コミュニケイションのレッスン

著者 :
  • 大和書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784479392408

作品紹介・あらすじ

この本は「コミュニケイションは技術」という視点から、どうやったら、あなたのコミュニケイションのレベルが向上するかを伝え、練習方法をアドバイスした本です。30年間、演出家をやりながら、ずっとコミュニケイションに関して考え、実践してきたことを書きました。

感想・レビュー・書評

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  • 書店の平積みから手に取り、ぱらぱらめくってドキッとした文章。

    コミュニケイションが下手なことは、自分の人格が劣っているかのような錯覚を持ってしまいがちです。とある。

    以下引用

    コミュニケイションが下手なのは、野球が下手なことと同じです。野球が下手な人は、そもそも、野球を(まったくか少ししか)やったことがありません。野球をやったことがないのに、野球が下手だと悩むのはバカバカしいことです。
    野球やサッカーが下手なことは、それだけのことです。そのことはあなたの人格とは何の関係もありません。野球やサッカーが下手だから、人格的に問題があるなんてことはありません。コミュニケイションもまた同じです。コミュニケイションが下手なことは、それだけのことです。あなたの人格とは何の関係もありません。

    この言葉に励まされる。

    著者が30年間、演出家をやりながら、ずっとコミュニケイションに関して考え、実践してきたことを書いたというこの本。
    コミュニケイションは純粋に技術の問題であり、大切なことは「コミュニケイションが下手なこと」と、「コミュニケイションに怯え、コミュニケイションを避けること」を区別することだという。

    レッスンという形式でわかりやすく書かれていて面白く、感心しきりでありました。
    五十路の坂に差し掛かり、こんなふうに教えてもらえるということが有り難いです。

    そして「技術」のアドバイスばかりだけでなく、日本人独特の「世間」の歴史から現代の「中途半端に壊れてる世間」と「社会」の違いなど、なるほど〜と思うことばかりでおもしろい。世間と社会を見分けたら、人との関わりの交通整理が出来たようで気が楽になります。
    「聞く」「話す」「交渉する」の技術、わかりやすい例が用いられ、大変に役に立つ一冊だと思いました。
    実践については、さぁどうだろう?(^ ^;)
    少しでも向上することを目指そうと思う。
    『おわりに』では著者のあたたかい言葉が…。

    人間はゆっくりとしか変われないのです。
    けれど、ゆっくりでも確実に変わります。
    何度も何度も実生活で使っていくうちに、ゆっくりとあなたは変わるのです。
    何度も何度も「伝える技術」を探っていくことで、あなたはゆっくりと確実に変わるのです。…と。

    あー読んでよかった!

  • 図書館にて。
    日本における「世間」と「社会」に、関する解説はとても腑に落ちる内容で興味深かった。本書は「社会」に関するコミュニケーションが中心だが、自分としては「世間」に関する内容を知りたかったのだと読んでいて気づいた。
    メモ
    ・多くの人はコミュニケーションやり方を学ぶのではなく、親のコミュニケーションやり方を受け継いでいる。親と言う服を無意識に着ているか、意識して着ているかは大きな違いがある。
    ・もともと日本では村と言う世間が存在していたが、明治政府によって、世間を飛び越えて国民と言う自覚を持たせるための枠組みとして、英語でsociety、日本語では社会と訳した。そこで日本人は、村と言う大きな単位の世間の代わりに、小さなグループを作り生きるようになった。
    ・みんな自分に関心があって、自分のことを話したがる。だからこそ人の話をちゃんと聞ける人は、愛され、求められ、好感度が上がる。相手の話をちゃんと聞くだけで、コミュニケーションが上手いと思われる。
    ・人の話を聞きながら、すぐに目が泳ぐ、そばを通っている誰かを目で追ったり、別な方向を見るのは、相手の話を聞いていない、または興味がないと言うサインになる。
    ・ここぞと言う時にだけ微笑めば良い。話を聞いているときは、相手の眉間、胸、喉などを見る。視線が下に行くとマイナスのイメージとなる。
    ・ナンバーワンになるホステスは、普段から新聞を読み、ネットのニュースをチェックして、世界の動き全体を広く浅く知っている。いくつかの話題を知っていれば質問ができ、そうすると相手は嬉々として説明を始める。(相手の教育欲を満たす)。
    ・人の懐に入るのが上手い人は、世間のコミュニケーションを使っている。仲間内だけの単語、その集団だけの言い回しを意識して会話の中に入れることで、水臭さを取り払う。
    ・話の内容が面白くない場合の対処法は簡単で、面白い体験をすること。テレビとパソコンの前から離れて家を出る。誰もが知っているメジャーなことではなく、誰も知らないようなマイナーな、だけどそこそこ面白い映画、舞台、スポーツ、ライブ、小説、漫画などは話題自体が珍しいので、話し方が多少下手でもまずは人を惹きつけることができる。

