複雑系の経済学

制作 : 週刊ダイヤモンド編集部  ダイヤモンドハーバードビジネス編集部 
  • ダイヤモンド社 (1997年2月発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478372012

作品紹介

経済学、経営学の研究者たちが「複雑系とは何か?」「複雑系の知は何の役に立つのか?」「複雑系と企業経営の関係とは?」について語る。

複雑系の経済学の感想・レビュー・書評

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  • 改めて複雑系の社会への応用。


    佐藤修
    マネジメントへの応用が特に面白い。要素還元主義的労働からの脱却。要素そのもの以上に要素同士の関係性が大事。

    ホロニックー全体と個体の調和。ホロニックマネジメント。個を活かし全体を高める。-企業内のあらゆるレベルでの構成員各々が自律的に問題解決や事業構造の改革に取り組みそれが全体として望ましい調和のもとに相乗効果を発揮し企業の戦略ドメインの実現に向けて統合されている状態「自律分散的」

    従来の企業組織は複雑性を縮減することによって規模拡大し規模の利益を実現。ホロニックマネジメントは複雑性を縮減するのでなく複雑性の増大を抑える。システムそのものを出来るだけ簡潔にして各構成単位ごとの複雑性をそのまま引き受けて自律的に分散処理することが望ましい。

    逆ピラミッド組織。情報は複雑性の中でこそ生き生きしてくる。複雑性の縮減とは生きている情報を殺すことに他ならないので変革期や価値の多様化には対応しにくい。

    経営を企業内部だけで議論したり企業を経済の世界だけで考える発想は静的安定を思考する要素還元主義的。-経営を進化させるほど異質性が失われ、企業は息の詰まる死んだ世界になっていく。大企業病、新しい発展が生まれない。
    生きている組織にとっての安定とは動的変動を続けていること。生きている社会で生きていくにはつねに自らを変化させねばならない。

    ノイズの排除により内部常識が固定して不祥事が横行。

    田坂広志

    面白かった。しかしこういう素晴らしいものが20年前に出ていながら結局要素還元主義的世の中に(学術も含めて)戻ってしまっているように見えるのだがなんでや。。

    ちなみにサンタフェがNPOなのは知らなかったw

  • この本を読んでいくつかのわからないことが、
    少しわかるようになった気がした。
    「ビジネスには、サイエンスがいること。」

    アメリカ・ニューメキシコ州
    サンタフェ研究所 ブライアン・アーサー
    物理学、生物学、医学、認知科学、
    コンピュータ科学、経済学などを横断する
    「複雑系」の学際的な民間機関

    「多くの要素があり、その要素が互いに干渉し、
    何らかのパターンを形成したり、予想外の性質を示す。
    そして、そのパターンが各要素そのものに
    フィードバックする。」

    「経済における要素が「知的」だということ、
    すなわち人間であるという点です。
    つまり、経済は正真正銘の複雑系なのです。」

    企業は生産要素を適切に投入し、
    利潤の最大化をめざすことが前提となっている。
    労働力などの生産要素をどんどん投入していくと、
    時間を経るに従って収穫(限界収益)は、
    逓減していくという収穫逓減の法則がある。
    しかし、ハイテク産業では、
    全く反対の「収穫逓増」という原理が働いている。

    ロックイン現象
    通常固定化と訳される。
    たとえば、ある市場において技術的に
    優劣をつけがたい商品が複数あるとする。
    その際、初期の一寸したアドバンテージによって
    あるひとつの商品が市場をロックインすることがある。
    VTR市場におけるVHSのロックインが
    よく引用される例の一つである。

    また都市の形成において、ある偶然から
    ひとつの産業が生まれ、次々に企業・人が
    集積してくることが見いだされる。
    その集積化についてもロックインと表現されることがある。

    これまでの製品が繰り返し生産されるという
    生産形態ではなく、最初の1枚をつくるのに、
    大変な開発費などがかかることになる。

    大量生産時代の経済学には、
    「収穫逓減」「完全合理性」「均衡状態」
    「変化せず固定した商品」といった原理がある。
    それが、ハイテク産業では、
    「収穫逓増」「流動的な商品サービス」「絶え間ない変化」
    になり、完全合理性など適用できなくなる。

    ものごとがくり返し可能で、問題がきちんと
    定義されてさえいれば、改善と最適化が可能である。
    最適化の要点は、製品を作り続け、
    出荷を続け、品質を向上させ、コストをおさえることです。
    それを確実にすすめるために、
    物事を管理・計画する人々と、
    機械の操作を担当する人が必要になります。
    そこにヒエラルヒー(階層構造)が生まれます。

