レゴ 競争にも模倣にも負けない世界一ブランドの育て方

  • ダイヤモンド社 (2021年12月2日発売)
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  • 本 ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478114575

作品紹介・あらすじ

グーグル、トヨタにも影響を与えるレゴ。価格競争にも技術競争にも巻き込まれない世界一ブランドのつくりかたとは。

感想・レビュー・書評

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  • LEGOの変遷が分かる本。特許切れから始まったレゴの衰退、テレビゲームというライバルの台頭、事業の多角化による経営悪化、原点に戻りレゴブロックへ注力、少しずつ経営改善、レゴのブランド化、といったストーリーで、特に驚きはなく、よくある浮き沈みだなあという印象。あと、会社経営とはなんぞや、みたいな話が多くて、期待はずれ。

    ただ、レゴブロックそのものの話はとても興味深くておもしろかった。
    レゴブロックは、正解のない社会で生きていくうえで必要な創造力、考えぬく力、を発掘するツールになりえるという話は壮大でしたが、とても共感できました。また、自動車を例に挙げたモジュール戦略ともレゴブロックは結びつきを感じました。他スマートフォン、家電をはじめ、1から全てを作るメーカーは現代には多くなく、組み合わせを競う社会になっているというところから、その本質はレゴブロックと似通っているように思えます。読んでいて、子供のころに異常な集中力でレゴブロックを遊んでいたことを思い出しました。振り返ってみるとあのような体験は他では中々できなかったなあと思います。
    久しぶりにレゴブロックやりたいなあ。

  • 「レゴ」という会社の事がよく分かった。確かに、似たような玩具はあるのだがレゴには特別な魅力があるし、これじゃなければダメ、という感じがする。ネットでは廉価版も売っているが、全く好ましくない。機能面なら事足りそうだが(実際には、堅牢さが脆弱)、本家の圧倒的信頼感には勝てない。

    先ずはその廉価版に対する誤解から。私はこれを長らく中国の偽物で、違法な存在だと思っていた。しかし、レゴブロックの基本特許は1980年代から各国で切れていて、廉価な互換性ブロックの販売は許容されている。それでも本物には勝てない。なんか安っぽいのだ。

    競合他社は、バービー人形の米マテル、モノポリーの米ハズブロなど。しかし、これらよりも、テレビゲームの登場によって、レゴが破綻の瀬戸際まで追い詰められていた。少なからず、模倣品に奪われたシェアもあったらしい。

    変わらねば、という事で色々手を出す。レゴランド的なアミューズメントパークやアニメや映画、スーパーマリオとのコラボ企画。中でも、ファンのアイデアを製品化するプラットフォーム「レゴアイデア」は、ファンの作ったレゴ作品を募り、人気投票によって選別して製品化するユーザイノベーションの仕掛けとして画期的だった。投票の時点で希望価格も聞いておくことで、消費者が期待する価格帯も把握できる。

    昨今のレゴの売り上げを牽引している主力製品はプレイテーマと呼ばれるシリーズ。単なるレゴブロックではなく、テーマごとに異なる世界観を訴求し、そこに引き込むことで結果的にレゴのファンになってもらう。機能ではなく、ストーリーで売ると言うマーケティング手法の実践。

    他にも、社会人向け教育プログラムであるレゴシリアスプレイ。これはレゴブロックを使うことで共通の言語がチームに生まれる。チームビルディングに必要なのは、メンバーの考えを明らかにして互いに理解すること。組み立てる対象となるのは、抽象的なイメージやアイデンティティー。モチベーション、リーダーシップ、ビジョン、一見トライ所のない概念をブロックを組み立てながら形にしていく。作り、説明し、共有し、再評価をする。レゴシリアスプレイは現代版の箱庭療法。レゴシリアスプレイ認定のファシリテーターの資格があり、2008年当時は日本人では10人未満だった。とある社員の人たちがワークショップで取り組むのを(オブザーバーで)見たことがあった。アレか、と。

    コモディティー化を脱するには変化し続けるしかない。玩具の王様のようなレゴですら、試行錯誤を繰り返している。ビジネス書として、学びの多い一冊。付録の工場見学ルポも秀逸。

  • レゴという会社がなぜここまで生き残って来れたのか、なぜ熱狂的なファンを生むのかについて書いてある本です。
    大切だなと感じたところは社員自身がレゴで遊び、創造力を掻き立てていることです。子ども用のおもちゃだからといって大人が面白がらないというわけではありません。シンプルな遊び方だからこそ大人の表現があったり、大人にしか創造出来ないことがあります。
    こんなのつまらないとか時代遅れだとか言うのは決まって評論家です。彼らにはなんの価値もありません。だからこそ、評論家ではなく自分が活動家として仕事をどう面白がれるか、どう社会の役に立つかを考えなくてはならないと感じました。