  •  他者とコミュニケーションをとる困難さを歴史的背景、社会環境の変動、自分が立脚している私状況から分析説明している。大変鋭い解釈でもっともと合点したしだいです。
     私たちのコミュニケーションは小さい時から親や年上の兄弟から受け継いだ影響が大きいわけで、その年長者の培っきたコミュニケーションのやり方から鋭く分析している。とくに「世間」と「社会」の定義です。「世間とは、あなたと利害・人間関係があるか、将来、利害・人間関係がら生まれる可能性が高い人達のこと」であって、「社会とは、今現在、あなたと何の関係もなく、将来も関係が生まれる可能性が低い人達のこと」といってる。つまり世間とは会社の自分と同じ部署の同僚だったり、クラスのいつものグループ、メンバーだったり、子供の親しい親だったり、同じマンションの挨拶以上の会話をする相手のことだ。マンションではとかくお友達とは世間であって、それ以外は社会の人ということになって挨拶もせずに切り捨てている。

     私達はこの「世間」と「社会」との二つのまつたく違った社会を生きている。「世間」ではうまく話せるのに「社会」との付き合いかたがうまくできない。


     無意識にしていたことを、意識的に見られるようになれば自分の「コミュニケーションのやり方」を客観的にみることができ、伝える技術が身につくようになるという。

    「世間」「社会」「空気」感は納得のいくものでした。欧米の人たちとの違いにもおどろきでした。そして、おばさん、おじさん若者達の行動も納得しました。

     わかりきってることだとタカを括ってましたけど眼から鱗でした。

  • ・欧米ではすべてが「社会」であるのに対して、日本には「社会」と「世間」がある。

    ・「世間」には、年功序列、共通の時間意識、贈与互酬の関係、差別的で排他的、神秘性という5つの特性があり、濃密な関係である。

    ・反対に、「社会」は関係がないので、日本人はよく「社会」の人に挨拶しなかったり、電車で席を譲らなかったり、ドアを押してあげなかったり、ベビーカーを無視したりする。

    ・日本には、壊れかけた「世間」が多数存在しているため、コミュニケイションのトラブルが起きやすい。

    他にも、相手の話を聞くとき、話すとき、交渉するときの有効なアドバイスが書かれていて、とても面白かったです。
    緊張したときは体重心を下へ持ってくる、というアドバイスは、実践してみたら効果ありました!

