幸福の「資本」論―――あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」

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  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478102480

感想・レビュー・書評

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  • この本が残酷な所は、これから、個人が、
    「好きなことで生きていく」「得意なことで生きていく」ことが、
    「正しい生き方」であると、言っている点だと思います。

    少し前の、日本では、それらの価値観は、「正しくない生き方」とされ、
    全否定されていました。

    強者以外は、それらの言葉を口にはできませんでした。
    「そんな人生甘くないよ」、「もっと現実をみろ!」というのが、
    その価値観を否定する、もっともスタンダードな反応です。

    しかし、ここ十数年で、
    日本と日本人を取り巻く環境がガラリと変わってしまいました。

    相変わらず、政府は、経済成長、経済成長と言っていますが、
    成長できる資源は、日本は、どんどん減少しています。

    多くの識者が指摘していますが、日本の国際競争力は、
    もはやかなりの分野で、失われています。
    これから、競争力をつけるといっても、その担い手である、
    人材の絶対数が著しく減少するので、
    今の状態を維持するのも、やっとだと思います。

    また、上場企業が倒産することは、珍しくなくなりました。
    リストラは今や当たり前となり、組織に依存して生きるというのが、
    かなりリスクな生き方になりました。

    日本は、超高齢化社会+人口減少社会+少子化+労働者数の減少という
    未曽有の社会に突入し、社会の様々なシステムが機能しなくなっています。

    橘氏の一連の著作は、個人が経済的合理的に生きるには、
    どうすればいいか、個人が国家や組織に依存せずに、
    どう生きればいいかという視点で書かれたものが多いですが、
    この著作では、個人の生き方をリスクヘッジする上での
    最適化する「生き方」を述べています。

    それが、自分の持っている資源(人間関係、能力、資産等)を、
    「好きなこと生きていく」、
    「得意なことで生きていく」へ投入するというやり方です。
    これが、最も個人を最適化できる生き方です。

    何かに依存することでしか安定を感じられない、そうでなければ、
    不安になるというのが、
    多くの日本人のメンタリティーです。

    以前は、会社が豊かになれば、個人が豊かになりました。
    今は、全くそうではありません。
    それは、世帯収入を見ると、はっきりします。
    94年比較で、2割以上収入が低くなっています。一方GDPは増加しています。
    一生懸命努力してきましたが多くの日本人は、貧しくなりました。
    今後は、もっとこの傾向が顕著に出てきます。

    以前まで美徳とされていた人生観や労働観が、全く役に立たなくなっています。
    それを認識する上で、橘氏の著作が一定の指示を受けるのは、非常に頷けます。

  • この本は幸福を研究しています。橘さんの悪魔的思考で幸福を考えている、というところが面白い。現代の、この日本という国で、どうやって幸福になることができるのか?それを3つの資本と3つの資産を使って考察しています。その結果、橘さんが最終的に提示する「幸福になる方法」というのは、とてもシンプルな答えです。確かになるほどねぇー、と思いました。だけど、それを書くとネタバレになるので書きません(笑)気になる方は本書を読んでみて下さいね。

    今回は、本書の中で面白いと思った考え方をひとつ紹介いたします。それは「幸福製造装置」という仮想モデルを使って、幸福を考えているところです。それによれば「幸福というアウトプット」を得るには、自分の中にある「幸福製造装置」に、3つの資産と資本、金融資産、人的資本、社会資本を材料としてインプットしなければならない、ということ。
    結果、出来上がる製品としての「幸福」の質と量は、インプットする量と、各自が持っている「幸福製造装置」の変換効率によって変わってくるということ。変換効率というのは同じ量と質の資本や資産をインプットしても、人によって幸福に感じる度合いは違ってくるということですね。これを変換効率と表現しています。

    この「幸福製造装置」の具体的な例を挙げてみると、例えば200円という金融資産を使って、缶ビールを買う。すると「うまいなぁ〜」という幸福を感じる。つまり、200円が「うまいなぁ〜」という幸福に変換された、ということですね。で、その「うまいなぁ〜」という幸福感の量と質は、同じ200円を使っていても、人それぞれ全く違ってくる、これが「変換効率」ですね。人によっても違うけど、同じ人でもタイミングによって、調子によっても変わってくる。このあたりは調整は難しい。

