- Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
- / ISBN・EAN: 9784478502280
感想・レビュー・書評
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■ブランド構築のメリット
【売上げの拡大】
●価格プレミアム
●新製品の成功
●共同ブランドのパートナーにとって魅力的
●ライセンス契約のパートナーにとって魅力的
●ロイヤルティの獲得
●注力すべき社内的課題が明確になる
●顧客が他のブランドに乗り換えない
●多少高めでも顧客が買い続けてくれる
【コストの削減】
●価格競争の影響が少ない
●交渉において優位に立てる
●ブランドの危機を回避する
●人材の獲得と維持が容易
●社員のプライドが高まる
●注力すべき社内的課題が明確になる
●顧客がブランドを知人などに勧めてくれる
●類似ブランドが購買対象から外れる
■信頼性の有効範囲
ブランド・ポートフォリオの妥当性、市場の機会、組織のコンピテンシーの3つがすべて有効に機能する範囲。
方針1:中核事業の強化
方針2:ブランド・ポートフォリオの妥当性を拡大する
方針3:ブランド・ポートフォリオの妥当性を活用する
方針4:市場の動きを探る(あるいは監視する)
■3×3のマトリックス
1.潜在顧客
(1)購買前体驗
・狙い:検討候補に含めるブランドを選ぶ基準を把握する
・質問例:Xを購入する時、どんな基準でブランドを選びますか
(2)購買体驗
・狙い:購買時に期待する理想的な体験を把握する
・質問例:Xの購入に踏み切る時、何を最も重視しますか
(3)購買後体验
・狙い:潜在顧客に対してブランドをどのように実現することが期待されているかを把握する
・質問例:ブランドの利用についてどんな期待を抱いていますか/今後も顧客であり続けて頂くには、当社はどうすればよいでしょう
2.既存顧客
(1)購買前体驗
・狙い:検討候補に含めるブランドを選ぶ基準を把握する
・質問例:当社ブランドを最終検討候補に含めた理由は何ですか
(2)購買体驗
・狙い:ブランドの購買プロセスに関わる強みと弱みを把握する
・質問例:当社ブランドの何が気に入って購入しましたか/購買プロセスで気に入った点はありますか。変えるとしたら、どう変えたらよいでしょうか
(3)購買後体验
・狙い:ロイヤルティを高めているコンタクト・ポイントを把握する
・質問例:当社ブランドの購入を続ける理由は何ですか/当社が改善すべき点は何ですか
3.逸失顧客
(1)購買前体驗
・狙い:ブランドが顧客の最終検討候補に入れなかった理由を把握する
・質問例:最終検討候補に入れたブランドは何ですか/当社ブランドが外れた理由は何ですか
(2)購買体驗
・狙い:最終的に競合ブランドを購入する決定に至った要因を把握する
・質問例:最終的に購入を決めたブランドは何ですか/当社ブランドを買わなかったのはなぜですか/以前当社ブランドを購入した経験がある場合、変えるとしたらどう変えたらよいでしょうか。 どこが気に入りましたか
(3)購買後体验
・狙い:当社ブランドを再購入しなかったのはなぜですか
・質問例:当社が改善すべきだった点は何ですか
■購買前体験コンタクト・ポイントの評価で検討すべき問題6つ
検討中のコンタクトポイントは
①事業戦略に適合しているか。
●長期的な目標の達成に役立つか。
●自社のミッション、ビジョン、バリューとの一貫性はあるか。
●売上げ、利益目標の達成に役立つか。
●市場拡大計画に役立つか。
●自社ブランドを新しい分野に展開できるか。
●共同ブランド化やパートナーシップの可能性を活用できるか。
②ブランド戦略に適合しているか。
●ブランドの約束との一貫性があるか。
●ブランドポジショニングの伝達に役立つか。
●ブランドアイデンティティを補完するか。
●ブランドイメージの向上につながるか。
●連想によってブランド・パーソナリティを高めるか。
●予算上の制約に適合しているか。
●新たな顧客紹介をもたらすか。
③各モデルに適合しているか。
●望ましいターゲット・セグメントに到達するか。
●ターゲット・セグメントの重要な購買基準に合致しているか
●顧客の全購買プロセスを強化するか。
●購買への影響者、購買の意思決定者の両方に働きかけるか。
④商品カテゴリーの動向に適しているか。
●商品カテゴリーの主要なトレンドに沿っているか。
●現在の商品カテゴリー内でのポジション (先駆者か後追いかなど)を強化するものか。
●顧客が抱いている商品カテゴリーへの知覚と合致しているか。
⑤競合のアプローチとの差別化をもたらすか。
●競合製品以外の代替可能品(たとえば、コカコーラの最大の競合はペプシでなく水道水である)に打ち勝つうえで有効か。
●競合の将来の動きを制するうえで役立つか。
⑥自社の流通方式に適合しているか。
●現在の流通戦略(直接・間接問わず)との一貫性があるか
●流通パートナーのニーズを満足させられるか(重要パートナーが特定の製品ラインを独占的に取り扱えるか)
●複数のアクセス・ポイントを獲得、維持するうえで役に立つか
■購買後体験の定義
金融サービスであれデータ・ネットワーキングであれ、購買後体験はだれかがものを買った(お金を払った)瞬間に始まり、その顧客がその製品・サービスを使い終わる、売却する、使わなくなる、など使用をやめる瞬間に終わる。ブランドによっては購買後体験は長く、複雑で、関係性主導である(GE航空機エンジンなど)。一方、購買後体験は短く、いったん商品が棚を離れたら、もう直接影響を及ぼしたり、管理したりできなくなるものもある(トライデントのガムなど)。
