知的戦闘力を高める 独学の技法

  • ダイヤモンド社 (2017年11月17日発売)
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  • 本 ・本
  • / ISBN・EAN: 9784478103395

感想・レビュー・書評

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  • 山口周の著書を何冊か読んでいると、本書と似たような内容も書かれている気がするが、それはそれで良し。繰り返しで更に気付く事もあるし、勿論それだけではなく、全くの新たな視点も得られるので。今回は以下の内容。

    ー ここで重要になるのが「何の役に立つのかよくわからないけれども、なんかある気がする」というグレーゾーンの直感です。これは人類学者のレヴィ・ストロースが言うところの「プリコラージュ」です。… あり合わせのよくわからないものを非予定調和的に収集しておいて、いざというときに役立てる能力のことを、レヴィ・ストロースはプリコラージュと名付けて近代的で予定調和的な道具や知識の組成と対比して考えています。

    乱読を肯定するような内容でもあり、無秩序な好奇心を良しとするようでもある。実際私も、大半の読書は、実用を考えずに読むし、その方が単純に楽しいし視界が広がる感覚もある。

    ー 多くの組織論の研究が、多様な意見のぶつかり合いによる認知的な不協和がクオリティの高い意思決定につながることを示しています。要するに、どんなに知的水準の高い人でも「似たような意見や志向」を持った人たちが集まると知的生産のクオリティは低下してしまうということです。これは個人の知的ストックにおいてもまったく同様だといえます。

    読書や会話をしていて、自分と異なる考えに触れる瞬間はチャンスだ。不協和こそ、新規性を生むという考えはよく分かる。ならば、知的ストックには先入観を取っ払う事も重要だろう。

    ー なぜメモが大事かというと、メモが癖になると、感じることも癖になるからだ。人より秀でた存在になる条件は、人より余計に感じることである。

    報告するために取材をする場合と、漫然と話を聞く場合でも異なる。昔、小学校で教科書に「書き込み」をする事が推奨され、気付いた事の意見を言い合ったが、ああいう授業は良い。質問必須と言われた講演会と、無目的に出席している講演会でも、得られるものは大きく異なる。

    戦闘する必要はないのだが、ぼんやり生きるのは勿体ない。ぼんやり生きて、戦いを避けられるなら、それに越した事はないが。

  • 勉強はジャンルで行うのではなく、自分で決めたテーマに沿って行う。クロスオーバー人材を目指すということ。

  • 内容、主張、具体例、の一部は、同著者の『自由になるための技術 リベラルアーツ』と重複している。よりハウツー的な要素を知りたい人は本書の方がオススメだと感じた。

    以下は本書の内容の解釈。

    Q:独学の戦略の本質は何か?
    A:自分の本性や興味関心を起点として、自分らしい「問い」や「論点」を持つこと。

    Q:アウトプットを極大化するためのインプット(読書)技法の本質は?
    A:日常の疑問を捕まえて「問い」を持って読書する。長期的視点よりむしろ偶発的な興味関心で関連分野もまとめ読みすること。古典作品を深く繰り返し読むこと。

    Q:本質を掴み生きた知恵に変えるにはどうすればよいか?
    A:得られた知識を抽象化(=仮説化)し、他の分野に当てはめて考える場数を踏むこと。

    Q:いかに知識をストックすれば、活用できるか?
    A:「事実」→「示唆・洞察」→「行動」の軸で得られた知識を転記する。「示唆・洞察」では、自分の実生活やビジネスにおける仮説も考える。タグ付けして後から精度良く検索できるようにして"忘れられる"ようにする。

  • 学びに躓いた時、いつも叱咤激励してくれる山口先生の著書。要らない情報をいかにインプットせず、限られた時間に有益な情報を入れ込むか。情報で溢れる時代に古典から学ぶ必要性。
    相変わらずの説得力に圧倒されながら、でも毎回同じことで激励されているな、と思い読了。