    だけどはっきりしているのは「幸福製造装置」にインプットするものがゼロならば「幸福」は出来上がらないということ。3つの資産と資本の話に戻りますが、金融資産とはそのままお金のこと。人的資本とは個人でいうと労働力や能力ですね。多くの人は労働という形で「人的資本」を労働市場に「投資」することによって、「お金」という「金融資産」を得る。それから社会資本というのは人とのつながり、などですね。

    話は脱線しますがこの3つを使って、橘さん言うところの「人生パターン」というのを分析しているところも面白い。

    例えば「プア充」と言われる人たち。マイルドヤンキーなんて言い方もしますね。地元で昔からの仲間と楽しく生きている人たち。彼らはそれほど収入も高くないけれど、結構、幸福度が高い。なぜなら、仲間のつながりという「社会資本」をたくさん持っているからなんですね。

    対して「リア充」と言われる方たちはどうか。たいてい趣味に、付き合いに「金融資産」を投資しているので、それほどお金はない、だけど、友人が多く「社会資本」が多い、加えて仕事も出来たりするから「人的資本」も多い。

    レアなパターンとしては「金持ちトレーダー」というのもいる。ひたすら部屋にこもって株やFXなどの投資に励んで成功している人たち。この人たちは、当然マーケットを読む能力と、自分をコントロールする意志力という「人的資本」をたくさん持っている、加えて成功しているわけだから「金融資産」も持っている。ところが、部屋にこもりきりで友達とは疎遠、ということで「社会資本」はあまり持っていない。

    最近現れたのが「ソロ充」という人たち。それほどお金もないので「金融資産」はない。しかし人付き合いを極力減らすことによって、つまり手持ちの「金融資産」を、自分の趣味や能力向上に振り向けることによって、広い意味での能力「人的資本」をたくさん所有する。変わり者っぽいですが、そうとも限らず、起業したばかりの人たちも、当然付き合いより仕事ということになるのでこのパターンに入る。

    と、その他にも、いくつかのパターンがあるのですが、それぞれが、それぞれにたくさん持っている、または持っていない資本と資産があって、それをどのように投資していくのか?ということが大事。で、問題は持っている資産や資本がひとつしかないと、それを失った際にはかなり危険、つまり幸福が製造できなくなる、つまり「不幸」になってしまう、ということ。

    上の例ですと、ソロ充は「人的資本」ひとつしかないので、例えば何らかの事情があって、仕事をすることができなくなった、つまり「人的資本」を失ってしまうと、他の資本に頼れない。また「プア充」はもしも、つながりから、追い出されてしまった、またはその集団が崩壊してしまった場合、他の資本がないから厳しい。ということで、やはり常に複数の資本と資産を持っておくようにしておかなくてはならない、ということ。

    おっと、ネタバレはまずい、とかいいつつ、ほぼほぼ、橘さんの結論に近づいてきてしまった(笑)ということで、このあたりで止めときます。でも、ここに書いている以外にも、悪魔的に面白い事がたくさん書いてありますよ(笑)

  • 日本人は幸福になろうと「強いつながり」を求めるが、その結果、(個人でなく)「間人」として人間関係の中に埋め込まれ、身動きが取れなくなる。そして長時間労働や過労死、過労自殺。

    日本は「自分の人生をどの程度自由に動かすことができるか」の国際比較で57カ国中最下位。


    人生の土台となる3つの資本=資産。
    「金融資産」自由、
    「人的資本」自己実現、
    「社会資本」共同体、人間関係、繋がり

    幸福の製造装置(ブラックボックス)

    資本を一つしか持ってないとちょっとしたきっかけで貧困や孤独に陥る。

    「自由」とは「誰にも、何者にも隷属しない状態」のこと。そのためにはお金が必要。

    テレビ局の番組の政策方針。粉飾決算。不正燃費データ。。生活を会社に依存するサラリーマンであれば、会社の方針に従うのは(隷属するのは)当然かも。ただそれを「自由」とは言わないだけ。

    幸福の話をするには「限界効用の逓減」に触れなければならない。暑い日のビールの美味しさ(効用=幸福度)は1杯目が最高で、2杯3杯と追加していくと減っていく(効用の変化=限界効用)。これはお金にも当てはまる。日本では年収800万円(世帯年収1500万円)を超えると幸福度はほとんど上昇しなくなる。お金がありすぎるてお金のことを考えすぎると不幸になる。

