- Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
- / ISBN・EAN: 9784478941935
感想・レビュー・書評
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この本が出た当時に読んで、すごく面白いな、これは浅田次郎のなかでも最も面白いかも、と思った笑。
蒼穹の昴とか、戦争ものとか、明治ものとか、短編集とか、浅田の本をいろいろ読んでなお、最も面白かったのはエッセイ(勇気凛々ルリの色)と、初期作(プリズンホテル)と本作(バクチ旅行エッセイ)だった。
世界各地のカジノを周り、そのあたりだけの観光をすませ、あとはひたすら税率の話。ケチだがバクチが大好き。そんな作家の横顔が真剣で面白い。
カジノを通じて、お国柄というか国民性、その歴史が浮かび上がり、浅田の考えもそこからクッキリと掘り出される。
私自身はまったくカジノには興味がなく、競馬もあまり知らないが、それでいてこの本や登場する人々が面白くて次々とページをめくる手が止まらないのだから不思議だ。
2003年の刊行なので、今から見ればひと昔前。
今の浅田のエッセイは知らないけど、ぜひまたこんな路線で持論を語ってほしい。
2巻も出ていることを初めて知ったので、また探してみよう。
(図書館で借りた本だったが、この本にはちょくちょく鉛筆でチェックがひかれていた。浅田のバクチ論だとか、バクチの鉄則のような箇所にチェックがついているが、これを書いた人はどうなっただろうか…笑。)
今見ると写真もすばらしい。
さすが、優駿のチーフカメラマン。作中でも競馬仲間としてのカメラマンとの会話が面白い。
メガネヒゲの浅田と美しい世界の風景のバランスがお見事。
江戸っ子の浅田がヨーロッパの花火をくさすシーンで爆笑。
突然のフランクな文体がこの人の本の面白さ。
かつて読んで印象に残っていた部分とぶじに再会。
以下に引用する。
p140 (カジノは国家なり BADEN BEI WIEN より)
このように考えると、カジノというものは国家の雛形だという気もする。
日本にはカジノがなく、パチンコという固有のゲームがその代行をしている。世界水準のギャンブルに比べればローリスク、ローリターンで、誰でも気軽に参加できる街角のパチンコ屋は、このうえなく、日本的である。資本主義国家でありながら、その実はきわめて社会主義的な日本の正体を、パチンコは表現しているのではあるまいか。
いま、同時並行でパラパラ読みをしていた、カルヴィーノ「砂のコレクション」にも、日本滞在記録の章で、パチンコ屋とそれに興じる人々の様子をじっと観察するくだりがあって、興味深い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
はじめ、タイトルの意味が分かりませんでしたが、「カジノのことだよ」と教えられて、少しがっかり。特にカジノに興味がないからです。
でも本の装丁は上品だし、まあ読んでみようかなと、開いてみました。
著者は浅田次郎。以前『地下鉄に乗って』を読んだことがありますが、特別好きな作家というわけではありませんでした。
→『地下鉄に乗って』レビュー
http://booklog.jp/users/lilyca/archives/1/4062645971
読み始めると、前回の作品とは比べ物にならない熱を帯びた文章に驚きます。
今回は文学ではなくエッセイなので、より著者を身近に考えられますが、それにしても浅田氏がいかにカジノを愛し、夢中であるかが、よくわかります。
はじめは、モナコの伯爵夫人の話から。
ホテルのレストランのテーブルで相席となった彼女は、亡き夫がグラン・カジノで大豪遊したために、そのお礼にと、終身オテル・ド・パリの部屋で暮らせて、食事代がただだといいます。
カジノにまつわる、夢のような話が語られて、つかみはオッケー。読みだす前の億劫さはどこへやら、先が気になってたまりません。
小説家であれば旅の紀行記となるところですが、徹底してカジノ行脚のみ。名所観光も文化鑑賞もなしに、とにかくひたすらカジノからカジノへと渡り歩いているその様子は、まさにカジノ巡礼者です。