    ハイテク産業の場合、市場をロックインでき、
    市場の80%をおさえられるほど運が良ければ、
    次の世代の製品がでてくるまでに膨大な金額を稼げる。
    そして80年代のロータスのように、
    粗利益率80%などということも可能になる。

    「次の大ヒット」 次にくる波はなにか。
    いかにして製品という形でその波をつかむか。
    そこで、彼らは完全に「ミッション志向」になります。
    ミッション志向だからこそ、組織のヒエラルヒーなど消える。

    ゲーム理論
    伝統的な経済学では、自由競争下の企業行動を
    「利潤の極大化」活動という前提でとらえてきた。
    しかし、企業間競争は、ゲームをモデルとして
    考えねばならないと最初に指摘したのは、
    ゲーム理論の祖であるフォン・ノイマンである。
    彼は1926年にその基本定理を発表した。

    ハイテク分野での大切な能力は、
    最適化能力ではない。
    ゲーム自体がきちんと定義されていない。
    大切なのは、そのゲームがどんなゲームになるのかを、
    他のものよりもするどくみぬく能力です。
    あるゲームで大きな成功を収めていても、
    次にくるゲームについては見えてさえいないものです。
    アメリカでは「勝者がすべてをさらう」という状況です。
    経営者に一番必要とされるのは、「認識能力」なのです。

    ある商品の構想を立て、ゲームの一つに目をつけた時点で、
    彼らはどういうポジショニングをとるべきかがわかる。

    国によって異なった制度ができ、
    それぞれに特有の性質を帯びるでしょう。
    ある国での物事の進め方が、その国の経済文化を形成する。

    差別化
    マイケル・E・ポーターによれば、
    競争戦略に3つの基本戦略がある。
    ①コスト・リーダーシップ 
    ②差別化 
    ③集中である。
    さらに差別化戦略にあたっては、
    コストが第1義の戦略目標ではないと説く。
    また必要な資源・スキルは、強力なマケーティング力、
    製品エンジニアリング、基礎研究力、高品質
    あるいは技術オリエントだという評判、
    熟達した経験、強い流通チャネルそして、
    創造的直感(当世風にいえばビジョナリー)だとしている。

    最近では、時間(意識的な継続性、
    決してあきらめの悪さではなく)による差別化戦略
    というものが評価されつつある。

    なぜハイテク技術産業に、収穫逓増がおこっているのだろうか。
    (1)製品を創造するコスト
    ウインドウズの最初のディスクを開発するのに
    5000万ドルの費用を要したが、
    2番目、及びその後のディスクの費用は3ドルであった。
    (2)ネットワーク効果
    (3)顧客適合性
    ハイテク製品は使いにくいものである。
    それらを使うにはトレーニングが必要となる。

    ふたつの経済体制
    (1)知識はさほど重要ではなく、
    本質的には物質的資源の凝縮である製品を生みだし、
    マーシャルの収穫逓減の原理に則って運用される大量生産の経済

    マーシャルの世界は、計画、制御、
    それにヒエラルヒー構造によって特徴つけられる。
    それは、素材、加工、及び最適化の世界である。

    大量生産の世界では、コアコンピタンス
    (他社がまねができない自社ならではの
    価値を持つ中核的な企業能力、
    あるいは自社が事業を行っていく上で社外に委託不可能な能力)
    に投資すること、競争優位な価格づけをすること、
    コストを削減すること、品質を向上させることで、
    たいていの企業戦略は決定される。

    知識ベース市場は、次のようなふたつの原理が広く浸透している。
    ①市場をつかむことに注意を払うこと
    ②ずば抜けたテクノロジーを手にすることに注意すること
    これらの原則は、真実であるが、成功を約束するものではない。

    (2)わずかな物質的資源をつかって、
    本質的には知識の凝結である製品を生みだし、
    収穫逓増のメカニズムの下で運用される知識主導型の経済。

    経済における知識主導の部分は、
    フラットな組織、ミッション志向、
    特に(ビジネスの行く末についての)
    方向のセンスを要求する。

    5ケ年計画などでは到底ダメである。
    専門的な意味での適応とは、次にやってくる波を待ち、
    それがどんな姿かを描き出し、
    優位性を築くために企業を適切にポジショニング
    していくことを意味する。