  • 山口さんの使う言い回しのフレーズが好きです。

  • 久しぶりに読んでよかったなと心から思えた1冊です。

    ビジネス書もひととおり関心のあるものは、読んできたのですが、 最近は新しい「気づき」がなかなか得られないと感じていました。

    本を読むことは自己啓発として有用ですが、この本を読むと自身の「学び方」に課題があり、これまで読んできた書籍からも本質を得られていなかったのかもしれません。

    本書では、「知的戦闘力を高める独学の技法」とテーマを掲げ、 そのプロセスと具体的な方法、独学すること自体の価値、必要性をとても分かりやすく解説してくれています。

    書籍の読み方に終始する書籍とは一線を画し、独学をシステムと捉え、①戦略、②インプット、③抽象化・構造化、④ストックというプロセスを通じることで、将来に渡り活用できる「知的戦闘力」を高めるというものです。

    また、現代を生きるうえで、いま「独学」が必要となる理由を ①知識の不良資産化、②産業蒸発の時代、③人生三毛作、④クロスオーバー人材と4つの観点でまとめられており、この点も、すっと腑に落ちるもので共感できます。

    これらを踏まえ、独学の方針は「ジャンルではなくテーマで決める」、 目的は「新しい"知"を得るよりも、新しい"問い"を得るため」としています。

    また、最終章では将来に渡り不変の知識となるリベラルアーツ・教養を 学ぶことの重要性に関する解説と、11ジャンル計99冊の書籍の紹介があります。

    本書を通じ、独学のコツを教わることができたのと、
    モチベーションにも繋がりました。お勧めできる
    1冊です。

    序章 … 知的戦闘力をどう上げるか?
    第1章 … 戦う武器をどう集めるか?
    第2章 … 生産性の高いインプットの技法
    第3章 … 知識を使える武器に変える
    第4章 … 創造性を高める知的生産システム
    第5章 … なぜ教養が「知の武器」になるのか?

  • 【星:3.5】
    読んでいて「いい本だな」と思う部分と、「得るものが少ない本だな」と思う部分の落差がかなり大きいという今までにないタイプの本だった。

    ①最初から7割部分【星:2.5】
    はっきりいって駄本。独学のための「戦略」「インプット」「抽象化」など、どの本にでも書いてあることの単なる焼き直しといった感じ。

    ②残り3割部分【星:4.0】
    リベラルアーツが知的戦闘力UPに繋がるという点を説明している。学者が哲学などリベラルアーツと呼ばれる分野が役立つことを書いているのはよくあるが、著者のようなコンサルタントが書いているのは珍しくとても説得力を感じた。

    このリベラルアーツ分野が得意というのがビジネス界での著者の強みのようなので、この部分をメインにして書けばもっと良い本になったと思う。

  • 【本の内容を一言で】
    方向性を持って情報をインプットし、そのプールをたまに混ぜる行為でしっかりと「ストック」すること。


    【内容まとめ】
    1.学習には、それを活かす流れが必要!①「戦略」②「インプット」③「抽象化・構造化」④「ストック」
    2.「深い専門性」×「幅広い知識」のクロスオーバー人材を目指せ!
    3.知識は整理されていないと使えない!インプットした情報を、5W1Hをしっかりと踏まえてアウトプットする必要がある!
    4.人と話す=最も効率の良いインプット・アウトプット
    5.覚えた知識を抽象化せず丸覚えしているだけでは、他の場面への応用がきかない。「知識」を「知恵」に昇華することが必要。


    【感想】
    「知的戦闘力を高める」というタイトルだけあって、非常に知性に満ちた内容。
    ただしかし、引用が多すぎてわかりにくい所も多かった。
    引用中心の文章って、あんまり内容が頭に入ってこないんだよなぁ・・・

    しかしまぁ、「戦略を立ててのインプット」や「インプット内容の落とし込み」などは確かに的を得ていると感じた。
    結局読んだだけでは自分の血肉にならない。
    また、近頃情報が氾濫しすぎているから余程じゃない限りはインプットしきれない。
    「インプット量数の限界」を自ら認識して、戦略的に選んだ必要な情報だけをストックする事が大切なのですなー

    ・・・かと思えば、「無目的な勉強こそ後で活きる」とかいう内容もあったりしたが。笑
    結局どっちやねん!とツっこみたくなる。



    【引用】
    独学を「システム」としてイメージし、知的戦闘力を向上させるのが目的!

