失敗の本質: 日本軍の組織論的研究

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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478370131

感想・レビュー・書評

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  • 太平洋戦争での失敗とされる6つの作戦について、前半でその経緯、後半で論理的な分解と分析が記されている。

    ガダルカナル島やインパールで多数の犠牲者が出たということはなんとなく聞いたことがある程度の知識で読み始めたが、書き手の思想を排除して、ひたすら淡々と当時の事実が述べられている前半が特に面白かった。戦後すぐの文献が使われてたりして言葉が難しかったり、史実が気になったりする度にググって確認しながら夢中で読んだ。
    前半部を読むだけでも、日本軍という組織の良くないところが分かるんだけど、後半の分析部を読んで前半で自分なりに感じた感想の答え合わせをし、さらに理解が深まるという感じ。

    負けると分かっている重大な局面でも現場を立てて曖昧な表現をして作戦中止命令が出来ない日本軍。そして何度も同じ過ちを繰り返す。
    こんなしょうもない事で多くの命が犠牲になったのか…と虚しくなることが多数。
    「兵站」という言葉と概念を初めて知る。これを軽視している企業、沢山あるよね。

    38年前に発行された本作、組織論として(実体験と照らし合わせても)色褪せないと感じたのは、現代もまだ悪しき慣習が残っているってことなんだろうな。

    しっかり読み込んでしまった。面白い。

  • 戦争は愚行である、日本人の思考は今も変わらず学んでいない、自分も未熟な思考しか持ち合わせていない事に気付かされる!

  • 先の戦争でどうして負けたか。何が原因なのかを追究した本。
    ノモンハン事件(事件にしていることからして問題)から日本組織の弱点が露呈している。日本人の兵卒が超人的な忍耐力で極限まで戦っていたのに上官が糞では仕方あるまい。
    個人的には以下の3つが失敗の本質だと思う。①都合が悪いと隠す②フワッとした指示で部下に押し付ける③失敗を分析しないでまたやらかす
    クソみたいな組織だと思ったら壊滅したわけだが日本軍に関わらず日本型組織にみられる特徴として記憶しなくてはならない。というかバブルでまた敗戦を味わうわけだが…。

  • 学術書だった。前半は敗戦した作戦の経緯紹介。
    後半は本日の解説。
    私には難しすぎた…
    と思ったら「超入門」がちゃんと発刊されているのね…
    そちらを読むことにしよう。

  •  学術的な本なので難しい部分はあったけど、組織論に少しでも関心のある人は読むべきだと思う。組織論のバイブル的な扱いも受けているし、日経でもこの本を解説するコーナーがある。
     日本軍がなぜ大東亜戦争(第二次世界大戦)で敗北したのかを組織論的な観点から論じている。読み進めていると、「こりゃあ、酷いな」と日本軍の実態に驚くはずだ。陸軍では奇妙な人情主義がまかり通り、作戦で大失敗した指揮官が「かたき討ちさせてくれ」と懇願すれば、重要な作戦に再び起用する。海軍は日露戦争での日本海海戦の大勝利の経験が忘れられず、古くなってしまった決戦思想に執着する。
     単に日本軍を批判する本ではない。日本軍の失敗から、組織のあり方を問い、組織運営の失敗による悲劇を繰り返さないための示唆に富んだ非常に良質な本だと思う。

  • 大東亜戦争の諸作戦を分析し、日本軍の組織としての失敗を教訓として、現代の組織にどう活かせるかを考察している図書。なぜ無謀な戦争に突入したのか、敗北したのかは分析の対象外となっている。
    日本軍の組織としての失敗は、目的の不明確、今後のビジョンが長期的でない、場の空気を重視して議論しない、攻撃すべしという積極論は評価され、多数の被害が出ても責任は追及しないような、結果よりも動機・プロセスを重視する、などがあげられており、興味深かった。組織の学習については、日本軍は特定の戦略原型に徹底的に適応しすぎており、違った環境、状況に対応するための自己変革能力がなかった、というのがあった。うまくいった知識を捨てるのは、なかなか困難だけど、重要な指摘と思う。

  • 名著だというので読んでみましたが、めちゃくちゃよかったです。

    まず大東亜戦争の失敗エピソードが興味深く、日本軍の組織構造がそのまま現代の企業や政治組織のまんまだということに、ゾクゾクとした恐怖や危機感を味わいながら読みました。今もし仮に戦争になったら、また多くの犠牲者が出るような失敗をまさに今現代の組織でも行われていると思うと。。。

    アメリカ軍の合理的行動と対比させていたのもとてもわかりやすかったです。

    失敗エピソードを自身の組織に当てはめて考えてみるのがおすすめです。現場と本部での作戦の目的が共有されていないなど、あるあるですね。

    また、私自身も日本独特の「プロセス重視」「人情論」「人間関係融和」「空気感」に溶けこんでいることに危機感を持つことができ、とても為になりました。何回も読んで、日本軍の失敗を頭に叩き込みたいです。

  • 失敗から学ぶのは本当に難しい。

  • 戦争という特殊な場合においても、義理や人情が働いてしまうという事実に驚いた。
    勝つための最善の判断をすべきで場合であっても、日本人らしい感情がともなってしまうようだ。

  • ノモンハン事件から沖縄戦を通して組織論としての旧日本軍の敗北を分析した名著責任の曖昧さや人間関係・情緒中心主義、失敗を顧みない姿勢は今も改善されていないと感じた単なる歴史本ではなく組織マネジメントの内容であった

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著者プロフィール

国際日本文化研究センター名誉教授

「2020年 『戦争のなかの日本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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