ソロス

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  • ダイヤモンド社 (2004年6月4日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (492ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478930496

作品紹介

謎に包まれた世界一の投機家のすべて!金融市場で得た巨万の富を惜しげもなく慈善活動に投ずる「現代の怪物」の真実。

ソロスの感想・レビュー・書評

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  • ・ジョージはさらに幅広い経済に対する洞察力も身につけていった。インフレも、権力者が意図的につくり出しているものだということも気づくようになった。「彼らはあらゆる貯蓄を帳消しにして、湯水のごとく紙切れを発行して、価値ある資産をすべて手に入れようとしていた」。その後、政府は自分たちの欲しいものをすべて手中に収めて国有化すると、新通貨のふぉりんとを導入して、インフレを鎮静化させた。しかもフォリントの流通を極端に抑え、利率を急騰させて、私企業が何とか死守してきた資産をことごとく吐き出させた。

    ・―ニーチェは狂った。ウィトゲンシュタインはその淵をさまよった。カフカはただの一作品も完成させずに死んだ。私はこうした轍は踏みたくないし、そうならない道を誰かに教えてほしいと思う。彼らは偉大な人物たちだ。その創造物は、たとえ不完全な形のものであっても、彼らより劣る者たちの磨き抜かれた作品よりも、われわれの分化に大きな貢献をなしている。だが、彼らより劣る者たちも、ある程度のところで探究をとどめた形で世に知られていれば、偉大な人物ともられたのではなかろうか。彼らの作品が未完成であれば、もっと幸福だったのではなかろうか?―
    ある朝、ソロスは前日に書き上げた部分を読み返したところ、まったく意味が理解できなかった。そこでもうこのあたりで切り上げようと決めたのだった。

    (ソロスは哲学を修めたかったそうだけれど、才能は無かったというか、考えるのが苦手だったんじゃないか。師のポパーの“可謬性”―現実において全く正しいと証明することが出来るものは無くそれらしいと思われる傍証を積むことで真実に近づけることしかできない、という概念―を掘り下げて普遍化したかったらしい。可謬性にも可謬性があるだろうから、、そりゃあ難しいよなあ。)

    ・さらにドラッケンミラーは、ソロスがこの世界で勝ち抜くために有利だった数々の特質を挙げた。緊張状態での冷静さ、個々の問題を峻別して考えられる能力、批判的分析的姿勢、知性、洞察力などだ。けれども繰り返し彼が指摘したのは、ソロスの「引き金を引く」際の鮮やかさだった。ドラッケンミラーによれば、これこそソロスが余人と決定的に異なる部分だという。ソロス自身も、一緒に仕事を勧めたロジャーズと自分との違いを語るときに、この言い回しを使っている。ドラッケンミラーは語る。「引き金を引くというのは、分析とは違う。トレンドを予測することでもない。一種の勇気なんだ。ちょっと説明するのが難しいんだが、卑俗な言い方をすれば、“きんたま”があるかどうかだね。いまだというときに瞬時の遅れもなく一気に勝負に出る。個人的な意見だが、これは学ぼうとして学べるものじゃない。完全に直感的なもので、これは芸術だね、科学とはまったく関係がない」

    (P211から。P385まで読み進めた時点で、これがソロスの性質を一番よくとらえている箇所だと思い、探し出しました。外交政策を持っている唯一の個人、と表現されて財団で世界をオープンにする活動をしている。そのくだりを終盤まで読んだけれど、思索でなくて行動の人だ。)

    ・ジョージ・ソロスの名を耳にするプロのマネー・マネージャーの連中の反応は、ビヨン・ボルグを評したイリー・ナスターゼの言葉を想起させるものがある―「同じテニスでも、あいつは何か別のプレーをしているんだ」。

    (これも思索というより直観のなせる業。ただ、ナポレオンも言ったように困難な状況での直感は日々の思索と瞑想から生じるのだから。何というか、違うことを考えているんだろうな。)