    独学は4つのモジュールからなるシステム
    1.戦略
    →どのようなテーマについて知的戦闘力を高めようとしているのか、その方向性を考える事

    2.インプット
    →戦略の方向性に基づいて、本やその他の情報ソースから情報をインプットすること

    3.抽象化・構造化
    →インプットした知識を抽象す化したり、他のものと結びつけたりすることで、自分なりのユニークな示唆・洞察・気づきを生み出すこと

    4.ストック
    獲得した知識と、抽象化・構造化によって得られた示唆や洞察をセットとして保存し、必要に応じて引き出せるように整理すること


    インプットだけではダメ!
    インプットさらた情報のほとんど、感覚的に9割は忘却される!
    →このことを前提にしながら、いかに適切に過去のインプットを引き出して活用できるかがカギ!


    p8
    ・重要なのは「覚えること」を目指さない事
    現在のように変化の激しい時代であれば、インプットされた知識の多くが短い期間で陳腐化し、効用を失う。
    学んだ知識ぐ富を生み出す期間がどんどん短くなってきている。
    また、いちいち覚えなくても、インターネットでいつでも情報にアクセスできる。
    もはや、「知る」ということは時代遅れになりつつある!


    p18
    ・クロスオーバー人材
    「スペシャリストとしての深い専門性」&「ジェネラリストとしての幅広い知識」
    この二つの領域を併せ持った人材。


    ①戦略
    まずは「自分がどんな戦い方をするのか、どこで強みを発揮するのか」という大きな戦略が必要になる。
    インプットの「量」ではなく「密度」が大切!


    p44
    ・戦略は、粗い方向性だけでいい
    人の学習には一種の偶然=セレンディピティが働くから、独学によって学ぶ内容をガチガチに固めてそれ以外のインプットは極力しない
    などということを心掛けると、かえって偶然の学びがもたらす豊かな洞察や示唆を得られない事にもなりかねない。

    知の創造は、予定調和しない。
    偶有性が非常に大事なコンセプト!
    「僕はこういうプロセスを踏んで、これだけ成長しようと思います」と決めてしまうと、成長するチャンスがなくなる!


    ②インプット
    本以外にも、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などのマスメディア、ネット上の様々な情報など多数のソースを持つ。
    また映画や音楽などの娯楽も貴重なインプットになる。
    様々なインプットソースを組み合わせる事が重要!!


    ③抽象化・構造化
    インプットした知識をそのままストックしてるだけでは知的生産の現場で用いる事が出来ない。

    ・問いのないところに学びはない!
    インプットした情報に「仮説」や「問い」を設ける事で、更にインプットの感度を高める!


    ④ストック
    ・効率的に知識を引き出せるシステムを作る
    インプットされた情報のほとんどは、いずれ必ず忘れる…
    なんらかのデジタルデータでストックして、必要に応じて検索・引き出しできるようにしておけばいい。


    p60
    ・独学に使える時間は無限ではない
    貴重な時間を、明確な方針もなくそのときの思いつきにかまけて消費してしまうのは勿体ない!!


    ・フランシス ベーコン(イギリス ルネサンス期の哲学者)
    「信じて丸呑みするためには読むな。話題や論題を見つけるためにも読むな。熟考し熟慮するために読むがいい」
    →物知りになるのではなく、知的戦闘力を獲得することが目的!!

    読書は所詮、二番煎じでしかない。
    鵜呑みではなく、組み合わせる事を意識する事!


    p78
    ・戦略を立てると、アンテナの感度が上がる
    漫然と「色々なジャンルについての知識を深めたい」などという状況では、書店で出会った本や新聞記事などに高い感度で反応できない。
    自分の戦略を明確化している場合は、ふとしたきっかけで知り得た情報にも反応することができる!


    p80
    ・知識は整理されていないと使えない!
    インプットした情報を、5W1Hをしっかりと踏まえてアウトプットする必要がある!

    読書にしろ何にせよ、目的をしっかりと定めて動かなければ空振りする!!


    p105
    ・無目的な勉強こそ後で活きる
    アウトプットとインプットの量は、長期的には一致する。
    アウトプットがぱったりと枯れてしまう人がいる一方で、長期間にわたってアウトプットの質・量を維持できる人がいる。
    →人生のどこかでひたすらインプットし続けている時期がある!!

