言葉の園のお菓子番 森に行く夢 (だいわ文庫)

  • 大和書房 (2022年8月10日発売)
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  • 本 ・本
  • / ISBN・EAN: 9784479320265

作品紹介・あらすじ

『活版印刷三日月堂』著者が心を込めて描く大人気シリーズ第三弾!

温かな共感に背中を押される感動の書下ろし小説!

書店イベント、作家や歌人との出会いをきっかけに自分を見つめ直す一葉。

今を受け入れつつ歩を進めるその先には…静かな決意に涙し前を向ける物語。

感想・レビュー・書評

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  • 「言葉の園のお菓子番」の3冊目。
    今回はいつものメンバーだけでなく歌人の久子さんが連れてきた作家先生の柚子さんや詩人の広田さんなどが彩りを添えて話が進む。
    お菓子も色々な事情でいつもとは異なるお菓子が用意されるなど、3冊目になって目先も変えられて、お陰で今回もまた楽しく読めた。

    シリーズを通して一葉の成長物語になっているのだが、連歌を巻いたりトークイベントで司会を任されたりの中で、他のメンバーの生き方にも後押しされて、徐々に心持ちが変わっていく様が好ましい。
    同じ連衆が集まって同じ発句からはじめたとしても捌きによってはまったくちがう一巻になる、『正解のない分岐の連続』という連歌のあり様に、人生というものについても考えさせられる。『長く生きればやりなおし利く』なんて句もいいね。


    詩人の広田さんの句がなかなか素敵。

     緑陰やまだらになりて歩きをり

     水滴となりあの人の胸に棲む


    長編小説の公募の一次選考にも通らず落ち込む蛍さんの吹っ切れ方も良いな。一度つまずいて知る世界もあるよね。

     花が舞うやぶれかぶれで生きている


    久子さんの教え子という若い人もたくさん参加してきて今までとは違った感じの句が新鮮に感じられる一方、ベテランの酸いも甘いも噛み分けた句がまた身に沁みた。

     山笑えども人のむずかし

  • シリーズ第3弾。

    亡き祖母のあと、連句会・ひとつばたごのお菓子番として、通い始めた一葉。
    そのまま連句会の仲間たちとさまざまな関わり合いを持ち、ポップの仕事やブックカフェにも勤めるようになる。

    繋がりや縁を感じる物語でもあり、2弾めあたりから気持ちもグッと入り込み、わからないながら連句会で披露する句にも感動を覚えるようになった。
    なにより背筋がピンとするようで静謐さも感じる。

    今回もまた新たなメンバーが参加する。
    久子さんの紹介で小説家の柚子さんで、少女マンガが好きなことがわかり「あずきブックス」で少女マンガイベントをすることになる。
    一葉の司会で大盛況に終わるが、こちらまでドキドキとワクワクとでいっしょに楽しめた。
    こういうイベントって良いなぁ、参加したいなぁという思いがいちばんだけど、それまでの準備する一葉の緊張感とか高揚感などもわかるなぁ…って。

    そのマンガイベントに参加した詩人の広田優さんもひとつばたごにお菓子持参で来る。
    その創作和菓子も芸術のような綺麗さで、お菓子ひとつずつに名前が付いている。
    それがとても素晴らしい
    『夜の鳥』『半年で』『雨の町』『淡い記憶』
    なんて素敵なことばなんだろうか…
    想像するしかないのだが、この場に居たいと思った。

    いつも連句会の場所は、いろいろな会場を借りるのだが、最終章では広田優さんの自宅でこの界隈は、深大寺や植物公園もあり連句会には良き所だったようだ。

  • シリーズ第3作。改めてこのシリーズの雰囲気が自分は好きだなぁと実感。
    何がこんなに自分に刺さるのだろうと考えてみた。小説を通じて触れる「連歌」の奥深さ・豊かさ、舞台として出てくる地名に馴染みのある町や好きな町が入っていること(今回は深大寺も出てきた)、そして月一の連歌の会に合わせた和菓子選び、
    、連歌のグループのゆるいけれどもお互いを思いやる感じ、上野桜木のブックカフェ(架空だけど周りにはあるお店は実在)、主人公・一葉の着実な前進、一葉のおっとりした家族などが挙げられる。まだまだ続きがありそうな終わり方だったので早くも続編に期待。1年前は初心者だった一葉の連歌の腕前も本作では「初級」に。次作では「捌き」のできる「中級」の一葉が見られるかどうかも注目!

  • シリーズ第三弾。

    連句会「ひとつばたご」に通う一葉を主人公に描かれる、ハートウォーミング連作六編が収録されています。

    今回も新たな出会いがあり、作家の柚子さんや詩人の優さんを始め、レギュラーメンバーで歌人の久子さんの教え子の方々が、連句会「ひとつばたご」に初参加メンバーとして登場します。
    そして、柚子さんとの出会いをきっかけに、一葉が働いているブックカフェ〈あずきブックス〉にて、少女マンガのイベントが開催される展開になったりと、毎回ながら“ご縁”が素敵な繋がりを見せてくれます(まさに連句のようですね)。
    そのイベントへの布石的な流れで、作中に少女マンガの作品名が数々出てくるのですが、『動物のお医者さん』は私もコミックスを全巻持っていたので懐かしかったです。
    相変わらず、連句のルールはムズいのですが、言葉を選んで季節や感情を表現し、それを皆で繋げて創り上げて(巻いて)いく連句の世界って感性が磨かれていきそうで、そこに魅力を感じますね。
    主人公の一葉は〈あずきブックス〉でのイベントの司会も上手くいき、副業のポップ制作も順調のようで何よりですし、連句に関しても向上心が見受けられてその成長が好ましいです。
    「ひとつばたご」のメンバーが皆いい人ばかりなので、その和やかな雰囲気が伝わってきて、読んでいてほっこりします。
    できれば“お菓子”もご相伴にあずかりたいところなのですけどねw・・・因みに、前巻で治子お祖母ちゃんの“定番”お菓子が一周したこともあってか、この巻では、新たなお菓子も登場して、特に完全予約制の「越後屋若狭」の水ようかんには“めっちゃ美味しそう!一体どんな味なんかな~?”と、大いにそそられました。

