言葉の園のお菓子番 孤独な月 (だいわ文庫)

  • 大和書房 (2021年10月9日発売)
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感想 : 56
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  • 本 ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784479308843

感想・レビュー・書評

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  • 「言葉の園のお菓子番」の2冊目。
    仕事が忙しくて、主な読書時間たる通勤電車の中でも目を瞑って頭を休ませたい感じで、なかなか本読みが進まずだったが、ゆるゆると進むこのお話は今の状況にはちょうど良かったかも。

    今回も連句会を中心に、一葉が用意するお菓子やお茶、彼女の仕事(ポップの仕事に加えてブックカフェで働くことになった)をはじめとしてあれやこれやが語られる。
    前作でも紹介されているとはいえ、正直誰が誰やら分からなかった連句会のメンバーだったが、萌さん、蛍さん(+妹の海月さん)、蒼子さん、直也さん、それぞれ印象的な出来事が描かれて、ようやく個性も分かってきた。ゲストみたいなベテラン歌人の久子さんや睡月さんのアクの強さもアクセント。捌きの航人さんのエピソードには、治子おばあちゃんが集まりの中で果たした大事な役割も知れる。
    毎度手を変え品を変え同じような話を読まされているような気もするが、それでもこの作者のお話はとても良い。


    亡き人がとなりに座る花の席

    人々の心を照らし月静か

    その人のぬくもりといる花の夜

    今日はかつて一緒に仕事をしていた人たちとの会食の日で、コロナ禍で4年の間が開いていたのだが、この間に亡くなった人あり体調がすぐれず来れなかった人もあり。
    かつての思い出に、これらの句がしんみりと心に沁みる歳になってしまったな。


    ヒトツバタゴを画像検索して、これは見てみたいと思った。
    うちの近くでは鶴見緑地や長居植物園、大阪城にも植わっているようだが、満開になるのは5月上旬頃だそうで、まだ先だ。覚えておけるかなあ。

  • シリーズ第2弾。

    亡き祖母が、通っていた連句会・ひとつばたごのお菓子番を引き継ぐようなかたちで参加している一葉。

    少しずつ、ゆるやかに連句会にも慣れ、そして連句メンバーからの繋がりでポップの仕事も楽しんでいる。

    今回も、新たにメンバーからの紹介で昔、祖母と行ったことのある書店が、ブックカフェ(あずきブックス)に変わりバイトを探しているとのこと。
    縁とは不思議なもので、とんとん拍子に話も進み週4日勤めることになる。

    ポップの仕事とブックカフェの仕事、そして連句会。
    仕事も私生活も少しずつ実ってきた感がある。

    連句会では、別れと出会いもあり、そして自分の知らない祖母を知る。
    孤独な月たちをやさしく包む人だと。
    一葉もきっと祖母ゆずりの性格なのでは、と感じる。
    控えめでいて人の気持ちもわかる人。

    まだまだ連句を知るには、ほど遠いがこの本を読むだけで清々しくなり、凛として背筋が伸びるような気持ちになる。
    美しい気持ちに満たされていく気分…。
    それは、美しい連句を詠んだからなのかもしれない。

  • シリーズもの。

    本に出てくるお菓子がとても美味しそうで調べてみようと思います。
    静かに物語が進んでいくリズムがとても心地よかったです。

  • 言葉の園のお菓子番シリーズの(ニ)
    カバー絵は歳時記を抱いて立つ一葉。彼女を優しく包むように咲く白い花はヒトツバタゴ(なんじゃもんじゃ)です。
    花の名が連句会につけられた謎が明かされるニ巻目は、生と死について、人が生きて行く意味を考えさせられました。

    勤めていた書店が閉鎖して実家に戻り、亡くなった祖母、治子の代わりに連句会「ひとつばたご」に通うようになった一葉。約束事の多い連句は難しいけれど皆で巻く楽しさもわかる様になった。
    連句仲間の萌さんに「手作りマーケットに出す焼き菓子に付けるタグを考えて欲しい」と頼まれ、一葉は萌さんの句とお子さんの絵を入れた豆絵本を作る。蛍さんの妹の海月さんと出会い、祖母を知る歌人、川島久子さんからはブックカフェの書店員の仕事を紹介されて…と、連句を通して人と人が次々に繋がっていく面白さがありました。

    一巻で連句に興味を持ち、二巻では主人公の一葉と共にどんな句を付けたら良いだろうと考える楽しさも味わうことが出来ました。

    石垣りん『シジミ』を読んでみたい!
    銀座清月堂の 「おとし文」や、富山県高岡市の
    不破福寿堂「鹿の子餅」がとても美味しそう!
    あずきブックスの「果物の香りのお茶」も飲んでみたいなぁ。

