仮想通貨革命で働き方が変わる――「働き方改革」よりも大切なこと

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  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478104057

感想・レビュー・書評

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  • 電通の長時間労働が社会問題となった。
    でも、アレって、東大出身の20代女性が過労死したから問題になっただけで、電通では昔から、男性社員はふつうに過労死してきたよね?

    昔から、男性社員の過労死は、アレコレ裁判になってたのに、日常的すぎて話題にもならなかった。

    若い男性社員が過労死しても特別なトピックにはならないけど、若い女性社員が過労死すれば社会問題になるの?
    コレって、男性差別じゃない?

    KAROSHIは外国にはない概念なので、日本語がそのまま使われている。
    高度成長期の日本組織の基本原理が現在まで継承されていることから、未だに、過労死は起きてる。

    クラウドソーシングやシェアリングエコノミーなどの新しい技術の発展が、フリーランサーという新しい働き方を可能にしつつある。
    アメリカではフリーランサーは全就業者の37%を占めるまでになっている。

    現在の技術開発のフロンティアはGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)だが、ブロックチェーン技術を利用して自動的に運営される事業体DAOが近い将来登場する。
    この世界では「人間的な仕事への特化」が可能となる。

    トランプの票田となったラストベルトは、今、医療産業など新しいハイテク産業の成長によって、再生している。
    今後は、特殊技能職に認められる就業ビザH-1Bの扱いが問題となる。ここで、トランプの復古主義が実現して、優秀な外国人が海外に流出すれば、ハイテク分野の技術力は中国などに移転する。

    日本のサービス産業は生産性が低いため、非正規労働に頼らざるを得ない。これを無視して同一労働同一賃金をすすめれば、全体の賃金を引き下げる結果になる。

  • 30年前の私が大学生であった頃からこの本の著者である野口氏の本は読んできておりますが、77歳を迎えられた今でも最新の情報に精通して、精力的に執筆活動を続けられていますね、頭が下がる思いです。

    今年(2017)後半から興味を持ち始めた仮想通貨の魅力について気づかされたのがこの本を読んだ収穫でした。以前は、仮想通貨とは資産運用をする株式投資のようなイメージでいましたが、送金手数料が殆どゼロに近いので少額送金や頻繁な送金をするのにメリットがある、そして手数料ビジネスで利益を確保してきた業界に多大な影響を与えることがあると認識したことです。

    また通貨とは本来は受取り手が納得すれば、どんな通貨でもやりとりができる、つまり今話題となっている Bitcoinも相手が受け取りを承諾すれば、現在使っている通貨まで影響を及ぼすことになりかねないと思いました。野口氏が、Bitcoinは使うことに意義がある、というフレーズが印象的でした。仮想通貨は持っていて価値が上がった下がったといって一喜一憂するものではなく、その利便性を理解して使いこなすことがポイントなのだと思えた、私にとっては意識転換をもたらした本でした。

    また、これと同じくらい衝撃的であったのが、近い将来に働き方が変わるということです。最初にくるのが全社員の平等化、男女国籍、非正規正規社員の区別がなくなり、一度全員が同格になる時代がくると思われます。その時には従来の会社は解散するかして、この本で指摘されている「フリーランス的」な働き方になるのでしょう。これが、神田昌典氏が2012年に彼の著作の中で予告していた姿だと認識しました。

    新元号が制定され、東京五輪が終わった、2020年には大学入試制度も変わり、その卒業生が2024‐2026年頃から社会人になりますが、そのあたりが頃合いかもしれません。その時、私はどうしているのだろう、どうすべきなのかを真剣に考えさせられた本でした。

    以下は気になったポイントです。

    ・政府の成長戦略の中において、2017年3月に「働き方改革実行計画」が取りまとめられ、同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善、賃金引上げと労働生産性向上、長時間労働の是正、柔軟な働き方がしやすい環境整備等が目標として掲げられた(p1)

    ・現在の労働時間の規制は、人々が労働者が工場に集まって働く形態で働いていることを前提としている(p3)

    ・ハードワークと長時間労働の違いは、成果を求めて自ら働くか、職場の雰囲気や上司の命令や指示によって
    嫌々ながら長時間働かされるかの違い(p18)

    ・テレワーク、フレックスタイムが成功するには、仕事がほぼ独立してできるようなものであることが必要、そのためには成果の評価を客観的に行うシステムも必要(p28)

    ・60‐65歳未満の場合、基本月額+報酬月額が28万円を超えると、報酬金額が2万円増えるごとに、年金が1万円減額される、現役時に給与が高かった人ほど、退職後は労働を続けるインセンティブを失うことになる(p39、41)

    ・グローバルなアウトソーシングを行う場合に問題になるのは賃金の現地への送金、東南アジアは銀行システムが発達していないので、日本からの送金は難しいが、ビットコイン等の仮想通貨を用いれば、この問題が解決できる(p55)