    今後、一葉がどのように進んでいくのか(“捌き”にチャレンジする時が・・?)、またどんなご縁や広がりが待っているのか・・そして、どんなお菓子が登場するのか楽しみにしております~。

  • 言葉の園のお菓子番シリーズ(三)
    亡き祖母の縁で連句会「ひとつばたご」に通い始めた一葉。ポップを書きながらブックカフェに勤めて4ヶ月が経つ。

    一葉の勤めるあずきブックスで少女マンガイベントが提案される。連句会でも陽一さんの句「夏のおわりのト短調聴く」がとられ、マンガ談義に花が咲く。
    「大島弓子の描いた『夏のおわりのト短調』は叔母でなく、本当は母が壊れる話なのかも!」と語る小説家・上坂柚子さんは歌人の川島久子さんに連れられやって来た。
    「親も弱さを持つ小さな人間に過ぎず、世界も信用ならないものだと、見え方ががらりと変わる。それが思春期でしょう」航人さんの重みのある言葉に、このマンガを読んでみたくなった。

    一葉の司会で始まったトークイベント。
    ゲストはもちろん久子さんと柚子さん。
    二人のトークで盛り上がる会場。
    緊張感とワクワク感が伝わって来た。
    イベントを通じて自分にはまだまだ知らない事が多く勉強が必要だと思う一葉。
    イベントで知り合った詩人の広田優氏が連句会に現れて…

    四話「句の心」の終わりは全員で巻いた歌仙
    「人のむづかし」 捌 草野航人
    発句から挙句まで36句全てが載せられていて感動する。
    ほしおさなえさんが主催する連句会「連なる楽しみ」で実際に巻かれた歌仙を一部変更したものだと読後に知った。
    連衆には歌人の東直子さんや千葉聡さん、翻訳家の三辺律子さん、編集者の矢内裕子さんなど知っている方の名前もあり、どの句だろうと想像するのも楽しかった。

    連句は正解のない分岐の連続。人生そのもの!

    調布の神代植物公園にヒトツバタゴ
    (なんじゃもんじゃの木)があるそう!
    白い花が咲く5月に会いにいきたい。

    両国にある「越後屋若狭」の水ようかんが美味しそう。江戸時代を思わせる店をいつか訪れてみたい。

    回を重ねるごとに登場人物が増えていく。「人物紹介」を載せてあり迷わず読むことができた。
    (四)「復活祭の卵」もとても楽しみ!

  • 前の2作品と比べて、連句が中心の話となっていた。その表現の機微が素晴らしかった。年齢、性別、立場の違いを、よくここまで表現できるなぁと、感心した。日本語は奥深い。

  • なぜか3巻目となる本作から手に取る。
    語り口が丁寧で、ヤングアダルトの棚に排架されているのも分かる。
    けど、登場人物たちによって語られる人生の機微のような事柄は含蓄が深い。アオハル読者の心にどこまで染みるだろう?
    連句のさばき方や句の解釈もしかり。
    歳を経て再読しないともったいないね。
    お菓子は、、、どれもそそられる!

  • いろんな出来事があり、いろんな出会いがあり、いろんな季節がめぐっての連句。私もいつか巻いてみたいなぁ、うずうず。

  • シリーズ3作目。
    前作でブックカフェで働くことになった一葉。
    今作ではブックカフェの話がメインになるかと思ったが、新たな登場人物が増え、また新たな扉が開いていく。
    少女漫画をテーマにした講演会や、これまでと違う場所での連歌など、扱っている内容は同じなのに、また違う景色に見え、一葉と一緒にふわふわと漂う感じがした。
    新たな登場人物が増えたことで、新しいお菓子も登場し、思わずネットで調べたりしてしまったが、一葉の心の中の描写が少なかったように感じて、個人的には今作では何を伝えたかったのだろう??という読後。
    しかし、他のシリーズもそうだけど、次から次へといろいろなアイデアが出る作者の頭の中を覗いてみたい。
    謝辞のページを見ると、作者が実際連歌を巻いているようだし、すごいなぁ・・・の一言に尽きる。
    連歌の説明も毎回丁寧で、一葉と一緒に連歌を学んでいる気がするのが、今作の何よりもいいところだと思う。
    今後、一葉が何を一番大切にしていこうとするのか、続編に期待。

  • シリーズ3作目。新しい分野の仕事に挑戦する一葉に綻び、一葉を見習って私も頑張ろうと思う。そして連句会にも新しい風が吹いており、変わらないようで変わっていくひとつばたごを見守っていきたい。連句とかできる気せんけど、読んでるの見るの好き。

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著者プロフィール

1964年東京都生まれ。作家・詩人。95年「影をめくるとき」が第38回群像新人文学賞優秀作受賞。2002年『ヘビイチゴ・サナトリウム』が、第12回鮎川哲也賞最終候補作となる。16年から刊行された「活版印刷三日月堂」シリーズが話題を呼び、第5回静岡書店大賞(映像化したい文庫部門)を受賞するなど人気となる。主な作品に「菓子屋横丁月光荘」シリーズ、『三ノ池植物園標本室(上・下)』など。

「2021年 『東京のぼる坂くだる坂』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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