  • シンプルがゆえに深みのあるスルメのような本

    特許が切れあれだけコモディティ化した商品を扱うのに高い利益率を誇るレゴ。一つの会社の浮き沈みを丁寧に当事者に会って描いていて、成長企業のドラマとしても、オーナー系企業のマネジメントとしても、マーケティングや組織論のヒントとしても読めます。それでいて経営学者らのインタビューがあるので個々の事象を俯瞰できます。

    本全体に通底しているテーマは、あなたの価値は何か。もしあなたが辞めたら会社は何を失うのかーー。これは組織にも個人にもいえますね。冷静なのだけど、熱量が伝わる書き振りも好きです。

    この先に知りたいと思ったのは、この会社のパーパスがはっきりしているだけに中国などの人権問題、石油以外の環境問題にどう向き合うのかです。以前は石油メジャーのシェルとの共同プロモが環境団体からバッシングされたなかでやめたり、反中国共産党の芸術家のイベントにレゴブロックを提供せず、現地工場を許可してくれた共産党におもねったと批判されたりしてました。

    「きれいごと」を裏表なく貫けるのか、ストーリーづくりがうまくて周りの期待値が高いだけにそれが次のこの会社の壁のような気がします。

  • デンマークにあるレゴ本社オフィス、レゴハウス、レゴ工場、レゴの創始者、そしてレゴCEO達ー写真を、眺めるだけでも楽しめる。

    興味深かったのは2004年、2年連続の赤字、過去最悪の業績を残したレゴのCOO に抜擢された入社3年目、元コンサルティング会社社員の35 歳クヌッドストープの章。

    数々の構造改革の断行と、「本質的なレゴの価値を取り戻す」ための改革、それは会社経営だけでなく、自らの生き方を説いている様にも思う。

    「ユーザーが自分たちよりも、優れたアイデアを持っていると認める」覚悟を持つこと、自分の価値を問い続けながら、新しい価値を与え続けること、いかに変わり続けられるかはいうは易し、行うは難し。

    私という物語と重ねながら本書を読むと、役割の断捨離を意識しつつ、驕らず、わたしをアップデートし続けていきたいなという感想になるかな。

  • 面白かった。 最近の考えとハマることが多かった。

  • 誰もが知っている世界的玩具メーカー、LEGO社の成長の秘訣を探ったノンフィクション。特許切れの単なるプラスティックのブロックが、なぜ世界中で愛され、次々と価値を生み出していくのかの秘訣がこの一冊によくまとまっている。会社(あなた)のバリューは何か、その会社(あなた)が無くなったら、社会(あなたの会社)は何を失うのか。レゴの社是は「ブロックを通じてクリエイティブな未来を担う人を育てる」だが、ユーザーのアイディアを取り入れることには長年抵抗があったという、この矛盾。これを克服したところが、復活の鍵になったという。もう一つ参考になった言葉は、「クリエイティブの反意語はルーティン。ルーティンはロボットに置き換わる。だから、クリエイティブを鍛える」というもの。安定を求める傾向がある社会に対する警鐘と受け止めました。

  • 20220105読了

  • ふむ

  • 【before】この本を読む前の私は、これらを知りませんでした。
    ・レゴファン同士が交流できる子供向け SNS レゴライフの存在。
    ・レゴの強みは「自社の競争力を明確に理解し、そこに資源を集中していること」
    価値を生み続けるための4条件
    1.自分の強みを理解すること。
    2.継続的に成果をアウトプットする仕組みを作ること。
    3.コミュニティを育み、つながりを強化すること。
    4.存在意義を明確に発信すること。
    ・持続しなかった原因の1つは「全てを自分たちで手がけようとした」
    ・有時は存亡に関わる危機が差し迫っている状態、既成概念を打ち破る必要がある。根本的な問題に関わるのであれば塵一つ放っておかない。
    ・レゴの価値とはビルディング・エクスペリエンス(組み立て体験)ブロックで遊ぶことによって得られる楽しさを提供すること。
    ・変化に備えるためには、予測するよりも自分たちの存在意義を問い直す。
    ・ユーザーの想像力を刺激する新しい組み立て体験こそ、レゴの競争力の源泉。
    ・レゴの本当の素晴らしさを知っているのは他ならぬファン。彼らは社内デザイナーが思いもつかない斬新なアイディア&それを1日中考えていられる愛着もある。
    ・レゴファクトリー(後のレゴデザイン By Me)パソコン上で仮想レゴブロックを組み立てる。組み立て順番も記録するため、プロセスを説明書として出力可能。
    ・レゴマインドストームは、モーターやセンサーを内蔵したレゴブロックを使ってロボットなどを作れる上級者向けのセット。
    ・発売から1週間も経たないうちに米スタンフォードの学生がレゴのプログラミングソフトを解析、好きなようにプログラムを書き換える方法を発見した。
    ・その後、ソフトを改良してもいい権利をライセンスに盛り込んだ。方針転換後、マインドストームの利用者はさらに膨れ上がった。
    ・「子供達はレゴを使って自分だけの遊び方を生み出すことができる。レゴが示す遊び方はほんの一例に過ぎない」←遊びのシステムの本質
    ・レゴアーキテクチャーは玩具店だけでなく、美術館や博物館などにもレゴを展開。新しい販路を開拓した。
    ・高級感を謳ったレゴアーキテクチャーの平均単価は通常の子供向け製品の2.5倍以上、収益性が向上した。ブロック自体の製造単価は変わらないが、ブロックの価値は作り上げる世界観次第で大きく引き上げられることが分かった。
    ・レゴマインドストームのハッセンプラグや、レゴアーキテクチャーのタッカーなど、ファンの間で神とも称えられる突き抜けたファンの存在。
    ・ファンコミュニティの頂点に立つレゴ認定プロフェッショナル、三井順平。
    ・子供の興味を掴んで放さないテーマを探すことこそ、教育の本質。
    ・人は手を動かして何かを作ることで、内在するイメージや心理を構築していく。→コンストラクショニズム
    ・レゴシリアスプレイ内の課題となるのは抽象的イメージやアイデンティティ。
    ・レゴブロックという共通言語を介すると、自分の概念が想像以上にスムーズに伝わる体験をする。アイデアを分かりやすく形にして他人と齟齬なく共有できる。
    ・楽しいが苦しい「ハードファン」この状態にいるほど集中、成果も生まれやすい。
    ・人生の選択肢も、明確な判断基準があってこそ決断できる。この基準をシリアスプレイではシンプル ガイディング プリンシプルと呼ぶ。
    ・創造力は身につけるものではなく、解放するもの。

