企業戦略論【上】基本編 競争優位の構築と持続

  • ダイヤモンド社
3.86
  • (52)
  • (43)
  • (64)
  • (1)
  • (3)
本棚登録 : 950
感想 : 53
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478374528

作品紹介・あらすじ

リソース・ベースト・ビュー(経営資源に基づく戦略論)の第一人者J.バーニーの戦略論テキスト、待望の日本上陸。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 企業戦略論 上 基本編
    競争優位の構築と持続
    著:J・B・バーニー
    訳:岡田 正大

    MBAのテキスト、マイケル・ポーターのポジショニング理論がベースとなっている。
    基本編は、企業戦略の基礎と、SWOT分析のの解説である。

    <本書の前提>
    組織行動学(OrganizationalBehavior) と、財務(Finance)
    会計学(accounting)と会計原則(generally accpted accouning rules)
    企業戦略論(Strategic Management)
    マイケル・ポーターの「競争の戦略」

    ■戦略
    戦略(strategy) とは、いかに競争に成功するか、ということに関して一企業が持つ理論
     競争優位
     競争均衡
     競争劣位

    ミッション(mission) その企業の根本的な目的と長期目標 明文化 ⇒ ミッションステートメント
    ミッション⇒目標⇒戦略⇒戦術(施策) とブレークダウンする
    ミッションに基づく戦略策定アプローチの限界
     ①この種の戦略策定アプローチが非常に内向きであること
     ②ミッションやビジョンが、戦略が選択しようとする企業に厳格で明白な価値基準を提供するにもかかわらず、それが現実の組織経営に関わるマネージャーたちに有効な指針を示し得ない場合がある

    戦略策定にあたっての分析のフレームワーク SWOT分析
    企業内部の分析 強み(strengths) 弱み(weaknesses) 外部環境の分析 機会(opportunities) 脅威(threats)

    ■パフォーマンス
    ・単純会計アプローチ
     収益性管理 ROA,ROE,粗利率、EPS,PER,1株あたりのキャッシュフロー
     流動性管理 流動比率、当座比率、
     レバレッジ 負債比率、DEレシオ、利息負担倍率
     自動活動管理 在庫回転率、売上金回転率、平均回収期間
    ・修正会計アプローチ
     資本コスト、投下資本収益率(EOIC) 、経済的利益(EP)、市場付加価値(MVA)
     みなし税引後営業利益(NOPLAT)、加重平均資本コスト(WACC)、負債コスト、株主資本コスト

    ■脅威
    ・業界構造―企業行動―パフォーマンスモデル(SCPモデル)
    ・業界構造 
     完全競争
     独占的競争
     寡占
     独占
    ・5つの脅威
     新規参入
     競合
     代替品
     供給者
     購入者

    ■機会
    ・業界構造
     市場分散型業界 集約・統合
     新興業界 先行者優位
     成熟業界 製品改良、サービス品質、プロセス革新
     衰退業界 リーダシップ、ニッチ、収穫、撤退
     国際業界 マルチナショナル、グローバル、トランスナショナル
     ネットワーク型業界 先行者優位、勝利者総取り
     超競争業界 柔軟性、先制破壊
     コアなし業界 談合、政府規制、高度な製品差別、需要マネジメント

    ・脅威と機会の分析における、SCPモデルの限界
     ①企業利益と業界参入に関する前提
     ②非効率的な戦略の役割
     ③限定された企業異質性の前提

    ■企業の強みと弱み

    ・これまでの研究
     企業固有能力に関する伝統的研究
     リカード経済学
     企業成長の理論

    ・経営資源
     財務資本
     物的資本
     人的資本
     組織資本

    ・マッキンゼ:バリューチェーン
     技術開発⇒製品デザイン⇒製造⇒マーケティング⇒柳津⇒アフラーサービス

    ・ポーター:バリューチェーン

     支援活動 ①インフラ活動、②技術:研究開発デザイン、③人的資源の管理と開発
     主要活動 購買、部品、半製品、資材⇒製造⇒完成品保管、配送⇒販売、マーケティング⇒ディーラーサポート、顧客サービス

    ・VRIO
     経済価値(value) 希少性(rarity) 模倣困難性(inimitability) 組織(organization)

