米中戦争前夜――新旧大国を衝突させる歴史の法則と回避のシナリオ

制作 : 船橋 洋一・序文 
  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478103319

感想・レビュー・書評

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  • トゥキディデスの罠と言う考え方を軸に、歴史の事例を振り返りながら米中関係の危機を考える書。読みやすく、また歴史を整理するうえでとても勉強になった。特にTheodore Roosevelt大統領の時代を中心に、米国も新興Superpowerとして強引なことをしてきたのではないか、と言う視点は興味深かった。

  • 大局的な視点で国際政治を考え国益を守ることの重要性を考えさせられる。足元の貿易戦争をことごとく予見している。中国が世界一の大国になることが不可避の中(PPPベースGDPでは既に米国を上回る)、米国、日本はどう振る舞うべきか。数十年、数百年単位での戦略を考える中国の凄み。

    ・トゥキディデスの罠。アテネの台頭とスパルタの不安。新興国が覇権国に取って代わろうとした16件のうち12件が戦争になった。
    ・2011〜2013年に中国が製造・使用したセメントの量は、アメリカが20世紀全体で製造・使用した量より多かった。
    ・習近平の野望の中核には、中国を世界の中心と見なす中華文明の伝統的な考え方がある。中国語で中国とは、真ん中にある王国という意味だ。真ん中にあるとは、天と地の間にあるすべての中心という意味だ。
    ・20世紀の初めに西半球からイギリスが撤退したように、アジアに超大国が生まれた以上、アメリカもアジアから去るべきだというのだ。

  • 覇権を持つ国と新興国の間の緊張の高まりが戦争に至ってしまった事例と、戦争を回避した事例をあわせて提示。現在の米国と中国が、どうすれば衝突を回避しうるかを論じた本。一方で、衝突が起こりうるシナリオについても詳述。

    アジア太平洋地域と欧州の地政学リスクを考えるためにとても参考になった。

  • 新興国が覇権国を脅かすときに戦争へと繋がる「トゥキディデスの罠」を題材に米中関係を論じた本。引かれた歴史的事例では、まるで魔の手に落ちるように、誰も望まなかった戦争へと飲み込まれていく事例が多く語られる。
    本書はこの他に、米国が新興国であった時代にどのように振る舞ったのか、中国は今のどのように行動しているのか、その類似を際立たせる。著者は米国防省の高官を務めた学者でありながら、米国に対しても中立的で厳しい視線を送っており、そのことも本書の信頼感を増しているように感じた。
    日本から見ると、米中衝突なんて恐ろしくて考えたくもないが、衝突を避けるために米国が西太平洋から手を引くとなると、これもまた、恐怖を覚えるシナリオだ。

  • 【足を踏み入れないように】既存の覇権国と新興国の間に構造的ストレスが生じることを表した「トゥキディデスの罠」について解説し,米中が同じ罠に陥らないようにするための提言をまとめた作品。過去の類例を振り返りながら,超大国関係の管理の方策を探っていきます。著者は,クリントン政権では国防次官補も務めたグレアム・アリソン。訳者は,学習院女子大学の非常勤講師を務める藤原朝子。原題は,『Destined for War』。

    戦争に至る道筋を学ぶことで,結果として戦争に陥らないための道筋を選ぶことができるというアプローチが非常に新鮮。幅広さと奥深さを備える歴史的データに裏打ちされた情報が満載で,一冊で国際政治学と歴史学の刺激的なところを両方考えられる作品になっています。

    〜中国とアメリカは,受動攻撃的な「あるべき外交」や高慢な地政学的理念を振りかざすよりも,悪びれずに国益を追求したほうがうまくいくだろう。多くのことが左右される二国間関係で最も重要なのは,友好ではなく予測可能性や安定性だ。アメリカは「ごっこ遊び」をやめるべきだ。〜

    タイトルがやたら仰々しいですが☆5つ

著者プロフィール

一九四〇~。ハーバード大学ケネディ行政大学院教授。政治学者。専門は政策決定論、核戦略論。ハーバード大学卒業後、オックスフォード大学で修士号、ハーバード大学で博士号取得。一九七二年から現職。クリントン政権時代に国防総省スタッフとしてウクライナ、ベラルーシなどの核兵器廃棄政策に関与。一九七一年に刊行した『決定の本質』は政策決定論の必読文献。他に『核テロ』、『日・米・ロ新時代へのシナリオ』(共著)。

「2016年 『決定の本質 キューバ・ミサイル危機の分析 第2版(2)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

グレアム・アリソンの作品

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