ファイナンス思考 日本企業を蝕む病と、再生の戦略論

著者 :
  • ダイヤモンド社
3.74
  • (77)
  • (141)
  • (103)
  • (18)
  • (10)
本棚登録 : 1863
感想 : 147
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478103746

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 売上至上主義の何がイケないのか

    売上至上主義、利益至上主義の何がイケないのか、と思って読み進めていきました!

    なるほど。目先の利益のために間違った判断をする、売上や利益は作れる(操作できる)、問題の先送りにつながる、など問題につながっていることを知れて納得。

    ちょうど、『世界一楽しい決算書の読み方 [実践編]』を読んだあとだったので、そういえば業績が良い会社で「良い赤字」を出しつつも成果に出ていた会社が載っていたことを思い出し、ダブルで勉強になりました。

    勉強になった箇所
    ・LinkedIn の創業者である リード・ホフマン氏は、「スタートアップとは、 書きの上から飛び降りながら、飛行機を作るようなものだ」と述べていますが、会社の再生とは、浸水して沈みゆく船を操舵しながら 、新しい船を作るような 芸当なのです
    ・会社の戦略の組み立て方。単に 目先のお金だけではなく、将来に稼ぐと期待できるお金の額を最大化し 、企業が稼ぐお金の現在価値を最大化しようとするのが ファイナンスの発想なのです。この点で、価値志向であり 、長期 志向、未来志向であるのか ファイナンス 思考の特徴です。
    ・PL 脳とは基礎的な会計知識に基づきつつも ファイナンスの観点に欠け、会社の長期的な成長よりも 直近の業績の見栄えを優先し「目先の PL を最大化することこそが 経営の至上命題である」とする思考態度のことです
    ・ファイナンス 思考とは「会社の企業価値を最大化するために、 長期的な目線に立って事業や財務に関する戦略を総合的に組み立てる 考え方」
    ・ファイナンス思考では会社の施策の意義を「その施策が将来にわたって生み出す キャッシュフローの最大化に貢献するのか」という観点から評価します
    ・ファイナンスの四つの側面【友田理解、財務CF・営業CF・投資CF、説明する】
    ・ROICとWACCの逆ザヤ常況≒利益が出ていても赤字
    ・状況を防ぐために、稲森氏は部門単位で 厳密に利益を管理する「アメーバ経営」を提唱しています
    ・キャッシュ・コンバージョン・サイクルが短ければ 短いほど 手元の資金に余裕ができ 、仕入 や 新たな 設備投資に費やす資金の余裕が増します
    ・Pl 脳はこうした高度経済成長期に最適化した発想です
    ・役員の高齢化も、 日本企業が PL 脳を脱しにくい理由の一つとして挙げられるでしょう。終身雇用 、年功序列を基本とする日本的雇用慣行を採用する日本企業の中において、経営者が内部昇進者であることが基本です
    ・銀行の コベナンツ(融資契約などにおける誓約事項)にしても 一番重要な条件は 、最終損益が何期連続で 赤字か黒字か であるかであり、キャッシュフローではなく、 PL 上の数値で判断を行っています
    ・多くの日本企業はマーケットが成長しない時代の思考 形態に 、いまだにシフトできていないのではないでしょうか
    ・まぎらわしい 「内部留保」

  • 長期目線で大きな決断をした人は、自分の決断に自信が増す一冊です。

    ファイナンス思考とは「長期的、未来志向的、戦略的な思考」です。
    対比されているのはPL思考であり、「短期的、過去追走的、管理的な思考」です。
    短期的にはリスクがあっても、ゴーイングコンサーンで長期的にデカい投資回収をしていくためのスタンスや、会社の事例が描かれています。
    会社だけでなく、個人の生き方にも転用できる考え方です。

  • ファイナンスの重要性につき、基礎知識と具体事例を交えて説かれており、読みやすかった。
    私は財務経理の人間として手に取ったが、資金調達、創出、配分、コミュニケーションそれぞれを、具体事例とともに理解することで、ファイナンスには財務戦略と事業戦略が関係することがわかった。

