父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。

制作 : 関 美和 
  • ダイヤモンド社
3.82
  • (59)
  • (96)
  • (60)
  • (14)
  • (4)
本棚登録 : 1845
レビュー : 104
  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478105511

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • ☆5の評価だが、結論として誰がこの本を読むかということで違ってくる。
    高校生や経済学部以外の大学生が経済の成り立ちを知るために読むのだったら、間違いなく良書。社会人がそれを復習するために読むにも良いだろう。

    ただし、この本を読んで「経済学を勉強しようかな」って思っている人にはあまりおすすめはできない。経済学の本としてはあまりに初歩的すぎる。

    自分も経済の専門家ではないが、本書で「経済学」を学ぼうと思ったら手応えがなさ過ぎると感じる。
    それなりの知識を持ったビジネスマンがこの本を手に取る理由としては、「経済の仕組みを素人に説明する時に参考にするため」という理由がベストだろう。

    例えば、ジャレド・ダイアモンドの名著『銃・病原菌・鉄』でも述べられている「人類の貧富の格差の発生原因」や、捕虜収容所内で捕虜達がタバコを通貨代わりに使っていたという状況を使っての「貨幣の流通や価値の変動の仕組み」の説明などは、誰が読んでも非常に分かりやすい。
     
    本書を読むに当たって一つだけ注意する点があるとすれば、この本を読む前には必ずキアヌ・リーブス主演の映画『マトリックス』を観ておくべきだ。この本の中で『マトリックス』のシーンが何度も引用されている。

    『マトリックス』は、「機械に支配された未来の人間社会」を描いたディストピア映画の古典的名作として既に認識されており、最近の欧米のビジネス書では非常に良く引用されている。
    『マトリックス』を観たことが無いという人は、このレビューを読み終わったらすぐにTSUTAYAに直行すべきた。この映画はアクション娯楽作品しても最高に楽しめるので絶対に観て損は無い。
    私は当時、映画館に合計4回も足を運んで『マトリックス』を観に行った。これは私の映画鑑賞歴の中で最多だ。
    ちなみに第二位はリバイバル上映を含め3回映画館に観に行ったハリソン・フォード主演の古典的名作『ブレードランナー』だ。

    『ブレードランナー』は、人間のために、いわゆる3K作業(きつい、汚い、危険)をさせられていたレプリカントと呼ばれる人造人間達が反乱を起こし、その作業から逃げ出したレプリカントが人間社会に逃げ込んでいるという未来社会が描かれている。
    そのレプリカントを探しだし、殺すことを任務としているのが「ブレードランナー」と呼ばれている刑事達だ。
    この『ブレードランナー』も本書内で何度か引用されているので、観たことが無い人は観てみるとなにか得られるものがあると思う。

    『マトリックス』、『ブレードランナー』とも未来の人間のあり方をテーマとしており、非常に深い内容だが、どちらも純粋にアクション映画として楽しめるので気楽に観て欲しい。

    という訳で、本のレビューなのか名作映画の紹介なのかよく分からなくなってしまったが、とりあえず本書は読み物として楽しいし、内容も読みやすく、分量も手頃で数時間で読み終えることができるので、気になった人はぜひ手に取ってみて欲しい。

  • 今年出た本の中で、もっとも読まれるべき本はどれかと聞かれたら、まだ半年残っているが、迷いなくこの本を推すだろう。それは、この本がわかりやすいからでも、面白いからでも、ためになるからでもない。経済こそは、われわれがいま考えるべき、もっともホットなトピックだからである。なぜなら、われわれ人類がこの先も地球上で生きていけるか、もっと具体的に言えば、私たちの子や孫がこれからもこの星に住み続けられるか、それが経済にかかっているからである。
    重要なポイントはいくつかあるが、ここではそのうちのひとつを取り上げるにとどめたい。資本主義(本書では「市場社会」という言い方をしている)は、借金によって成り立っている。たとえば、私がこれから事業を起こそうとしている。だが、それには元手がいる。そこで、銀行からお金を借りることにする。事業が無事成功すれば、その儲けで借りたお金を返すことができる。
    では、銀行はそのお金をどうやって用意したのだろう。それは、(著者はこれを現代の黒魔術だと書いているのだが)まさしく無から作り出したのである。事業が成功すればお金は出てくるのだから、それを先取りしてしまうのだ。別な言い方をすれば、未来からお金を借りてきている。
    資本主義の成り立ちは、(実際はもう少し複雑だが、そこは本書を読んでいただくとして)、簡単に言えばそういうことである。しかし、この仕組みには重大な欠陥がある。事業は失敗するかもしれないのだ。失敗すれば、私はお金を返せない。困ったことになる。
    要するに、資本主義というのは、経済がこの先も成長するという前提のもとに立っている。しかし、いくらなんでも、無限に成長し続けるわけがない。どこかで頭打ちになる。これは資本主義に内在的な欠陥であり、資本主義の限界でもある。
    本書はあくまでも資本主義の枠内で、現在の経済の仕組みをわかりやすく説明しているのだが、私はもう一歩先へ進めてもいいと考えている。つまり、資本主義や現在の貨幣システムだけが、経済のあり方ではない。たとえば、本書にも少しだけ触れられているが、利子を禁じたイスラム金融がある。これは資本主義の対抗潮流になりうる。
    はじめに、経済はわれわれの子孫の未来がかかっている問題だと書いた。その意味が少しおわかりいただけただろうか。この問題を考えるために、本書は重要な手引きとなる。題名にあるとおり、決して難しい本ではない。半日もあれば読める。だから、多くの人に手にとっていただき、考えてもらいたい。経済を為政者や経済学者に任せることは、宇宙船地球号を彼らの手に委ねることに他ならない。