彼は「バクチ以外の観光は不純なものとして一切これを排除する」という誓いを建てたのだとか。つまりは賭博に関してストイックなほどに真面目なんですね。
なんだかよくわからなくなってきます。
これは『週刊ダイアモンド』に掲載された連続エッセイ。「日本人オヤジたちよ、もっと遊んで幸せになろう」と励ます目的だといいながら、自分が心から楽しんでいる様子が伝わってきます。
たいそう負けて、ボロボロになる時もありますが、ものすごく当たった時には「日本から収税されるおそれがあるから」と、具体的な金額は明かしません。慣れています。手練です。
博打好きは血筋で、祖父も父親も競馬好きだったとのこと。
(そういえば、上賀茂神社の神馬は彼の持ち馬だったなあ)と思い出しました。
この話を聞いた時には「神馬が競馬の馬だったとは」「馬主は作家の浅田次郎氏だとは」と、かなり驚いたものでした。
高校の時にこっそりでかけた競輪場で、親子三代が鉢合わせをしたというエピソードには笑いました。
"私の小説の愛読者、及び出版各社の文芸編集者たちは、「世界カジノ紀行」なるこの企画にさぞかしブーイングを送っているであろうが、天国の祖父と父が喝采していることだけは確かである。"
取材は半分お忍びだったようですが、旅先で原稿を滞納している小説の担当者につかまったエピソードもまたおもしろいものでした。
ハシゴ酒ならぬハシゴカジノを繰り返す彼。
とにかくほんとうに嬉しいという気持ちが文章からにじみ出ており、活き活きしています。
「私は時々小説を書くギャンブラーさ」と言い、「私は、誰になんといわれようが半世紀の放蕩人生を顧みて、恥ずるところはない」と豪語する彼。
ここまで徹底した人はなかなかいないでしょう。頼もしさを感じます。
もはやカジノがいいとか悪いとかは関係なくなり、人が情熱を持って巡る旅のおもしろさをふんだんに味わえました。
この一冊のみかと思いきや、『週刊ダイアモンド』で、まだアフリカのカジノの旅を継続中だとのこと。(現在はもう終了していると思いますが)
こちらも読んでみたくなりました。 -
自分には関心のない話。訪問先だけ自分の感想と重ねられたけれど。
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タイムイズライフ
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浅田次郎のヨーロッパカジノ漫遊記(笑)
本人は「たまに小説を書くギャンブラー」と仰っていますが、やっぱり「ギャンブルもやる小説家」なんじゃないですかね?
文章が上手いです。モナコの老貴婦人との件などは、創作なのか、本当なのか?
とは言え、著者が無類のギャンブル好きであることはよくわかります。って言うか、立派なハイローラーですよね? -
2013/06/16 【古】 105円
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カジノ旅行記
勝った負けたはあまりなく、ヨーロッパのカジノを紹介しながら
文化の違い、人の生き方の違いについて
作者の思いが綴られる。
日本人は遊ばなすぎる。
遊び方を知らない。
遊び方がへたくそなのでしょうか?
つまり働き方もへたなのかもしれません。
一度の人生なので後悔のない時間を使いたいです。
「考えればわかる!真理はひとつだ!」 -
浅田次郎の生き方=遊び方の一端がおおっぴらに披露されちゃっている。
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浅田次郎氏による紀行エッセイ。
しかも世界のカジノを巡ってやるぜ!
というなんとも男気溢れる内容。
非日常と非常識の世界。
その中で問う。
世界最高水準の労働時間を誇る日本人オヤジが、つかのま職場を離れ、
野に出て遊ぶことは罪悪か…と。
僕はダンジネス否、と叫びたい。
まあただですら遊びほうけてはいるが、
やはり、自分の生活からドライブやツーリングを奪ったら何も残らない。
『幸福な人生とは、つまるところ死の床に臨んで悔悟せぬ人生のことであろう』 -
初版本