言葉の園のお菓子番 未来への手紙 (だいわ文庫)

  • 大和書房
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784479320920

感想・レビュー・書評

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  • 言葉の園のシリーズ第五弾。

    定期的に連句会「ひとつばたご」に通う一葉は、自分と同世代が集う「きりん座」のメンバーとも交流を持つ。
    「きりん座」で連句を経験した一葉は、軽やかでシャープな印象だと感じ、短歌から来た創設メンバーのせいか表現者を志しているように思い、自分とは違うと。
    どちらかといえば、「ひとつばたご」は、年齢もバラバラで家庭を持っている人もいて、見てきたものが多いので言葉の幅も広がっているようで、その場でほかの人の句に触れることで、ことばが生まれてくる…というのが一葉なんだろう。

    「きりん座」でエッセイを書いた一葉は、文芸マーケットにも行ったことで、「あずきブックス」のカフェスペースで同人誌フェアを行う。

    エッセイも父の写真がきっかけになり書いたことで大輔とも写真を通して交流が深まる。

    基本は、やはり「ひとつばたご」だと感じるのは、やはりお菓子番としての和菓子と次々と繋がる連句だろう。

    光の痕跡のなかでの、一葉の句が好きだ。

    はじめての線を一本引いて夏


    連句の神さまでの

    喫茶店のいつもの席は空席で


    今後の一葉をもっと見てみたい。






  • シリーズ第5弾。根津に両親と暮らす一葉を主人公に、元は一葉の祖母が参加していた連句会、一葉の現職場である上野桜木のブックカフェでの様子を中心に日常が描かれている。このシリーズは、読むと心が落ち着き、何と言うか禅のような効能があるのではないかと思ってしまう。月次で週末に区の施設を利用して開催される連句会に一葉が参加して早2年。連句でも、連句会の運営面でもすっかり馴染んでいる。徐々につながりも増え、本作では他の連句会の人たちとの交流があったり、同人誌イベントに参加したり、一葉の大学時代の恋心も描かれていた。様々な年代や職業の人たちが参加する連句会はきっと楽しいだろうし、連句に集中する時間も充実しているだろう。休憩に出す和菓子にも癒されるし、連句会の人たちとの連句以外での緩やかなつながりもまた素敵だ。輪を乱すような非常識な人も出てこず、落ち着いた連句好きな大人たちの集まりというのが落ち着く要素のひとつかもしれない。連句に限らず、趣味があると一葉のように徐々につながりも増え、生活にハリが出て人生豊かになるのだろうなと思った。続編が楽しみ。

  • シリーズ5作目。
    一葉がひとつばごに参加して、早3年目。
    その間にポップの仕事を始め、ブックカフェでも働き始め、人と人の縁が導く運命を上手く描いている印象。
    世の中、そんなに上手く行かないよ・・・
    と少しやきもちやきたくなるくらい一葉の人生はひとつばごに参加してから順調だ。
    そんな中、早春に行われた連句の大会で知り合った他の連句会の人たちとの交流も始まり、その流れで今作では文芸誌の話にも。
    同じように定期的に連句を巻いているだけかと思いきや、少しずつ新しいことに挑戦していく姿に、自分も同じ場所に立ち止まっているだけでなく、少しでも歩みださなければ、と思わせてくれる作品。
    3年目に入り、定番のお菓子のアレンジも目立って来た。
    一葉のおばあちゃんのお菓子のセレクトが秀逸だっただけに、お菓子の代替わりは少し寂しいが、いつまでも同じ話では繋げないから、しようがないか。
    新しく出て来るお菓子も、相変わらず美味しそうだし、そこは目を瞑ろう。
    次作ではひとつばごでもいよいよ冊子を作ると思われる。
    ここで、終わってしまった藤崎産業が出てきたら、ファンとしては嬉しいなぁ。

  • 一葉さんの世界がひろがる。
    きりん座メンバーと交流に新しい風が。

    でもちょっとマンネリを感じた5作目。

  • 出会うときに出会えた本と感じている。今までは連句の面白さや新しいコミュニティに属すことで世界が広がっていく主人公を眩しく見つめていた。しかし、最近、自分も趣味から繋がった出会いがあり、その仲間と何か作らないかという話も出てきて、気がつくとリンクしていた。物語の中の人たちの心模様を眺めながら、ふと周りを見渡すと、現実も広がっていた、そんな感覚。

  • 【収録作品】あたらしい風/未来への手紙/自分史上最高の夕焼け/光の痕跡/「いま」と「いつか」と/連句の神さま

    シリーズ第5巻。
    静かな筆致で、少しずつ前進していく様子が描かれていて好もしい。今回は、新たな出会いが運んできた大きな動きもあり、この先が楽しみである。

  • 「連句」の場とが人との繋がりをもたらし「言葉」を通してやり取りしながら自分の心を見つめ、人との縁に助けられながら前を向いていく過程が素敵だった。作中で披露される連句のひとつひとつからは“言葉”の凄さや温かみが感じられて良い。

  • 小説というよりひとりごとのような流れで落ち着いて読める
    自分は大人だけど未来に希望があるような気にさせてくれる
    主人公と同化してる?

    就職活動 フィルム写真 坂道 文芸マーケットが背景
    ちょうどぴぴろが同人誌の話をしていて共有できてよかったです

    選ばれたいと応募するのは受け身
    自分で決めて世の中に送り出す

    才能は世界とのズレ 孤独と同じ
    世界がほかの人とはちがって見える
    人と共有できないものを抱えてる
    共有したいと思っているから言葉にする
    だれかと結びつきたいと願う
    才能のある人の言葉は切実で、ほかの人を惹きつける

  • 「あたらしい風」
    坂が多い街に。
    普段とは違うメンバーがいるだけで、出される句の雰囲気も変わるだろうし面白味も増えるだろう。

    「未来への手紙」
    歳の近い仲間。
    幅広い年齢層だからこそ知れる風景もあるだろうが、たまには同じ年頃の人とするのも楽しいだろ。

    「自分史上最高の夕焼け」
    冊子に残した。
    伝えたいことを一つ一つ丁寧に書き記していくと、思っている以上に文字数は減っていくだろうな。

    「光の痕跡」
    将来を見据え。
    こんな職業をしてみたいと思う気持ちと、実際に働いた時に感じた事に齟齬があると続かないだろ。

    「「いま」と「いつか」と」
    造りたいなら。
    漠然と創作について考えることは自由だが、それを形にしようと思うのならば期限は大切なのかも。

    「連句の神さま」
    塩梅が難しい。
    好きな人や気になっていた人には刺さる内要であっても、番人受けしない内要は造るのが大変だな。

  • 今まで恋愛関係のアンテナ全然立ててなかった一葉が急に色々気にしだしているので、突然どうしたと思いましたが、一葉にもそういう時期がきたという事なのかな。
    また新たな人たちと出会ったり、少しずつですが確実に皆変化して行ってて、ひとつところに留まらない、その変化が良いなと思います。

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著者プロフィール

1964年東京都生まれ。作家・詩人。95年「影をめくるとき」が第38回群像新人文学賞優秀作受賞。2002年『ヘビイチゴ・サナトリウム』が、第12回鮎川哲也賞最終候補作となる。16年から刊行された「活版印刷三日月堂」シリーズが話題を呼び、第5回静岡書店大賞(映像化したい文庫部門)を受賞するなど人気となる。主な作品に「菓子屋横丁月光荘」シリーズ、『三ノ池植物園標本室(上・下)』など。

「2021年 『東京のぼる坂くだる坂』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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