    ・当時はまだ広く認識されているわけではなかったが、やがて第二次世界大戦に生じた二極構造を根底から崩す時代が形を成そうとしていた。1970年代の幕が下りたころは、いずれ共産主義体制の脅威と冷戦が終わるという見方は真剣な思索の対象ではなくなり、切望と妄想の間のどこかに追いやられていた。だが、ほんの一握りの者たちは、重大な地政学的な変化が起こるのではないかというかすかな希望を垣間見ていた。その変化の引き金になりそうに思えたのは、ある一文だった。1975年8月1日、長い交渉の末、ついに東西ヨーロッパの安全保障と相互協力に関して結ばれた合意、後に「ヘルシンキ最終合意」と呼ばれるものの一節だ。
    これは、人権尊重が国際関係を決定づける主要原則であることを国家同士が理解した、初めての出来事だった。

    (歴史のターニングポイントを自分に染み込ませておく事は、今の時代の流れを正しく認識する助けになる。あのベルリンの壁崩壊に至る変化のうねりの起点がこんな場所にあったなんて。これが伝記のよいところ。)

    ・投機というものは、きわめて有害な結果をもたらしかねない。とりわけ通貨市場ではそうだ。だが、これを防ぐ手段、たとえば為替管理などは、さらに有害な場合が多い。固定相場制も欠陥がある。実態からかけ離れて、結局は崩壊するのだ。結局、どの為替制度や通貨制度にしても欠陥はあって、その制度が長く続けば続くほど、欠陥は大きくなる。これを解決する唯一の方法は、為替制度を一切なくし、アメリカのように、ヨーロッパでも統一通貨をもつことだ。そうなると、私のような投機家は商売あがったりになるが、私は喜んでその犠牲になるね。

    ・ソロスはあのポンド暴落をもう二年早く仕掛けるべきだった。もしそうなっていれば、ゴルバチョフもエリツィンも、ブッシュもサッチャーも、その他の世界の指導者も、彼の言い分にもっと注意深く耳を傾けていただろう。西側の投資家も、先を争って彼の助言に従っていただろう。さらに言えば、世界の人口の1/6の運命は、たった一人の男の努力次第で大きく変わっていたかもしれない。だが、1990年当時、ソロスはまだ、1992年の秋に変身した男ではなかったのだ。
    (ソロスは、イングランド銀行を打ちのめした男という称号で1992年の投資行動が新聞に取り上げられて世界的な影響力を持つようになった。)

    ・1999年、マイクロソフト率いるビル・ゲイツが、170億ドルというとてつもない金額を当初の寄付額として、ゲイツ自身の財団を立ち上げた。このとき、フォーブス誌のアメリカ人長者番付で常にトップの座を続けていたこの億万長者から、ソロスは財団についての助言を求められた。ソロスはこう答えた。
    「ある意味で、金を使うことは、金を儲けることより難しい。ビジネスでは、成功の基準は一つしかない。―純益だ。
    一方、慈善事業では、収支といっても支出欄しかない。だが、その恩恵は、さまざまな社会的効果として広がる。だから、慈善事業をするなら、自分自身が何に社会的価値を置くかを決めなければならない。その効果を評価するためにね」

    ・語り終えると、ソロスは、自分は行動という面では大きな満足が得られた人生だったと認めたうえで、語を継いだ。
    「だが知ってのとおり―何といえばいいか―真の私は、思索的な人間なんだよ。これはちょっとやそっとでは変わらない。人間の環境や意識、死といったものに関する問題だからね。それが私の一番の関心事なんだ。でも考えてばかりいると、自分の周辺が真空になってしまう。だから行動することで真空を打ち破ってきた。真空を埋めてきた。思索では自分が満たすことのできない欠落を埋めるために、私は行動してきたんだよ」

    (このとっても詩的なフレーズで終章が閉じる。生い立ちとか女性遍歴とか親子関係のコンプレックスとか、実らなかった哲学への長いこだわりとか、読んでいる間は冗長に感じる。でも、この最後の一文にソロスと似たような感興を感じるには必要なことだったんだろう。いや、まだご存命ですけど。)

