ダブルハーベスト 勝ち続ける仕組みをつくるAI時代の戦略デザイン
- ダイヤモンド社 (2021年4月14日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784478111017
作品紹介・あらすじ
「AI実装の現場」を熟知する2人が、戦略的導入のフレームワークを解説! DXの時代に勝ち続ける「何度でも稼ぐ仕組み」
感想・レビュー・書評
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人間とAIは共存できる、という点を力説した書。
少なくともAIが成熟するまでは、人間は役割を果たす事ができる。そして当然ながらその成果物を享受するのも人間だから、AIはそのループの中間軸として機能する。
人間とAIのコラボレーション、と本書は表現する。これを「ヒューマンインザループ」と呼ぶ。例えば、手書きの書類からOCR (光学文字認識)で文字列を読み込んで、テキストデータを抽出するAIがあるが、必ずしも正しい読み取り結果ではないから、これを人間が補正する。SANSANの名刺登録もこれを行なっていて、何だかアナログだなと思ったが、コラボこそが確実性を高める。尚、人間の補正結果については怪しさは残るが。
AIをどんどん賢く育てるためにの追学習。人間は、AIの養分となる。悪い意味ではない。言わば、折角外国語を覚えた人間が翻訳機の開発支援をするような感覚だ。能力者は、装置の養分になる。しかし、その能力を得た装置は、非能力者に貢献する。
AIの補助としての人間の役割とは。検査、バックアップ、監査。AIに弾き出された結果をチェックしたり、AIに答えられない質問に答えたり、AIが判断に迷うときに対応する役割だ。
AIは、やがてコモディティー化していくと本著は言う。完全合理的な最適解を導くなら、差異化ができなくなるからだ。しかし、そんな事は容易に起こらないだろうと思う。共産主義下において全ての企業が保有する固有のデータを強引に供出させねば、同じ解にはならないからだ。ユニークなデータ取得によるユニークなデータベースこそが企業の個性になるのではないだろうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
AI(人工知能)を、技術的に論じたものではなく、ビジネスモデルの中で戦略デザインとして位置づけたものです。
■わかりやすく、前半は、ビジネスモデルなどの解説、後半は、ケーススタディをつかった実例を扱っています。
■AIがコモディティ化し、ゲームの焦点が、「技術」でなくなったいま、もとめられているのはAI活用の「戦略デザイン」です。
■それは、ダブルハーベストループという戦略モデルです。
すくなくとも、実務ベースと金融ベースの二重ループが作れるわけで、このダブルハーベストループを回し続ければライバルは追いつけなくなるというのが本書の最大のメッセージである。
■勝ち続けるための仕組みとしてAIの深層学習をベースにおいたループ構造をつくって回す
■他者の模倣ができないように、ループも二重三重につくって、複数の競争優位を築き上げる
AIは人間の仕事を奪うのではなく、人間の仕事をアシストしてくれる存在
3つのアプローチがある
①ヒューマン・イン・ザ・ループ 人間とAIのコラボ 深層学習と追学習で成長する。さらにその中には人力検査型、人間バックアップ型、監査型の3つの型がある
②エキスパート・イン・ザ・ループ 専門家の能力を最大化する
③ユーザ・イン・ザ・ループ ユーザに参加してもらってAIの精度を上げていく
AIが発揮している価値は5種
①売上増大 ②コスト削減 ③リスク・損失予測 ④UX向上 ⑤R&D加速
AIの機能は3種
①認識 ②予測 ③対処
業務の全体最適とAI ボトルネックにAIを適用して大きな効果を得る
(全体にはAIは適用できないのでどこに適用するのが効果があるのかを検討する)
・レスデータ 少数の有効なデータをつかって、迅速にAIを立ち上げる GANなど作られたデータなどを使う
・トランスラーニング 領域Xで開発したAIを領域Yに適用する
UVP:ユニークバリュープロポジション 他社にはない唯一無二の価値を追求する
100人が必要な業務にAIを適用して、たとえば85%が上限になった場合、その85%をサチュレーションという
飽和均衡になった業務は人がやるが、85%の効果があった。さらに学習で95%になった場合、残15%を残5%にしたわけなので、そこから、さらに3倍の効果があったことになる。
ループを一重にしておくと、他社から模倣されて、レッドオーシャンになってしまう。それを防ぐために、二重三重のループを形成する
どんなデータをためればいいのか?
①IDに紐づいた個人データ ②取引先データ ③地理データ
ハーベストループ実装の9ステップ
①KPIに落とし込む
②推論パイプラインのデザインとレビュー
③初期データの特定と準備
④初期実験とファインチューニング:POC
⑤累積データの「型」特定
⑥UI/UXデザイン
⑦実装・デプロイ
⑧クオリティチェック
⑨実運用と継続効果検証
・AIプロジェクトは、不確実性にある。WBSを用意してもほとんど守られないという現実 POCなどを使う
・イテレーションを使って短期間に開発⇒検証を繰り返す(アジャイル)
目次は次の通りです。
はじめに 「技術」から「戦略デザイン」へ
Prologue 勝敗を分ける「何重にも稼ぐ仕組み」ーハーベストループとは何か?
