イノベーターの条件―社会の絆をいかに創造するか (はじめて読むドラッカー (社会編))

  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478300626

作品紹介・あらすじ

社会の革新はいかにして可能か。そのための条件は何か。あるべき社会のかたちと人間の存在を考えつづけるドラッカー社会論のエッセンス。

感想・レビュー・書評

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  • ドラッカーの書から、戦前の重苦しいヨーロッパの空気が感じられます。

    グローバルで、歴史を見据えたドラッカーの視野の広さには感動を覚えます。

    表題にあるイノベータとは、企業のビジネスリーダではなく、経済的利害集団から、知識労働者へ、知識社会へと変容していく21世紀への社会に対する変革者をいっています。

    戦後のポスト資本主義と大国家の出現によって、生じる、「機会の平等」と、「結果の平等」との不平等の是正と、年金制度の導入で、発言力が増している高齢者がもたらす政治勢力の再編をいっています。

    加えて、知識社会、学校を卒業をしても尚、続く継続学習、ITがもたらす社会への影響
    大都市の衰退がはじまり、規模が適正化されていく。

    まとめである、「もう一人のキルケゴール」は、死に至る病とは絶望であるとの彼の言葉にかけて、キルケゴールの言葉は、人に死ぬ勇気を与えるが、同時に、生きる覚悟を与える。
    との言葉で本書を締めくくっています。

  • 「星野リゾートの教科書」にて紹介されていた書籍。

  • あまりもの慧眼。現在までの政治・経済の状況がすでに本書に予言されている。

  • 何がニューソサエティをもたらすのか。何がニューソサエティを形作るのか。その社会では絆をいかに創造するか。 P. ドラッカーは、それは組織を通して個人の強みを活かした社会貢献であるといい、そのための、教養と生涯学習の重要性を訴える。

    20世紀の変化の本質は、知識社会の出現である。そこで働く知識労働者は、その本質からして専門家でなければならない。知識は専門化することによって成果をあげる。しかし、専門化した知識はそれだけでは役に立たない。組織との関わりが不可欠である(組織社会)。そこでは「マネジメント」が中心的な機関となる。その本質は知識を生産的にすることにある。人の強みを生産的なものとし、弱みを意味のないものとしなければならない。ここで重要なことは、組織を通して社会に対して貢献するということだ。社会は「一人ひとりの人間に『位置づけ』と『役割』を与え、そこにある権力が『正統性』をもつとき、はじめて機能する」(p.4)のである。

    知識社会では、家族、村、教区などの昔ながらのコミュニティは、ほとんどが消える。そのものの多くは、新しい社会結合体としての組織、NPOの役割が大きくなる。NPOは意義ある市民性の回復の核として、企業、政府に次ぐ、三つ目の社会セクターとなる。そもそも知識労働者は、仕事を超え、組織を超え、さらには自らの専門を超えた意味ある社会生活、人間関係、貢献も必要とする。この社会セクターが、社会サービスとコミュニティという紐帯を提供し、能動的な市民性を回復するという。

    専門職に就く学生には「一般教養」が必要である。しかしこの書では一般教養とは何かを明らかにしていない。そこで次の阿部謹也氏の定義が参考になる。「教養とは、自分が社会の中でどのような位置にあり、社会のために何ができるかを知っている状態、あるいはそれを知ろうと努力している状態である」(「『教養』とは何か」講談社)。つまり、個人と社会との関係を考えることが、教養の前提となるのである。

    知識社会の大学には、教育と研究に加えて、知識を行動に移し、成果をもたらすという機能(社会貢献)が加わった。現代社会の動力源としての知識は、適用され仕事に使われて初めて意味を持つ。従って大学は、応用分野のニーズを中心として学部の再編成が必要。応用こそ知識の目的であり、それが経済と社会の基盤となり、あらゆる社会的な行動の原理そのものとなるのである。

