企業戦略論【中】事業戦略編 競争優位の構築と持続

  • ダイヤモンド社
3.89
  • (33)
  • (30)
  • (45)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 603
感想 : 26
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478374535

作品紹介・あらすじ

「初心者に向けた分りやすさ」と「研究者に向けた詳細な分析」を両立、基本から応用まであらゆる理論を網羅した決定版。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 企業戦略論 中 事業戦略編
    競争優位の構築と持続
    著:J・B・バーニー
    訳:岡田 正大

    上巻では、企業の外部環境における脅威や機会、組織の強み、弱みを評価するために必要な分析ツールを吟味した。
    しかし、企業が脅威を無力化し、機会と強みを活用し、弱みを回避、克服するための具体的な行動について言及をしていない。
    中巻は、まさに、その、戦略の中身、企業が特定の市場もしくは業界で採ることができる具体的な行動を精査する。
    これを事業戦略(business strategies)とよんでいる
    原料の調達・加工・販売・サービスを位置づける一連の活動(ステージ)=サプライチェーンを垂直統合として俯瞰する。

    <本書の前提>
    組織行動学(OrganizationalBehavior) と、財務(Finance)
    会計学(accounting)と会計原則(generally accpted accouning rules)
    企業戦略論(Strategic Management)
    マイケル・ポーターの「競争の戦略」

    ■垂直統合

    バリューチェーンの中で、どれだけのステージ(活動)に関わることができるのかをあらわすのが垂直統合度だ
    垂直統合で重要なのは、コスト・リーダシップと、製品差別化。この2つは一般事業戦略と呼ばれる。(後2章解説)

    垂直統合の経済価値
     市場による統治 取引の単位は市場で決定した価格に基づいて行われる
     階層的統治 取引の統治に企業という組織を用いること
     中間的統治 両極の中間に位置する統治メカニズム

    統治メカニズムの類型
     スポット市場契約
     完備契約
     逐次契約
     関係性に基づく契約 内部市場、移転価格

    不確実性と統治選択
     オプション ストックオプション、リアルオプション、
     戦略的柔軟性
     垂直統合の意思決定に関する3つの視点の統合 取引価格、経営資源とケイパビリティ、リアルオプション

    組織:U型組織(製造、販売、研究開発、人事、法務 などを、CEOがまとめるモデル)
    職能組織、予算 執行役員会、事業会議
    人的資本投資 企業特殊な人的資本投資 補填差額、雇用保証、昇進、名声、フリンジ・ベネフィット(健康保険、スポーツクラブの会員権、年金プラン、休暇制度など)

    ■コスト・リーダシップ

    コスト優位の源泉
     規模の経済
      生産規模と専用機械
      生産規模と工場、設備のコスト
      生産規模と従業員の専門化
      生産規模と間接コスト
     規模の不経済
      効率化を維持できる生産規模の物理限界
      マネジメント上の不経済
      従業員のモチベーション
      市場および原材料への距離
     学習曲線による経済性
     生産要素への差別的低コストのアクセス
     規模と無関係の技術上の優位
     経営政策の選択 ターゲットコスト設計システム

    コスト・リーダシップと外部環境における脅威
     ①新規参入 コストに基づく参入障壁を創出することによる新規参入の脅威を無力化できる
     ②競合 より高コストの競合企業の価格にあわせる/高コストの競合企業の価格にわずかに下回る価格設定をする
     ③代替
     ④購入者 価格の引き下げ、品質向上
     ⑤供給者 高い価格の要求、もしくは、製品、サービスの品質をおとしてくる

    コスト・リーダシップ実行のための組織
     ①組織構造 すくない階層、単純な報告、少数の本社スタッフ、特定の機能への集中
     ②マネジメント・コントロール 厳格なコスト管理、コスト数値目標、リソースのコストに対する詳細なモニタリング、価値観
     ③報酬制度 報奨金、インセンティブ

    ■製品差別化

    1 製品の特長 製品の仕様、性能の改善
    2 機能間のリンケージ 販売、サービス、コンサルなどの各機能部門の連携
    3 タイミング 正しい時期に製品、サービスを市場投入すること
    4 地理的ロケーション 市場に近い地理的アクセス
    5 製品の品揃え ラインナップ、ワンストップでの購入機会
    6 他企業とのリンク 自社と他社の製品、サービスをリンクさせる
    7 評判

