知識だけあるバカになるな!

著者 :
  • 大和書房
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本棚登録 : 288
感想 : 33
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784479391708

作品紹介・あらすじ

自分で考えられる人になれ!気鋭の学者にして論客が問う「ホンモノの教養」。

感想・レビュー・書評

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  •  大学教授である著者が、人文学系の学問に興味を持った人(メインは大学1年生か)を対象に「学問への手引き」「人文学系の思考法」などの"入門の入門"を説明した本。
     最近はかつてないほど「頭が良くなる本」「思考術本」が溢れかえっているが、下手な本を読むくらいなら本書を読むべき。地に足の付いたレベルから、骨太な"学問の考え方・作法"を教えてくれている。

     「第1章 疑うことから知の方法は始まるが、「正しく疑う」ことの難しさについて」は、学問に限らずモノを考える上で是非とも知っておいてほしいことである。
     本書には、大学の授業で「常識を疑ってみましょう」と先生に言われると、すぐに「そういう先生の言葉を僕(私)は疑います」と答える学生の話が出てくる。一見してつまらない返しだと思うが、こういう鸚鵡返しの何が問題かについて、「私」自身が疑うという姿勢を放棄することに繋がりやすいと指摘されていたのはなるほどと思った。つまり、こういう安直な返しは本当に教師の教えを疑っているのではなく、単に相対化して受け入れ、自分で吟味することを拒否しているだけなのである。著者はこれを、疑いながら考える責任を相手に転嫁してしまう、と言っているが、これは何にでも文句を言い反対するだけの人にもそのまま当てはまることである。
     ただ、気をつけなければいけないのは、「代案を出せ」と安易に言うのもこの裏返しであるということだ。代案を出させることは主体的にモノを考えさせる点で大事なことではあるが、「代案を出せ」も往々にして自説が固まっていない人間による批判封殺として用いられる事がある。大事なのは「考える責任を引き受ける」ということであり、これは自分の周囲を見渡してもなかなかに難しいことだと思う。とすると、大学で学ぶべき重要なことは、専門知識よりもまずこういう知的態度なのではないだろうか。

     第3章では、外国語を学ぶ意義について触れられている。
     価値観や発想・思考の枠組みは、かなりの部分が言語によって規定されている。そこで、言語体系の違う外国語を学ぶことで、自己の価値観や発想・思考枠組みを相対化して客観的に理解することができる。このことにより、自己の発想・思考の偏りを自覚し、より広い視野と発想・思考を可能にする。それが外国語を学ぶ重要な意義の一つであると指摘されている。
     私もこれに同意で、「外国人と会話できる能力」を重視するのは学校教育の目的としては違うと思っている。しかも、最近ではネイティブの感覚・発想を重視した英文法解説が出てきているが、現在でも多数を占める英文法は相変わらず文例とルールの提示だけで、「なぜそうなっているのか?」という説明がないものが多い。これでは語学が単なる暗記物になってしまい、思考枠組みの相対化と自国語の省察どころか、当の目的である会話力の習得すらまともに習得できないと思う。
     やや本書の指摘から外れてしまったが、外国語を学ぶ意義を考え直すという点からも、現在の英語教育のあり方は再考されていい、と本書を読みながら色々考えさせられた。

     知の技法の一番基礎的な部分を教えてくれる本書は、モノの考え方に興味のある全ての人にオススメです。

  • 学問とは、正しい答えがあるのかないのかさえ分からない底なし沼の状態で、一つ一つ手探りで「答え」を見つけようと継続的に頑張ること。すぐググる人には耐え難いこと。とにかく疑ってみることで、本当に確実なもの(真理)に到達しようとする。敵の意見の反対が、自分にとっての正しい意見とは限らない。アドルノの「限定的否定」は使える。相手の全部を否定するのではなく、どの部分を否定するのかを考えた上で批判する点と相互理解のための共通基盤とするところをその都度分ける。

  • 最近著書が多い、仲正氏の「学問の入門への入門¥的な本。

    内容としては、学問でよく行われる議論の基本的な考えをまとめているといえる。

    1章は「正しく疑うための難しさについて」、2章は、「二項対立思考の愚について」、3章は、「教養について」3章から、教えられて覚えるだけの高校の思考と考えることが必要になることからの考えをまとめている。