    資本主義ってなんだろう?資本主義=資本市場とは「株式会社によって自己組織化した複雑系のネットワーク」株式会社とは複数の株主が有限責任で事業に投資することでリスクを分散する仕組み。また株式会社の特徴は借金(融資など)で株主資本にレバレッジをかけること。

    マイナス金利の世界では、賢い人は利潤を最大化するために金融資本よりも人的資本を有効活用する。すなわち「働く」こと。

    お金持ちの倹約のルール「同じ結果を得られるのなら、安ければ安いほどいい」これで自然と倹約することになる。

    収入は多ければ多いほどいい。でも同じ収入なら(あるいは多少少なくても)自己実現出来る仕事がいい。

    「知識社会化 + グローバル化 + リベラル化」の三位一体は知能の高い人が大きなアドバンテージを持つ社会。そこから脱落した人の怒りは社会の保守化=右傾化を招き、トランプ現象となっている。

    企業であれ、個人であれ、知識社会に適応できなければ脱落するだけ。

    日本企業は本社採用と現地採用といった国籍差別や年功序列、終身雇用といった日本的雇用制度を取っている限り(グローバル化リベラル化に対応できず)負け続ける。
    サラリーマンは日本だけ。

    オンリーワンでナンバーワンの戦略。スペシャリストになるには、1)好きなことに人的資源の全てを投入する。2)好きなことをマネタイズ(ビジネス化)できるニッチを見つける。3)官僚化した組織との取引から収益を獲得する。

    世の中になぜ会社があるのか?それは「分業した方が効率がいい」から。

    「幸福」は社会資本からしか生まれない。

    人間関係には「愛情空間~5」「友情空間、イツメン~30(政治空間~150)」「貨幣空間~∞」

    日本の社会における「友だち」は厳密なルールがある。中学、高校の同じクラス。先輩、後輩とは違う。「友だち」は奇跡。

    「統治の倫理」(権力争い、武士道、国盗り、天下平定、勝者総取り、嫉妬、憎悪、殺人、敵を殺すことでより大きな権力を獲得する、戦争に駆り立てる血なまぐさい世界)と「市場の倫理」(お金儲けゲーム、商人道、一番にならなくてもほぼ裕福になればハッピー、信頼関係、契約履行、他人と協力)

    あなたは個人主義(欧米人型、かけがえのない自分)か間人主義(アジア人型、共同体の中の自分、他人の上から目線を不快に思う)か?

    日本的経営はアメリカ企業をも変容させた。ボスではなく同僚・仲間によるチェック(チームワーク重視)。製造業、レストラン、介護などの労働現場での生産性を上げた。

    「幸福な人生」の最適ポートフォリオは、大切な人との小さな愛情空間を核として、貨幣空間の弱いつながりで社会資本を構成することで実現できる。強いつながりを家族に最小化し、それ以外の関係は全て貨幣空間に置き換える。その上で一つの組織(伽藍)に生活を依存するのではなく、スペシャリストやクリエイターとして人的資本(専門知識)を活かし、プロジェクト単位で気に入った仲間と仕事をする。

    本当の自分はどこにいるか。あなたの過去にいる。本当の自分は幼い頃に友達グループの中で選び取ったキャラなのかもしれない。大人になるということは子供時代のキャラを捨てることである。心の中に子供時代のキャラが残っていて、「見つけてよー」と訴え続けているのかも知れない。

    幸福な人生とは。

    ①金融資産:「経済的独立」を実現すれば(金銭的不安から解放され)自由な人生を手にすることができる。
    ②人的資本:子供の頃のキャラを天職とすることで「ほんとうの自分」として自己実現できる。
    ③社会資本:政治空間から貨幣空間に移ることで人間関係を選択できるようになる。

    ①金融資産は分散投資する。
    ②人的資本は好きなことに集中投資する。
    ③社会資本は小さな愛情空間と大きな貨幣空間に分散する。

  • 幸福の3条件
    自由 → 金融資産
    自己実現→ 人的資本
    共同体、絆 →社会資本

    全て持たないのが貧困
    1つしか持たないとハイリスク

    最適ポートフォリオは
    金融資産、経済的独立を実現し金銭的不安から解消され自由な人生を手に入れる
    人的資本、子供の頃のキャラを天職として自己実現する
    社会資本、政治空間から貨幣空間に移り、人間関係を選択できるようにする

