フェミニストってわけじゃないけど、どこか感じる違和感について──言葉にならないモヤモヤを1つ1つ「全部」整理してみた
- ダイヤモンド社 (2021年4月14日発売)


- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784478109663
作品紹介・あらすじ
モヤモヤとした違和感を全部言葉にすると? 『82年生まれ、キム・ジヨン』を生んだ韓国発、「これからの世代」の必読書。
感想・レビュー・書評
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韓国の女性による随筆。日本語版表装を担当したイラストレーターのファンなので、そこかをきっかけに興味を持った。
「フェミニスト」「フェミニズム」という言葉は語る側にも、語られる側にも何らかの緊張をもたらすことに気づいて、この言葉の扱いに慎重になる女性は増えていると感じる。バズワード化した言葉をちゃんと振り返り、丁寧に定義する取組は必要だ。
ただ、その定義にちゃんと立ち戻って、冷静に語る時間も惜しいくらい、「信じられない」ということが世の中にたくさん野放しされているのも紛れもない事実ではある。
冒頭、筆者はフェミニズムを「性別によって定められた苦しい部分に共感し、話し合い、目線を変えてみようという考え方」と定義するが、読み進めていくと、私にとってはこのように解釈できた。「男」と「女」に代表されるような、異なる価値観、社会通念を持つ人々が、お互いの世界を少しずつ覗き見るための、その旅路のチケットなのかなと。
社会全体のあれこれにテンポ良く切り込む前半から、中盤の「1番身近なパートナー(例えば夫)との向き合い方」「結婚」に進むと話は一気に生々しくなるが、現に起きていることなんだろう(自分は恵まれてるなと思う事例ばかり)。ふと、女性が「フェミニズム」をまっと言うに語りたい上で障壁となっているのはこういった身近なパートナーとの脆く綱渡りな関係性が要因になっていないか?とさえ思う。社会に対して冷静に対処する女性のエネルギーは、身近な人との間の健全な相互の関係性があってこそなのだ。
あと、訳者の方文章、とても素敵だった。もとから日本語なのではないかと思うような、自然な一冊だった。韓国はこんな社会状況なのか、といろいろと考えを巡らせつつ、自分たちの問題にも置き換えて読み進められたのも、こういった自然でストンと心にハマる訳のおかげだとも思ったのでした。 -
パク・ウンジ 著/吉原 育子 訳
定価:1650円(本体1500円+税10%)
発行年月:2021年04月
判型/造本:46並
頁数:304
ISBN:9784478109663
〈https://www.diamond.co.jp/book/9784478109663.html〉
【目次】
目次
プロローグ ── ネコに仕える物書き、または物を書くフェミニスト
どこか感じる「違和感」について
平凡でかけがえのない人生のために
第1部 あなたと話してると、私は大げさな女になってしまう
── どこか言いにくい違和感について
「フェミニストってわけじゃないんだけど……」と言う理由
── あたりまえなのにとても口にしにくい言葉
勝手に「ランク付け」してくる人たち
「男はもっと大変なんだ」だって?
大変なら、変えたほうがいい
「優位」に立ちたいわけじゃない
配慮してやったら権利ばかり主張するですって?
── 本当はそんなことしてくれなくていい
自分たちが脅かされない範囲での許可
配慮の必要がなくなるのがいちばん
制度への不満を転嫁している
普通に「平等なベース」になってほしい
その冗談、私は笑えない
── —男同士の「共通言語」について
内輪受けの「結婚ジョーク」
古い価値観がしみついた話題
できるのは、見ないことだけ?
男性が男性のためにつくった社会
── 「逆差別」を叫ぶ人に見えていないこと
iPhoneのサイズは男性向け?
「逆差別をなくせ」はおかしい
「女性上位時代」に、なぜ私は居心地が悪いのか?
── 「理解ある夫」に感じる違和感
ただフェアなことが「すばらしいこと」になってしまう
「いい夫」「いい妻」の合格点の格差
「人種差別は終わった」と白人が言っても説得力がない
「ずっとましだ」は「もう十分」ではない
なんとなく使っている言葉
── 言葉が思考パターンをつくってしまう
「女の浮気心」を示す特別な単語
面倒で繊細だけれど必要なこと
おばさんと呼ばれるのがいやな理由
── 「おばさんならこうする」という暗黙の了解
年を取ること自体はすばらしいのに
「おばさんたちの集まり?」という冗談
「呼び方」は態度に影響を与える
「女の敵は女」という思い込み
── それで「都合がよくなる」のは誰か?
