ゆっくり、いそげ ~カフェからはじめる人を手段化しない経済~

著者 :
  • 大和書房
4.13
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本棚登録 : 380
レビュー : 42
  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784479794707

作品紹介・あらすじ

JR中央線・乗降者数最下位の西国分寺駅-そこで全国1位のカフェをつくった著者が挑戦する、"理想と現実"を両立させる経済の形。

感想・レビュー・書評

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  • “成算があったわけではないが、いまだ価値を認められていない「何か」を形にし、世にそっと差し出そうとする表現者としてのその姿勢が、クルミドコーヒーの来し方重なる思いもあったし、一見頼りなさげに見える二人の中に見え隠れする「それでもこの一点だけは貫き通す」というような芯、その「弱いのに強い」感じにも惹かれ、応援したい気持ちになってしまったのだ”

    “まだ世の中に評価の定まらない仕事であったとしても、それを受け止め、価値を見出してくれる「受け手」のあることが「贈り手」の背中を押す。仕事の主の勇気になる。受け取ってくれる人の笑顔が「贈る」ことの喜びを教えてくれる”

    “自分の日々は、数多くの他社の仕事によって支えられている。その状況は何ら変わっていないはずなのに、僕らの周囲から仕事の主の気配はどんどん消えていく。そしてあたかも自分は、自分一人の力によって日々を成り立たせているかのように錯覚する”

  • 資本主義、経済至上主義のど真ん中で闘うでもなく、そこから下りて原始的な生活を送るでもなく。顔が見える、でもある程度の規模の特定多数のコミュニティの中で、無理なく経済を循環させていく。すごく共感できる考え方。
    人と人との関係性についても、ムラ社会的な不自由な共生ではなく、自己責任が問われる、自由な孤立でもなく。自由で、でも共生していく、そんな関係性が当たり前になったらいいなぁ。

  • クルミドコーヒーに通いたくなる。クルミドコーヒーのような溜まりば作りたい。

  • 東京は西国分寺にある大好きなカフェ、クルミドコーヒー。そこのオーナーである影山さんの本。
    クルミが食べ放題で、木を基調にした家具やステンドガラスあとても居心地よくて、よく通っていた。学生時分で、1杯650円のコーヒーは決して安くはなかったが、それでも1杯200円のコーヒーチェーン店を通りすぎて、度々通ったものだ。クルミドの夕べでは、影山さんとフランクにディスカッションしたこともある。

    大好きなカフェの裏側、経営者の考え方は、とても興味深いものだった。
    お客さんの「消費者的人格」(少しでも得をしよう、という考え)を刺激しないような工夫。
    お客さんに「こんないいものを提供してもらったのに自分が支払った対価は安い」と前向きな「負債感」を感じさせることが、友人への口コミ、ブログへの紹介など次へと「贈る気持ち」につながる。

    経営、経済なんてこ難しいと思っていたが、とても面白く、自分の今の仕事にさえ繋がる部分があった。お金が全てではないが、ボランティアとは違う双方が笑顔になれて、そして回っていく仕組み。
    おもしろい、おもしろい。

    ゆっくり、いそげ。
    今年のテーマはこれでいこう。

    ————————————

    「ゆっくりいそげ(フェスティナ・レンテ)」

    ぼくは常々、この中間がいいなと思ってきた。お金がすべてという発想に与するものではまったくないが、一方で便利さも求めたいし、贅沢だってしたいこともある。売上や利益は、自分の仕事に対する社会からの評価だ。新しい技術やアイデアで世の中が劇的に変化していく様子にワクワクするし、競争は自分を高める貴重な機会とも考える。

    ビジネスとスローの間をいくもの。
    「ゆっくりいそげ」。
    AかBか、ではなく、どっちも。

  •  丁寧につくること。
    丁寧に考えること。
    丁寧に話すこと。
    丁寧に聞くこと。

    丁寧に人と関わること。

    初めてクルミドコーヒーを訪れたとき、
    なんて丁寧な場所なのだろうと感じた。

    1つ1つのこととしっかり向き合っている。


     もっとこの場所のことを知りたいと思い、読み始めた本。
    すごく大切だと思えることが記されている。

    実践していくのはきっと大変なのだろうけれど、
    少し羨ましい。

    そんな1冊です。

    • 大野弘紀さん
      私もこの本を読みました。一番大切なものは、結局人なんだと思った時、そういうものを経営の中で体現していくって、すごいと思いました。
      私もこの本を読みました。一番大切なものは、結局人なんだと思った時、そういうものを経営の中で体現していくって、すごいと思いました。
      2018/08/10
  • 奇麗事言ってる、と感じる向きもあるかもしれないが、ここまでしっかり考えられた奇麗事を論じる人はそういない。影山さんのマッキンゼー時代とクルミドコーヒーを始めてからの、なんというか、蓄積が感じられた。