    大学入学時などに読んでみるとよいかなと思った。

  • 中学生の頃に読みたかった。
    自分は軽チャーばかり身に付けてしまっている。
    教養は大切と痛感。
    二項対立はなるほどと思った。

  • 仲正昌樹 「 知識だけあるバカになるな 」 大学生向けの教養論。思考停止や二項対立を批判し、教養を再定義

    著者の問題提起「自分が賢くなったと思い始めたら要注意。疑うことを〜回避する 自分自身を警戒せよ」
    →自分自身 最近 賢くなった気になっていたので、読んでよかった。専門や実利の勉強をしてから 教養を学んでも いいのではないか とも思った

    教養とは
    *答えを保障するのでなく自分で考える手がかり
    *教養の本質は 知的討論をするための基礎能力

    教養のある人とは
    勉強するほど謙虚になり、自分の知的限界をどう克服するか知っている

    「二項対立的な発想だけの人はやっかい。答えが最初から決まっているので 議論を通じて 自分の考えを洗練させることができない」

    アドルノの限定的弁証法
    相手の全部を否定するのでなく、相手の一部について対立するところと 相互理解のための共通基盤とするところを分ける

  • 大学生に向けた教養論。
    学ぶということはどういうことか。
    人が生きていくにはタンパク質やビタミンなど栄養が必要であるが、人生を豊かにするには教養が必要なのである。

    "「教養」とは「知的な討論をするための基礎的な能力」"であるが、自分は果たしてこの基礎体力が身についているだろうか?

    大学を卒業して大分経つが、もう一度門を叩き、"教養"をしっかりと身に着けたくなった。

  • 正しく疑うこと、先人の哲学者たちの英知を活かして考えることなどについてかかれている。表紙や表題のイメージとはまた違った内容。

  • 著者は勤務先である金沢大学があまり頭がよくない学生が来る所なせいか、少々イライラしているらしい。ホッブスとロックの違いについて自分の言葉でキチント説明できる人は読む必要なし?

  • 知識だけあるバカになるな 仲正昌樹 大和書房

    名前に惹かれてつまみ食いしたけれど
    それこそ社会的価値観の知識の羅列で
    つまらん本だった
    ハンナ・アーレントの
    人間の条件を読もうとしていたけれど
    別の人の訳で読もうかな

    題名も
    「知識だけの馬鹿になるな」で十分だろう

  • テンポよく読み進められるので、読みやすい。
    でも本中にあるように、重要と思うと所に案外重要なことが書かれているって・・・・ぎくり。そのことを引きずりながら、78ページまで読み進め。また最初から読み直しました。案外読み落としてました。
    年末にもう一回最初から読み直そうと思います。(12/24)

    本書で紹介されている本や思想等も読み込んでたら、かなり骨の折れる本だった。方法序説や弁証論などは聞いたことがあるが、しっかり勉強しなおすべき内容だと感じた。政治思想史は専門すぎるので読み込みは却下した。

    途中、昔(1960年ぐらい)の学生と今の学生(共に大学)の質を比べる内容があった。(P86ぐらい)
    前者は“「知的エリートである以上、こんなことくらい知っていなければならない」という最低基準のようなものが何となくあったのですが”と知的スノビズムがあったおき、後者はこの“知の標準”は完全に失われているとしていた。これは非常に興味深かった。同ページに紹介されていた本も読んでみたいと思う。

    また、ところどころにデカルトの思想についての記述があり、デカルトについて勉強する一助になった。デカルトについても知らないことが多く、勉強してみたいと感じた。(さっき書いたな)

    第2章では二項対立について書かれていたが、内容を読み込むうちに、今私たちの認識は現状ををカテゴリー化して成り立つ概念であることを改めて認識した。人間が勝手に仕分け(パラダイム化)した内容以外のものは、分からず、そもそも認識されていないものもあるかもしれないと。きっとそれがわかるのは宇宙人か上位のものだろうと感じた。

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著者プロフィール

哲学者、金沢大学法学類教授。
1963年、広島県呉市に生まれる。東京大学大学院総合文化研究科地域文化専攻研究博士課程修了(学術博士)。専門は、法哲学、政治思想史、ドイツ文学。難解な哲学害を分かりやすく読み解くことに定評がある。
著書に、『危機の詩学─へルダリン、存在と言語』(作品社)、『歴史と正義』(御 茶の水書房)、『今こそア ーレントを読み直す』(講談社現代新書)、『集中講義! 日本の現代思想』(N‌H‌K出版)、『ヘーゲルを越えるヘーゲル』(講談社現代新書)など多数。
訳書に、ハンナ・アーレント『完訳 カント政治哲学講義録』(明月堂書店)など多数。

「2021年 『哲学JAM[白版]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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