なぜ、日本は50年間も旅客機をつくれなかったのか (だいわ文庫) (だいわ文庫 H 35-2)

著者 :
  • 大和書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784479301653

作品紹介・あらすじ

海外メーカーの下請けに甘んじている日本の航空機産業。かつては零戦をはじめ名機をつくり上げ、現在も自動車などの重化学工業で世界のトップを走る日本が、なぜ半世紀近くも国産旅客機をつくれなかったのか?そこには幾多の問題が立ちはだかっていた。果たして国産旅客機は誕生するのか。加筆・新編集文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 元のハードカバーが2002年、この文庫版が2008年。今までの10年で状況はどれだけ変わったのか?最後にちらっと出てきたMRJはまだ運行していないし、ホンダジェットは日本製とは言いにくいし。

  • 日本の航空機開発の実情を軍民の両サイドから非常に詳細に調べ上げた一冊。
    日本の歴史と立場、そしてこの業界の難しさを痛感すると同時に、政府や官僚に対する怒りとやるせなさがこみ上げてくる。いずれにせよ、頑張れニッポン!

  • 2008年以来の再読。
    もっと残して置けることがあったはずとブクログに記す。

    ***

    航空業界は昔も今もリスクをいとわぬ企業精神が発揮されてこそ。この世界を勝ち抜いて行くための必須条件。

    巨大かつ最先端の技術の結晶=チャレンジング精神を必要とする。尊属・安定を求められる日本の企業風土とってはなじみにくい。

    ボーイング B747が売れず、大量リストラで切り抜ける
    ロッキード トライスターの売れ行きが芳しくなく、1971年に事実上の倒産
    ロールス 倒産経験あり。RB211でCFRPのファンが最後に強度不足と判明。大赤字。

    先端技術の結晶となる旅客機は、サプライチェーンの裾野も広く、その他領域への技術の波及効果も大きい。

    親方日の丸として防衛軍需に大きく依存してきたため、情報がどれも機密扱いとされ外に出る機械がない。閉鎖的な環境・文化。

    YS11以来、国産旅客機を手がけられなかった4つの問題。

    まず背景として、
    依存してきた防衛需要が頭打ち。さらに先細りとなったから。
    東西冷戦構造の崩壊、そして、軍需の必要性低減。
    少ないパイのために、ドラスティックな合併。USは三社集約、EUはEADSへ。エアバスはその子会社。が、日本は蚊帳の外…
    YS11での360億円の赤字。技術的には成功したが、経営的には失敗した…。その後、踏み切れず。
    他国同様、国の総力を挙げて望まないとならない。

    1.かつては航空大国ニッポンだった。年間2万9千機も生産し、100万人も従事していたことがあるが、敗戦し、GHQに航空解体された。7年間。この間に、プロペラからジェット化。1952年に再開も…
    2.開発費が巨額化。投資を回収しようとすると、国外需要も取り込まないとならないが、航空機は実績と信用が重視される世界。新規参入のハードルが高い。
    3.航空では8~9割が防衛関連。親方日の丸主義が浸透し、リスクがある中、民間に着手する意欲なし。欧米と違い、総合重工業が兼業しているので、リスク下げたい。
    4.一貫性のない政策。その時々で判断が右往左往し、場当たり的。

    GHQが航空解体するも、朝鮮戦争で急転。日本を反共の砦として、航空再開。F86やT33のライセンス生産開始。昭和25年。

    中島飛行機は文字通り専用工業であったため、航空解体で人員を散逸する。残ったメンバーで鍋・釜などからはじめ、タイプライターなど次々と着手。成功するものの、航空の性能第一主義からコストの問題が多かった。12社に分断されたうちの五社を再結集し、富士重となる。三菱は他業種に配置転換。

    失われた10年のうちに、品質管理・量産手法・スペックなど体系化されたシステムが大きな違い。
    日本の5社からなる合弁・NJE(日本ジェットエンジン株式会社)設立も、通産省の怠惰から自主開発断念。責任と巨額の資金のリスクを誰も取れない失態。

  • 戦後日本の航空産業について詳細に綴られた本。
    著者自身が実際に航空関係のエンジニアとして従事していたため,技術者としての視点が上手く描かれていたと思う。航空産業についての文献は近年ほとんど出ていないため,航空産業や防衛産業に興味のある方には必須の本であると思う。

  • 前間さんの本はどれを読んでもはずれが少ないと思う。

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著者プロフィール

前間 孝則(まえま・たかのり)
ノンフィクション作家。1946年生まれ。石川島播磨重工の航空宇宙事業本部技術開発事業部でジェットエンジンの設計に20余年従事。退職後、日本の近現代の産業・技術・文化史の執筆に取り組む。主な著書に『技術者たちの敗戦』『悲劇の発動機「誉」』『戦艦大和誕生』『日本のピアノ100年』(岩野裕一との共著)『満州航空の全貌』(いずれも草思社)、『YS-11』『マン・マシンの昭和伝説』(いずれも講談社)、『弾丸列車』(実業之日本社)、『新幹線を航空機に変えた男たち』『日本の名機をつくったサムライたち』(いずれもさくら舎)、『飛翔への挑戦』『ホンダジェット』(いずれも新潮社)など。

「2020年 『文庫 富嶽 下 幻の超大型米本土爆撃機』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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