ウォード博士の驚異の「動物行動学入門」 動物のひみつ 争い・裏切り・協力・繁栄の謎を追う
- ダイヤモンド社 (2024年3月28日発売)


本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
本 ・本 (736ページ) / ISBN・EAN: 9784478116289
作品紹介・あらすじ
生き物たちは、驚くほど人間に似ている。
ネズミは冷たい雨に濡れた仲間を助けるためにわざわざ出かけるし、アリは女王のためには自爆だっていとわない。カケスは雛を育てるために集団で保育園を運営しているし、ゾウは亡くなった家族のために葬儀を行う。
あまりよくない面でいえば、バッタは何百万匹の集団になり危機的な飢餓状況になると飢えた群れが仲間に襲いかかるし、動物園の器具を壊したゴリラは怒られるのが嫌で犯人は同居している猫だと(手話で)指し示す・・・といったように、どこか私たちの姿をみているようだ。
過酷な自然界において野生動物たちは生き残りをかけて日夜闘いを繰り広げている。しかし、それだけではない。野生動物たちは仲間と助け合って種をつないできた。
本書は、シドニー大学の「動物行動学」の教授であり、アフリカから南極まで世界中を旅する著者が、好奇心旺盛な視点とユーモアで、動物たちのさまざまな生態とその背景にある「社会性」に迫りながら、彼らの知られざる行動の数々、自然の偉大な驚異の数々を紹介する。
人間もまた社会性動物であり、生き物たちは、驚くほど私たちに似ている。
動物への古い固定観念を取り払い、ダーウィンの進化論を陳腐化し、「弱肉強食の自然界」という固定観念を打ち破る!
読むと、あなたの「世界観」が変わる、最高に知的刺激のある書。
感想・レビュー・書評
-
集団で生きることで種の存続に成功している動物は多い。
この「動物行動学入門」は、動物の社会性、協調行動を調べたもの。
オキアミから始まり、ゴキブリ、バッタ、アリ、ハチ、魚、鳥、ネズミ、ゾウ、ライオン、オオカミ、ハイエナ、クジラ、イルカ、シャチ、サル、ヒト
といった感じで、実に多種多様な生き物の集団を観察した記録になっている。
知らなかったことや、どこかで聞いた気がすることが満載で面白かった。
専門知識は不要で読みやすかった。
これら動物の行動と人間の群衆の行動との類似性が分かる。
人間と他の動物との違いは本質的なものではなく、単に程度の違いに過ぎない。
例えばアリは、農業・酪農・建築を行う。
奴隷を作ったり搾取したり、働かなかったり、ほとんど休んでいたり、人間と似ている。
魚の群れは互いに衝突しない。
飛んでいる鳥の群れも同様だ。
これは、見るたびに不思議だなーと思っていたが、
・最も近くにいる者との距離が近すぎる時は、離れる。
・最も近くにいる者との距離が遠すぎる時は、近づく。
・最も近くにいる者との距離が適切である時は、その者と同じ動きをする。
の3つのルールを守っているだけのようだ。
群れることで、エナガやペンギンなどは寒さをしのいでいる。
また、ムクドリなどは捕食者から身を守っているらしい。
集団でいることで生存率が上がるのだ。
だが、集団を作る数には適切な量がある。
ネズミでの実験では、一定以上に密集度が進むと協調性が減り攻撃的になった。
この傾向は多くの生き物でみられ、人間でも同じだ。
自分が自由にできる資源の取り分が減るからだろう。
集団をつくる社会的動物は、50程度の個体の識別ができるそうだ。
社会秩序を築くために必要な能力なのだろう。
牛や羊などは同種ではない、身近にいるヒトの識別もしている。
ヒトの識別は匂いかと思いきや"顔"で見分けていることもわかっている。
集団生活にはコミュニケーションが欠かせないが、類人猿では30程の敵対動物を区別して鳴き声を変えて仲間に伝えている。
シジュウジカラのようなトリでも鳴き声を使い分けて異なる情報を伝えている。
ヒトだけが言葉を持っているわけではない。
人間の歴史が戦争の連続であるのはDNAに「殺しの本能」があるから?