    最適化ではなく適応こそが収穫逓増のビジネスを動かしていく。

    収穫逓増の世界は、観察、ポジショニング、フラットな
    組織構造、ミッション、チーム、戦略によって
    特徴づけられる。
    それは、心理学、認知、適応の世界である。

    収穫逓増を働かせるために小売りフランチャイズ
    が存在している。
    フランチャイズが、地理的に外へ外へ進出すればするほど、
    よりプレゼンスは高まっていく。
    そのようなビジネスでは、品質向上のみならず、
    人々が何を期待しているのかを正確に知ろうとする
    熱意と努力のために好感度が高まっていく。
    そして、それが支配的であればあるほど、
    いっそう支配力は強まっていく。

    ハイテクのカジノは、臆病者にはむいていない。
    それは、技術的な専門知識、十分な資金力、
    意志、勇気といった類のものである。
    リターンは、テクノロジーの霧のなかに隠された
    新しいゲームにきずき、その姿を最初に認め、
    理解したものにもたらされる。

    テクノロジーのカジノにおける収穫逓増ゲームの
    プレーヤーとなるためには、
    いろいろなことが要求される。

    それは、卓越したテクノロジー、的確の市場を
    見定める能力、十分な資金力、戦略的な価格づけ、
    それに将来の利益のために現在の利益をすすんで
    犠牲にする姿勢などである。

    これらすべては、物質的資源に関することがらではなく、
    勇気、決意、意志にかかわる事柄である。
    収穫逓増が、市場にとって逆風となって作用しているときには、
    その市場を撤退する決断力こそ決意であり、勇気なのである。

    テクノロジーは、成功の波に乗ってやってくる。
    この波に乗り遅れたものは、次の波を持つことができる。
    逆に、このサイクルで大儲けしたものは、
    自己満足にしたるべきではない。

    収穫逓増のメカニズムのもとで、利益を上げる能力は、
    次のサイクルでは、何がやってくるかを察知する能力、
    あるいは、それに備えるための技術的、心理的、
    協調的なポジショニング能力と同じくらい重要である。

    吉川智教
    1947年生まれ 早稲田大学理工学部卒 
    一橋大学大学院修了、横浜市立大学商学部教授
    ①収穫逓減 VS 収穫逓増
    ②単一の市場均衡 VS 複数の市場均衡
    ③安定性 VS 不安定性
    ④完全合理性 VS 限定合理性

    収穫逓減
    水力発電を日本ではじめた頃には、
    ダムにもっとも適した地域がえらばれ、
    次から次へとダムが開発され、
    次第にダムに適した地域がなくなってくるので、
    水力発電における限界費用は徐々に増加していく
    つくればつくる程コストが高くなる経済である。
    農地の開発

    収穫逓増の3要因
    (1)初期費用 ハイテク産業の研究開発費用は、
    製造業に比較するとケタ違いに大きい。

    (2)ネットワーク効果 利用者が特定のシステムを
    利用すればするほど、そのシステムの利用者が増えるので、
    正の外部性が生まれる。

    (3)顧客の親しみやすさ 
    一定どのシステムを学んだ人は、
    なかなか他のシステムに親しみを持ちにくい。
    キーボード配列 QWERTY(クワーティ)
    世界標準、業界標準 といわれる内容。

    サービス産業のリエンジニアリング
    (1)サービスの地域性は、依然、重要。
    (2)ネットワーク効果によって、勝者がほとんどを手中に収める。

    製造業の成長率の高さの重要な要因に、
    QCD(Quality,Cost and Delivery)
    高品質、低コスト、短納期として特徴づけられる。

    「自動化はあくまでもニンベンのある「自働化」でなければならない。」
    大野耐一 トヨタ生産方式の生みの親
    生産技術より、管理技術が重要である。
    「多数台まち」「多能工化」「段取り時間の短縮」
    現場作業者のアイドルタイムを減少させ、
    生産性がのび、さらに生産のリードタイムも短くなる。

    京浜工業地域の製造業における従業員一人当たり、
    年間所得は約600万円である。
    一人当たり年間付加価値
    (売上高から、材料費、下請けの支払いなどをひいた資本と
    労働によって生み出された部分)は、
    1000万円以上ないと苦しいといわれている。
    1人あたりの年間付加価値を、
    年間労働日数200日 1日の労働時間8時間として計算すれば、
    おおよそ1日あたり5万円、1時間当たり6250円、
    1分あたり104円、1秒あたり1.7円となる。

