現代文学論争 (筑摩選書)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 71
レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (380ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480015013

作品紹介・あらすじ

かつて「論争」がジャーナリズムの華だった時代があった。なかでも文学論争は、その衣の下に政治論争を隠し持っていて、刺激的だった。本書は、臼井吉見『近代文学論争』の後を受け、主として一九七〇年以降の論争を取り上げ、それらがどう戦われ、文壇にいかなる影響を与えたかを詳説。新聞・雑誌が、もはや論争を扱わなくなった現在の状況に一石を投じる。

感想・レビュー・書評

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  • 図書館で読んでいるうちに止まらなくなり、結局借りて来て2日間で読了。
    いや、ページを繰る手が止まらないとか、万人受けするような本では決してない。
    単に、私が「論争好き」だというだけです(ただし傍から見ている限りにおいては)。
    1970年代以降の文壇(まだそんなものがあるかは疑わしいですが)で、どんな論争があったかを丹念に拾い上げたのが本書。
    取り上げている論争は、江藤淳の論争、「内向の世代」論争、フォニイ論争、「堺事件」論争、方法論(三好―谷沢)論争、「事故のてんまつ」事件、『死の灰詩集』論争から「反核」論争へ、筒井康隆の戦い、「たけくらべ」論争、「君と世界の戦いでは、世界に支援せよ」論争、『こゝろ』論争、「春琴抄」論争、永山則夫文藝家協会入会論争、湾岸戦争から『敗戦後論』論争、宮澤賢治論争、「純文学」論争―笙野頼子論争、柳美里裁判とその周辺。
    ふう。
    中にはかなりマニアックな論争もありますね(笑)。
    いくつかの論争については、必ずしもリアルタイムではありませんが、興味を持って眺めていました。
    たとえば、永山則夫文藝家協会入会論争。
    永山は死刑囚ですが、親しい作家からの勧めで文藝家協会に入会しようとしたら、断られてしまったのですね。
    私は人殺しだろうが何だろうが、優れた作品を創っているのであれば文学者だと考えています。
    ですから、永山の入会を拒否した文藝家協会には「何て狭量なんだろう。そんな了見で文学が出来るのか」と腹が立ちました、
    実際、柄谷行人、中上健次、筒井康隆の3人は、入会拒否に抗議して協会を退会する声明を出しました。
    その筒井康隆は著作とともに論争、というかゴタゴタの多い作家です(現代の文壇を代表するトラブルメーカーと言えます。大好きですが)。
    上記の永山論争のほか、短篇「無人警察」で日本てんかん協会から抗議を受け断筆宣言、行き過ぎた禁煙の風潮を「禁煙ファシズム」として果敢に戦ったのも記憶に残ります(筒井には「最後の喫煙者」という1987年に発表した短篇がありますが、時代を先取りしていたのだなあと思います)。
    ちなみに私は、落語家の立川談志(故人)と同様に、小説家では筒井をほぼ盲目的に支持しています。
    笙野頼子論争は笙野の「純文学愛」が伝わってくるのですが、傍から見ていてハラハラします。
    柳美里の裁判は、「表現の自由」の問題もあって、当時から興味深く見ていました。
    さて、では、今現在の「論争」はどうかと言うと、これがなかなか貧寒とした状況です。
    新聞、雑誌はもはや積極的に論争を扱おうとせず、論争の主戦場はもっぱらインターネットに移っています(その多くは素人がネット検索で手軽に知識を仕入れて勝手気ままなことを書き殴っているだけ)。
    専門家同士の論争から核心が明らかになることがあるわけですから、大いに盛り上がって欲しいと、「論争好き」の私などは期待するのですが、見通しは暗いと言わざるを得ません。