    例えば、数年前までマーケティングの部署にいた頃は、如何に顧客のテイクのスイッチを押すことを考えていた。ある商品を買うとこんな良いことがありますよと、如何に刺さるメッセージを刺さる顧客層に届けるにはどうしたら良いかとばかり考えていた。

    しかし、仕事が終わって同僚と飲みに行くときには違うことを考えている。この商品はこんなにお得だというコミュニケーションではなく、もっと共感が得られるようなコミュニケーションを心がける。毎日多くの時間を過ごす人達と、お互いを利用しあう関係にはなりたくないからだ。

    できれば、同僚とも顧客とも近所の人とも、価値観を共有する関係でありたい。そう思いながら、これが仕事だからしょうがないと諦めている人が多いのだろうけど、影山さんは西国分寺でそれを実現している。そのことに少しでも励まされたら、この本を読んだ価値があるというものだろう。

  • 利己と利他の中間、お金だけを重視しない価値観・働き方は大変理解できるし、著者の実績があるので信用もできる。のだが、どうしても今の私はまだ心の底から本書に共感することができない。それは、今の私がまだ「私」をこれ以上、外に広げることができない小さい人間だからなのかもしれないし、やっぱり本書の内容が間違ってるからかもしれない。
    ただ、私はまだ「私」のことしか考えられない未熟者であるかもしれないことを気づかせてくれた事実だけでも、私にとっては本書は読む価値のある一冊だったことは間違いない。

  • 2018年24冊目。

    ことあるごとに立ち返りたいと思える大切な一冊になった。目の前の仕事や関係する人たちと向き合う姿勢が良い方向にぐっと変わりそう。そんな予感を持たせてくれる、とても素晴らしい本。

    「1杯650円のコーヒーを買ってもらう」。たとえ同じやり取りのなかでも、「お金を取る=Take / 取られる=Taken」の姿勢なのか、「良いものを贈る=Give / 受け取る=Given」の姿勢なのかで、育まれる関係性はきっと大きく違う。著者の影山さんはそれを「利用し合う関係」ではない「支援し合う関係」と呼ぶ。お客さんの「消費者的な人格」ではなく「受贈者的な人格」を刺激することで、「いいものを受け取ってしまったな」という「健全な負債感」を抱かせ、そこからその人が、次の人に何かを贈るようになる。そんな連鎖・循環から、よい社会や経済が生まれてくる。実体が見えないような「社会」や「経済」は、そういう一つひとつの交換の集積から成り立っているのだから、きっとその積み重ねには意味がある。

    仕事のなかの一かき一かきを、研鑽を積みながらも、ゆっくり丁寧に、一生懸命積み重ねる。支援し合う関係を一つひとつ築いていく。それは目的へと急ぎ過ぎたビジネスが一度立ち止まり、本当に豊かな経済を生み出していくための近道なのかもしれない。影山さんがその想いを一つのお店のなかで確かに実践していることを知り、自分も自分の場所でその姿勢から行動を起こしていきたいと素直に思えた。こうやって価値観が伝わり、一人ひとりの行動が変わっていくのであれば、「ローカル」な小さな活動は、決して非力ではないはず。

  • 次回の #インクワ望月ゼミ 用に @mimimizuho さんが選書した『ゆっくり、いそげ』西国分寺にあるクルミドコーヒーでの実践を通じた心温まる経済書であり、哲学書。利潤と生産性の追及に帰結しがちな資本主義が唯一の解ではないかもしれない。その可能性を感じられる

  • ◯特定多数間での複雑な価値のキャッチボールを成り立たせるためには、多くの場合、身体性を伴う直接で密度の濃いコミュニケーションが必須だということだ。(39p)

    ◯どんな仕事にも、それを現実のものとしてくれている「贈り手」の存在がある。その仕事/ギブを受け取りました、いただきました、ありがとう、とお金を渡すのだ。(125p)

    ◯存在を傾けた、手間ひまのかかった仕事をちゃんとすること。そしてその仕事を受け取ってくださった方に、時間をかけてちゃんと寄り添い続けること。(227p)

    ★特定の人の間で直接やり取りできるなら、お金で表せない価値も成り立つ。手間ひまをかけた仕事をギブしあう関係。AIの時代には当たり前になるだろうか。

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