    製品差別化の源泉に関する実証研究
     多次元スケーリング ①認知上の性能、②認知上の信頼性の、類似性マトリックス
     相関分析 各機能と価格との相関、安定性vs機能、排気量vs機能 など

    組織上のジレンマ
     機能部門間コラボレーション
     制度的コントロール
     過去とのつながり
     市場見通しへのコミットメント

    製品差別化とコスト・リーダシップの実行
     第1のプロセス 差別化、市場シェア、低コスト
     第2のプロセス 組織要請上の矛盾の解決

    ■柔軟性

    リスクと不確実性の影響の配慮

    戦略で得られるキャッシュフローの現在価値を測定する ⇒ 適正な割引率とは何かという問題
    現在価値を用いることの限界
     ①キャッシュフローに関する情報を得ることに困難を伴うこと
     ②戦略実行中のリスクと不確実性は、不変であること
     ③すべての戦略的機会に関する情報が反映されていないこと
    ⇒これらを軽減するため、オプションを導入 ストック・オプションなど
     ・遅延オプション
     ・成長オプション
     ・縮小オプション
     ・閉鎖・再開オプション
     ・放棄オプション
     ・拡張オプション

    ■暗黙的談合

    協力戦略 ⇒談合戦略 ⇒明示的談合と、暗黙的談合 ⇒戦略的提携へ

    ゲーム理論 囚人のジレンマ、勝ち逃げ戦略、裏切り、

    談合を生み出す業界属性
     企業数がすくない
     製品の同一性
     コスト構造の同一性
     価格リーダー
     業界の社会的構造
     発注頻度と小さい発注規模
     在庫保有と受注残
     参入障壁

    目次

    上巻 基本編

    第1章 戦略とは何か
    第2章 パフォーマンスとは何か
    第3章 脅威の分析
    第4章 機会の分析
    第5章 企業の強みと弱み

    中巻 事業戦略編

    第6章 垂直統合
    第7章 コスト・リーダシップ
    第8章 製品差別化
    第9章 柔軟性
    第10章 暗黙的談合

    下巻 全社戦略編

    第11章 戦略的提携
    第12章 多角化戦略
    第13章 多角化戦略の組織体制
    第14章 合併買収
    第15章 国際戦略

    ISBN:9784478374535
    。出版社:ダイヤモンド社
    。判型:A5
    。ページ数:320ページ
    。定価:2400円(本体)
    。発行年月日:2003年12月
    。発売日:2003年12月04日

  • RBVの基本文献。本巻は、事業戦略における競争優位に関して述べられている。概略的にはポーターの事業戦略の枠組みとあまり変わらない。

  • ポーターの足らざる部分、すなわち持続的な競争優位の源泉として、「無形の資産」に焦点を当てた理論書。

  • 上巻に引き続き、経営戦略の根本を教えてくれる。個別具体的なハウツーを読む前に頭に入れるべき

  • 事業戦略について、垂直統合(どこまでを自社の活動として取り込むか。当該活動が自社にとってのコアな技術やノウハウ該当するか、外注した場合の機会主義的行動防止のコストと自社実施のコストを勘案して決定)、コストリーダーシップ戦略(規模の経済、経験効果、独自技術、資源への独自アクセスによって実現。機能間連携や歴史的経緯に基づくコスト優位は模倣困難)、製品差別化戦略(機能間連携や失敗を許容し挑戦を奨励する組織運営により実現。製品やサービスの特徴だけの差別化は模倣容易であり、評判の確立や組織的複雑性により実現された差別化は模倣困難)、柔軟性(不確実性が高い場合、投資判断を留保できるリアルオプションが有用)、暗黙的談合(協同により競争を回避する戦略。相互にシグナルを発信して談合を維持し標準以上の利益を獲得する。)がわかりやすく説明されていた。

  • 戦略論をわかりやすいまとめてくれた本。
    垂直統合
    コストリーダーシップ
    製品差別化
    柔軟性
    暗黙的統合

    コストリーダーシップが一番勉強になった。
    単にコストを下げるだけでなく、いかにコストを下げられる状況を作るのがだいじである。

  • 最近の実証研究では、たいていの業界において学習の中身は個別企業独自のものではない一般的なもので、競合企業が累積生産量を増加させることによって急速に複製されてしまうと指摘されている。