    進化論的には不幸からの回復力を得るために継続する幸福を犠牲にしている。
    困難を乗り越えて幸福感が得られるので幸福は理想の人生のポートフォリオにあるのではなく、幸福な人生を目指して頑張っている中にある


    お金と幸福
    ・お金の事を考えすぎると不幸になる、ある程度まではお金が増えると自由が増して考える必要がなくなるので幸福感は増す
    ・年収800万、世帯年収1500万までは収入が増えれば幸福感は増す
    ・金融資産1億円までは資産が増えるほど幸福感は増す
    ・一旦お金の心配から解放されると、それ以上お金が増えても限界効用の逓減により幸福感は増えなくなる

    人的資本と自己実現
    ダイエットや片付けや節約は確実な自己実現方法
    人的資本を投資する仕事のルール
    ・収入は多い方が良い
    ・同じ収入なら安定している方が良い
    ・しかし、収入によらず、自己実現できる仕事が良い

    仕事の分類
    拡張可能なクリエイター
    拡張不可なスペシャリスト
    マニュアル化された拡張不可な マックジョブ

    サラリーマンはスペシャリストとマックジョブの間
    日本の医者はサラリーマン寄り
    スペシャリストはいないので、マックジョブが増えてくる事で雇用が変わる

    好きなことに人的資本を投入し、自分だけのニッチを探す
    小さな土俵、複雑さ、予測困難さ、を利用する
    官僚化した組織との取引から収益を得る

    老後とは人的資本を失った状態
    老後問題とは老後が長すぎることで、不安を減らすには人的資本を維持して老後を短くする

    幸福は社会資本からしか生まれない
    人間関係は、愛情空間、友情空間、貨幣空間
    進化論的に愛情と友情の比率は高い
    友情の核は平等体験、同級生、同期、ママ友
    社会には愛情友情にお金が関与してはいけないというルールがある

    弱いつながりの強さ
    転職など責任が伴う場合にはつながりは弱い方が良く、可能性も広がる

    貨幣空間が広がり、貨幣を介さない弱いつながりも増えてきた
    会社や学校と異なり、個人として振る舞える

    強いつながりである共同体や会社が社会資本の全てだと逃れられない

    幸福は伝染する。相手の幸福度を考慮した友だちポートフォリオの最適化

    幸福も不幸も社会資本から生まれる
    仏教の悟りは人間関係の悩みの解消でもあり、現在ならお金とテクノロジーで可能になった。

    幸福な人生の理想は
    経済的に独立し、充実した仕事をして、家族の愛情と強いつながりの友情を持つこと

    強いつながりを家族に最小化し、友情は弱いつながりの貨幣空間に置き換える
    仕事は1つの組織に依存せず、人的資本を有効に使ったプロジェクト型を選ぶ

    サラリーマンは定年退職で人的資本と社会資本の両方を失うのがリスク


    今の時代の日本に生まれたのが最大の幸運
    下を見ればきりがないが、上を見たらすぐに限界がある

  • ■幸福は伝染する。
    新しい仕事や住む場所をきめるときには「私の幸福にもっとも貢献してくれるひとたちはどこに住んでいるか」を考慮スべき  幸せな人と友人となり、不幸な友人とは縁を切りなさい。

    ■生涯共働きを超える最強の人生設計はない 182
    人生100年時代の人生戦略はいかに人的資本を長く維持するかにかかっている。そおためには、好きを仕事にすることが唯一の選択肢。生涯現役なら老後問題そのものがなくなる。60,70になっても人的資本、仕事を維持できるかどうかで、超高齢社会の格差はさらに拡大していく。好きを仕事にする以外、生き延びることはできない。

    ■好きなことに人的資本のすべてを投入する。156
    勉強であれスポーツであれ、なぜ好きになるかというと、それが自分にとって得意なことで、それに熱中することでより目立てるようになるからです。なぜ得意なのかというとそこに遺伝的な際があるからですが、それは一般におもわれているようりもずっとちいさな違いでかまいません。 5-6人のグループのなかで一番足が早いというだけでスポーツが好きになる。このわずかな遺伝的な違いが増幅して、思春期になる頃には好きなことがはっきりと別れるようになり、それぞれのキャラが固定する。それを私たちは人格とよんでいる。それ以外のことは、やってもできないのです。 そう考えれば、私達が自分にあったプロフェッションを獲得する戦略はったひとつしかありません。それは仕事のなかで自分の好きなことをみつけ、そこに全ての時間とエネルギーを投入することです  なぜなら誰もがものごころついたときからそれだけをやってきたのですから。