    山口瞳「続 礼儀作法入門」引用
    「読書法は唯一つ、乱読せよ」という説がある。言葉を変えれば、「好奇心を失うな」ということ。
    乱読の時期がなかった人は大成しない!


    p114
    ・ガベージイン=ガベージアウト
    →そこに入れる情報がゴミのようにくだらないものであれば、出てくるものもゴミのようにくだらないアウトプットになる


    p132
    ・「教養主義の罠」に落ちない
    「教養の習得」それ自体のみを目指さない方がいい。
    それは単なるコンプレックスの埋め合わせにしかならない。
    「知っている」だけで済ますのではなく、教養を身につけることで自分は何を得ようとしているのかが大切!
    教養を活かして「より良い生」に反映させること!

    ショーペンハウエル
    「知は力なり」。とんでもない。
    きわめて多くの知識を身につけていても少しも力を持っていない人もあるし、逆になけなしの知識しかなくても最高の威力を揮う人もある。


    p139
    独学において大事なのは、「入れない情報を決める」こと。
    現在は情報がオーバーフローしているので、処理能力のキャパシティを重視せよ。
    スジの良いインプットの純度を高めるのがポイント!
    時代は「情報の量」から「情報の質」に移ってきている!!


    p143
    ・人と話す=最も効率の良いインプット
    フットワーク軽く様々な人に会って話を聞くということが学習において重要!


    p158
    知識を「生きた知恵」に転換するには「抽象化」が必要。
    抽象化=細かい要素を捨ててしまってミソを抜き出す事、「要するに○○だ」とまとめてしまうこと。
    本質的なものだけを強調して抜き出し、あとは捨て去る作業

    覚えた知識を抽象化せず、そのまま丸覚えしているだけでは、他の場面への応用がきかない。
    覚えた「知識」を「知恵」に昇華することが必要。


    p174
    ストックの際に、「学んだ知識」と「抽象化によって得られた仮説」をセットにしてストックすることを心掛ける。
    ・得られた知識は何か?
    ・その知識の何が面白いのか?
    ・その知識を他の分野に当てはめるとしたら、どのような示唆や洞察があるか?


    p178
    ストックの最大のポイントは、「記憶に頼らない」という心構え


    p232
    イノベーションというのは常に、「それまでは当たり前だと思っていたことが、ある瞬間から当たり前でなくなる」という側面を含んでいます。
    イノベーターには「当たり前」を疑うスキルが必要。

  • 自分に不足している点は、
    ⑴インプットした情報を抽象化、分析し、他の分野でも使えるようにすること
    具体的に、紹介されていた方法、コツは、インプットに対して、以下のような問いを立てること。
    ①得られた知識は何か
    ②その知識はなにが面白いのか
    ③その知識を他の分野に当てはめるとしたら、どのような示唆や洞察があるのか。

    ⑵それを、メモに書き留めて、引き出せるようにすること
    ⑶本を全部読むのではなく、必要な部分だけ読む技法をみにつけること
    この3点かなと読んでいて思った。

  • ◯なりたい自分に合わせて自分のテーマ(追求したい論点)を7つまで設定し、テーマに対する自分なりの答えとなるヒントや気づきを得るために学ぶ。

    ◯心に浮かんだ問いをメモに書き留める。

    ◯本は5〜9箇所転記したら自分なりの示唆や行動を書き出したら終了。

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著者プロフィール

1970年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科美学美術史学専攻、同大学院文学研究科美学美術史学修士課程修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループ、コーン・フェリー等で企業戦略策定、文化政策立案、組織開発等に従事した後に独立。現在は「人文科学と経営科学の交差点で知的成果を生み出す」をテーマに、独立研究者、著作家、パブリックスピーカーとして活動。現在、株式会社ライプニッツ代表、世界経済フォーラムGlobal Future Councilメンバーなどの他、複数企業の社外取締役、戦略・組織アドバイザーを務める。

「2023年 『新装版 外資系コンサルが教えるプロジェクトマネジメント』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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