  • 論争に対してさらに論争をふっかけるかのような語り口にドキドキする。他人の喧嘩を茶化すのは、いつの時代もおもしろいのだ。文芸に関わる論争の場は、すでに誰しもが気軽に参加できるネットの世界へと移ったが、かつて様々な誌上で盛んに行われていた時代の空気を感じることができる。
    本書だけではそれぞれの論争で具体的にどのような言葉のやり取りがあったかは分からない。しかし誰と誰がいつどこでやりあったということはわかる。興味のある章を自発的に深く掘り下げる楽しみが見つかるかもしれない。
    以下、おもしろく読んだ箇所。

    筒井康隆は「家族八景」などでたびたび直木賞候補となるも受賞を逃し続け、直木賞審査員を皆殺しにする小説を書いた。

    永山則夫が文藝家協会に入会しかけて、協会内で賛否両論を巻き起こした。それを知った永山が入会辞退のコメントを発すると、「ここに永山がいたらぶん殴る」と秋山駿が憤慨した。

    加藤典洋「敗戦後論」は、天皇制と9条が両立することに矛盾を感じないウルトラ戦後民主主義と親和性が高い。

    「宮沢賢治殺人事件」以降、宮沢賢治の偶像化への批判が増えた。しかし信者は黙っていられない様子、気持ち悪い匿名の反論が発生した。

    著者の論敵である純文学の擁護者をヒステリックに描いているが、どこまで要領を得ているのか判断しかねる。ただ、論敵の動機は美人作家への妬みを背景にしているという指摘については、論争を知らない私でも何故か首肯する。せめて文学だけは、そっとブスのものにしておいてあげたい。

  • 1970年代以降に繰り広げられた文学論争を纏めた本。
    根が深いものもあれば軽簿で楽しい論争もある。
    特に印象的だったのは川端家の論争と、柳美里の論争で、根深いものがあるなと思った。

    たけくらべ、宮沢賢治に関しては「文学研究してる人って、そういう事ね!」って感じで、こころ論争は更にポップ。

    その筋の権威みたいな人も小谷野節でバサバサ切っていくの楽しいけど、ちゃんと俯瞰的に書かれてると思う。
    それだけに、反核キャンペーンの論争で江藤側についた吉本隆明が論客をバッサバッサと切り倒していくところは最高に気持ちよかった。
    日本語ラップに「ダメなラッパーは肉だ」ってパンチラインがあるけど、自分が論争に求めてるのってそれなのかも。

  • ともかく言葉遣いが下品すぎる。内容もあまりまとまりが感じられず、思いつくままに書いているようでわかりにくい。

  • その点にだけ反応したいわけではないが、誰と誰は夫婦というようなゴシップ・ネタはちょっと興味深い…。図書館本。83

  • 自分が小谷野敦にたいしてもつ嗜好の由来は、未だ明確ではないのですが、でも好きです。
    きっぱりした物言いと、裏うちするべく蓄積された学識・識見が半端無いです。

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プロフィール

1962年茨城県生まれ。本名読み・あつし。東京大学文学部英文科卒。同大学院比較文学比較文化専攻博士課程修了。1990-92年、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学に留学。学術博士(超域文化科学)。大阪大学言語文化部助教授、国際日本文化研究センター客員助教授などを経て、文筆業。文芸批評、小説、演劇、歴史、男女論などフィールドは幅広く、独自の「男性論」を展開。また、論壇・文壇のもたれ合いへの鋭い批判も行なっている。著書に『夏目漱石を江戸から読む』(中公新書)、『江戸幻想批判』『リアリズムの擁護』(新曜社)、『〈男の恋〉の文学史』(朝日選書)、『もてない男』『バカのための読書術』(ちくま新書)、『日本売春史』(新潮選書)、『退屈論』(河出文庫)、『聖母のいない国』(河出文庫、サントリー学芸賞受賞)、『恋愛の昭和史』(文春文庫)など多数。小説に『悲望』『童貞放浪記』(幻冬舎)、『美人作家は二度死ぬ』(論創社)。

「2018年 『江藤淳と大江健三郎 戦後日本の政治と文学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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