  • "不足"が"余剰"を生み出したのが興味深い。
    まだ読んだ事が無いのだけど、サピエンス全史と繋がる部分がありそう。
    "余剰"は"余裕"とも言え、文化を生み出す根源となった大切なものだと思う。
    あとは、"余剰"を上手く分かち合う方法なんだろう。

    それと、仮想通貨は発行数が定められていて、誰かが通貨を刷ってバランスを取る方法がないから上手くいかないという話は気になる。仮想通貨もバージョンアップされていっているから解決されると良いのだけども。

  • 経済について、著者が娘宛に教えるように書かれた本です。著者の経済に対する考え方が詰まっています。お金や市場といった経済にまつわるものが、何なのかが非常に分かりやすく、それでいて簡単に済ませずに書かれています。そして過去に何があって、今の世界が出来ていて、なぜ今の世界の問題が起こっているのかに結び付けられています。ギリシャの財務大臣として問題もあった著者が、その意図するところを述べられているところは熱があり、それゆえに引き込まれないよう冷静に読む必要も感じました。それでも読後に思うのは、あのギリシャ危機について、あまりにも西欧キリスト教的な見方でみていたなと。著者の気持ちもわかるのです。
    本当に正しい形は何なのか、それを考えるきっかけにも良いと思いました。

  • こんな経済ので本、他には無いと思います。
    神話からスタートレックやマトリックスまで、わかりやすい例で語られています。
    この本を読んで、経済の動きというものがなんとなくわかった気になります。
    経済学を学んだ人には、物足りないかもしれません。
    私にとっては、目から鱗が落ちる事が多かったです。
    入門の入門書としてお勧めできると思います。

  • 予想以上に面白かったし、ためになった。
    自分は資本主義の価値観にどっぷりハマっていて、それゆえに最近覚えていたひっかかりを本書が解き明かしてくれたような気がした。
    他人にとって価値あることは「値段が上がり」、他人に必要とされないものは「値段が下がり」淘汰される、、だから価値の少ない仕事はやめて価値の高い仕事をしよう、価値の高い人間になろう、その生き方は今の世の中正しいかもしれないけど、競争煽りまくった結果地球全体は果たして幸せな結果になるのか??考えさせられるし、資本主義の前提と違った価値観を大事にするのも必要かと思った。

  • 経済の仕組みを、歴史を追って説明があり分かりやすかったです。
    本当の幸せを考えさせられました。

    ホモ・サピエンス全史を纏めた内容と感じました。

  • 「大金持ちと貧乏人の話」を身も蓋もなくはっきりと言い切ってる本だ。エピソードの具体性と説得力が秀逸。言葉の力・文字の力を実感する。実にわかりやすい、思わず苦笑いを浮かべるほどに。
    経済の話はわかりにくいものだが、焦点をとことん絞って単純化し、具体的な事例を語りながら説明する。よく新聞記者が「中学生にもわかる文章を書け」と言われるそうだが、やさしく説明することは難しい。本書はその難しさをクリアしている稀有な本だと思った。
    最後に哲学的課題を提示しているところが「父が娘に」らしく微笑んでしまった。しかし、これは読者全てに突きつけられた課題でもあると思うと身が引き締まる。本書は「さすが!」と感嘆を唱えたくなる本である。

  • タイトルの通りです。人間の歴史とともに経済というものがどうして成り立ってきたのか、とても分かりやすい。一言でまとめると「経済について語るとはつまり、余剰によって社会に生まれる、債務と通貨と信用と国家の複雑な関係について語ることだ。」ということらしい。ついでに「支配者を正当化する思想がなければ、国家の権力は維持できなかった。支配者が死んでも国家が存続し続けられるような、国家権力を支えるなんらかの制度化された思想が必要だった。そして、思想を制度にするような儀式を執り行ったのが、聖職者だ。」ということで、宗教とは何かについても改めて考える機会に。先日読んだ「最強の生き方」に通ずるものがありました。始まりは「余剰」。農作物の余剰によって、文字が生まれ、債務と通貨と国家が生まれた。それらによる経済からテクノロジーと軍隊が生まれたということらしい。

