言葉の園のお菓子番 見えない花 (だいわ文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784479308577

感想・レビュー・書評

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  • この作者さん、「三日月堂」「月光荘」「紙屋ふじさき」「ものだま探偵団」と読んできて、また別のシリーズに行ってみる。

    今回の題材は「連句」。
    勤めていた書店の閉店で職を失い実家に戻った一葉が、亡き祖母の遺品から連句のノートを見つける。亡き祖母のことを知らせに連句の席を訪れた一葉は、メンバーに迎え入れられ連句に参加することになる、という出だし。

    なつかしき春の香の菓子並びけり
     のどかに集う言の葉の園

    連句とは全く知らなかった世界だが、最初の句からしてほんのり良かった。
    次々と出て来る連句のルールがさっぱり頭に入らないのは困ったものだが、それでもなかなか興味深くはある。
    『連句を続けていると月と花は別格に思えてくる。月がいつも空にあるのがいいんです』『月は満ち欠けがあるから月単位の時間を感じられるし、花はやっぱり生きているからかな』なんてとてもよく分かるが、年を取ればこそか。

    連句以外にも、おいしそうな季節のお菓子や東京の色々な町の風情が描かれ、パンや苔や雑貨の話になったり、それらのお店を流行らすためのポップづくりの話になったり、飽きずに読める。
    更には、連句のメンバーの年齢・性別・職業などが異なる人たちが、雑談の中では恋や男女の機微について語ったり、世俗的な句に飛んでみたり、そのあたりは森羅万象を描く連句の楽しみ方に似て、ここもまた面白く読めた。

  •  連句を巻いてる皆さん、本当に楽しそうです。趣味を始めるなら、一人じゃなく、他の人と創るものがいいな、と思えるお話でした。とっても楽しく読みました。

     この本には、色々な要素が盛り込まれています。素敵な方々、食べ物や雑貨たちが登場します。まるでスイーツ盛り合わせのセット?みたいな、いろんな視点で楽しめる作品でした。

     主役は、なんといっても「連句」ですね。句を詠むだけだと思っていた「連句」が、座のチーム力で「森羅万象」を詠む、「様式」の世界だったとは、驚きました。

     そして次が、すでに亡くなった方々、特に主人公の一葉(かずは)さんのおばあ様の治子さんが印象的でした。孫娘にも連句を勧めた治子さん、一緒に連句はできなかったのですが、プランBは成功です。連句には人を救う力があるんでしょうね、治子さんはその経験から、孫娘の幸せを願い、連句を勧められたんでしょう。
     治子さん、「朝ドラ」だったら絶対にナレーション担当ですね。

     最後は、自称お菓子番の治子さんが選んだ和菓子たち、ネットで写真を見ながら読みました。おいしそうです。
     それから、パン屋さんの「パンとバイオリン」さんのパンたち。グルテンとか気にせず、おなかいっぱい食べたかったです。

     一葉さんが、元気を取り戻してきて、心配していたお母さんも嬉しそうでした。続編では、さらに元気になって、パワーをもらえることを楽しみにしています。

  • 俳句もなかなか手にして詠むことがない。
    ましてや、連句というのも今回初めて知ったわけで…。
    なかなか馴染みないものに少々戸惑いもあり、読み終えるのに時間がかかってしまった。

    それでも見知らぬ者同士が、言葉と言葉を繋げて36句で詠む。
    人の使う言葉、知らないものに触れることで新しい言葉が生まれる。
    不思議だけれど新しい発見をしたような気になる。
    まさしく別な見方を知るための一種の冒険なんだろう。
    ちょっとワクワク感もあるのだろう。

    「連句では、一等賞はない。
    丈高い句も軽い句もみんなちゃんと役割があり、良さがある。」という言葉が心に残った。

    物語は、書店員の職を失い実家へ帰った一葉が亡き祖母から受け継いだ連句の会のお菓子番。
    そこで世代の違う人たちとの縁で、パン屋そして園芸店さらに雑貨店のポップを手掛けることになる。

    言葉を愉しむ会を続けながら新たな自分を発見するという清々しさも感じて新春にふさわしいと思った。

  • ほしおさなえ - ほしおさなえ
    https://hoshiosanae.jimdo.com/

    言葉の園のお菓子番 見えない花 - 株式会社 大和書房 生活実用書を中心に発行。新刊案内、書籍目録、連載エッセイ、読者の広場。
    http://www.daiwashobo.co.jp/book/b556036.html

  • タイトルから勝手に今乱立している食べ物系の話だと思って、発売当初はスルーしていたが、やはり何となく気になって読み始めてみたら、全く違う話だった。
    不況で働いていた書店が潰れてしまい、無職になってしまった主人公の一葉。
    亡くなった祖母の部屋で、祖母の連歌のノートを見つけたことから、祖母のメモにあった季節のお菓子を持って、祖母の通っていた連歌サークルへ足を向ける。
    季節ごとのお菓子のチョイスは、実際にあるもので、読んでいても何だか楽しい。
    そして、初めて知る連歌の世界。
    奥深いけど、一葉の目線で分かりやすいように描かれているので、素人でも分かりやすい。
    お菓子、連歌でも盛沢山なのに、無職の一葉は連歌サークルのメンバーの紹介でポップの仕事を始めることに。
    そのお店にあった雰囲気で、紙や字体、筆記用具などを試行錯誤しながらポップを作成していく様は「紙屋ふじさき記念館」の百花と重なる。
    登場人物もみな良い人で、いつもながらほっこりする。
    連歌のことも、もっと知りたくなってくる。
    長命寺の桜もちも言問団子も、この時期になると食べたくなるなぁ・・・