    学校は枢要な社会的機関として、学生、生徒一人ひとりに対し、自信と能力を与え、学習の方法を身につけさせ、組織と共に働く能力を身につけさせ、貢献し成果をあげさせなければならない。同時に、継続学習の能力や意欲も欠かせない。これが知識社会における学校の社会的責務である。

  • 「はじめて読むドラッカー」シリーズの一つ。個人的には2冊め。
    1冊めの「プロフェッショナルの条件」にはまだいくらか読んで面白い部分があったけれど、この本は内容が難しいせいかほとんど興味を持てなかった。

  • 「ニューエコノミー」の前提となる「ニューソサエティ」がどのように生まれ何を形作るか、その中でどう個人が機会を得ていくかのヒントになる。

  • ドラッカーの名著。

  • 社会
    自己啓発
    ビジネス

  • 本書は社会全般、とりわけ、政治・教育の分野を扱う。本書の原出典は、古いものは第二次大戦中、新しいものでも1995年ごろの著書である。しかし、現在読んでもほとんど古さを感じさせない。というのは、現在の日本の政治の低迷、教育の低迷についての、原因・結果そして処方箋が、ずばり言い当てられているからである。実に40年も50年も前に、ドラッカーに予言されたとおりになっている。ドラッカーの社会に対する洞察の深さに感服させられる。

    全ての政治家・官僚・教育者に本書を読んでいただきい。もし読んでいただいていたのであれば、今日の日本の低迷を招かなかったのではないかとさえ感じる。

    しかし、本書についての課題もある。これで本書を含めて「はじめて読むドラッカー」シリーズ4冊を読み終えたが、本書が一番難解であった。ほかの3冊は、マネジメント・プロフェッショナル・技術という特定テーマを扱う。しかし本書は、社会という最も抽象的な概念を扱う。難解で理解しがたいのは、そのためではないだろうか?思いのほか、読み切るのに時間を費やしてしまった。★5つつけるべきところを1点減点した。

    願わくば、本書を平易に解説した啓発書が必要ではないだろうか?ドラッカーの遺志を継ぐ者が現れるのを期待したい。

    <hr>
    目次
    本書のために書き下ろしたのではなく既出書からの抜粋である。既出書の年号を付記する。

    日本の読者へールネッサンスへの期待
    はじめに

    Part1 激動の転換期にある社会
    1章 社会の存在を当然としてはならない(1942-産業人の未来)
    2章 経済至上主義は人を幸せにするか(1939-経済人の終わり)
    3章 二十世紀の変化の本質は何か(1995-未来への決断)
    4章 多元社会における組織の原理(1969-断絶の時代)
    5章 起業家社会の到来は何を意味するか(1985-イノベーションと起業家精神)
    6章 NPOはなぜ成功したのか(1993-ポスト資本主義社会)

    Part2 断絶後の経済
    1章 「継続の時代」は終わった(1969)
    2章 世界経済の変貌が持つ意味(1986-論文「マネジメント・フロンティア」)

    Part3 模索する政治
    1章 理性崇拝は何をもたらすか(1942)
    2章 改革の原理としての正統保守主義(1942)
    3章 社会の問題に唯一の正解はない(1989-新しい現実)
    4章 「利害による連合」の終わり(1989)
    5章 国民国家から大国家(メガテイスト)へ(1993)
    6章 高齢者が政治を動かす(1976)

    Par4 問われる知識と教育
    1章 知識の政治学(1969)
    2章 学校が劇的に変る(1993)
    3章 分析から知覚へー二十一世紀の社会と世界観(1989)
    付章 もう一人のキルケゴールー人間の実在はいかにして可能か(1992-すでに起こった未来)

  • 4つの技術革新を経て、社会がどのように変化し、今後どのように変化するかを、経済・政治・教育などの多方面から分析した一冊。20世紀末に書かれたとは思えないほど、正確に未来を予測している。鳥肌ものの一冊。

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