考える練習

著者 :
  • 大和書房
3.58
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本棚登録 : 332
レビュー : 39
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784479392392

作品紹介・あらすじ

頭の中の「使っていないソフト」を動かす。「自分の命が何より大事」というのは本当だろうか?「論理的」イコール「正しい」とは言えないのではないか?「人は死なない」と考えることもできるのではないか?論理に縛られて「テンプレート化した発想」から抜け出すための12講。

感想・レビュー・書評

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  •  ネットに情報が溢れ出る昨今。考えないでもわかった気になる時代である。そんな時代だからこそ読みたい一冊だ。第一講から、思考に「公式」は役に立たない、「わかった」と思わずに考え続ける、とくる。

     実に多くのテーマを論考しているが、一貫して流れているテーマは、『学問は「頭」でするものではない、本当は情緒でやるものだ』という岡潔の言葉に集約されていると思う。保坂和志の文章は実に論理的なのだが、一方で「文体とはペンの動きやためらいである」とか、「小説を書くことは、最初の何フレーズかのメロディが与えられればあとは即興を引き続けられるっていうのに近いようなイメージ」であるとか、「辺縁的な観念を大事にする」とか、頭で生まれた観念をもとに言葉を紡ぐのではなく、五感で掴むリズムや音と、そこから生まれるライブの情緒を大事にしているのだな、と思った。
     「文学は理屈ではなく芸術である」ということかなと。

     共感した点が2つほど。1つは「理系と文系を繋ぐような本を書きたい」というモティベーション。もう1つは、ドラマ「ER」のように、物語の中に大きな視点と小さな視点のものが同時に描かれる群像劇が面白いってこと。そこで起こる問題は、見る視点によって大きくも小さくもなる。物事を多面的に見ることの重要性は、それに尽きると思う。
    小説では伊坂幸太郎が得意とするスタイル。「あまちゃん」や三谷幸喜の映画や舞台もそう。登場人物全てのキャラクターに「人生」を与え、読み手がいろいろな立場で想像できる。小説を味わう醍醐味の1つであろう。

  • 自分の背中をそっと押してくれる本。
    恥ずかしながら、自分の考えや湧き上がる思いを肯定してくれる。
    思想が近いのかもしれないと感じました。
    何度も読み返して、そのたびに発見がある超名著だと思います。

    「考えるとは、理想を追うということ」

    これを忘れずに仕事していこう。

  • 対話形式で読みやすく、ざっくばらんな語り口なので、まるで居酒屋のカウンターで保坂さんのトークにひたすら耳を傾けている感じ!
    小説内の描写を愛する私にとって、保坂さんの文学論にはとっても親近感がわきました

  • 面白い。
    考えるとは全方向に向かうものではない、答えが出ないモヤモヤも引き受ける、そんな「考える」が面白い。

  • この本は、ある程度の読書を熟している人に薦めたい。
     本書は、芥川作家保坂和志と大和書房編集部との1年間の対話をベースにまとめられたものである。12講からなり、題材は意外に身近なもの(例えば原発とか「神の手ゴール」など)であるが、それから通して「考える」ということを我々に“考え”させる。編集部曰く、考えるとは論理を組み立てることではなく、その枠からでることである、と。本書の中から引かせてもらうと、鉄棒はあの棒を握っているから逆上がりや蹴上がりができるのだが、その概念を打ち壊して完成したのがトカチェフなどの鉄棒を離して行う技である。これは小学校の体育で鉄棒はしっかり握って離さないように、と言われてきた人には決して思いつかないことなのである。本当に「考える」とは、その枠を壊すことなのかもしれない。

    教育学部 J.K


    越谷OPAC : http://kopac.lib.bunkyo.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1000907708

  • 私のような天邪鬼というか人生を斜に構えて生きている人間には、保坂氏の言葉はすごく勇気づけられるとコメントすると氏は閉口するのかな。(保坂氏が悪いのではなく、非は私にあるのですが。)でも、世間が信じていることをたまには疑ってみて、それを正々堂々と態度に顕すことって、人として美しいし強さを感じます。やさしい言葉で語られてはいるのですが、共感するところや考えさせられるところが多く、内容的には重量感たっぷりです。これからもへんこな親爺でいてやろうと意を強くしました。

  • ”<一言>

    <読書メモ>

    <きっかけ>
     書店で面出しになっていて、だるまの表紙と、帯の言葉(頭の中の「使っていないソフト」を動かす)に心ひかれて。”

  • 文学

  • ゆっくり読むこと。知識ではなく感情、身体性を尊ぶこと。

    <blockquote>考えるとは「論理を組み立てること」ではなかった。むしろ論旨の枠組みから脱すること。
    (中略)論理的な整合性よりも感情を信じる。感を叩かせる。その意識を持たなければ、どうしても他人の強い言葉に負けてしまう。(P.2)</blockquote>
    知識を得れば得るほど「断定」することは難しくなってくる。だからこそ、知識人は「断定」する覚悟と力強さが必要になるのではないか。
    <blockquote>
    <blockquote>現代社会と戦うのに自分の足場を何で固めるかって考えたときに、現代社会を乗り切るための知識や知恵を詰め込んでいってもたぶん現代を乗り切ることは出来ない。そういう知識を入れれば入れるほど、じつは飲み込まれていく。(P.86)</blockquote>
    ・情報を取り入れても思考力は磨けない。
    ・人生は便利と効率と早さではなく成長と深み。(P.45)
    ・便利さ(テクノロジー)が人間から尊厳を奪っていく。

    ・孤立が悪いというのはアメリカのプロバガンダで作られたイメージにすぎない。(P.69)
    ・『危険なときこそ攻める』(棋士:谷川浩司)(P.75)
    ・「昔、ビートルズの新曲を出すたびに、自分はついていけるのかって緊張した」(P.113)
    ・ここで日和ったらこの伝統がダメになるとか、この共同体がダメになる。この技術がダメになる、だから自分ぐらいはどうでもいいものとして、守るべきものを守ろうという考え方が自然に出来るような社会がいまの社会の大局としてある。(P.140)
    ・プロとはひとつのきっかけを与えられた時に、色んな事を(そのプロであるモノ―小説なら小節に音楽なら音楽―に引き寄せて)考えられる人。
    ・すべてはシンプルに表させられるというのはウソ。(P.164)
    ・論理を超えるのは感情。感情に根拠がある。(P.208)

  • 答えはない。
    だから考え続けろ

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著者プロフィール

1956年山梨県生まれ。「プレーンソング」でデビュー。「草の上の朝食」で野間文芸新人賞、「この人の閾(いき)」で芥川賞を受賞。「季節の記憶」で平林たい子文学賞、谷崎潤一郎賞、「未明の闘争」で野間文芸賞、「こことよそ」で川端康成文学賞を受賞。

「2019年 『文学2019』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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