菜の花食堂のささやかな事件簿 金柑はひそやかに香る (だいわ文庫)

著者 :
  • 大和書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784479307105

感想・レビュー・書評

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  • 野菜を中心にした〈菜の花食堂〉を営む傍ら定休日には料理教室も開いている下河辺靖子先生がタイトル通り「ささやかな事件」の謎解きをする第三作。

    シリーズとしての変化は元生徒の香奈が押し掛け弟子として料理スタッフになり、食堂では瓶詰工房が完成して新たな目玉商品が出来ている。
    主人公の優希は瓶詰商品の売り込みや新たな営業スタイルに向けての準備にこれまでにない充実感を感じて新たな決意をする。

    事件は香奈の彼氏が料理を食べてくれない問題再び。
    ピクルスのお酢だけを欲しがる女の子。
    野菜の無人販売所で売り上げが増えている。
    優希の隣人の謎の行動と臭い。

    「ささやかな事件」だけに解決もあっさり。ちょっと強引さが感じなくもないが靖子先生の着眼点とそこから真相にたどり着く鋭さはさすが。
    個人的には香奈の話は興味深かった。現代は食育と評して様々な物を食べさせる方向にあるが、それが良いことなのか何なのか、よく分からなくなった。早い段階で特性を見極めるという意味では良いのだろうが。

    最終話では靖子先生の過去に触れる話が再び出てくる。店名に「菜の花」と付けているのに菜の花を食材として使わないのは何故か。
    店内に菜の花の絵が飾られているのに目立つ場所ではなく隅にあるのは何故か。
    靖子先生は語らないので触れられたくないのだろうが、優希は調べ始める。

    優希のお節介かと思われたこの話だが、優希の新たな才能の発見とサプライズパーティーへ繋がる。それにしても靖子先生、周囲の人々には穏やかで優しいが自身のこととなると頑固。そして家族もまた…。だがその頑固さがあっての食堂であり開いた才能なのだろう。

    二十五周年を迎えた〈菜の花食堂〉がどう変わるのか、優希や香奈がどう成長するのかも楽しみ。

  • 日常の謎のお仕事ミステリーですね。
    『菜の花食堂の事件簿』の三冊目です。
    下河辺靖子先生と、私、館林優希助手、そして和泉香奈弟子の三人で織り成す『菜の花食堂』と『料理教室』の物語。
    五話の短篇連作です。
    『菜の花食堂』の商品開発と販売が優希と香奈の努力で起動に乗り出す。
    優希は派遣会社の仕事を打ち切って、『菜の花食堂』と他のレストランのバイトで生活を出来るようにまでになる。
    そんな時、ある事件をきっかけに、川島悟朗(出版社勤務)の、里から送って来た野菜を優希が料理を作り置きするというアルバイトをする事に。独身で好青年の川島悟朗の部屋に出入りするのはためらわれるが~。
    物語は、恋物語にも発展するかな?
    一方、『菜の花食堂』が創立二十五周年になることが判明。
    靖子先生と別れたフランスの旦那さんと子供たちの事も、次第に明らかに。靖子先生の来歴も次第に明らかに。
    物語は、登場人物がますます増えて地域柄味の広がっていく。面白さも膨らんでいきますね。
    これは引き続き読まずにいられません。

  • 菜の花食堂シリーズ第3弾。

    今回も野菜を中心としたメニューが次々と出てくるのだが、メインから汁物やサラダやちょっとしたデザートなどをいつも5〜6品あるのにサクッと作るこの料理教室には通いたいと思う。

    そして、やはり靖子先生の謎解きは健在。

    お弁当のメニューだけで、香辛料が苦手だということをつきとめたり、野菜の無人販売所の売上げ金が増えていることを解明したり、優希のアパートの隣人宅の異臭の原因をつかむなど。

    大きなことは、店内で販売するために瓶詰めを作る工房を完成させ、ピクルスだけでなく、ジャムも作りマルシェでも販売してから販路拡張するなど優希の活躍ぶりにちょっと驚いたなぁと。

    まったく料理をしなかったと記憶していた優希だが、無人販売の謎解きで縁ができたアパートの独身者川島くんの実家野菜で料理を作るバイトもするというのもかなりの成長。

    そして、徐々に明らかになる靖子先生のこと。
    娘さんの他に陶芸家の息子さんもいて、実家が京都の老舗料亭であることなど。
    あまり自分のことは言わないが、家族のことではいろいろとあったのだろう。
    だからこそかも知れないが、まるで我が子のように優希のことを心配しながらも信頼しているように思う。

  • 大和書房HP掲載の2017年10,11月小松菜の困惑、11,12月カリフラワーの決意、2018年01月のらぼう菜は試みる、に加筆修正したものと、書き下ろし金柑はひそやかに香る、菜の花は語る、の5つの連作短編を2018年6月大和文庫から刊行。シリーズ3作目。靖子先生の推理は相変わらずするどい。優香さんは、ついに仕事辞めて菜の花食堂に道を定めたのは安心なことですが、収入の道を別に探すというのは大変で、どうなることやら。靖子先生の秘密も明らかになってきて、次が楽しみです。

