ポスト資本主義社会: 21世紀の組織と人間はどう変わるか

  • ダイヤモンド社
3.55
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感想 : 26
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  • Amazon.co.jp ・本 (363ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478371022

作品紹介・あらすじ

今、日本だけでなく、世界中が転換期にある。政治・経済・社会など、あらゆる領域で構造変化が起こっている。はたして、この変化は何を意味し、いつまで続くのか?そして、この大転換の後にどのような世界が待っているのか?

感想・レビュー・書評

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  • 「ポスト資本主義社会」という題名が、自分の中ではどうもしっくりこなかったのですが、よく見たら「Post-Capitalist」なんですね。資本主義というより資本家。そうですよね。それならわかります。

    自分はメーカーのサラリーマンですがドラッカー氏は本当に組織論の神様というかその書物の毎ページに込められる慧眼の披露に感激します。こんな天才が100歳近くまで生きて最後までその深い洞察を著述してくれていた事に、心の底から感謝です。企業年金の問題なんて端的な例ではないでしょうか。これが93年の元旦以前にアメリカで書かれたものだとは...

    次の組織はオーケストラがモデル、というとやはり指揮者が必要ということでまだ何とかなりそうな気がします。指揮者も大変だしそもそも全部のパートを理解している作曲者という影の立役者が本当にキーになるのでしょうね。

    しかし、ジャズのトリオと言われるともうそんな事が可能になるのか途方にくれる気がします。しかし、2000年に入社した人間が中堅どころになる2020年には、「見事なジャズトリオ」の様な組織の生産性が上がっているのかもしれません。

  • DP1a

  • 20世紀末の視点で書かれているがゆえに、21世紀の現実社会の大きなテーマ・イシューの多くが漏れてしまっている。それらは、中国の台頭、通信技術の進歩によるコネクテッドかつ文化的に均質化された社会、宗教的な対立(特にイスラム教 vs キリスト教)、テクノロジー企業の台頭、ポピュリスト政治の台頭、エネルギー政策などなど。

    もちろん、疫病が世界の経済活動の脅威になるとは全く書かれていない。

    しかし、さすが思索の巨人ドラッカー。資本主義社会にかわるレジームとして21世紀の社会の基本原理が「知識社会」となっていくという考え方は示唆に富む。また、20世紀までの教育の考え方が、学生時代と社会人というシンプルな2区分となっているものが、21世紀においては社会人が再び教育をうける立場となって知識のupdateをする必要があるという主張はとてもまとも。

    入手してからしばらく読まなかった。2020年1月に読み始めると武漢で新型肺炎が発生。色々とキナ臭くなる中で読み進めた感想は、

    『どんなに頭のいい人が知恵を絞って未来を予想しようとしても未来の方向性を当てることなんてどうせ無理なのならば、目の前の事象を前にして過去をゼロクリアしてどうしたらよいかを考えるしかない』

    桜が咲いた直後の雪の日曜に読了。

  • 相変わらず、ドラッカーの洞察力の鋭さには脱帽させられる。今に至るも注目されていない日本の問題点を1993年の時点で見抜き、指摘している。日本は、自動車、家電から脱却し、生物学や遺伝学に基礎を置く産業に注目すべきだと。

  • 古い本だけど、もう一度読むとまだまだ本当に思考のヒントになるね。

  • 読了

  • ソフトウェア開発の人間系に関する書物や論文に参考文献として挙げられることが多いので読んでみた。
    表面的には結構すっと読めてしまうが、もしかしたらそれぞれの部分で奥が深いのかも知れない。

  • 社会、政治、知識という3つの章にわかれている。資本主義や会社組織の形の変化が社会の章では語られ、巨大化する国家、グローバル化する企業、部族社会への回帰、NPOの役割などが政治の章で語られる。知識の章ではそうした社会・政治の変化の中で、知識が多くの役割を担ってきていることが語られ、知識を生み出すものとしての教育に重点を置いて語られる。いつものドラッカー節をやや広い視野から語った本で、ドラッカーの思想が時代にどう呼応しているのかを捉えるのによい。

    なによりもポスト資本主義社会は、国家の役割が減少した世界として捉えられている。グローバリズムや不足社会への回帰など、主権国家が捉えられない動きが大きくなってきている(p.26,33-37)。共産主義の終わりが示唆するように、社会が個人を守るという時代は終わった。社会による救済は消え、個人の独立が重視される世界が到来する(p.39f)。ここに知識の重要性が生まれる。

    テイラーについての評価が面白い。テイラーは知識を仕事に応用したからこそ、排斥された。テイラーの科学的管理法は労働者を単なる単純作業の担い手に貶め、仕事の尊厳を奪ったとして非難される。だが、それは仕事の内容を秘匿化することによって資本家に対抗していた労働組合による非難だ。テイラーはこの秘匿されたものに分析を加えて明らかにした。同時に仕事は単なる肉体労働ではなく、知識を用いて分析を行う経営専門家が必要だと要請した。このことはまた、資本家を怒らせることになった(p.75-79)。

    他にはドラッカーの視点としてよく出てくる、NPOや市民社会への着目がやはり面白い。国のために喜んで死ぬ意志としての愛国心と区別して、国のために進んで貢献する、国のために生きる意志が市民性だとドラッカーは言う(p.286)。そして愛国心は万国共通だが、市民性は<明らかに>西洋の発明であり、アテネやローマの真髄であると言う(だが、国家というものはレベルは様々であれ世界共通だとしても、国のために死ぬことを要求する愛国心という形そのものもまた西洋の発明であるように思うが)。そしてこの市民性を実現するものとして、以前のドラッカーは職場コミュニティを考えていたようだが(日本の職場コミュニティを典型として)、アメリカにおける社会セクター、つまりNPOや地域コミュニティなどにおけるボランティア活動が挙げられている(p.291-296)。このあたりはトクヴィルのアメリカ市民社会論を彷彿とさせ、かなり興味深い。またアレントのactionの概念も浮かんだ。

  •  1992年に執筆されたドラッカーの代表作の一冊。この年、日本ではバブル景気がはじけた直後で、日本で初めてホームページが開設されている。それから20年以上たった今から思えば一昔前の時代の話だが、本書の内容は古さを感じさせるどころか、これからの未来について考えさせられるものがある。グローバリズムと部族主義、NPOとコミュニティ、学校と教養、etc…現在進行形で語られている多くの事柄に対して重要な示唆が本書にある。
     知の巨人と呼ばれるドラッカーでさえもポスト資本主義社会のありようを語るには時期尚早と述べているが、「知識」の変化が重要であることは明確に述べている。「知識」そのものは目に見えないだけに普段意識することはないが、このキーワードに留意しつつ、世の中の変化に注目していきたい。

  • 刺激的なタイトルですが、社会に価値をもたらす源泉が「資本」ではなくなった、という話。市場経済を否定している訳ではない。
    それにしても1993年に書いたとは思えないほど、今の世界情勢を言い当てているのにはひたすら感動。やっぱすごいわ。

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