    独占排他権である特許はあまり役に立ってないということでしょうか。日頃の他社特許対策にかける時間を考えると、差し止めは抜きにして、実施によるライセンス料を払った方が安く済むのではないかと思ってしまいます。あとは、他社特許対策にかける時間を徹底的に効率化させるか。

    前者は比較そのものが大層難しそうですので、今やれるとすれば後者ではないかと思います。これだけ自然言語処理だのが盛んな今、いつまでも人海戦術一本ではあまりに無駄が多いのではないかと思います。

  • -

  • 如何にして、競争優位を獲得するのか。
    コストリーダーシップと製品差別化による競争優位獲得がオーソドックスなやり方。
    儲かるところには、新規参入が多く発生するので、談合等への対策も含め、検討する必要がある。

  • 企業戦略論のバイブルの中巻。事業戦略編ということで、特定の(単一の)市場において企業が競争優位に立つためにとりうる選択肢を考察する。
    5つの事業戦略を各章で考察。それぞれにおいて事業戦略の定義とVRIO観点での分析結果について書かれている。

    以下は覚書。

    ■第6章 垂直統合
    バリューチェーンの前方・後方へ事業の範囲を拡大するもの。自社の事業領域だけではなく、他社も含めてバリューチェーン全体に対する自社の統治の度合い(ガバナンスの強さ)として捉えている。組織論や契約の話が出てくるが、この章との関連性はハテナ。
    ※キーワード: 機能別組織(U型組織)

    ■第7章 コスト・リーダーシップ
    コスト優位を構築するもの。コスト優位の源泉として、規模の経済、経験曲線、生産要素への差別的アクセス、技術上の優位などが挙げられている。ここは読んでいておもしろい。経済価値のところは当たり前のことが長々と書かれていて退屈な印象。
    ※キーワード: 規模の経済・不経済、経験曲線(学習曲線)

    ■第8章 製品差別化
    市場が認知する自社製品の価値を向上させるもの。製品差別化の方法として製品の特徴、機能間の連携、市場導入のタイミングなどが挙げられている。価値と各差別化要素の相関性についてもモデル化してある。当たり前の式だが、一応見とくといいかも。何故かバランス・スコアカードを報酬体系に適用している。コスト・リーダーシップと製品差別化の同時追求に対する考察は割とおもしろい。
    ※キーワード: バランス・スコアカード

    ■第9章 柔軟性
    将来の不確実性に対して低コストかつ迅速に自社の方向性を変化させるもの。だいたいの業界は不確実性が高くなっているし、考えておくべきこと。金融オプションの経済価値を求めるブラック・ショールズを応用し、実物の経営資源に対する柔軟性(リアルオプション)の経済価値の算出方法を紹介している。考え方は知っておくと良さそう。

    ■第10章 暗黙的談合
    他企業と協調するもの。明示的談合は大半の国でカルテルに引っかかるので、暗黙的談合について考察している。ゲーム理論ってこういうところに応用が効くのかと気付かされた。暗黙的談合を成立させるための企業行動、裏切りをどのようにして防ぐかといった考察はなかなか興味深い。ただ、やはり王道では無いから実用性の観点ではあまり深堀してもしょうがないかも。
    ※キーワード: 囚人のジレンマ

全26件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

ジェイ B.バーニー(Jay B.Barny)
ユタ大学経営大学院教授。アメリカ経営戦略領域におけるリソース・ベースト・ビュー発展の原動力となった戦略理論家。1996年にはアメリカ経営学会の経営政策・戦略部会会長を務めた。エール大学で博士号を取得後、オハイオ州立大学経営学部フィッシャー・ビジネススクール企業戦略バンク・ワン・チェアーシップ教授などを経て現職。経営学のトップジャーナルAMR、AMJ、AME、SMJ、Management Science等に50を超える掲載論文。

ウィリアム S. ヘスタリー(William S.Hesterly)
ユタ大学経営大学院教授

「2021年 『新版 企業戦略論【上】基本編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ジェイ・B・バーニーの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×