    ・最初のアウトソーシング業務は、コールセンターや単純なデータ処理であったが、その後に会計処理や法律実務等の高度業務も含まれるようになった。アイルランド、インドの経済発達はこれによって実現した(p59)

    ・仮想通貨を用いれば、個人事業での最大の難所であった送金、課金の問題を解決できる(p62)

    ・IT活用による働き方改革として、最近登場したものに、1)クラウドソーシング(組織内の仕事の1部をアウトソース)、2)シェリングエコノミー(個人の所有資産等の一部を一時的に使用させる)がある(p63)

    ・世界賃金の平均化となるために解決されるべき問題点は、1)最低賃金、労働時間規制の適用のしかた、2)社会保険(健康保険、年金)の扱い、3)税法上の扱い(給与所得・営業所得により所得税制の扱いが異なる)(p67)

    ・Airbnbを通じて、自分の部屋だけでなく、新しい部屋を購入し、それを貸すようになれば、ホテル事業をフリーランサーとして行うことになる。このシェアリングエコノミーが、将来は収入源の一つになる可能性がある(p69)

    ・シェアリングエコノミーで働くアメリカの労働者について、労働プラットフォーム(Uber,TaskRabbit)と、資本プラットフォーム(eBay,Airbnb)に分けている、2015年9月時点で、3年間で成人の1%が収入(3年前は0.1%)を得ている。労働型は54倍、資本型は6倍、平均で10倍である。労働型月平均収入額は533ドルで収入総額の33%、資本型は314ドルで20%で依然として依存度は低い(p71)

    ・Uberドライバーの平均時給は、手数料を抜いて19.4ドルであり、タクシードライバーやお抱え運転手の平均時給を上回っており、タクシー会社を辞めてUberに登録することが増えている(p72)

    ・レベル4んぼ自動運転が実現した社会では、ストックよりもフローで移動手段を考えるシェアリングがさらに進み、人々は車を所有せずにオンデマンドで車を呼んで移動するようになる(p72)

    ・日本の場合、道路運送法への合法か否かの判断基準は、有償か無償かである。好意からお礼として報酬を支払う場合や、目的地まで運転するのに必要な経費(ガソリン、道路通行料、駐車代はOK)である、しかし自家用車を貸し出して利用者が運転する場合は、許可が必要(p75)

    ・民泊新法が2018年1月に施行されると、どこでも営業可能、宿泊日数制限もない、しかし営業日は上限180日、トラブル発生時には運営者に義務付けられる(p76)

    ・アメリカでは広義のフリーランサーで捉えると、全就業者の3分の1がその分類となる。独立契約者(35%)、分散労働者(28%)、ムーンライター(25%)、フリーランスのビジネスオーナー(7%)、臨時雇用労働者(7%)(p79)

    ・組織で働くことを前提にする限り、働き方を大きく変えることは難しい。フリーランシングを実現することが究極の働き方改革である(p82)

    ・2017年4月からは、改正資金決済法が施行され、仮想通貨が正式な決済手段として認められた、これにより値上がり期待で保有するのではなく、決済手段として利用するための法的仕組みが整備された(p91)

    ・2017年7月に、Segwitという方法を採用(最初と最後のみブロックチェーンに記録して進める、取引終了後に記録)することで、超少額・高頻度取引を行える条件が整った、これにより手数料が極めて低くなる(p96)

    ・料金をビットコインで受け取り、ウェブでサービスを供給する形にすれば、個別的な情報サービスを有料で提供可能となる、この場合、他の人ができないサービスを提供することが重要となる(p98)

    ・ブロックチェーンを用いて運営される予測市場(専門的知見の収益化)は閉鎖を強制できない、胴元がいないので透明で公平な予測市場が形成する、すでにAugar、Gnosisが運営されている(p101)

    ・仮想通貨なら少額支払いができるのは、1)審査不要、2)SSL認証のような認証不要、3)送金コストが非常に低い、これによりフリーランサーの可能性を大きく広げる、資金を受け入れる手段を持たなかった人が、その手段を獲得したこと(p108)

    ・スマートフォンやデスクトップ用にさまざまな広告ブロックが提供されている、アドブロックス・プラス等(p114)

    ・ビットコインのシステムが、ブロックチェーンを用いることによって、銀行などの仲介無しに通貨の取引を行っているのと同じようなことになる。これはアダムスミスが考えていた経済システムと同じ(p137、138)

    ・供給者と需要者がブロックチェーンを介して直接に結びつくことによって、本当のシェアリングが実現する、こうなると、賃貸と所有の区別が曖昧になる。スマートロックの普及によりますます促進される(p138)

    ・Arcade Cityと呼ばれるプロジェクトは、ブロックチェーンを用いるライドシェアリングを提供しようとしている、16年1月創業で、利用者に乗車の機会を提供、利用者はドライバーの評価や提示額を参考に、自身のニーズにあった車を探す(p139)