    鴻上さんは『Cool Japan!』の司会で知ったのですが、演出家の経験から書かれた内容が面白く分かりやすくて、著書を色々読んでます。

  • p25
    「100%負ける」と「100%戦う」は、同じ気持ちから出ていると思っています。それは粘り強く交渉することを放棄して、とにかく負けて服従するか、とにかく戦ってぶつかるかとう単純な道を選んだ結果だと思っているのです。
    p26
    負けて従い続ければ、相手は自分の言い分が全部通るので喜ぶかもしれません。けれど、あなたには激しい負担と欲求不満、精神的なストレスがのしかかるでしょう。
    p27
    「NO」を飲み込んで、ぐっと我慢すれば、それは、ただ「負ける」コミュニケーションです。また、最後の最後、怒ったように「NO!」と叫べば、それはただ「戦う」コミュニケーションです。どちらもあまり効果的なコミュニケーションではないでしょう。
    p51
    お歳暮やお中元、出産祝いや内祝いは、あなたなりのルールを決めればいいと思います。「世間」は中途半端に壊れているので、どんなルールでもありだと思います。
    p52
    「世間」に所属するためには、あえて、外の人たちに対して排他的にふるまう必要もあるのです。それが「世間」に受け入れられるための必須の手続きだったりもします。ですから、興味のない「世間」から差別されても、所属するつもりがなければ気にする必要はないのです。
    p59
    なかなか「NO」と言えないことと、なんのためらいもなく「NO」と言いすぎることはコインの裏表です。
    p64
    「すみません、イヤホンから音が激しく漏れています。もう少し、音を下げてくれませんか?」と丁寧な言葉で自分の状況や感情を客観的に説明する必要があるのです。
    p69
    自意識に苦しんでいる人に僕は「大丈夫だ、安心しろ。君以外に君のことを意識している人は誰もいない」と言います。「失敗しても恥かいても、気にしているのはたった一人、君だけだ」と。冗談めかしていますが、本気です。
    p73
    リラックスして聞くためには、体の力を抜き、自分自身の体の重心を下げます。より詳しく言えば、体の中心、丹田を意識します。
    p74
    パニックになっている時や舞い上がっているときは、体の重心は上に上がります。首から頭にまで上がる人も珍しくありません。あわてている人、混乱している人は、みんな頭を突き出して動くのです。
    p83
    きっと、あなたはかなり無理をしているんだろうなあと、じっと僕の目を見続ける人の精神状態を心配します。声にならない悲鳴を上げているんじゃないかと考えます。
    がんばりたいという気持ちはわかりますが、どんな時も、心の悲鳴を無視してはいけないのです。自分にとって不自然に感じることは、相手にも不自然に伝わるのです。
    p85
    視線が泳ぐと退屈していると思われますから、話を聞いているときは、相手の眉間とか、相手の胸、相手の喉などを見つめます。
    p88
    「必死で気を使っている」という状態は相手に伝わります。いつも「元気で明るい」状態は相手を疲れさせます。
    p146
    普段、自分は何種類の声の大きさを使い分けているか。内容によって適切に使い分けているのか、ということを考えてみてください。
    p147
    つまらない話し方は、この5つの要素が単調で変化しません。大きさはずっと同じ、高さもずっと同じ、速さも同じ、間の長さも同じ、そして声色も同じ。実に単調な話し方です。
    p159
    リラックスするために、「声を低く始める」というテクニックがあります。つまりここ一番大切なことを話すときに、強引に声を低くして始めるのです。
    p166
    自意識は消えません。無視しようとすればするほど、あなたの前に立ちふさがります。けれど、話の内容に集中し、話の内容を思い出し、想像しながら話せば、「自意識」はどんどんと減って、あなたの後ろで見守るようになるのです。
    p169
    いざ大勢の前で話し出したら、その一番反応のいい人を母港として、話しながら順番に全員の目を見て回ります。不安になったら、すぐに一番反応のいい人の顔に戻って安心します。そういう意味で母港なのです。
    p188
    あなたも気づいているかもしれませんが、日本語は、自分と相手との関係、つまり、立場や階層が分からなければ、相手の呼び方ひとつ決められない言語なのです。
    p189
    日本語は、立場や階層が分からない相手と話すことを想定していないのです。つまり、日本語は「世間」の人と会話するための言語なのです。
    p192
    ニュートラルに「です、ます」の表現で会話するのが「社会」の基本だと、僕は思っています。そして、大きく壊れた「世間」でもそれが有効なのです。
    p193
    つまり、「です、ます」を冷泉さんが書かれたように、丁寧語という敬語ではなく、日本語をニュートラルにする機能と考えるのです。
    p193
    「させていただく」は日本語の恥
    p212
    共通の価値観がない現場を知ると、簡単には「他人に迷惑をかけない人」が子育ての一番の目標には出来なくなるのです。
    p214
    職場やクラス、家庭など、周りに人がいるのに、一人で誰にも頼らず、迷惑をかけないで生きていこうと思ったとしたら、その決意はかなり周辺の人々を混乱させているか、振り回しているはずです。
    p215
    心が悲鳴を上げているのに我慢を続けて、誰にも言わなければ、精神は間違いなく崩壊するでしょう。
    p219
    相手が求めているものを、実に気さくに気軽にフレンドリーに提供する。それが最高のホスピタリティー、おもてなしなのです。相手が使うかどうか分からないブランドのシャンプーやローションを先に洗面所に用意することは、「おもてなし」ではないのです。それは相手の好みや嗜好を無視することなのですから。そして、用意してもらったものが期待しているものと違ったとき、これまた簡単に「違います」と言えることが、フレンドリーということです。
    p220
    日本人もまた、「相手の心の中を読む」思いやりのスタイルから、「相手が求めているものを気軽に問いかけ、やりとりする」思いやりのスタイルへと転換せざるを得ない時代に来ているんじゃないかと僕は思っているのです。
    p224
    悩むことは何時間続けても、なにも前進しません。考えることは、何時間か考えれば、何か得るものがあるのです。
    p229
    ただし、相手が激しいエネルギーをぶつけてきた場合は、あなたも全身でそれを受け止め、跳ね返す必要があります。
    丹田を相手に向け、丹田から相手にエネルギーをまっすぐに放射するイメージを持ってください。
    p231
    あなたと相手がどんなに誠実で、どんなにいい人で、どんなに優しくても、あなたの事情と相手の事情はぶつかります。お互いが人生に誠実であればあるほど、ぶつかります。それは当然であり、日本人的にいえばしょうがないことなのです。それがコミュニケーションです。そこから逃げることはできないのです。
    p231
    交渉するときは、重心を下げ、声を低くゆっくりと。丹田を相手に向けよう。
    p235
    「人は人を説得する方法で説得されやすい」
    情熱的に人を説得している相手には、情熱的に説得すると成功する。
    理論的に人を説得している相手には、理論的に説得すると話がうまくいく。
    p253
    濃密な「世間」では、あなたが「弱みを見せること」が、有効な「交渉する」方法の一つになります。ただし、相手が「社会」に生きている場合は通じませんから、気を付けてください。
    p276
    交渉を成功させるには、感情的にならずに冷静に、4つのステップを踏もう。感情的になったら負けです。
    p279
    家庭のあなたも、職場のあなたも、友人の前のあなたも、あこがれの人の前のあなたも、全部、違っていて、すべて、あなたです。
    p280
    私たちは、場面場面で、自分自身を演じています。意識的に演じている時もあれば、相手や環境が変わって無意識にしている時もあります。それが、人間本来の姿です。それは少しも悪いことではありません。それが自然の姿なのです。