    封建制度のもとで貴族階級が支配的な地位を維持できたのは、政治と軍隊と法律と慣習のおかげだった。富の蓄積をもっと速めるために、生産性を上げるようなテクノロジーを開発する必要も動機もなかった。しかし、貴族とは対照的に、新興の起業家が生き残れる保証はどこにもなかった。むしろ、既存の政治や法律や慣習は起業家に不利だった。だから、彼らが生き残るには利益を生み出すしかなかった。そして、起業家の借金と利益と焦りが高まるにつれ、競争はますます過酷になっていった。そして、ある時点で、社会全体が借金漬けになり、経済の成長がそれに追いつかず、利益を出しても返済しきれない状況が訪れる。バブルの崩壊だ。そして経済の崩壊の後には不況が。この後、経済政策についての記述もある。ケインズ流というかリフレというか・・・そしてベーシックインカム的な話に続く。

    割と最初のほうに、経験価値と交換価値の話があり経済は交換価値の概念で成り立っているところからスタートするけど、改めて経験価値を見直すべきなのかなと最後はそこにつながっていたように思う。マスターカードのCMではないけれど、大切なものはプライスレスであり、生活の価値観もそちらに寄せていったほうが幸せになれるのではないかとそんな風に考えさせられました。

  • 【論理的ぽい宗教】
    「経済学という宗教」なるほどです。
    まさに資本主義経済という宗教ですね。

    この本を読む前に村上世彰さんの『いま君に伝えたいお金の話』を読みましたが、感じたのが得た利益を資本家だけでなく労働者にも還元する方法はないかということです。そこで「資本の共有」を思いつきました。

    が、この本にもそのまま「資本の共有」が提示されていました。わたしはものすごいことを思いついた!と思いましたが、すでに既知の情報なんですね。
    ただ、具体的な共有方法は記載されていませんでした。一番簡単にできる共有方法は株だと思います。
    いまや株式も投信を使えば100円単位から購入できるのでハードルは低いです。

    資本金なんかないという人がいますが、お金を消費に使うか、投資に使うかの差で基本的に収入を得ている人であれば資本を持っていない人はいません。100円から投資できるのですから。。。
    天引きで貯金できる力があれば、天引きで投資を行えばいいだけです。あとは放置プレイで自然に増えていきます。


    銀行のすごさ(恐ろしさ)
    日本銀行も含めて中央銀行はすごいです。
    公的資金を注入するといってもどっからともなくお金を準備するのですね。

    公的資金を注入された企業は将来的に返金するのですが、将来稼ぐで「あろう」お金を今は存在しない(中央銀行にもない)のに、現在に投入するという恐ろしいことをしています。将来に於いて世界経済が成長を続ける説が成り立っているのでできるワザです。
    また、その借金が世界経済の原動力になっているのも事実です。

    住宅ローンも同じです。ローンを組んだ人が将来稼ぐで「あろう」お金を前借り(+利息)をするシステムです。まれに回収できない(それでも保険や競売などでマイナスは少なくなる)こともあるでしょうが、全体としては回収できない金額の方が圧倒的に少ないということでしょう。自己破産ようような個人デフォルトは大したことではないのです。
    国のデフォルトのような大きな問題でも、ギリシア、スペイン、アルゼンチンなどの国がデフォルト状態になっても、リーマンショックのような企業が破綻するよりダメージは小さいです。
    国が破綻したところでどうってことはないということでしょうから、個人となれば微々たるものです。


    幸福感
    少し話は変わりますが、幸福感は所得が低い状態であれば、所得に比例しますが、最近思うことが職人さんの幸福感についてです。

    職人さんは労働時間が長い人が多いし、給料もそれほど高くありません。
    時給換算すると安い時給で働かされているように思っていましたが、職人さんは基本自分が手掛けた仕事にほこりを持っており、仕事を芸術家でいうところの自分の作品のように感じています。好きなことで時間を使っているように思います。いやいやながら手に職をつけ、長い期間働いている人は少ないです。
    はじめはいやいやだったかもしれませんが、職人という職業はスキルが上がるたびに好きになっていくような気がします。
    土曜日も働かされて生産性は低い状態ですが、好きなことをして生きているので実は幸福度は高いのかもしれません。年収450万円以下でも職人さんは幸福度という観点から見ると高いように最近感じています。
    (職人さん違っていたらすみません。。。)

著者プロフィール

1961年アテネ生まれ。経済学者。2015年1月に成立したギリシャの急進左派連合政権(チプラス政権)で財務大臣を務め、国際債権団(トロイカ)との債務再編交渉を担当した。政権入りするまで長年にわたり、英国、オーストラリア、米国の大学で教授職を務めた。大臣職を辞任した後は、民主主義の再生に向けて活動し、世界中の聴衆に語りかけている。2016年からは欧州の草の根政治運動、DiEM25(Democracy in Europe Movement)の顔役を務め、2018年11月には米国の上院議員バーニー・サンダース氏らとともに革新的左派の国際組織、プログレッシブ・インターナショナル(Progressive International)を立ち上げた。著書は、Talking to My Daughter About the Economy: A Brief History of Capitalism (Bodley Head, 2017)〔関美和 訳『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話』(ダイヤモンド社、2019)〕、And The Weak Suffer What They Must? (Bold Type Books, 2016) など多数。

「2019年 『黒い匣 密室の権力者たちが狂わせる世界の運命』 で使われていた紹介文から引用しています。」

父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。のその他の作品

ヤニス・バルファキスの作品

ツイートする