  • 装丁が綺麗だったので選んだ本。
    1ページ目を読んで買うことに決めた。
    でも、読み進めていったら想像していた話とは違っていて…

    「連句」初めて聞いた言葉。
    この本を読んでもルールとか作り方とか全然わからない。
    繋がりも。
    でも美しい言葉が並んでいたり、美味しそうなおやつが出てきたり、いろいろ楽しめるものがありました。

    仕事がなくなった一葉。
    でも人との繋がりから仕事が来るようになって…
    人は自分のために、自分は人のために、何か役に立っているんだなと教えてくれた。
    人との出会いは大事。
    私も出会いを大切にしていこうと思います。

    この先のおやつも気になるし、一葉がどうなっていくのかも知りたい。
    続編を読んでみようかな。

  • 連句というものを初めて知りました。文字通り連なること、言葉を繋げること、転じて人と人との繋がりなどが作品テーマかなと思います。さらに主人公が仕事とするポップ作成からは、伝えることなんかもテーマかもしれません。
    メインとなる連句は面白い句あり、ハッとするほど美しい句ありで楽しいです。

  • 大好きだった書店が閉店となり、書店員の職を失った一葉。
    実家に戻って、祖母の荷物を整理していて見つけた祖母の手紙。そこには、祖母が通っていた連句の会へのお菓子の差し入れと挨拶の依頼が。
    一葉は祖母のノートに記された季節のお菓子を持って、連句の会「ひとつばたご」へ参加したことで、連句の世界を知ることになる。

    歳も職業もバラバラな人たちが集い、句を連ねていく。
    祖母の思い出と、新しい出会いで一葉が少しずつ新たな自分を見つけて行く様子が温かい。
    毎月差し入れた和菓子が食べたくなり、一葉が仕事をするお店たちが素敵で、作られる句がじんわりくる。
    俳句はTVで見て、一音も無駄にしないことに気持ちがきゅっと引き締まってきたけれど、この本の句も何度も読み返したくなる。
    色々盛り盛りなのに、穏やかな時間が流れていく不思議。

  • ――“なつかしき春の香の菓子並びをり のどかに集う言の葉の園”――

    言葉と言葉が繋がり連なる「連句」という場を通して、主人公が前へ進んでいく姿を描くシリーズ第1弾。連作六話が収録されています。

    勤め先の書店が閉店し、無職となった主人公・一葉。
    亡き祖母が残したメモに従い、祖母が参加していた連句会にメモに記載されていたお菓子を持参して訪れますが・・・。

    「連句」という言葉は知っていましたが、その決まり事については初めて知る事ばかりで、“結構細かいルールがあるのだな・・”と興味深く読みました。
    ほしおさんの作品らしく、登場人物がいい人達ばかりなのと、一葉が書店員時代に描いていた“ポップ作り”の技術を活かせる仕事が、知人の紹介を通して数珠つなぎのような広がりをみせるという展開で、とんとん拍子過ぎるといえばそうなのですが、この優しい世界観が癒される感じで良いですね。
    そして、一葉がお祖母さんの後を継いで“お菓子番”として、毎月持参する和菓子も魅力的です。

    奥深い連句の世界と、今後一葉がどのようなご縁と繋がっていくのか・・次作を読むのが楽しみです。

  • 「活版印刷三日月堂」でほしおさなえさんの本が気になり手にした本書。
    ほしおさんの小説は本当に言葉が綺麗。
    三日月堂もそうでしたが主人公が地道にコツコツと自分と向き合い決して大きくはない、小さな一歩を踏みしめながら自分の人生をまっとうしている感じにとても好感が持てる。
    連句…全く初めての世界。
    とても難しい印象だけどそこに流れる凛としているのに柔らかい不思議な世界観がすごく好き。
    連句というものにとても興味を持った。
    言葉って素敵ですね。
    短冊に向き合いながら様々な想いにふける…人や自分の想いに寄り添い、思い出し、前を向く…
    1人で俳句は煮詰まってしまいそうだけど皆の句に触れながら時には雑談にふけったり色々な人の想いに触れる事が人生を豊かにしてくれる気がする。
    一葉さんの「ようやく生きることをはじめたのかもしれない」という言葉がとても印象的でした。
    私もお菓子を持って「ひとつばたご」を眺めに行きたい!
    この先が楽しみ♪

    ほしおさなえさん、推しです!

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著者プロフィール

1964年東京都生まれ。作家・詩人。95年「影をめくるとき」が第38回群像新人文学賞優秀作受賞。2002年『ヘビイチゴ・サナトリウム』が、第12回鮎川哲也賞最終候補作となる。16年から刊行された「活版印刷三日月堂」シリーズが話題を呼び、第5回静岡書店大賞(映像化したい文庫部門)を受賞するなど人気となる。主な作品に「菓子屋横丁月光荘」シリーズ、『三ノ池植物園標本室(上・下)』など。

「2021年 『東京のぼる坂くだる坂』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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