    ■能力が高い人間は個人学習を好む。
    超一流になるのは才能か、努力か。バイオリンのSランクの生徒は、ABランクの生徒よりも長時間練習しているが、才能がなくても努力で超一流になれるわけではない。 人が3時間も4時間もバイオリンを引けるのは好きだからで、ひとは自分が得意なことを好きになるのです。やればできる、ではなく、やってもできない、が人の本性。ひとは好きなことにしか熱中できない 嫌いなことはどんなに努力してもやれるようにはならない。石の上にも3年というが、3年も座っていられるのは好きだからで、そうでなければ誰もそんな拷問に耐えられないでしょう。


    ■自分のプロフェッションを実現できるニッチをみつける
    好きなことに人的資本のすべてを投入する
    好きなことをマネタイズできるニッチをみつける
    官僚化した組織との取引から収益を獲得する

    人生のどこかの時点で組織の外にでて大組織と取引するフリーエージェント化が知識社会の基本戦略。


    ■新しい働き方を理解するためのキーワードは
    グローバル
    知識社会 ◎
    リベラル化

    グローバルな競争に生き残る企業は、能力以外のすべての差異(性別、国籍、宗教、年齢、性的指向LGBT、身体的や精神的な障害)を問題とせず、もrっとも大きな人材プールのなかから最適な人物を採用する会社だ。

  • 橘玲氏の著作ということで読んだ本です。しかし、この本を読んでみると、以前読んだLIFE SHIFTの日本版という感じでした。しかも日本の社会を前提にしたこれからの生き方の指針を示しているので、アメリカ社会を前提にしたLIFE SHIFTより参考になりました。

    LIFE SHIFTでは個人が持つ資産/資本をあげ、それぞれの資本を生かした戦略を説いていましたが、この本でも「金融資産」「人的資本」「社会資本」という3つの資本をあげ、その3つの資本から「幸福に生きるためのインフラストラクチャー」の設計を提案しています。

    その3つの資本の構成によって、人生を8つのパターンに分けています。
    プア充:社会資本;○、人的資本;×、金融資産;×
    貧困: 社会資本;×、人的資本;×、金融資産;× 
    リア充:社会資本;○、人的資本;○、金融資産;×
    超充: 社会資本;○、人的資本;○、金融資産;○
    お金持ち(投資家):社会資本;×、人的資本;○、金融資産;○
    旦那:社会資本;○、人的資本;×、金融資産;○
    退職者:社会資本;×、人的資本;×、金融資産;○
    ソロ充:社会資本;×、人的資本;○、金融資産;×

    こんな感じでわかりやすく人生をパターン分けしているのですが、退職者や、ソロ充といった日本で特徴的な人物像についても言及しているので、自分がどのパターンに属しているのか想像しやすくなっています。

    また、日本特有の雇用形態であるサラリーマン(正規雇用社員)を特権階級として、日本社会が差別社会であり、なんだかんだ言ってもサラリーマンは優遇されており、その身分に身を置くことのメリットを説いています。

    ただし日本人は忖度など人間関係を重視し、欧米人は個人や論理を重視しますが、それを「間人」と「個人」と定義し(社会学者・浜口恵俊が提唱)、その性格から言語認識においても欧米人は「名詞」をアジア人は「動詞」を重視しています。
    しかし、アメリカでは「日本化」が進んでおり、チームワークを重視することによって労働力を搾取しているようです。

    そして最後に、幸福な人生への最適戦略を次のように要約しています。

    ①金融資産:「経済的独立」を実現できれば、金銭的な不安から解放され、自由な人生を手にすることができる。
    ②人的資本:子どもの頃のキャラを天職とすることで、「ほんとうの自分」として自己実現できる。
    ③社会資本:政治空間から貨幣空間に移ることで人間関係を選択できるようになる
    そして幸福の統一理論を次のようにまとめています。
    ①金融資産は分散投資する
    ②人的資本は好きなことに集中投資する
    ③社会資本は小さな愛情空間(家族)と大きな貨幣空間(ゆるい繋がり)に分散する。