    また、PL脳との対比により、キャッシュフロー管理の重要性を認識できる。

  • 以前自分のいた会社が完全にPL思考の考え方になっていたのだなと感じた。日本の特に大企業の方にはとても共感できる内容だと思う。

  • 「ファイナンスとは経営そのものである。」これが本書と通じて痛感したメッセージである。経営学を学ぶ者として、コンセプトや戦略の論理ばかりに偏重した学びをしていることは自分でも認識していたが、やはりファイナンス的思考を学んでこそ、リアルな経営を学ぶことができるのだと感じた。

    本書では、自然に経済が発展し、自社が収益をあげることのできた時代はもうすでに終わっており、PLを作ることにばかり苦心する経営は時代にそぐわないと主張する。長期的な視点に立って、自社が収益をあげるためにリソースを割くべき部分はどこなのかを特定し、時に赤字になろうともステークホルダーへの説明責任を果たしてこれを断行し、企業を成長させていくのがファイナンス思考の根幹であり、これをする必要があるというのが主な本書の主題であろう。

    当然、PLを重視してしまうのには構造的な問題(例:4半期で決算を出さなければならない → 売り上げを伸ばす、短期思考になってしまう)もあるが、これを変えるのではなく、直接経営を担うプレーヤーに対して問題意識を投げかけたことに著者のメッセージを感じた。

  • 長期的な目線に立つ「ファイナンス思考」と、短期的な目線に立つ「PL脳」の対比が分かりやすかった。
    財務に関する知識はほとんどなかったものの、巻末の付録と合わせてすっきり理解することができたのが良かった。
    特に費用対効果の観点で、今までの自分が資本コストを無視した捉え方をしていたことに気づき、目からウロコであった(本来はROICがWACCより高くなくてはならない)。
    事業を運営するために、「PLを描ける人材になる」という話を聞くことが多いが、そもそもPLは一手段に過ぎず、大元にはファイナンス思考の観点が必要なのだと学びになった。

  • 年末に経理へ異動したんだが、そこの上司がガチのPL 脳だった。

  • PL脳では近視眼的で短期思考になるが、ファイナンス思考では未来志向で長期思考になると捉えられた。
    必ずしもPL脳が悪ではなく、高度経済成長期にはPL脳で良かったが、低成長時代の現代では持続可能なファイナンス思考でないと市場で淘汰され生存できないのではないかとの考えに至った。

  • 2018年に出版されたのをすぐに買い求めて、流し読みして積読になっていました。積読の山から目についたので救出して読みました。一言で言うと、「PL脳(売上、利益)」の弊害と「ファイナンス思考」への転換の重要性が書かれています!

  • この本のおかげでリース会社の営業の人が言ってた「リースは金融じゃなくて物融」の話がちょっと理解できた気がします。面白かったです。

著者プロフィール

シニフィアン株式会社共同代表。兵庫県西宮市出身。競馬騎手養成学校、競走馬の育成業務の後、東京大学法学部を卒業。マッキンゼー・アンド・カンパニー入社を経て、大学在学中に設立したネイキッドテクノロジー代表に就任。ミクシィ社への売却に伴い同社に入社後、代表取締役社長兼CEOに就任。業績の回復を機に退任後、スタンフォード大学客員研究員等を経て、シニフィアンを創業。同社ではグロースキャピタル「THE FUND」の運営など、IPO後の継続成長を目指すスタートアップに対するリスクマネー・経営知見の提供に従事。主な著書に『論語と算盤と私』『ファイナンス思考 日本企業を蝕む病と、再生の戦略論』。
株式会社セプテーニ・ホールディングス社外取締役。Tokyo Founders Fundパートナー。

「2022年 『ゼロからわかるファイナンス思考 働く人と会社の成長戦略』 で使われていた紹介文から引用しています。」

朝倉祐介の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×