顧客関係性全体のなかでは、購買後体験は最も軽視されており、十分に活用されていないが、実は持続性があり収益性の高い長期的価値をもたらす可能性が高い。プロフェットの「2002年ベストプラクティス調査」によると、購買後体験によって顧客ロイヤルティを高めるのに最も効果的なブランド構築ツールが3つある。製品・サービスの品質、使用体験、評判のよさである。ブランドの効果に対する判断基準は、1つしかない。その製品・サービスが、ブランドの約束を完全に実現しているか、そして時には期待以上の満足感をもたらすか、である。
つまり、期待通りのことを、期待される期間内に果たさなければならない。それには請求からアカウントサービスまで、購買後段階のあらゆるコミュニケーションも含まれる。購買後体験にも一定レベルの努力を注ぐべきなのだが、関連部署のみならず全社的に考えて取り組んでいる企業は少ない。ただ、プロフェットの調査対象となった企業は、ユーティリティ(電気、ガス、水道などの公益事業)、ホテル、無線通信、工業コングロマリットに至るまで業種を問わず、購買後体験を改善することの重要性を認めており、予算から一部の資金(ほとんどは購買前マーケティング・コミュニケーション活動に費やされている)を転用し、重要な購買後コンタクトポイントに振り向ける、という構想を語っていた。電気・ガス供給会社のTXUの最高コミュニケーション責任者(CCO)スーザン・アテリッジが語るように、「使用体験そのものと顧客サービスが駄目であれば、何をやっても無駄」だからである。
顧客の期待に安定して応えられれば、財布のシェアを獲得する(より多く、より頻繁に買わせる)ことができ、また顧客が購買前サイクルを一からやり直さずに済むよう仕向けるのも格段に容易となる。そのうえ、優れた購買後体験は一般に長期的なロイヤルティをもたらす。そうなれば、顧客が進んで製品・サービスを周囲の人に推奨し、保証してくれるようになる。
少なくとも欧米諸国においては、悪い体験について語る回数は、よかった場合より8倍も多いという。
ある大手健康保険会社の担当者は次のように語る。
「当社は人々の健康を支え、寿命を伸ばすことに携わっている。一方コカ・コーラは、水と砂糖でできた製品を売っているが、社員はブランドや自社に対する語りに燃えている。当社は人々の医療に貢献しているにもかかわらず、社員に誇りがないのが不思議でならない」
これは多くの企業が直面するジレンマである。社員の多くは、自社や自社ブランド、顧客に対し、誇りや自分のものという意識、あるいは個人的な結びつきを感じていない。活力も喜びも情熱もなく、共感することも目的意識や信念を抱くこともない。
一方、コカ・コーラは、社員に活力と喜びをもたらすことに長年取り組んできた。炭酸飲料そのものに、魔法の力があるわけではない。ブランドに対する適切なレベルのリーダーシップとフォーカス、そしてコミットメントを一貫して持すれば、社員に目的意識や喜びをもたらすことは可能なのだ。
本書のまとめ
本書では、ブランドの運用を通して成功を収める方法に着目してきた。第2章では、ブランド戦略と事業戦略の一体化がいかに重要かを説明した。2つの戦略をうまく統合できれば、ブランド構築が一貫性を持ち、真摯に受け取められ、企業が長期的な目標を達成するための強力な手段と見なされる可能性が高まる。
第3章では、ほとんどの企業がブランドに関連するコンタクトポイントの認識や管理を怠っていることを取り上げ、あらゆる顧客接点をコントロールすることの重要性を取り上げた。複数のコンタクトポイント間に不一致があると、社内外でブランドの大きな混乱を招く。
第4~6章では、大部分のコンタクトポイントは購買前体験、購買体験、購買後体験の3つに分類できることを示した。つまり、組織内のすべての部門がプランドの管理と維持、ブランドの約束の実現に責任を負っているという結論を見出すことができた。
第7章では、コンタクトポイントと戦略の両方に関するブランド測定基準について最新の研究を概観した。効果的で実行可能な測定基準があれば、過去のブランド構築活動や競合の活動と比較できることを学んだ。
第8章では、ブランドの約束を実現するには、全部門の本格的な協力体制が必要であり、全社員に自らの役割を理解させるだけでなく、実際にブランドを内面化させ、体現させる方法を見出すことが不可欠だと述べた。
これらのコンセプト、組織構造のいずれかを根づかせるには、ブランド・レンズを適用して、企業の方針や価値観、企業文化を変えなければならない。
最後に、ブランド主導型の企業構築で最も重要な要素は、社員にほかならない。社員1人1人の信念、指導力、オーナーシップ、参加意識がなければ、いっそ国債にでも投資したほうがまだましである。しかし、社員がブランドに心から納得し、積極的に関与し、加えてトップダウンの支持があれば、ブランド構築は企業無限大の成功をもたらす。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
マルチチャネル化が進む昨今において、コンタクトポイントにおける戦略を体系的に知っておきたくて読んだ。
本書のレベルまで全体を網羅的にまた体系的にまとめた本はないだろうなぁと思いつつも、一つ一つの解説が深堀されていないため、腹に落ちない。内容も特に目新しさはなかった。 -
コールセンター業務のコンサルティングを提案するってことで、購入して見た。CRMとか顧客志向とかいうけど、この本は顧客にとって信頼をするに足るもの=ブランドっていう感じの話を論じているので、ただ単に顧客に迎合することとは違う話の展開があり、興味深かった。少し広義に捕らえるなら、Web・モバイルでも十分応用の利く考え方ですな。
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オペレーションに具体的に落とし込むには一工夫が必要。常に意識をすることで、徐々に浸透・改善できると思う。
もっとも重要なのは、ブランドの具体的なイメージが社内で共有化されていること。これが実は一番難しい。