    ・ブロックチェーン技術をベースに置く分散型自律的企業(DAO)は、ICO(仮想通貨を用いてインターネット上で資金調達する)という形での資金調達を行い新しい事業をDAOの形態で進めている(p149)

    ・世界経済フォーラムは、2016年8月に、世界に大きな影響を及ぼす可能性が高い10大新興技術を発表した、バイオ医療(2:光遺伝学、生体機能チップ)材料(4:次世代電池、二次元材料、プロブスカイト太陽電池、システム代謝工学)情報関連(4)であった(p155)

    ・クリーブランドは、復活の街といわれ、いまやアメリカでもっとも熱い町になったと、フォーブス紙が評価した(p166)

    ・ピッツバーグでは、鉄鋼工場の廃墟が医療施設群に取って代わったことから、全米で最も住みやすい都市になった(p167)

    ・アメリカが移民を制限すれば、シリコンバレーの先端産業には間違いなく不利に働く、インド・中国人はその発展に大きく寄与してきたので(p181)

    ・パートタイム労働者の比率が高いためにその産業の給与が低くなる、のではなく、産業の生産性が低いためにパートタイムに頼らざるを得ない(p223)

    ・正規と非正規での格差をなくそうという「同一労働賃金」も「限定正社員」も、全員正社員化ではなく、逆に「全員非正規労働化」を可能にするもの(p232)

    ・アメリカでホワイトカラー・エグゼンプションが機能しているのは、もともと成果給が普及していて、アウトソーシングや専門職の労働市場により、専門職の仕事の価値がマーケットで価格付けされているのがポイント(p244)

    ・日本企業のも問題は、多くの仕事を正社員が行っていて、それを外にアウトソースしないことによって発生している(p250)

    2017年11月5日作成

  • 仮想通貨の導入が進むことによって働き方改革の促進につながる。ただし、日本はアメリカと比べてフィンテックへの投資が1/200と圧倒的に少なく、絶望的なほどにこの分野に弱いという情報には不安になる。既存の枠組みで働きすぎている場合ではない。

  • 図書館で借りた。結局は我々世代はひどい目にあうしかないということね

  • 仮想通貨が浸透すると、通貨のやりとりの経費が格段に安くなるため、ビジネスの形が変わり(より、個を活かすことができる形になり)、働き方も変わる、という内容ですが、これは前半のお話で、後半は、アメリカ経済(というかトランプ政権)の現状と課題、それから、日本経済の現状と課題に重点が置かれていました。

    示唆に富む、面白い本でした。
    ちなみに、働き方が変わる、ということは、労働市場へ人を送り出す役割をもつ、教育現場も変わらなければならない、ということ。
    その点を、俯瞰的に、かつ、一貫性をもって、考えて、取り組んでいかないといけないですね。

  • 新しいことが書かれているわけではないが、これからの働きを考えるための基礎的情報が整理されていて読みやすい。

  • 働き方の観点で面白いけど、
    仮想通貨はごく一部なので、タイトルが変。

  • 労働基準法に定める労働時間の原則は、一日8時間、1週40時間
    労使協定(いわゆる36協定)を締結し、労働基準局に届け出た場合は、これを超えて労働させることも可能だ

    65歳以上 基本月額+報酬月額が47万円までは減額されない。基本月給+報酬月額47万円を超える場合は、報酬月額が2マネンを超えるごとに年金は1万円減額させる

    国内クラウドソーシング クラウドワークスとランサーズ

  • ビットコインの高騰が話題になっている。
    投機としての側面が強いが、実質的に社会にどのようなインパクトを与えることができるのか。

    仮想通貨を利用すれば、これまでの個人事業での最大の難所であった送金、課金の問題を解決できる。

    仮想通貨でどう儲けるか、ということはこの本では参考にならないが、どのように社会に変化をもたらすのか、という知見を得ることができた。

  • まず、タイトルに「仮想通貨革命」という言葉がありますが、全体の中で仮想通貨について述べているのは3章のみです。本書の主題は仮想通貨ではなく、働き方革命の方にあるので注意が必要。仮想通貨はその働き方革命をすすめるためのひとつの方法として取り扱われています。本書を読めば、なぜ過労死ラインを超えるような長時間労働が常態化するかやなぜ日本企業は世界での競争力を失い、グーグルやアップルのような巨大企業を生み出すことができなかったのかがわかります。また、今後やってくるフリーランサーの時代に個人や企業がどのように対応していけばいいのか、そしてそこに仮想通貨はどのような役割を果たしてくれるのかが理解できるようになっています。

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著者プロフィール

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業。64年大蔵省入省。72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て2017年9月より早稲田大学ビジネスファイナンス研究センター顧問。専攻はファイナンス理論、日本経済論。ベストセラー多数。Twitterアカウント:@yukionoguchi10

「2023年 『「超」整理手帳 スケジュール・シート スタンダード2024』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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