    【気づき】この本を読んで、これらについて気づきを得ました。
    ・課題に気づき、問いを立て、試行錯誤を重ねながら自らの頭で答えを導き出す。ここに本来の人間の価値がある。問いも答えも人の数だけ存在する。
    ・内省ができる組織である限り、強さが簡単に色褪せることはない。
    ・すべき決断は変わらないのにタイミングが違うと結果が伴わない。しかし、いつが適切なのかはやってみないと分からない。マネジメントの難しさ。
    ・リストラの期限を決める。危機下でモチベーションを維持するには「いつまでこの状況に耐える必要があるか」を明確に示す。
    ・とにかく生き延びることに集中。成功したら、もう一度成長のための「組織とビジネスモデルの再構築」に取り組む。
    ・レゴブロックもピアノと同じ。自由に音楽を奏でても楽しめるが、最初は様々な曲をお手本に楽譜を見て演奏する。まずは子供たちが奏でたくなる楽譜を作る。
    ・イノベーションの3段階「既存のものを改善・組み合わせる・全く新たに作る」
    ・使えるものが限られる時こそアイデアが生きる。革新は制約があるから生まれる。
    ・生産体制にデジタル技術を組み込み、製造したブロックは種類ごと ID 識別子を付与。情報管理システムを整備&在庫状況も可視化。
    ・利益やキャッシュフローは酸素のようなもの。生きていくために最低限必要だが、それ自体を求めて事業をしているわけではない。
    ・子供たちが創造的思考を通じてアイデアや知識を自分の力で発見できると、これまでの教育とは比較にならないほど強い記憶として残る。
    ・ファシリテーターや他の参加者の質問に答えるうち、作り手は自分の中の漠然とした概念やアイデアがレゴで組み立てた作品を通して言語化できる感覚をつかむ。
    ・自分が大切にしている価値を極めて明瞭な言葉で表現、他の参加者と共有できるようになり、別人のように自分の強みをすらすらとノートに書き出せる。
    ・戦略とは、意思決定をする際の判断基準を決めること。
    ・リーダーシップや理念等、概念の多くは人によって捉え方が違う。シリアスプレイではこの差異をレゴを使って言語化、互いの考えの理解を促す効果がある。
    ・出発点を揃えた上で議論が進められるようになる。
    ・発言力のある2割ほどの参加者が、会議の議題の8割を独占することが多い。
    ・シリアスプレイの成功で最も大切→ファシリテーターが設定する的確な質問。
    ・人間の創造性を解放するには安心できる人間関係が必要。そのために「自分の居場所がある」というコミュニティが大切になる。
    ・どんな仕事も、その人が面白がる以上にパフォーマンスを発揮することはない。
    ・人は手を動かしながらものを作ることで、無意識にやりたかったことや大事にしたかった考えに気づく。レゴシリアスプレイは現代版の箱庭療法。

    【TODO】今後、これらを実行していこうと思います。
    ・最優先事項はスピード。
    ・優れたパートナーがいるなら積極的にアウトソースしてもいい。
    ・子供達の人生に何かいい影響を与えたい。
    ・まずは多角化した事業を止め、事業の的を絞る。
    ・子供たちの興味を掴んで放さないような魅力的な教材を用意する。

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