Chapter 1 AIと人とのコラボレーション ーヒューマン・イン・ザ・ループ
Chapter 2 AIで何を実現するかを見極める ー戦略デザイン構築のための基盤つくり
Chapter 3 戦略基盤を競争優位に変換する ー戦略デザインとしてのAI
Chapter 4 データを収穫するループをつくる ーハーベストループでAIを育てる
Chapter 5 多重ループを回して圧勝する -ダブルハーベストこそ最強の戦略
Chapter 6 ハーベストストーリーを実装する ーAIプロジェクトマネジメントの考え方
Epilogue 地球をやさしく包む「最後のループ」ーSDGsとハーベストループ
おわりに AIよりも戦略よりも大事なこと -
AIを使ったビジネス展開について詳しく書かれた本。
AI、AIと声高に叫ばれる昨今、「で、うちの会社はどうしたらいいの?」という方もたくさんいらっしゃるはず。
そんな人にはヒントとなるような示唆がたくさん眠っている本だと思います。
ま、多少、「結局は著者の会社にコンサルくださいね~」という面も否めませんが、
それでも日本の会社をAIを用いて復活させるという高い志をもって、
この本を書かれているのがよく分かります。
興味深かったのが、何でもかんでもAIで完璧に解決させようとするのではなく、
AIと人をうまく融合させて、人件費を削ったり、データを蓄積していくという考え方。
さらに、AIを使って、コストカットしたりUXを高めたりするループを何重にも張り巡らせることによって、
他社が真似できないような構造を作ってしまうべき、
という主張はなるほどと思わされました。
(それ作るの、かなり大変そうではありますが。。)
自分のようにAIにめちゃめちゃ詳しくないビジネスよりの人間でも十分読める内容でしたし、
むしろそういう人こそ読むべき本なような気がしました。 -
優位性を確立したとしても他社にすぐ模倣される。すぐ模倣されない持続的な優位性は何重にも利益を生み出す源泉を作りそれらを継続的にループさせることと説く。そしてそのループには人間も入ってデータを育てAIを成長させる。すなわち育てて収穫する農業のようにビジネスを行う時代だと啓蒙し具体的な進め方までしっかり解説しています。利益を生み出す源泉と考えたことが違っていたりすることもあるだろうし、試行錯誤のPDCAも回す必要もありそうで、実行するのはとても大変そうですが、うまく複数の収穫のループが見つかれば、それを回し続けることでビジネスが大きく成功しそうです。ちなみに、本書でもっとも刺さったのはエピローグで述べられているの地球規模の全体最適とおわりにの自分が作りたい未来でした。
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ループを作って組み合わせて競争優位性を作っていく、という戦略について解説されていた。
AIはコモディティであり、それだけでは、模倣困難は作れないのは確か。
自社の宣伝というバイアスがあり、少し偏っているような記述もあるので、読み流す程度が良いと思われる。 -
尾原さんの本は相変わらず分かりやすい。一度は読んでおいた方がいいかも。AI時代のビジネスのあり方に触れることができます。
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AIを自社のビジネス戦略(ループ)に組み込むための指南書。AIは完全ではないが部分的に活用し人間が介在する(ヒューマンインザループ)することで上手く活用することができる。まずはAIを活用した戦略において何を最終価値とするか、目的を定めることが大切であるが、マイケルポーターもいう『競争優位性』=どの部分で他社との差異化を図るのかということが最も重要(コストリーダーシップなのか、付加価値創造(UX向上)か)。
本書ではUVP(ユニークバリュープロポジション)という。
AIに何のデータを投入するのか、人間に関わる定性的なデータの方が良いと書かれてる。自社にどのようなデータがあるかを探し出すこと(自社特有のものが良い)。そしてそれを活用してどのような価値(ハーベスト)を生むことができきるのかを検討する。重要なのは一度勝つだけではなく、その結果蓄積されるデータをさらに活用(ダブルハーベスト)し、他社に圧倒的な差をつけることができる。
面白かったのは、データは人間に関わるものなら何でも良いということ。まずは蓄積しそれを試行錯誤しながらアジャイルで自社戦略に組み込んでいくことという点である。AIありきの戦略ではなく、まずは市場シェアを高める競争優位となるストーリーを描いた後、そのなかで自社の保有データをAIを使ってどう活用するのか、さらにループにしていく仕組みをアジャイルで進めていくことが、非常に重要であると感じた。 -
日本をAI先進国にしたいという筆者の気持ちが伝わってくる本
Loop is King