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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784480015303
みんなの感想まとめ
この作品は、昭和初期の無政府主義者たちが直面した歴史的事件を深く掘り下げ、権力の暴圧と若者たちの理想を描き出しています。1937年に発生した「農村青年社事件」は、特高警察と検察権力によるデッチ上げの一...
感想・レビュー・書評
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(※私事ながら、昨年読んだ中でベスト1の本です!)
地方裁判所の正面の大階段は額に迫り威圧する如しと思ひつつ右に曲りぬ
築地藤子
「アララギ」の歌人であり小説も手掛けた作者の、昭和10年代の歌である。定型を大きくはみ出し、その「威圧」感がいかに重いかを伝えている。「地方裁判所」に赴いた彼女に、一体何が起きていたのか。
1896(明治29)年、横浜生まれ。大正期に「アララギ」に入会し、結婚してシンガポールに渡る。帰国後は東京に移ったが、夫が亡くなり、代々木で書店を開業。その書店で、甥も働きはじめた。
1937年、「農村青年社事件」と呼ばれる事件が報じられた。無政府主義者たちが長野を中心にテロ計画を立てたとして、35年秋から農民運動家らが次々に摘発されたものである。
築地の甥もとらえられた。とはいえ、甥は熱心な活動家ではあったが、この事件とは何ら関係がなかった。掲出歌は、その裁判の傍聴に通った折の歌である。
青春といふ月日おほかたを獄に過ごし帰り来て今また罪なはれんとす
甥がようやく解放されたころ、時代は日中戦争に。「罪なはれる(罰せられる)」ように甥は入営し、築地は、作歌をやめて旧満州に渡った。そして敗戦後、苛酷な引き揚げを体験することになる。93年に没したが、97年の波乱に富んだ生涯だった。
農村青年社事件については、保阪正康の入念な著書がある。それによると、この事件は、検事団が自分たちの功名心のために創り上げたものであったらしい。過去の事件として読み過ごさず、丁寧に検証していきたい1冊である。
(2013年1月20日掲載) -
「歴史の発掘」という言葉があるが、本書は、まさにそれだと思った。
昭和10年(1935年)の「農村青年社事件」については、そんな事件があったことを知っている人も現在ではほとんどいないのではないと思う。それを発掘し、調査し、上梓した著者を素直に尊敬の思いをもった。
本書は、昭和初期にアナキズム革命運動に突き進んだ若者たちと当時の特高警察・検察権力の絡み合う姿を詳細に描いている。
アナーキズム運動については、アナ・ボル論争以降マルクス主義が社会主義の正統となったように言われるが、その後の1970年代になっても多くの若者たちに影響力を残していた。1970年代に黒ヘルメットをかぶった多くの若者たちがアナーキストを標榜していたことを思い出す。
本書は、昭和初期のアナーキストの若者たちを、当時の特高警察と検察権力が「第二の大逆事件」としてデッチ上げた過程を詳細に追いかけている。
本書は、ただ単に当時の権力の暴戻を告発するだけではなく、昭和初期の異常な時代の空気を誰の目にも見える形で表現した良書であると思えた。
歴史上の「事件」をただ単に追いかけるだけでは、なかなか長時間興味を持続して読める本とはならない。時代を切り取るだけの切り口と考察があってこそ、単なる「事件」から興味深い「歴史書」となると思う。
本書は、「当時のアナーキスト運動の詳細」のみではなく、「若者の真摯さ」や「権力の非人道性」、そして「特高警察・検察のデッチ上げの実態」等を通して時代の空気を余すところなく描ききった良書であると思う。 -
1937(昭和12)年、日本全国を震撼させた無政府主義者の一斉検挙の報道。日本が軍国主義へと歩みをすすめるなか、疲弊した農村を救うおうと、理想を掲げ立ち上がった青年たちの行動が、迫りくるファッショの黒雲に飲み込まれるように、大逆事件へとデッチあげられ弾圧されていく。昭和史上最大といわれるアナキスト弾圧事件の実相に迫る。(2012/01/01)
著者プロフィール
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