  • 昨年に菜の花食堂シリーズの2作を読んで、ランチ営業だけの食堂を経営しながら料理教室を開いて、そして日常の謎を解く、一人暮らしの上品な女性主人公の話にほっこりしたのを思い出し、今月第3弾が出たのを見つけて早速買って一気に読み終えた。
    今回もほっこりする料理の話が展開しつつ、ミスマープル並みに日常の謎を解明するのだが、今回は家族に関する寂しい過去が暖かい感動の場面に変わる結末に幸せな気持ちになる。
    ハードな社会派ミステリー小説も好きだが、心温まる生活に密着した日常の謎解き小説も楽しい。

  • シリーズ第三弾。

    瓶詰を作るための工房も完成し、少しづつ拡大していく、菜の花食堂。
    商売っ気のない靖子先生に代わって、ビジネスチャンスを見つける事に積極的な優希。靖子先生の押しかけ弟子となった香奈さんとも役割分担がいい感じにできていますね。
    そんな優希ですが、これまで派遣社員と二足の草鞋で料理教室の助手をしてきましたが、派遣を辞めて、香奈さんと共に食堂の正スタッフになる事を決意します。
    実家から届く野菜を持て余していた川島さんに料理を作るというバイトを始めたり、“料理を仕事に”という優希のやる気にエールを送りたいですね。
    第五話「菜の花は語る」では、菜の花食堂の名前の由来が明らかになり、ラストの食堂二十五周年サプライズパーティーの下りは、皆さんの靖子先生への温かな思いが伝わってきてほっこりしました。

  • 菜の花食堂シリーズ第三弾。
    美味しいもののお話であると同時に、頑張る女子のお仕事小説らしさも出てきたところが碧野さんらしい。
    謎に包まれていた下河辺靖子(しもこうべ やすこ)先生の私生活…というか、来し方が少しずつ明かされて行く加減もなんとも心憎い。
    大団円な感じもするけれど、これからが優希の本気のステージでもあるのと思うので、続いてほしいです!

    『小松菜の困惑』
    好き嫌いの多い息子に安くて栄養のある小松菜をたくさん食べさせたいと生徒さんにリクエストされ、料理教室で教えるほどでもない小松菜をテーマに取り上げる。
    専業で菜の花食堂を手伝うようになった和泉香奈(いずみ かな)。好き嫌いは無いはずの彼が、遠出の時のお弁当は作らなくていいと言ってきた。
    自分の料理のどこがいけないのかとショック。

    『カリフラワーの決意』
    新しい工房も完成し、いよいよ瓶詰ピクルスの製造販売を始める。
    まずは毎月行われる地元マルシェに出品してみることになった。
    優希は将来に向けてある決意をする。

    『のらぼう菜は試みる』
    菜の花食堂の野菜の主な仕入れ先は、地元農家の保田俊之(やすだ としゆき)さん。
    良い野菜を丁寧に作る傍ら、不動産物件もいくつも持っている。
    店子さんの面倒をよく見る保田さんは、まるで江戸時代の大家さんのようだ。
    優希と香奈はイベントを企画する。

    『金柑はひそやかに香る』
    優希のアパートの隣人が怪しい!
    異臭、物音…引っ越ししたいけど…

    『菜の花は語る』
    優希の新しい旅立ちと、靖子先生の節目。

  • シリーズ第3弾
    今回も優しい料理と日常に潜む謎の解明。やっと工房ができ 菜の花食堂のスタッフも揃った。人が増え笑顔が増え優しさが増え出来ることが増えた。
    頑固な心がほぐれた後にはやわらかなあたたかさがじんわり広がった。
    ピクルスにジャムにレバーペースト。
    読んでるだけでわくわくする。
    すでに続編が読みたくてたまらない。

  • シリーズ第3弾。
    今回も楽しく読みました♪

    優希は会社を辞めて菜の花食堂に本腰をいれることに。

    そして、恋がうまれるのか?

    と、期待したけど
    特に何もなく読み終わってしまった。

    次に期待かな?

  • いよいよ優希が仕事を辞めて食堂の仕事に専念。加えてアルバイトで家政婦の〇〇さんみたいな仕事。すごいな。実家からの野菜がちゃんと料理してもらえるっていいな。菜の花食堂の由来も明らかに!

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著者プロフィール

愛知県生まれ。東京学芸大学教育学部卒業。フリーライター、出版社勤務を経て、2006年『辞めない理由』で作家デビュー。大人気シリーズ作品「書店ガール」は2014年度の静岡書店大賞「映像化したい文庫部門」を受賞し、翌年「戦う!書店ガール」としてテレビドラマ化され、2016年度吉川英治文庫賞にもノミネートされた。他の著作に「銀盤のトレース」シリーズ、「菜の花食堂のささやかな事件簿」シリーズ、『スケートボーイズ』『1939年のアロハシャツ』『書店員と二つの罪』『駒子さんは出世なんてしたくなかった』『跳べ、栄光のクワド』などがある。

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