    「初夏になると真っ白な花が咲いてすごくきれい。こんもり白い花がついて、雪が積もったみたいで・・」航人さんの前に並ぶいくつもの白い短冊がまるでヒトツバタゴのようで・・
    蒼子さんの亡き夫、茂明さんの最後の句をながめながら「ひとつばたごに会いに来てくれたのかもしれない」と思った一葉の優しさに心が癒されるようでした。

    「その人のぬくもりといる花の夜」蒼子

  • 第一弾を読んでからずいぶんと日が開き、久々に「言葉の園のお菓子番」を読んだ!
    急に綺麗な言葉に触れたくなり手にして…大正解!
    やっぱりほしおさんの描く言葉はとても綺麗!
    品がよく、凛とした中に穏やかさもあり、微笑ましさも哀しさも静寂さもあり…とても好きな世界。
    相変わらず細かな俳句の約束事はなかなか理解が出来ないけれど(海月ちゃんレベル!笑)それでも楽しめる「ひとつばたご」
    人と人の繋がりが新しい風を吹かせ、その風に乗りながらまた新しい人に巡り合い人の輪が広がる。
    人の想いに触れながら我が心も豊かになる。
    静かに静かに豊かに穏やかに温まる。
    この素敵な世界をまた覗きにこよう ❤︎

  • 前の句と句切れるからこそ覚えてる。人との縁も命が途絶えてもその温もりはつながって感じられる。私も読みながら句の深さとともに亡くなった祖父母をそばに感じながら読めた。

  • シリーズ2作目。
    前作で亡くなった祖母の跡を継いで、連歌サークルのお菓子番になった一葉。
    書店を退職して、フリーのポップライターを続けるのかと思ったが、今作ではポップの話が出て来たのは1作目だけで、縁が巡り巡って、一葉は祖母と幼い頃に訪れた街の小さな書店が始めたブックカフェを手伝うことに。
    他の方のレビューにもあったが、書店こそ閉店になったが、その後の一葉の人生は悲観的でもなく、出会う人それぞれに導かれて、新たな一歩を進んでいく様子は上手く行きすぎな気がしないでもない。
    それでも、人と人との繋がり、過去と現在の繋がりなどが丁寧に描かれ、人はやはり人との縁の中で生かされていくのだなぁ、としみじみ思った。
    毎月出て来るお菓子も、本当に魅力的で、特に驚いたのが銀座清月堂本店の「おとし文」。
    毎日お店の前を通っていたのに、そんな名店とは露知らず・・・店頭を覗いてみると、季節ごとの「おとし文」が販売されていた。今の時期は抹茶。
    甘いものがあまり得意ではないけど、せっかく毎日前を通っているのだから、一度は食べてみようと思う。
    それは私にとっても、何かの第一歩になるかもしれない。

  • 【収録作品】しあわせの味/砂を吐く夜/生を謳歌す/旅人の本/なんじゃもんじゃ/孤独な月
     うまくいきすぎの感じもするが、人との出会いがうまく転がり出せばこんなものかもしれない。一人で閉じこもっていても道は開けない。こんなふうに開かれていて、干渉しすぎないけれども、いたわり合えるような関係を築ける場所があったらいい。
     お菓子がおいしそうで、食べてみたくなる。

  • ゆっくりと時間が進む物語。
    ちょうど良い距離感の人間関係が羨ましい。
    連句も素敵だけど、何か趣味を持ちたいと思える。

  • 『言葉の園のお菓子番』第2作。祖母が生前参加していた月一度の連句の会に参加するようになった一葉。第1作では連句の様々なルールが、面白くもやや難しいなと思いながら読んだが、第2作で再び触れたところ、少しだけ自分の理解度が増している気がして楽しめるようになった。

    色々な実在する老舗のお菓子屋さんや谷根千界隈のスポットが出てくるのも楽しい。連句の会でのつながりをきっかけに今作では上野桜木のブックカフェのお話もあって、こんな素敵なブックカフェがあれば是非訪れたいなぁと思った。一葉が暮らす根津の実家での両親とのやり取りもほっこりする。

    きっかけは大手書店での職を失ったことだったが、一葉は連句を通して素晴らしい仲間に巡り合い、とても充実した日々を過ごしている。前に進むってやはり大切だなと思った。
    続編を期待したい!

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著者プロフィール

1964年東京都生まれ。作家・詩人。95年「影をめくるとき」が第38回群像新人文学賞優秀作受賞。2002年『ヘビイチゴ・サナトリウム』が、第12回鮎川哲也賞最終候補作となる。16年から刊行された「活版印刷三日月堂」シリーズが話題を呼び、第5回静岡書店大賞(映像化したい文庫部門)を受賞するなど人気となる。主な作品に「菓子屋横丁月光荘」シリーズ、『三ノ池植物園標本室(上・下)』など。

「2021年 『東京のぼる坂くだる坂』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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