    この本は自分にとって少なからず、これからの人生を生きる指針になった本です。

  • 久しぶりの楽しい読書。
    言われなくても80歳まで働くつもりでいたが、金融資本、人的資本、社会資本という概念で整理され、低金利時代の今、資産運用には期待できなのだから、働いて人的資本を労働市場に投入すべき、とズバッと書いてあって、とてもすっきりした。なるほど、そうだよね、それでいいんだよね、と。好きなことに人的資本を集中投下する、ということも、言われなくても分かっているつもりだし、そうしたいと思っていたけれども、改めていろいろな根拠をもとに説明されるとこのままではだめだ、という気持ちが強くなった。うじうじ悩んでないでアクションを起こさねば、と背中を押される。
    そして、これまで自分がサラリーマンとして、いったい、何に苦労をしてきたのか、その背景が的確に表現されていた。私はマックジョブを正社員という立場でやってきたわけで、それは常に間人としてであり、チームのことを考えて自分の休みを調整したり、やりたくない仕事も「ない袖は振れない」と上司に言われ、チームのために引き受け、人権侵害を感じながらも、我慢してやってきた。こんな生活をしていては決して幸せにはなれない。もう若くはなく、既に手遅れかもしれないけれど、今すぐ動くべきなのかもしれない。
    この本のメインターゲットは私のような読者なのだろう。きっとマーケティングは抜かりなくやられているはずだ。そのマーケティング戦略にまんまとはまってしまった。たくさんの読者に受け入れられ、書籍の売上を伸ばすことも想定して書かれたのだとしたら、私のようなサラリーマンは多い、ということだろうか。著者の意見に反論はなく、100%agreeだが、きっとそうではない読者もいるはずで、逆にそういう人たちの意見を聞いてみたいと思う。

  • 著者のすべての著書を読んだわけではないが、これまでの世の中を賢く生き抜く手法の分析と考察の数々をまとめ上げ、現在最終的に行き着いた本質的な内容。グローバル化、テクノロジーの進化によるVUCAな時代を幸せに生きるバイブルとなる。
    「金融資産」「人的資本」「社会資本」の3つを組み合わせ積み上げて、自分に合ったバランスで投資運用するということだが、つまるところ、”自分の好きなことにすべてを投入し、自分らしさを育てながら行動あるのみ”ということだ。

  • 北欧は個人主義が極限までに徹底されたきわめて特殊な社会。

    本書は、「金融資産」「人的資産」「社会資本」という3つの資本=資産から、「幸福に生きるための土台(インフラストラクチャー)」の設計を提案。


    経済的独立という考え方をはじめて日本人に教えたのは、投資家のR・ターガート・マーフィーとエリック・ガワーの『日本は金持ち。あなたは貧乏。なぜ?』(毎日新聞社1999年)


    筆者が将来の人生について悩んでいたころ、大きな影響力を受けた本『となりの億万長者』(早川書房1997年)トマス・J・スタンリーとウィリアム・D・ダンコ


    アメリカでは年収7万5000ドル、日本では年収800万円を超えると幸福度はほとんど上昇しなくなることが分かっている。

    お金と幸福度のアンケート調査では、金融資産が1億円を超えると幸福度が増えなくなることが示されている(『日本の幸福度』日本評論社)


    すべての富は差異から生まれる

    例、株式取引で利益を得るのは安く買った株を高く売る。

    『読まなくてもいい本」の読書案内』筑摩書房


    資本主義が人間の欲望によって自己増殖していくシステムであれば、長期的には株式市場に投資することによって、銀行預金や債券投資より多くの利益を手にすることが出来る。


    マイナス金利の世界では、賢いひとは利潤を最大化するために金融資本よりも人的資本を有効活用する、すなわち「動く」


    市場経済の長期的な拡大を前提とすれば、金融資産を株式市場に投資した方が有利だと考えもある。
    そんなひとには、投資対象を選別する費用対効果も含めれば、東証の「上場インデックス世界株式(1554)」に積み立て投資するのがお勧め。