そう決めつけるのは嫌だが、暴力的傾向があるのは確かだろう。
だが協力し合い共存していこうとする性質を持っていることも確かだ。
人間は、他人と接触できない孤立した状態に置かれると、幻覚を見るようになり、心が壊れていく。
これも人間に限ったことではなく多くの動物に当てはまるようだ。
孤独でもいけないし、多すぎてもいけない。
生き物は、ストレスがないと、何もしなくなるという傾向もあるらしい。
僅かなストレスと、適量な人間(や動物)との関係を維持して生活することがいいみたいだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
オキアミにはじまり、シロアリ、ミツバチ、魚類に鳥類、ドブネズミにゾウ、ライオン、クジラやシャチ、それから霊長類。
様々な動物の社会性と行動を、とても平易にユーモアに教えてくれます。
「どうぶつ」と聞くと愛らしい様子を微笑ましく読んでいられそうですが、そこは現実。しばしば残酷で暴力的な光景が淡々と下品にならずに描写されていて、軽薄な好奇心に冷水を浴びせられます。
約700ページという、つい二の足を踏んでしまいそうな鈍器級の厚みですが、ためらわず手に取って読んでみてください。視点、視野、視座、、、何かが変わる、かも? -
著者はシドニー大学の動物行動学の教授。
アフリカから南極まで世界中を旅し、動物たちのさまざまな生態とその背景にある「社会性」に迫りながら、彼らの知られざる行動の数々を紹介する。
登場する動物(生き物)は、実に多い。魚、昆虫、アリ、ハチ、鳥、ネズミ、ゾウ、ライオン、オオカミ、ハイエナ、クジラ、イルカ、サル、そしてヒト。
どれも意識はしていない生き物があるとしても、社会性を持っていることがわかる。
でないと、ここまで生存出来ていなかっただろうな。
著者が言うとおり、人間と動物の違いは量的なものでしかなく質的なものではないのだろう。
それぞれに違えど、皆必要にして十分な進化を遂げてきたのである。その意味で等価だ。どの生物も違う歴史をたどればまったく違ったものになっただろう。いずれも偶然の産物である。
そして、どの生き物も、生き延びて子孫を残すという目的は共通なのに、置かれた環境、経てきた歴史の違いにより私たち人間とどれほど違った、どれほど驚異的な生態の動物が生まれたのかを教えてくれる。
他者を見つめ理解することは、改めて自分を深く知ることにつながると言われるが、他者には他の生き物も含まれるべきだと感じた。 -
手に取った時には分厚さに怯んだけれども、読み始めたら一気!
ユーモラスでわかりやすい文章と、とても興味深い内容で読み終えるのが惜しいほど。
居心地のいい部屋と悪い部屋のネズミの話がたまらなくてねえ…思わず娘に話し、それから度々二人でその話をしている。
様々な生き物たちの生き方に畏敬の念を覚えた。
しかしたいていの生き物の終わりには人間のせいで危機に瀕している、という言葉が入っていてさぁ…人間滅びちまえの気持ちになる。
なるけども、もはやそれで投げ出せる程度の罪業じゃないもの…できることやらなきゃだよ。 -
図書館で借り出したとき、えっこんなに分厚いのか、2週間で読めるだろうかとドキドキした。他の本とも併読だし。
結局は楽しい読書になった。もともと嫌いなジャンルでないし。はじめに日割りで計画立てて取り組んだのが功を奏したかな。
たくさんの生き物の社会生活を知り、人間について考えさせてくれた。お得感いっぱい。 -
自然界を生き抜く動物たちの戦略が面白かった。
特に、シロアリの老兵が自爆する話が印象に残った。動物たちの行動は長い時間をかけて生み出された分洗練されていて、仕事や生活に役立つなと思った。 -
「動物」と銘打っているが、昆虫や甲殻類、魚類の生態についても言及していて網羅的。集団で生活する生き物は人間と同じく社会性(のようなもの)を身につけている姿が多々観察されており、果たしてそれはどのようなものなのか、その行動にはどのような理由があるのかが、様々な生き物の例とともに解説されていく。
例えばネズミの場合、仲間に食べ物を分け与えることがあり、これは相手が直近で自分に対してどのような態度を取ったかが考慮されているそうだ。つまり性格の良いネズミは仲間に食べ物を分け与える、と言った単純な話ではなく、「良き市民」でいる方が得であり、生存を有利にするということらしい。
他にも群れで生活するオオカミは、仲間が死ぬと、その死を悼む行動を見せることがあるという話。高い知能を備え、動物の中でも特に複雑な社会を形成するイルカの「認知能力」について。「不公正」な状況に対して怒りを露わにするサルなど、動物の行動から見えてくる生態が分かりやすく、それでいて詳しくつづられていて知識欲が満たされる。
また、キツネの生態について言及されている箇所もあり、人なつこさを身につけたキツネは徐々に飼い犬のような行動を取り始め、毛皮や歯や耳の形に変化が見られたという。このことは、以前読んだリー・アラン・ダントキン/リュミドラ・トルート著『キツネを飼いならす』でも書かれていたことで、最新の知見を踏まえた本なのだとわかり信頼度アップ。
昆虫から始まり、魚類、小動物、類人猿と、進化の過程を踏まえた本書の構成は、引いては人間の言語能力、自意識、推論能力、文化の原型について意識するよう仕向けているよう。そのメカニズムを知り、環境の情報をどう役立てているのかを知ることで、知的好奇心をくすぐられ、世界が広がっていく喜びがこの本にはある。 -
昆虫から魚に鳥、哺乳類に至るまで多様な動物には社会性があるのか、ある場合はどういうコミュニケーションをとるのかを専門知識なしで楽しく知ることが出来る。イメージの悪いネズミやハイエナの意外な特長などもこれ1冊で知れてお得です。
-
表紙をみて面白そうと思い読みました。
本文は、約700ページにもおよぶ大作です。
NHKの動物ドキュメンタリーを本にしたものという表現がこの本にはピッタリだと思います。
大作すぎて、読むのが無理だ〜って人は、NHKの動物ドキュメンタリーを観ることをお勧めします。
うちのこは、夏休みに読み切る目標を立てて40ページで挫折しました(笑) -
初めはふーんと思って読み始めたが、オキアミでおおっとなり、アリで心を掴まれた。シロアリの生き様に感動し、虫に対してこんな気持ちを抱くとは思ってもいなかった。