンと来なかったところがクリアになった。
本書を読んで興味を持った箇所があれば類書を読んでさらに掘り下げていけば良いし、哲学史・宗教史について概要を掴められれば良いというのであれば、本書を読めば十分だろう。ただし繰り返し読むことをお勧めする。
「哲学はなんか固そうでとっつきにくそうだ」と思っている人こそ、本書を手に取るべきだろう。 -
48歳にして、あまりにも知らないことが多すぎることを痛感。自分の頭の中の世界が広がった感じ。世界にはおもしろいことおもしろい人が際限なく存在するんやな。知りたいこと考えたいことが膨らんで楽しく得した気分になった。挙げられている参考文献にも取り組んでみたい。まずは、ダーウィンの種の起源から始めたい。
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厚い本だけど、なんとか読み終わった。
おもしろかったけど、やはり哲学は難しい…。
あまり理解できていない気がする。
私自身は宗教の方が興味があるのだが、哲学の記述の方が多かったような気がして、そこが残念。
著者プロフィール
出口治明の作品