    これは円建てのETF 投資対象が(日本株を除く)世界の株式なので特定の国や企業にリスクを集中させることを避けられるし、円が下落すればその分だけ株価は上がる。証券会社や銀行の店で販売されているファンドとちがって販売手数料は不要(株式の売買手数料のみ)でインデックスファンドなので、運用手数料も安く、海外株に投資する際の円から外貨への両替には大口割引が適用されている。

    「タマゴをひとつのかごに盛るな」の格言を実行するなら、これほどすぐれた国際分散投資の金融商品はない。


    もっとも重要な「富の源泉」は人的資本である。


    人的資本には、金融取引にはないきわだった特徴がある。それが次のルール

    同じ収入なら(あるいは収入が少なくても)自己表現できる仕事がいい。


    私たちは無意識のうちに「働くこと」に2つの目標を設定している。
    ①人的資本からより多くの富を手に入れる
    ②人的資本を使って自己実現する


    新しい働き方を理解するキーワードは次の3つ

    ①知識社会化
    ②グローバル化
    ③リベラル化


    クリントン政権で労働長官を務めたリベラル派の経済学者ロバート・ライシュは、いまから約25年前(1991年)に世界的ベストセラーとなった『ザ・ワーク・オブ・ネーションズ』(ダイヤモンド社)で、21世紀のアメリカ人の仕事はクリエイティブクラスとマックジョブに二極化すると予言した。

    より正確には、
    ①ルーティンプロダクション(定形的生産)
    ②インパースン(対人)サービス
    ③シンボリックアナリスト(シンボル分析的)サービス

    に分かれると述べた。


    『人事部は見ている。』(日経プレミアシリーズ、楠木新著)(大手生命保険会社で人事、労務、経営企画、市社長などを経験したのち、サラリーマン勤務のかたわら、「働く意味」をテーマに取材と執筆を始めた)

    その楠氏の『サラリーマンは、二度会社を辞める』の第1章は「仕事で自己実現を目指してはいけない」となっている。


    働くために生きているのかわからなくなってからが人生

    『超一流になるのは才能か努力か?』文藝春秋、アンダース・エリクソン著


    「変化の厳しい環境ほど弱者にはチャンスがある」
    世界が複雑になればなるほど、ニッチは増えていく。


    イノベーションをすべてアウトソース(外注化)する

    リスクをとるのは外注先で、失敗すれば勝手につぶれるだけ。


    プロフェッションを持つ個人(プロフェッショナル)が組織に対して優位性を持つようになることが知識社会の必然であるならば、どうすれば「収益の最大化」と「自己実現」を両立できるのか。

    その基本戦略
    ①好きなことに人的資本ほすべてを投入する
    ②好きなことをマネタイズ(ビジネス化)できるニッチを見つける。
    ③官僚化した組織との取引から収益を獲得する。


    何歳になろうとも、人生の土台は金融資産、人的資本、社会資本の3つしかない。


    「西洋人は世界を名詞の集合と考え、東洋人は世界を動詞で把握する」(『木を見る西洋人 森を見る東洋人』ダイヤモンド社)


    西洋人の認知構造が世界をもの=<個>へと分類していくのに対し、東洋人は世界をさまざまな出来事の<関係>として把握する、ということ。

    この世界認識のちがいが、西洋人が「個人」や「論理」を重視し、東洋人が「集団」や「人間関係」を気にする理由。
    すなわち西洋人は「個人的」で、東洋人は「間人的」である。


    「個人」と「間人」という発想は社会学者・浜口恵俊氏が1980年代に提唱したもので、個人主義の西欧と間人主義の日本を対比し、日本の特殊性を精力的に論じた(『間人主義の社会 日本』東洋経済新報社)


    ジャパナイゼーションに適した職場というのは、ISE社のような製造業や、レストランや物販、あるいは看護や介護の現場などの広範にわたる。

    こうした労働現場では、あらかじめ仕事の内容を契約で決めておくよりも、労働者が自分たちの判断で臨機応変に(ときには1人何役もこなしながら)対応したほうがずっとうまくいくことは、ちょっと考えれば誰でもわかること。


    アメリカの政治学者ロナルド・イングルハートなどが中心となって1980年代から5年ごに行われている「世界価値観調査」は、「もっとも信頼度が高い国際比較調査」とされている。
    「自分の人生をどの程度自由に動かすことができるか」という調査項目では、日本人は調査対象57か国中最下位。(2010年)