    伝統的製造業 プロセス・イノベーション 価格競争力
    研究開発型ベンチャー プロダクトイノベーション 製品競争力

    現代経済学の本流にあるのは、
    アダムスミスによる「神の見えざる手」という考え方です。
    国民・企業などは皆自分の利益のために活動しますが、
    神の見えざる手にコントロールされ、
    結局、社会全体では、望ましい経済活動をつくりだすということである。

    技術を持っている人、経営能力を持っている人、
    資金をもっている人などが複数集まり、
    協力によって企業をつくっていく。

    自己組織化
    混沌とした状況の中から独りでに秩序や構造が
    生まれてくること。自己組織化は、
    生物の細胞などに観察されるが、
    社会、企業においても同様なことが発見できる。

    そこで、組織論において自己組織化という視点で
    とらえるフレームワークが存在する。
    企業組織における自己組織化の原動力は、
    上意下達的なリーダーシップではなく、情報創造力にあるとする。

    免疫論から 多田富雄
    すべての生命現象は、生まれる前から遺伝子で決定されていて、
    すべてそのプログラムどうりに動いているとされてきました。
    ところが、遺伝子には無駄な遺伝子があって、
    それが切り離されていったり、あるいはお互いに組み合わさって
    新しい情報をつくったり、偶然性を取り込みながら
    一種の拡大再生産をしていく遺伝子があることもわかってきました。
    限られた数の遺伝子を利用して非常に多様なものを
    つくりだしていくなど、どうも遺伝し決定論だけですまなくなった。

    田坂広志
    (1)複雑な市場経済の「法則」が、理解できるようになるのではないか
    (2)不確実な市場の未来が「予測」できるようになるのではないか
    (3)消費者の潜在ニーズが「分析」できるようになるのではないか
    (4)ヒットする商品が「設計」できるようになるのではないか
    (5)企業組織の最適な「管理」ができるようになるのではないか
    →このような発想を転換を求められている。

    複雑系の7つの知と7つのメッセージ
    (1)全体の知   分析はできない。全体を洞察せよ。
            「複雑化」すると「新しい性質」を獲得する。
    (2)創発性の知  設計・管理をするな。自己組織化を促せ。
            「個の自発性」が「全体の秩序」を生み出す。
    (3)共鳴場の知  情報共有ではない。情報共鳴を生み出せ。
    「共鳴」が「自己組織化」を促す。
    (4)共鳴力の知  組織の総合力ではない。個人の共鳴力。
            「ミクロ」のゆらぎが、「マクロ」の大勢を支配する。 
    (5)共進化の知  トップダウンでもなく、ボトムアップでもない。
            「部分と全体」は、「急進化」する。
    (6)超進化の知  法則は変わる。そして変えられる。
            「進化のプロセス」も「進化」する。
    (7)一回性の知  未来を予測するな。未来を創造せよ。
            「進化の未来」は「予測」できない。

    「全体は部分の総和である。」
    「全体は部分の総和以上のなにかである。」
    「対象を分割することによって失われるなにかがある。」

    われわれは、「言葉」にて語りうるものをかたり尽くしたとき、
    「言葉」にて語り得ないものを知ることがあるだろう。

  • 複雑ネットワークを機に複雑系経済学に目覚めたので、何気なく図書館で見つけた本書を手に取ってみた。

    どことなくオムニバス形式な文体なのでサクサク読めたが、やはり個人的にはこの分野面白そう。
    奇しくも大学時代、理論経済学に一度は心を奪われたものの、現実解とのあまりの乖離に興醒めした経緯もあったのだが、本書のように複雑経済学のモデルでは、解にはならずゆらぐという。この動学的なモデルの探索がまさしく現実により近い内容であると思ったし、よいと思った。
    そういう意味では本書はとてもよかった。

    しかし、古い書籍なので、古典的なパラダイムのミクロ・マクロ経済学の説明や"第三世界"などの死語ともとれるワードなどは少し興ざめだった。
    ただ、これを契機に最新までくだり、色々と学びたいと思った。

    目次
    第1章 収穫逓増の世界(収穫逓増の経済学入門
    収穫逓増とビジネスの新世界
    日本のR&D型企業と収穫逓増の経済)
    第2部 変容する経済学(免疫学と経済学の接点
    複雑系としての経済・社会・企業)
    第3部 企業経営への応用(複雑系の企業論
    複雑系の七つの知)

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