  • ショートコント、面接
    最高!

  • いや~ためになる。
    自分がモヤモヤ、曖昧に、なんとなく感じつつも、思うまでは至らず、ぼんやりとしたものに対して、こうも言語化されると、クリアに整理されていくのか、という感動がある。
    言葉にする力の威力について、思い知らされる。
    言語力が凄まじい。誰もが何かしらで感じていることを、言葉にし、切り分けて考えるという、思考プロセスまで提示してくれる、それもユーモラスたっぷりに。押し付けがましくない、作者のスタンスもすごく好き。

  • コミュニケーションは技術であって、その人の人格とは全く関係がない。
    というフレーズに安心するし、読んでいくうちにその事が腑に落ちます。安心してコミュニケーションの技術を上げていこうという気になれました。

    人生の比較的早い段階でこの本に出会えて良かった。図書館で借りた本ですが、返すのが惜しくなる。手元に置いておきたい本です。

  • ●世間で話す時、目的は感情交換が一番、情報交換が二番。対社会は逆で情報交換が一番になるから感情は後回し。全体から細部へ前提も含め整然と話す必要がある。

  • ↓利用状況はこちらから↓
    https://mlib3.nit.ac.jp/webopac/BB00524829

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著者プロフィール

著者等紹介
鴻上尚史[コウカミショウジ]
1958年8月2日生まれ。愛媛県新居浜市出身。早稲田大学法学部卒業。劇作家・演出家・エッセイスト・小説家

「2023年 『ヘルメットをかぶった君に会いたい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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