    『日本人の考え方 世界の人の考え方』池田謙一著


    職業別の幸福度を調べると、多くの研究で、自営業と公務員の幸福度が高いことが知られている。

    自営業の方が、時間(いつどれだけ働くか)と人間関係(誰と働くか)が選べれば、それだけで幸福感は大きく上がる。
    公務員は安定も求めているから。


    国民年金や国民健康保険のないアメリカでは独立は大きなハンディを負うことになるが、それにもかかわず「インディペンデント・プロフェッショナル」と呼ばれるフリーエージェントが急増しており、法人成りした企業家も含めればその総数は推計3300万人にもなる。

    フリーエージェントはコンピュータ・プログラマーやコンサルタントなど、さまざまな分野で活躍していて、その収入は会社員より平均で15%多く、年収7万5000ドル以上の人が占める割合は給与所得者の倍に達する。


    ジャーナリストのディビッド・ブルックスは、アメリカに台頭する新上流階級を「BOBOS(ボボス)」と名付けました。
    ブルジョア(Bourgeois)とボヘミアン(Bohemians)を組み合わせた造語で、天気絵的なBOBOSは夫婦とも高学歴で、リベラルな都市かその郊外に住み、経済的に恵まれているもののブルジョアのような華美な暮らしを軽蔑し、かといってヒッピーのように体制に反抗するわけでもなく、最先端のハイテク技術に囲まれながら自然で素朴なものに最高の価値を見だします
    (『アメリカ新上流階級ボボス』光文社)


    BOBOSの多くは弁護士やコンサルタントなどの専門家か、独立したプロジェクトを任された会社内のクリエイティブクラスで、自分たちをスペシャリストよりもクリエイターだと考えています。
    彼らの憧れは有名企業の社長や富豪ではなく、詩人や小説家、テレビキャスターといった 知的有名人 すなわち本物のクリエイターです。


    BOBOSたちはすでにじゅうぶんなお金を持っているので資産の額にはあまり関心がない。高級ブランドではなくユニクロの服を着て、銀座の料亭ではなく近所のビストロで家族でのんびり食事をするのを好むようなひとたちでもある。

    そんな彼らがこころの底から手に入れたいと願っている希少な宝石ー彼らにとって真に価値があるものーは、知的コミュニティの中での評判。


    「強いつながり」を恋人や家族にミニマル(最小)化して、友情を含めそれ以外の関係はすべて貨幣空間に置き換える。

    人生100年時代を考えるならば、年齢にかかわらず弱いつながりを維持しつつ、フリーエージェントとしてプロジェクト型の仕事をする「生涯現役戦略」の方がはるかに効果的なことは明らか


    幸福な人生への最適戦略は3つに要約できる。

    ①金融資産 「経済的独立」を実現すれば、金銭的な不安から解放され、自由な人生を手にすることが出来る。

    ②人的資本 子どもの頃のキャラを天職とすることで、「ほんとうの自分」として自己実現できる。

    ③社会資本 政治空間から貨幣空間に移ることで人間関係を選択できるようになる。


    3つの資本=資産を一体としてとらえる「幸福の統一理論」

    ①金融資産は分散投資する。
    ②人的資本は好きなことに集中する
    ③社会資本は小さな愛情空間と大きな貨幣空間に分散する

    幸福な人生を目指して頑張っているときが、もっとも
    「幸福」なのかもしれない。


    ひとは、自分と似ているひとからの助言がもっとも役に立つ。

  • 著者の橘氏の文章は非常に独特のもので、最初に読んだときは衝撃さえ受けたものですが、何冊も読んでいるとそれも慣れてきていつもの感じだなぁというところです。本書についてもまぁそんな考え方もあるなぁということで、自分としては特に読む必要はなかったように思っています。

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著者プロフィール

橘 玲(たちばな あきら)。1959年生まれ。早稲田大学卒業。2002年『マネーロンダリング』でデビュー。同。元・宝島社の編集者。日本経済新聞で連載を持っていた。海外投資を楽しむ会創設メンバーの一人。2006年「永遠の旅行者」が第19回山本周五郎賞候補となる。デビュー作は経済小説の「マネーロンダリング」。投資や経済に関するフィクション・ノンフィクションの両方を手がける。2010年以降は社会批評や人生論の著作も執筆している。

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