    ・リソース・ベースト・ビュー
     ①企業における競争優位の責任
     ②競争均衡と競争優位
     ③実行困難な戦略
     ④社会的に複雑な経営資源
     ⑤組織の役割

    目次

    上巻 基本編

    第1章 戦略とは何か
    第2章 パフォーマンスとは何か
    第3章 脅威の分析
    第4章 機会の分析
    第5章 企業の強みと弱み

    中巻 事業戦略編

    第6章 垂直統合
    第7章 コスト・リーダシップ
    第8章 製品差別化
    第9章 柔軟性
    第10章 暗黙的談合

    下巻 全社戦略編

    第11章 戦略的提携
    第12章 多角化戦略
    第13章 多角化戦略の組織体制
    第14章 合併買収
    第15章 国際戦略

    ISBN:9784478374528
    。出版社:ダイヤモンド社
    。判型:A5
    。ページ数:336ページ
    。定価:2400円(本体)
    。発行年月日:2003年12月
    。発売日:2003年12月04日

  • 言わずと知れた企業戦略論のバイブル。中、下巻まで読み進めないとちゃんと評価はできないが、市場環境などマクロな視点から個々の企業のミクロな視点への落とし込みまでうまく書かれている印象。フレームワークの網羅性は担保されているように思うし、具体的ケースも充実している。
    ある程度企業戦略論の知識が無いと、マクロな話についていくのが難しいように思う。企業戦略論についてある程度学んだ人が、体系立てて知識を整理したり、よりマクロな視点で視野を広げたりするのに良さそう。

    以下は覚書。

    ■序章
    戦略論の成り立ちや本書の構成について。よほど歴史に興味が無い限りは読み飛ばしてOK。

    ■第1章 戦略とは何か
    企業のミッション(目的)、目標、戦略、戦術(施策)の定義とSWOT分析の入りについて。言葉の定義をきちんと知っておくのは大事。
    ※キーワード: 戦略、戦術、SWOT分析

    ■第2章 パフォーマンスとは何か
    競争優位性の比較のために用いるパフォーマンスの測定方法について。①企業の存続期間、②ステークホルダー・アプローチ、③純粋な会計数値、④修正を施した会計数値、の4つを挙げている。③はROEなどのB/S、P/Lから簡単に計算できる経営指標。④はWACCやEBITAを用いて算出される少し複雑な指標。数字が進むにつれて客観性、厳密性が高まる感じ。その分計算は面倒。
    ④に対する記述が章の半分以上を占めているが、投資家や研究者でない限りは読み飛ばしてOK。会計は確かに操作可能ではあるが、ある程度の割り切りを持って③で評価するのが現実的。絶対的な尺度で企業の順位をつけるのが仕事じゃないしね。
    診断士の勉強にかぶれていると③ばかりが頭に浮かぶが、①や②も視点として持っておくのは悪くないように思う。
    ※キーワード: パフォーマンス、経営指標(会計数値)

    ■第3章、第4章 脅威・機会の分析
    脅威・機会の前段として、SCPモデルを用いて業界構造(Structure)が企業行動(Conduct)とその結果のパフォーマンス(Performance)を決定づけることを述べている。3章と4章はセットで読んで理解した方がよい。
    脅威については、5フォース分析を軸に解説。特に新規参入の脅威については、参入障壁についてより詳しく考察している。具体的には、①規模の経済、②製品差別化、③規模に無関係なコスト優位性、④意図的抑止、⑤政府による参入規制、を挙げている。細かく色々書いてあるものの、既存企業のQCD面の優位性と政府規制の2点で解釈しとけばいいように思う。
    機会については、機会そのものというよりは、業界構造のパターンとそこで取られる戦略オプションについて述べている。ちょっと違和感。業界構造は、①市場分散型業界、②新興業界、③成熟業界、④衰退業界、⑤国際業界、⑥ネットワーク型業界、⑦超競争業界、⑧コアなし業界、に分類されている。地理的特性×製品のライフサイクルで捉えると解釈し易いように思う。
    最後に業界構造の分析単位として戦略グループという概念を導入している。「同一業界内において、他の企業とは異なる、ある共通の脅威と機会に直面している企業群」とのこと。例えば同じメーカーでも大企業と中小企業を同様に比較してもしょうがないのは直感で分かるが、言葉にされるとしっくりくる。
    ※キーワード: SCPモデル、5フォース分析(5つの競争要因)、戦略グループ