「それは僕がやるよ」とは言わない
男同士は義理人情、女同士は嫉妬の関係?
「キム・ジヨン」はなぜ男を怒らせるのか?
── 「気づかされる」ことを避けたい心理
アイドルが「読んだだけ」で嫌われる
「男のどこが恵まれているんだ?」という拒絶
「罪悪感のなかったこと」を指摘されたくない
中絶について議論する人たち
── 男たちのズレつづける話し合い
男性向け避妊薬が普及しない理由
中絶をなぜか「女性の問題」にする発想
「僕が責任を取るよ」で終わりと思ってる?
なぜ「男性だけ」で女性の体の話をしているのか?
人間の問題が「人口の問題」になっている
第2部 私の彼は一般的な男の人
── なぜかなかなか通じないけど話したいこと
「痩せたみたいですね」って?
── 「褒め言葉」が引っかかる
「褒め言葉」でコルセットがきつくなる
「したいオシャレ」の基準はどこから?
「する必要のない社会」で自由にオシャレしたい
フェミニズムのせいで、別れることになったらどうしよう
── 無意識の「女性嫌悪」に目を向ける
「女性嫌悪だって? いや、女は大好きだよ」
ジェンダーの話をしたい人への注意書き
険悪になっても学び合えるか?
結婚は「自由をめざす闘い」ではない
「女はいいよな」と言う相手と会話する
── 「通じない相手」にわかってもらうのは無理?
「ひどくない?」と聞いた直後に凍りつく
「スルー」しつづけても行き詰まる
話を避けるのは「解決できない」から?
「男は子ども」というフリーパス
── 堂々と「包容力」を求めてこようとは
それでいいなら私のほうが子どもになりたい
寝ないことに罪悪感を持っていた
そんな責任、感じなくていいんだよ
── 「役割分担」を一つひとつ考える
「責任取って」は冗談に聞こえない
「家でラクさせてやりたい」と言う男の妻はラクか?
古い価値観を一枚ずつはがしていく
フェミニズムに怒る人たち
── 「もっとやさしく話す」なんてできません
「ミラーリング」で激怒する
その「正しいフェミニズム」ってどんなもの?
「男を一緒くたにするな」という言い分
「好意」と「セクハラ」の違いもわからないんですか?
── ミートゥーを冗談にする意図
「つまらないことで騒ぐなよ」という暗黙の警告
冗談めかして、内心で認めている
誤解されそうなことをするから誤解される
文明社会の「ジャングル」のような部分
── 男性には見えない世界
物理的に「小さい」という事実
弱者として生きるよりも「怖い」こと
男女の「あたりまえの世界」の違い
「沈黙」という二次加害
私は「最近おかしくなった」人ではない
── ネコのしつけから政治まで
居心地が悪くても話すしかない
生き方も考え方も違ってあたりまえ
「不満がない」人は考えられない
フェミニストは「ごく普通の人」
第3部 ええ、私は大げさな女です
── ぶつかるのは大変ですが言うことにします
結婚にも「取捨選択」が必要だ
── 結婚式は象徴的な「入口」
「バージンロード」が象徴するもの
真っ先になくすべき言葉
「家事は半々」が難しい
── 家にもプロジェクト・マネジャーが必要か?
自分で自分の面倒を見る
「褒めて動かす」役なんてしたくない
赤ちゃんは「超能力」では育てられない
本当はそんな「義務」はないのに
── この嫌な罪悪感の正体とは
「必要な変化」ならすぐに取り入れたい
敏感より鈍感のほうがたちが悪い
自分のなかの「義務感」との闘い
「いざこざ」が起こったっていい
話したら「罪悪感」が軽くなった
「私の夫」はそうじゃないはず
── 地下鉄の男の会話と女の不安
「子を持つこと」についての男女の違い
夫はどこまで「格闘」してくれるだろう?
「子どもがほしい」と言われたらしたい質問
「男は仕事、女は家事」でこんなに困る
── 「家長は男」で決まり?
「家事の責任者」は割に合わない
男性も権利を「剝奪」されている
問題は「経済力」ではない
平等になれば男もラクになる
夫はソファに直行し、妻はすぐさまキッチンへ
── 夫の実家のキッチンで起こるせめぎ合い
キッチンに立った瞬間にくたくたになる
本音でぶつかるほうが家族に近づく
妻は「もう一人の母親」ではない
「名誉もないリーダー」になりたい人はいない
── 夫の家のイベントを仕切るのは誰?