  • 本書は時系列に沿って3部で構成される。
    それぞれ、ソロスの成長期、投機家の時期、慈善家の時期、である。

    わたし自身の興味のせいか、第2部の投機家の時期、本でいう「大富豪への道」が一番楽しく読み進めることができた。

    第3部で登場した、アリエ・ナイヤー、フレッド・キューニーについてはもっと詳しく知りたいと思えるような人物だった。

  • 過酷な環境で生きてきた人間にしかわからない嗅覚のようなものが存在するかもしれない。投資家としてソロスを認識していたが、慈善家の側面があるとは知らなかった。しかも、おざなりな慈善活動ではなく、政府の首脳陣までも巻き込むプロジェクトを推進しているのは驚いた。オープンソサイエティの理念を理解するためには、恩師であるポパーの著書を読む必要がある。

    優秀なユダヤ人についてもっと調べてみたい。

  • 彼の資産はおよそ1兆円以上あるといわれてますが、いったいどのようにして天文学的な資産を増やしていったのか、その生涯を「幼年期~投機化時代~慈善活動時代」の3構成に分けて詳しく解き明かしてます。

    2007年のサムプライム危機では、ソロス・ファンド・マネージメントの損失は600億円だったらしいですが、それ以前の2006年には会社からのボーナスとして、約8億4000万ドル(日本円にして約949億円)受け取っていたらしく、ここ数年の金融危機でも最も損害の少ない投資家の一人といわれています。

    読み進めていくうちに神秘のベールに包まれていたソロスの実像が鮮明になっていきます。

    多くの金持ちは、財産が増えるにつれ、いろいろな贅沢ごとに手を伸ばすものですが、ソロスはそうしたものにはさっぱり興味が湧かなかったらしいですね。

    カール・ポパーに憧れて哲学者を志していたことがあり、生活は質素そのもの。

    そのあたりの金銭的なバランス感覚も成功した一因かもしれませんが、さらに驚くべきことにソロスは自分の儲けたお金を軽蔑していたということ。

    後世に残るような哲学理論を打ち立てたい夢が捨てきれず、そうした密かな志を抱いていた彼の基準からみれば、金融界の成功など何ほどのものでもなかったということがわかります。

    大金持ちになったはいいが、精神分析医へ長く通院したりして、内面はかなり病んでいたということを初めて知りました。

    長期投資を基本スタイルとするバフェットと違って、それは投機というべきギャンブルにちかいものでしたが、節目節目で大勝負ができたのも、そういった心理的背景と無関係ではなかったように思います。

    有名な英ポンド売りにしても、自身のファンドの全総額を上回る何百億という金額をリスクにさらして大勝ちしています。

    この異常なまでの胆力、運を引き寄せる力がソロスの凄さだと思いました。

    晩年、彼は慈善活動にも金融事業と同じようなエネルギーを注ぎ込むようになります。

    本人は慈善活動など片手間仕事だと言い張り、ただの節税対策だとうそぶいてますが、その言葉とは裏腹に「死ぬまでに自分の財産すべてを慈善に使い果たそうと思っているのではないか」といわれるほど、多大な金額(500億ドル)を財団に注ぎ込んでいます。

    そんなところも国際的に彼の名声を高めることになっているんでしょう。

  • クォンタム・ファンドを設立した伝説の投機家、ジョージ・ソロスの半生を綴った一冊。ここぞと判断したところで、「引き金をひける」かどうかが、ソロスと他の人を分ける決定的な要因になったという一文が非常に心に残った。自分の中に刻み付けておこうと思いました。

  • 援助王”ソロス”がどのように投資家として成功をおさめてきたかを伝記的にまとめてあります。ビジネスのノウハウを得たいと思っている人には若干物足りないかも・・
    でも、必ず成功へのヒントが書いてある(ハズ)

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