    ■第5章 企業の強みと弱み
    まずはRBVから。経営資源(Resource)は、①財務資本、②物的資本、③人的資本、④組織資本、の4つに分類している。③、④はくっつけて、ヒト・モノ・カネで理解しておけばよいと思う。
    強み・弱みの特定をサポートするためのフレームワークとしてバリューチェーン分析、VRIO分析について述べている。バリューチェーンは、マッキンゼーとポーターによる一般的なモデルの紹介があり、知っておくと良さそう。VRIO分析では、特に模倣困難性に焦点を当て、①(コスト優位に対する)歴史的条件(時間圧縮の不経済、経路依存性)、②(経営資源と競争優位の)因果関係不明性、③社会的複雑性(※例えば、組織文化、特定のリーダーなど)、④特許、を挙げている。なるほどなと思える内容。最後に、破壊的イノベーションによるRBVの限界についても触れている。
    ※キーワード: RBV、コア・コンピタンス、バリューチェーン、VRIO、破壊的イノベーション(シュンペーター的変革)

  • ケーススタディや背景知識、引用が丁寧で参考になる部分が多い。内容はいわゆるMBA教科書だが、邦訳本や日本の学者が書いた通り一遍の孫引き集約本と違って、著者が一度自分で咀嚼して吐き出している「こなれ感」がある。そのためガチガチの教科書なのに斜に構えた感がまるでなく、コーヒーでも飲みながら気楽にお話を聞いているという感じで読める。大変な良著。

  • さすがその道の王道の一冊。原典ではないけれど、やっぱりオリジナルは素晴らしい。戦略論を理解する上で必要な、そもそも企業のパフォーマンスをどう計測するのか?などにも丁寧な言及があり、素晴らしい構成。日本語訳も、意訳すぎず不自然でもなく快適に読み進められる。残り2冊も迷わず読みたい。

  • 資源という視点からみた経営戦略論の基本書。最新版よりも訳が難しいけど、こっちの方が網羅的に訳しているみたい。

  • 非常に丁寧に解説してくれている。

  • ポーターのポジショニング・アプローチに対して、資源ベース・アプローチを確立したとされるバーニーの資源ベース理論。

  • 古典的名著。ポーターの書籍を読んだ後に読むべき。市場での競争優位を前提に、内部に焦点を。

  • 外部環境分析と内部環境分析の考え方や限界について、非常にわかりやすく書かれていた。
    企業にとってのパフォーマンス評価の方法(結局、財務指標の加工版である、EBITA、NOPLANT、ROICを資本コストと比較するのがベター)は特に参考になったし、業界の魅力度の評価やVRIO分析の考え方等、納得感が高かった。

  • SCPとRBVにより競争戦略の基礎を畳み込まれた感。地味に次の事業・全社戦略が気になるので、中下も読んでみようかな。

全53件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

ジェイ B.バーニー(Jay B.Barny)
ユタ大学経営大学院教授。アメリカ経営戦略領域におけるリソース・ベースト・ビュー発展の原動力となった戦略理論家。1996年にはアメリカ経営学会の経営政策・戦略部会会長を務めた。エール大学で博士号を取得後、オハイオ州立大学経営学部フィッシャー・ビジネススクール企業戦略バンク・ワン・チェアーシップ教授などを経て現職。経営学のトップジャーナルAMR、AMJ、AME、SMJ、Management Science等に50を超える掲載論文。

ウィリアム S. ヘスタリー(William S.Hesterly)
ユタ大学経営大学院教授

「2021年 『新版 企業戦略論【上】基本編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ジェイ・B・バーニーの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
エリヤフ・ゴール...
アルフレッド・D...
野中 郁次郎
マイケル・E. ...
デールカーネギ...
ロバート キヨサ...
マイケル・E. ...
クレイトン・M・...
イアン・エアーズ
M.E. ポータ...
ガース サローナ...
グロービス・マネ...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×