「夫の親のイベント」を仕切るべきは私なのか?
「新しい休日」に反対した本音
イライラしても「静観」しよう
いちばん結婚してはいけない相手?
── 言うべき瞬間に「口を閉ざす」男
「自分のこと」と思ってほしい
給料を「100パーセント」もらえただけで感謝すべき?
女は「便利な調整役」?
問題は見えていなくても「存在」する
「理性の糸」が切れる音
── 意味のわからない伝統と義父の言葉
義父からきた長文の返事
変化を平和に生むことは難しい
慣習を守らせる「最大の伏兵」
── 親の愛情のかたち
いちばん身近な人の意見
「夫の人生に編入される」という考え方
父にとっての「最終ミッション」
親になるなら、こんな親になりたい
── 子どもたちに何を伝えるべきか?
洋画の字幕もなぜか女は敬語
大人たちにできること
エピローグ ── 他人のすべてを理解できるわけではないけれど
「相手の立場」に立って世界を見てみる
理解し合うための手段
訳者あとがき -
全女性、特に若年女性は必携。
と言っても別に読まなくてもいい。なぜなら、女性にとっては(うんざりさせられるような)「当たり前のこと」しか書いていないから。
ではなぜ必携かと言うと、読ませるんである。自分の夫、婚約者、恋人、友達、ちょっといいなと思ってる男に。
で、ちょっとでも機嫌を悪くしたり、disってきたり、屁理屈こねたり、へらへら嗤ったりしやがったなら——少しでも傷(つまり関係)が浅いうちに、速攻そいつは切り捨てるべき。
その試金石として必携なんである。
「傷が浅いうちに」、これがすべてだ。
カネ、力、(そしてこれが何より怖い)自分自身の情に、がんじがらめに縛られてしまう前に。
1日でも1秒でも、若く身軽であるうちに。
古い私たちの轍を踏まぬように。
少女たちよ、翔べ。
2021/10/12読了 -
文化は違えど同じ世代の価値観にとても共感できました。わたしも結婚とその先のことを考えたときに、自分だけ諦めなきゃいけないことが山ほどあるような気がして、今まではあまり感じてこなかった男女格差をひしひしと感じるように。でもぶつぶつ文句を言うのではなく、言葉と行動を変えていくべきですね、未来の女性達のためにも。
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筆者の夫世代の日本人男性として、読んでよかった。
いかに自分が「男女の格差」という問題を他人事として捉えていたか、まざまざと感じさせられた。
本書で提示されるような問題に対して、心の中で言い訳をして知らぬ顔をしてきた自分に、ストレートパンチを決めてくる容赦のない本。自分の中の当たり前や、世の中の当たり前を別の角度から見れるような視野をくれる、考えるきっかけになる本だった。 -
フェミニストってわけじゃないけど、どこか感じる違和感について──言葉にならないモヤモヤを1つ1つ「全部」整理してみた。パク・ウンジ先生の著書。フェミニストってわけじゃないけどどこか違和感を感じる人は少なくないはず。フェミニストってわけじゃないけどどこか違和感を感じる人の代表としてパク・ウンジ先生が代弁してくれているのかもしれない。フェミニストってわけじゃないけどどこか違和感を感じる、フェミニストってわけじゃないけど言葉にならないモヤモヤがある。そういう人がフェミニストってわけじゃないけど、どこか感じる違和感について──言葉にならないモヤモヤを1つ1つ「全部」整理してみたを読むときっとすっきりする。
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慣習の延長に刷り込まれている女性の役割を今一度実感。
著者とフェミニズムに対してのスタンスが一緒で読みやすかった。
最近フェミニズムとかメディアに取り上げられたり、こうして書籍がでてきたり、表に出てきたことはやはり女性の活躍が増えて、やっとフォーカスがあたってきて、慣習に組み込まれていた女性の役割が覆ってきている感覚が得られて、良かったなとつくづくと思う。。
このムーヴメントを後世に残していけるかの現世の戦いに震える。 -
私はフェミニストでもフェミニストをアンチする立場でもないけれど、それ分かるなあとかそう感じていたのは当たり前のことなのか、と腑に落ちる場面が何度がありました。昔の感覚にすがりついている人度々見かけますが、この本読むべき。時代は刻々と変わる。それは考え方も各々の生き方も然り。
著者プロフィール
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